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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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光の一族、ボールドウィン侯爵家の養女になる

 その後、もろもろ終えた私は、クラウス先生に連れられて、ボールドウィン侯爵家にやってきた。


 目の前にある門は王宮ほどではないけれど、やっぱり凄く大きくて、塀も左右にどこが終わりか分からないくらいに広がっている。

 王宮の門と違うところは、門がピンク色の薔薇の花で飾られているところだった。門の鉄格子に薔薇のツルが巻きついて、いたるところに可愛いピンク、しかも結構大輪の薔薇だ。


 ゴージャス感ハンパないな。

 そして薔薇の香りも芳しい。

 こういう入り口のところから、気持ちを高めさせる外観にしてあるのは、光の一族ならではなのかな? それとも、ボールドウィン侯爵夫人の趣味なのかな?


 にしても、ボールドウィン侯爵夫人か。私の養母様になる方。どんな方だろう…… 王の勅命だし変なことされるとは思わないけど、分からないように……的な展開は、アニメでもよく見るし、怖いな。

 でも、息子様お二人はステキな方だとクラウス先生が仰ってたし、そんな息子様を育てられるくらいなら、お優しい方なんじゃないかな……そうじゃなければ、光系魔力を増やしたい私を養女にとは、王様も思われないだろうし……。


 クラウス先生が魔法で門を解錠して、中に入って行かれるのを、私は慌ててついていく。

 目の前にそびえ建っているお屋敷も、宮殿ほどではないけれど、もの凄く大きくて、立派だった。


 お屋敷の真ん前で着くと、これまた王宮と同じように、格調高く身のこなしが流麗な老紳士が、私たちを出迎えてくれた。

「執事のセバストスでございます」

 と自己紹介するその老紳士。


 ……セバスチャンさんとは、ご兄弟だろうか?


 顔が似ているというわけではないのだけど、名前があまりに似ているので、思わずそう思ってしまった。

 もしくはこっちの世界では、執事さんの名前は“セバス系”と決められているのかも知れない。

 ポケモンでも、ポケモンセンターの女性の名前は皆んな“ジョーイ”さんだもんね。よくある話なのだろう、きっと。

 語尾が違うだけ、こっちのほうがマシかも知れないな。


 とか色々妄想しながら、クラウス先生とセバストスさんの後をついて行くと、あっという間に私は、ボールドウィン侯爵家応接室の扉の前まで来ていた。


「クラウス様とソフィー様をお連れしました」

「入れ」

 というやり取りの後、クラウス先生に続いて私は応接室の中に入る。


 窓から陽の光が入ってきて眩しい。

 いや、眩しいのは陽の光のせいだけじゃない気がする。

 目の前には、光のオーラ背負い、私には光り輝いているように見える、光の一族の皆さまが並んで、私たちを出迎えてくれていた。


 ボールドウィン侯爵は、見るからにお優しそうな紳士だった。でも落ち着いた雰囲気の中に貫禄もおありで、さすが侯爵家の主、さすが騎士団長、といった威厳も感じた。

 髪色は琥珀色で、瞳は金色だ。金色の瞳って初めて見たけど、なんか目力ハンパないな。目を合わせると、私自身が照らされてるような気になって、見た目や心のアラが炙り出されるような気になって、なんか恥ずかしくなってきた。

 まあ、目を合わせるのが恥ずかしいのは、侯爵がステキでいらっしゃるという理由も、もちろんあるのだけど。


 隣にいらっしゃるのはボールドウィン侯爵夫人、夫人は十二、三歳のお子様がいらっしゃるようにはとても見えないほど美しい方だった。

 水色の髪は陽の光を含んでキラキラしていて、きちんと編み込まれているのが惜しいとさえ思っちゃった。髪を下ろしていたら、ふんわりヘアかさらさらヘアか分かんないけど、神々しい光が広がって、女神か天使に見えるかも知れない。エメラルドグリーンの瞳は、汚れのない深い海のようで神秘的だなあ……って思わず見惚れてしまった。


 その隣にいらっしゃるのがきっと、クラウス先生から説明を受けたお兄様だ。髪色と瞳の色は侯爵と同じ琥珀色に金色、笑顔がとても眩しいです。

 ザ・優等生って感じで、生徒会長でもしてそうな雰囲気だ。

 しっかり者で頼りがいがあって優しいって感じが凄いにじみ出てて、話しかけても、分かんないとこ尋ねても、確かに怒られなさそうな気がする。

 でも、眩しいくらい超イケメンなんで、まずは自分から話しかけられるか、そこが最難関な気がするなあ……。


そしてそのお隣にいるのが弟君だと思う。弟君は侯爵夫人似だ。髪色と瞳の色は侯爵夫人と同じ水色にエメラルドグリーン、弟君も、笑顔がめちゃ眩しいよ? 笑った顔が誰よりも屈託なくて、明るいお人柄を表していると思う。

 クラウス先生の仰ってた通りだ。一緒に過ごしても怒られなさそう、何か私がしでかしても、一緒に笑い飛ばしてくれそうな、そんな気がした。

 でも、これまたお兄様と同じく超イケメンなので、自分から話しかけるのが、最難関かも知れない。でも、何か弟君なら気さくに話しかけてくれそうな気もして、大丈夫な気も少ししてきた。


 っていうか、正直クラウス先生だって超イケメンだけど、時々目を逸らして誤魔化ししつつも、なんとか会話できたんで、きっと慣れたら大丈夫……なのかな? よく分かんないけど、そう思い込んでおくことにしよう。


 私は色々妄想膨らましていたら、クラウス先生に挨拶を促された。

 ハッと気づいて現実世界に戻ってきて、メイドさんに仕込んで頂いた、付け焼き刃甚だしい貴族風挨拶を頑張って披露した。


「ソフィーと申します。よろしくお願い致します」


 スカートを摘んで深々とお辞儀する私、めちゃ緊張する、大丈夫だろうか?

 私は恐る恐る顔を上げた。

 目の前にいるボールドウィン侯爵家の皆さま、そして横にいるクラウス先生も笑顔で私を見つめて下さっている。何とか大丈夫なようだ。私はホッと胸を撫で下ろした。


 続いてボールドウィン侯爵家の皆さまがご挨拶をなされた。


「私はオズウェル・ボールドウィン、ボールドウィン侯爵家の主だ。騎士団をまとめる騎士団長をしている。

 私を筆頭に、ボールドウィン侯爵家の者たちは皆、ソフィーを歓迎する」


 そう笑顔で仰った。


 光の一族の主でいらっしゃる侯爵の笑顔は、本当に眩しいなあ。

 しかも騎士団の長でもいらっしゃるなんて、めちゃお強くもいらっしゃるのか。凄いな。

 って思わず思っちゃったんだけど、それが思わず声に出てしまった。


「侯爵は、すごいお強いんですね」


 って、は! しまった! お強いんですねとか、何言っちゃってんの?


 私は超真っ赤になって、小声で「変なこと言ってすいません」とだけ言って、思わず俯いた。

 すると弟君が、「ソフィー、ちょーおもしれー!」とか言って、お腹抱えて笑い出した。

 うう、そんなに笑わなくてもいいと思うのですけれど?

 いやまあ、変なのは百も承知だけどさ。普通ならここは、『歓迎頂きありがとうございます』と返事するところよ。


 ……とほほ。


 でもボールドウィン侯爵は、私に優しく微笑んで、仰った。


「我が一族は代々光の一族として、神と王族を守る剣という使命を負っている。なので、元々武力には自信のある一族だ。もちろん、日々の鍛錬の賜物ではあるが」

「ぶ、武力? 私はその、剣すら握ったことないんですが、大丈夫でしょうか?」


 思わず焦って、また口滑っちゃったよ、どうしよう?


 って私がめちゃテンパっていると、クラウス先生が、

「剣を持つかどうかはまず素質を見てからの判断になりますので、ご安心下さい」

 と仰って、私の背中に手を回された。


 これは、落ち着けってことだと思う。マジでホント、緊張のピークなんです!

 そんな私の緊張をよそに、向こうの方ではさらに弟君が「ソフィー、やっぱちょーおもしれー!」と言って、お腹抱えて大笑いしていた。


 うう、ホント恥ずかしいです、マジで。


 それでもボールドウィン侯爵は、笑顔を絶やさず優しく私に話しかけて下さった。


「光の一族の女子は、傾向としてやはり光属性魔法を得意としている場合が多く、『ヒール』などの治癒系魔法から入り、鍛錬を積んで強力な光系攻撃魔法をマスターする者もいる。また、中には剣に秀でた女子もいるので、剣の道に進む女子もいる。

 ちなみにソフィーは闇属性の魔力が強すぎるので、光属性の魔力もはぐくみ、育てていきやすいように、我が家に来ることになったと聞いている。

 この家の環境が、ソフィーにとって成長を促す良い機会となるように、我々も助力惜しまないつもりでいる」


 何という頼もしい仰りよう、助力を惜しまないなんて、今まで言われたことないよ?

 私は感動に打ちひしがれていると、ボールドウィン侯爵はさらに続けた。


「それから、これからは私のことはボールドウィン侯爵ではなく、養父様と呼びなさい。今日から私は貴女の養父となるのだから、ソフィー」


 と笑顔で仰った。


 と、養父様か、恥ずかしいな、自分の父親を様付けで呼ぶなんて、ホント異世界ならではだ。

 でも恥ずかしがってばかりもいられないので、私も頑張って笑顔で言ったみた。


「よろしくお願い致します、養父様」


 すると養父様も、笑顔で応えて下さった。


 続いて、隣にいるボールドウィン侯爵夫人も、

「わたくしのことも養母様でよろしいですわ」

 と笑顔で仰った。

「わたくしはセレスティア、ボールドウィン侯爵の妻であり、隣にいる息子たちの母親です。今日から娘がひとり増えると聞き、とても楽しみにしておりましたの。よろしく願いしますわね」

 と、美しい笑みを浮かべて仰った。


 おお、美しい……と見惚れていたら、クラウス先生が私の背中をトントンとし、速攻、現実の世界に引き戻された。

「よろしくお願い致します、養母様」

 私が笑顔で言うと、養母様が満面の笑みを浮かべて仰った。


「まあ! 本当に可愛らしい娘ができて、わたくしもとても嬉しいですわ! ですが、ソフィーはかなり痩せすぎているように思いますの。それではいけませんわ。でも、ご安心なさって。わたくしたちと共に、毎日楽しく美味しいものを食していたら、自然と健康的になりますわよ。大船に乗ってつもりでいらしてね」

 と養母様、なんだかちょっと気を大きくしていらっしゃるように思ったので、私も思わず釣られて気を大きくしてしまい、

「大船とか、養母様は美しいだけでなく、とても頼もしいです」

 と、また心の声が出てしまった。


 もうこの心の声が外に出てくるの、マジでなんとかして欲しい。

 私はまた赤くなって俯いていると、クラウス先生はまた私の背中を、落ち着いて、って感じでめちゃ上下にさすって下さるし、端のほうからは、

「強いの次は、頼もしいか、ちょーウケる! 母上、ソフィーは大船は大船でも、ノアの方舟くらい大きいのがいいってさ!」

 とか言いながら、また弟君がお腹抱えて大笑いしている。

 いやいや私、そんな大袈裟なこと、言ってませんけど!?

「いえ、ノアの方舟なんて、そんな、とんでもない……」

 と、私はとりあえず必死に反論すると、

「まあルシフェル、ソフィーはモーゼの杖所持者ですのよ? 養母であるわたくしが、同じく神が世界再創造のときに人間に使わされたされたとされるノアの方舟を目指さないでどうします? 世界が滅びそうなときでも、楽しく美味しく食事ができる食卓、わたくしにお任せなさい」

 ときっぱりハッキリ仰った。


 何だろうこれは。ボケに対してツッコミではなくさらにボケを被せてくるという、高等技術を披露される養母様、これも光の一族の教育の一環なんだろうか?


 それにしても、なんか仰ることちょっと意味が分からないところもあおりだけど、私が心配していた”優しいの裏の顔”なんて、全然ない……。

 いや、あるのか? でもそれはあったとしても、陰険とは真逆の面白系だけど。


 優しいの裏の顔が、面白系の養母様、とってもステキだな。


 それにしても、世界が滅びそうなときでも楽しくなれる食事って、いったいどんなのだろう?

 発想が極めて面白すぎる。なんか、色々心配して損しちゃったかな? まあ、嬉しい誤算だけれど。


 あと、弟君はルシフェルさんというのか。クラウス先生が言ってたルシフェルさんの底抜けの明るさは、養母様譲りと今、確信した。髪色、瞳もおんなじだし、男女の違いはあるけどそういえばお顔も似てらっしゃる。


 するとクラウス先生が小声で私に耳打ちした。


「モーゼの杖とノアの方舟が同時に出現したという記述はなく、話半分に、というか、それくらいの意気込みで頑張るという単なる決意表明みたいなものなので、あまり気にしなくても構いません」


 なんか、クラウス先生にも気を使わせて申し訳ないな。でも、当時通訳のようで、ちょっと面白いなとも思うけれど。

 もちろん私も本当に、養母様がモーゼの杖に対抗心を燃やして、ノアの箱舟を設計し、造船なさるとか、さすがに思ってないですよ。

 にしてもクラウス先生、さすが先生だけあって、色々物知りだな。思わず感心しちゃった。


 私はとりあえず、クラウス先生に気を使わせ申し訳ない気持ちになってきたので、

「養母様にお任せ致します。皆さまとお食事するのが、とても楽しみです」

 とだけ、何とか頑張って言った。


 本来なら『養母様』のところで養父様の時と同じように、めちゃ恥ずかしがるところなんだけど、それすらも忘れてしまうほどの面白さと勢いがおありの養母様。

 そんなに恥ずかしがらなくていいんですよっていう、光の一族風気遣いなんだろうか?

 ちょっと分かりづらい気もするけど、まあ、恥ずかしがることなく言えたのは、良かったかも知れない。


 すると隣にいるお兄様が、私に声をかけて下さった。


「先ほどから弟がうるさくて申し訳ない。私はルーク。ボールドウィン侯爵家の長男で、愚弟の兄だ。そして、王立学院一年に在籍している。ソフィーもルシフェルと同じで数ヶ月後には同じ王立学院に入学すると聞いているので、分からないことがあれば、何でも尋ねて欲しい」


 と優しく微笑んでで仰った。


 基本、養父様似なんだけど、美しさも入っている気がするのはまだ少年だからなのか、それとも養母様にも似ていらっしゃるからかな?

 うう、何でも尋ねて欲しいって仰るけどさ、尋ねたくてもカッコ良すぎて、緊張して尋ねられないです! おまけに、バカが知れるのも恥ずかしくてイヤなんで、余計に尋ね渋っちゃうと思います!


 って、ああ、今の心の声は、表に出なくてホントに良かった、良かった。

 と激しく安堵していると、

「そうだな…… 私のことは、兄様、でいいだろうか?」

 と、私の顔色を伺うように仰るルーク兄様。


 いいに決まってます、こんなカッコいい人を兄様呼びできるなんて、マジで異世界万歳!

 とりあえず私は、心の声が表に出なかったことに、深く神に感謝しつつ、

「色々教えて下さいませ、ルーク兄様」

 と、めちゃ頑張って言った。


 第一関門クリアだ! ご挨拶できたよ!


 私は喜びのあまり満面の笑みを浮かべていると、ルーク兄様は少しお目々をぱちぱちされた。相変わらず金色の瞳が、キラキラと輝いて、美しい。


 ヤバい、変な奴だと思われたかも知れないな。

 心の声をを言葉にするのも良くないけど、顔に出すのも良くないな…… 。

 ただ、心の声を顔に出さないようにできる自信は、残念ながら全くないけれど……。


 私は失敗したなあって思って、しょんぼりしていると、おどけた感じで弟のルシフェルさんが、話しかけてきた。


「お前、なかなか面白いな?」

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