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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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アドリアーナ先生の特別試合、終了……

 と、そのときである。

 アドリアーナ先生は、優しく両肩にいる男子生徒に、艶やかに仰った。


「せっかくあたくしの肩を抑えてるんですもの。帯が切れるのを待たずとも、今、肩にかかる衣をずらして下さったら、もろもろ全てが露わになって……」


 そして、今までで一番の魅惑的な表情をして、吐息で囁かれた。


「……あたくし、燃えるわ」


 その妖艶な仰りようを聞いていた両肩の男子…いや、アドリアーナ先生を羽交い締めにしている男子生徒全員が、一瞬ひるみ、力が緩んだ。

 もちろんそこを見逃すアドリアーナ先生ではなかった。

 一瞬のうちに飾り帯から再び四方八方に散らかり、突進してきた男子生徒二人を瞬時に宝帯で拘束、そして、アドリアーナ先生の周りにいる六人の生徒たちも、一瞬のうちに帯でぐるぐる巻きされ、拘束された。


 ……試合終了。アドリアーナ先生の勝利である。


「はぁ~ん、今日はとても楽しく過ごせましたわ。宝帯も実践で使えそうですし、色々気持ちも高ぶって、とても満足致しました、ほほほほほ」


 そして、縛り帯状態の男子生徒たちを宝帯で一カ所に固め、正座を指せ、じっくりと観察し、


「……まあ、大丈夫そうですわね。では、勝負に負けた罰として、今日は夕方までここで、正座のまま今日の試合を妄想の中で”じぃ~っくり”と振り返るとよろしいでしょう。それまでに、今のこの高揚感、溢れんばかりの情熱的な感情を、しっかり魔力の器に落とし込み、必要あらば広げ、さらにお強くおなりなさいね。また、それでも魔力が溢れ出てしまうと仰る殿方は、あたくしと一緒にエレガンドゥード山の凱旋門に行き、たっぷり魔力奉納致しましょう。あたくし、今日もまた一段と殿方を強くして差し上げて、本当に感無量ですわ……ああ、あちらの殿方も、縛って差し上げなくてはね」


 とアドリアーナ先生は仰って、第一試合で負けて正座させられている男子生徒たちを、今宝帯でぐるぐる巻きにされている男子たちのところまで宝帯で運び、同じように宝帯で縛り上げられた。


「ではまた夕方に、あたくし迎えに参りますので」


 そう仰って、アドリアーナ先生は、男子生徒の皆さんを置き去りにし、その場から去られた。


 残された生徒たちは顔真っ赤で俯いている男子生徒もいれば、ひとりふたり、幸せの絶頂にいるような、トランス状態風の生徒もいる。

 そして皆んな、体が小刻みにプルプル震えているような気がするんだけど……。

 これは、危険なのではないだろうかと一瞬頭に過ったんだけれど、でも、慣れてるアドリアーナ先生が”大丈夫”と言って出て言ったのだから、きっとまあ、大丈夫なのだろう。


 私とクラウス先生は、なんとなく自然と顔を見合わせ、次の瞬間、大きなため息をついた。

「凄かったですね。クラウス先生から事前にお伺いはしていたものの……正直、想像以上のように、思いました……」

「はい、特に今日は、宝帯を手に入れその実戦込みの試合でしたから、いつも以上に熱の入った指導でしたね……」

「でも、男子生徒たちも健闘したのはないですか? そんな熱の入った先生相手を、一時は”あわや”というところまで追い込んでました」

「ああ……あれは、演技ですよ」

「へ!?」

「アドリアーナ先生の強さはもう半端ないのです。成人の男性ならともかく、宝帯も手に入れてますし、十四歳くらいの男子が四人で押さえたところで、力技でなんとかしようと思えばなんとかなります」

 四人ということは、帯担当の男子は羽交い絞めの人数には入ってないのか。

「あのシチュエーションを心から楽しんでいたということでしょうか……」

「はあ……まあ、そうでしょうね……『燃える』とかなんとか仰っていて……いや、その、何と申しましょうか……」

 クラウス先生は、顔を真っ赤にして、思わず口を押えられた。

 私もつられて顔真っ赤なっちゃうな。

 私たちはまたお互い顔真っ赤ながらも、何となしに顔を見合わせ、そして深い深いため息をついた。


 アドリアーナ先生と入れ違いに、ルーク兄様とルシフェルが私たちのところにやって来た。実は、いったん闘技場から退出したものの、試合が始まる直前に、また戻ってきたという。


「一応、見分のためにも、宝帯は見ておかないとと思い……」


 何だかルーク兄様、申し訳なさそうに仰る。

 そんな、罪悪感にかられなくてもいいと思います。あの試合見たら誰だって、来年、再来年がどうなるかは分からないけれど、もし万一アドリアーナ先生が担当なら、全力で参加を阻止しますもん。義妹、義姉として。


「俺は、面白いもの見たさで帰ってきたんだけど、想像以上でまあ、ちょっとビックリしたかな……」


 このルシフェルを戸惑わせるなんて、アドリアーナ先生は本当に恐るべしだな。絶対に敵に回してはならない人間だと、心しておこう。とりあえず今のところ『まあ、可愛らしいわね』くらいしか言われてないと思うんで、日々無難に過ごしていきたいと思う。


「それにしてもルーク兄様にルシフェルも、アドリアーナ先生の特別対決が危険極まりないと、よくご存じでしたね、危機一髪でしたよ? 九死に一生を得たとはこのことだと、正に思いました」

「いや、去年からさ、剣の指導を時々して頂く機会がまあ、武術を選択しているとある訳だけど、でも全員に対しておかしい訳ではないものの、やはり指導がおかしくて……。アドリアーナ先生は授業の終わりに、神体山の凱旋門に魔力奉納するのを日課にされてて、それは、特に神体山解放前のこの世界では、本当に有難いことだったんだけど、そのターゲットにされた時というのが……」

「ルーク様、申し上げ辛いでしょうから、私が代わりにお伝えいたしましょう。まあ、アドリアーナ先生は魔力奉納に丁度良さそうな男子生徒を数人ピックアップし、例の、その、お色気系剣合わせで男子生徒を圧倒し、魔力奉納に連れていかれる訳です。そのターゲットにされなければ通常の剣の稽古で済むのですが、ターゲットにされたら大変です。今日のようなことがまあ、繰り広げられるという訳です」


 ちなみに、どんな事をされるのかというと、かいつまんでお話されるのをお伺いした限りでは、今日の”帯”や”衣”が、”鎧”や”服”と代わり、「その剣で、鎧ごと服まで切っておしまいになって」とか、妙な言葉攻めも入れつつ、攻めてこられるらしい。


「その、ターゲットにされる基準って、何かあるんですか?」

「それは、俺が兄上から聞いてめっちゃ知ってる。とにかく闘志をみなぎらせたらダメなんだって。ヤル気があると思われるから。だから俺は、アドリアーナ先生の授業のときは、半分ふざけながら授業受けてる。酔剣とか」


 る、ルシフェル、それはダメだと思うよ?

 またあれかな、先生の評価より、クラスの爆笑を選ぶってやつなんかな?

 でも、ヤル気を出したらダメっていうのは、困るよね。でも、今日の特別試合見ててもアドリアーナ先生、ヤル気のある男子が好きっていう感じは、確かに出てた。

 そう言えば最初に、


『真正面から熱い思いを、あたくしに、全力をもって、ぶつけてくるのですわ! その激しさとギラついた目で、あたくしを熱くさせて!』


 とか何とか、仰っていた気がする。


「それで去年、私が受けた一番最初の授業では何の予備知識もなかったんで、とりあえず女性だしと思い、肩慣らし程度にお相手してたんだよ。でも先生、それが気に入らなかったんだろうね。私に向かって『光の一族の跡継ぎが、その程度でございますの? 期待よりもはるかに下回りますわね』と仰ってさ、だからまあ、光の一族の名誉を汚してはならないと思い、全力で向かったらさ……まあ、その……」


 ルーク兄様、それ以上はとても、口にできないご様子だった。

 でも、ルーク兄様は既に、騎士団並みの実戦レベルだと聞いたのに、その兄様を圧倒されるとは、さすが、大天使に宝帯を授けられることはあるなって思った。


「それで、その、お伺いしてもいいのかな……ルーク兄様は、魔力奉納に、連れて行かれたのでしょうか……?」

「いや、私は幸い選ばれなかった。何でもアドリアーナ先生の判断基準があるようだよ」

「どんな判断基準ですか?」

 私が尋ねると、途端にルーク兄様が顔を赤らめ、困惑し始めた。


 すると、クラウス先生が軽くため息をつき、ルーク兄様と代わられた。

「まあ、例の”攻撃”によってですね、気持ちが高まると魔力の器に魔力がいっぱいになるわけですよ。その溢れんばかりに魔力を必死に耐えたり、魔力の器を広げようと努力したり、例の”攻撃”……すなわちアドリアーナ先生を思い出しながら、プルプル震え、耐え忍んでいる男子生徒たちを見るのが、その……アドリアーナ先生の趣味のひとつと言いますか……。ですがルーク様は、そのアドリアーナ先生の基準をはるかに超えるレベルの大きな魔力の器をお持ちで、先生的には早い話つまり、物足りなかった、という訳です」


 ……なんちゅう話だ。

 ルーク兄様が難を逃れたのは、本当に幸いだったけれどさ。


 クラウス先生のお話が終わると、またルーク兄様が話を続けられた。


「そうなんだよ。私は元々魔力の器が大きいせいか、アドリアーナ先生の、その、例の”攻撃”を前にしても、溢れだすほどの魔力とはならなかったんだよね。だから、連れて行かれることはなかったよ。その点についてはアドリアーナ先生も、『さすが、光の一族と言ったところですわね。先ほどの失言は撤回させて頂きます。失礼致しましたわ』と仰られて、光の一族の面目も保たれ、本当にホッとしたよ」


 で、アドリアーナ先生は、ルーク兄様には例の”妖艶攻撃”を仕掛けても、魔力奉納に連れていけないことが分かり、それ以降は普通の剣の稽古になったそうだ。


 ルーク兄様、本当に良かったね。

 でも今回は、宝帯をゲットされたことで異常に興奮されていることが、はたから見てもよく分かったので、ルシフェルが逃げ出したのと同時に、緊急避難されたそうだ。


 ルーク兄様、賢過ぎるな。その判断は正解としか言いようがないと心から思った。


 で、一応整理してみると、アドリアーナ先生が例の”妖艶攻撃”のターゲットにしたい男子生徒の特長は、めちゃヤル気がある生徒、もしくは、魔力の器がそんなに大きすぎない生徒っていうことか。


 で、今年から一年生になったルシフェルに対しては、一応光の一族であるのはご存じなので、ルーク兄様のことが頭に過られたのか、それともルシフェルがふざけすぎてるので、相手にしてられないと思われたのか分からないけれど、ルシフェルには今のところ特に、”妖艶攻撃”を吹っ掛けて来られることは、ないそうだ。


 ルシフェルのおちゃらけも、命を救うことがあるんだなって思った。芸は身を救う、身を助けるな。

 酔剣のことも、意外と使いどころがあるんだなって、ちょっと見直しちゃったじゃん、ホント。

 もし私が万一将来お母さんになることがあったら、「小説ばっかり読んでないで、勉強しなさい」とか、安易に言うのだけは止めようと、ちょっとだけ思った。理由だけでも、まずは聞いてあげたいな、うん。


 で、今日のルシフェルはというと、やはりルーク兄様と同じく嫌な予感がして、なぜか背筋に寒気を覚え、全力で仮病使って逃げたそうだ。

 私が、「仮病を使うタイミングがバッチリです」と褒めると、


「ソフィー、仮病じゃねーよ! 背筋に悪寒が走ったんだから、立派な病気だ!」


 と、なぜか怒られた。

 きっと、次何か起こったときに、仮病を使えなくなったら大変なんで、とりあえず『悪寒は病気』ということに、しておきたいのかも知れない。

 ……まあ、この世界での病気の見立てに関しては、よく分かんないんで、反論はしないでおこうと思う。


 にしてもルシフェル、仮病の使いどころが絶妙で、ルーク兄様と同じく賢いところあるなって思った。さすが光の一族、兄様と共に先を見通す力もあるのかも知れない。素晴らし過ぎるな。


 でも、ふと思ったんだけど、魔力奉納って神の御指示がいらなかったっけ?


 私が不思議に思い、クラウス先生に尋ねてみると、

「一枚岩での魔力奉納は、他領地の祠の問題もあり、神の御指示のもと順番厳守ですが、凱旋門への間接的魔力奉納の場合は、一枚岩に比べて奉納量も効率が悪く、他領地の祠の鍵ともなりませんので、神の御指示関係なく魔力奉納して頂いて構いませんよ」

 と教えて下さった。


 そうだ、神体山解放前は、アドリアーナ先生がせっせと男子生徒たちを神体山の凱旋門に連れて行って魔力奉納し、『愛は地球を救う』ならぬ『エロは世界を救う』を実践されてたんだよね。それを今でも継続されている訳か。


 ……今でもコツコツと頑張られて、偉いなあと言うべきか、何と言うべきか、判断に困るところではあるな、うん。


 なので判断は、とりあえず当事者である男子生徒の皆さんに、お任せしておこうと思った。

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