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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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ファイフの上手なハンナ様

 名前は確か、ハンナ・フルーリー様。ピンク色のボブヘアに、オレンジ色の瞳が可愛い女子生徒だ。

 ちなみに私の闇クラスでファイフの最上級クラスに入っているのは、私とハンナ様だけだ。

 またハンナ様は、そのマケイラ様たちと一緒につるんで私を睨みつける人ではなく、他のほとんどの男子生徒のように、遠巻きに教室の隅の方でおどおどして、その教室の険悪な雰囲気に、うろたえている派でいらっしゃる。


 ハンナ様のご実家の爵位は男爵で、そもそも位が高くないので、とてもクラス内で発言力をもって何かできるほどの身分をお持ちでないのはもちろんだけど、それ以上に、お話したことないんでホント見た目だけの印象だけど、とても大人しそうで、ただひたすら厄介ごとに絡まれたりしないように、ひたすら祈っていらっしゃるタイプのように見える。


 なので私はあえて、ハンナ様には気づかないふりをする。


 唯一のクラスメートなので、まともな環境下なら話しかけに行って一緒にいるのが良いのだろうけれど、ハンナ様の性格を考えると、私が話しかけたら、とてもお困りになると思う。


 虐められるのは、私ひとりでいい。私のせいでハンナ様まで虐められるようになったら、それこそ大変だ。

 なので、ハンナ様のことはとりあえず、そっとしておくとしよう。


 それにしても、ルーク兄様のファンの女子生徒たち、思っていたより今のところ、私に対してあからさまな敵意がないのは、良かったかな。

 ……それもまあ、マケイラ様一味と同じような感じで、ルーク兄様がいらっしゃる前だから、猫被って大人しいだけとかなら、話は全然変わって来るんだけどね……。


 私が軽くため息を履くと、ルーク兄様は心配そうに、私に話かけられた。

「どうしたんだい、ソフィー? 具合でも、悪いのかい?」

「いいえ、ファイフの授業は初めてで、かつ、他学年一緒の授業も初めてなので、緊張しているんです。でも、今日の授業はルーク兄様とご一緒できるんで、とても心強いです」

 私は笑顔で答えた。まあ、事実を全部伝えたわけではないけれど、一応嘘は言ってない。初めてばかりの授業に緊張しているのも本当だし、ルーク兄様と一緒なのは、私もホント嬉しいのだ。

「ああそうだったのかい? 大丈夫だよ。ソフィーはファイフも得意だから、自信を持って授業を受けるといいよ」


 ああ、ルーク兄様の笑顔が、眩しいです……。


 私がルーク兄様の笑顔に心癒されていると、ファイフの先生がやって来られた。

 おお、ファイフの授業はクラウス先生なのか。これまたひと際安心だ。

 私が席に着くと、ルーク兄様が私の隣に座られた。

 え、兄様、お友達のところに戻らなくて大丈夫なのかな……

 私が心配で兄様に伺うと、

「男はそんな細かいこと気にしないよ。それよりここは最上級クラス、おまけに、ファイフの授業も他学年合同の授業もソフィーは初めて。そんなところにソフィーを残しては置けないので、私はソフィーのそばにいるよ」

 と仰って、微笑まれた。

 そうか、最上級クラスだから、私にはクラスメートも知り合いも、ルーク兄様以外誰もいないって思われたんだな。

 本当は、ひとりだけいるけれど、話しかけることもできないんで、私はルーク兄様の申し出を有難く受けることにした。


 それにしても『そばにいるよ』って、本当に色々心に沁みます。感謝の気持ちで涙出そうだ……あと、嬉しくもあり恥ずかしくもあるんで、顔が赤くなってしまうな……。


 そんな私の様子を見越してかどうかは分かんないけど、クラウス先生が教壇に立って少し咳ばらいを挟みつつ、お話を始められた。

 魔笛の話はファイフの家庭教師授業で教わったけれど、そのお話も含めて色々お話になる。

 魔笛の使い道は色々あって、一番主なのが魔物や悪霊などの召喚だ。自分で召喚した魔物たちは自分の手駒として使え、戦力増強に使えるという。

 他の使い道も多岐にわたっていて、召喚以外にも敵へ攻撃したり、防御結界を張ったり、亡くなられた人の魂を慰めるる、鎮魂の役割を果たすこともできるという。

 そして今日するのも、その鎮魂曲の練習だそうだ。

 これは先生に家庭教師してもらって吹けるようになってる曲なので、今日に限っては結構楽できるな。

 もちろん、ルーク兄様はもっと楽々だろうけれど。


 まずは、クラウス先生がお手本を演奏された。

 めちゃ、美しい……。

 なんて言うのかな、上手っていう言葉では表現しきれないんだよね。

 音色も、指先も、俯き加減の視線さえも全て、美しいっていう言葉がピッタリだ。

 そして、例のルーク様ファンの女子生徒の皆さんも、クラウス先生の演奏に聞き惚れている。どうやらあの女子生徒の皆さまは、最上級のイケメンならOKなようだ。

 気持ち、めちゃ分かるよ。私もめっちゃ、ボールドウィン侯爵家にいるときは、クラウス先生に見惚れて、ルーク兄様に見惚れて、ルシフェルに限っては見惚れるのと大笑いするのと半々だけど、でもとにかくめちゃ隙あらば見惚れてる、私。

 まあ、あの様子を見ると、私がルーク兄様の妹だからと言って、特に嫌がらせまでされることはなさそうだと、今のところは判断しておいた。

 私の判断、間違ってなければいいな。


 クラウス先生の模範演奏のあとは、生徒各自練習する時間をしばらく与えられたので、私はルーク兄様と少し談笑を交えながら練習していると、クラウス先生が様子を伺いの来られた。

「調子はどうですか?」

「先生に教えて頂いたところなので、問題ありません」

「私も、ルーク兄様と同じく問題ありません」

 私たちは、笑顔で語り合った。


 で、話の流れで最上クラスの課題の話になり、最上級クラスになると、さすがに題材が、魔法に関する曲目ばかりになっちゃうんだなって思った。

 一番最初にクラウス先生にファイフの授業を受けたとき、ちょうちょみたいな曲だったんだよね。

 そのときに習ったお話では、ファイフは、魔術具である魔笛と、普通に音楽を楽しむ楽器のファイフもあるので、最初のうちは、魔法とは全然関係ない曲ばかり練習していた。なので、とっつきやすくて楽しかったの覚えている。

 とは言っても、今日のレクイエムなんかもめちゃ名曲で、クラウス先生やルーク兄様の演奏を聞いて、じーんと来たり、私自身も楽しく練習しているんだけど、何て言うか魔法って言うと若干お勉強感が増すので、楽器として楽しむほうの曲目も、時々入れて欲しいなって、ちょっと思っちゃうな。

 私が最初ファイフの勉強をしていたときのように、今初級にいる生徒たちが習っているのも、魔法とは関係ない古くから伝わる童謡や民謡のような曲なんだけど、ああいう曲も、なかなか味があって好きなんだよね、ホント。

 そういえば前世で小学生のころ、音楽の時間で習った日本の昔の曲だと思い込んでた曲が、ドイツ民謡とかスコットランド民謡とかだったことを思い出し、そういう曲も時々してみたいな、どの曲もホント名曲だったよねって、思わず懐かしく思い出してしまった。

 どちらも練習して美味しいとこどりっていうのが、私の理想かな?

 でも、必要に迫られてるのは実戦で使える魔法のほうだっていうことくらいは、私にも分かってるんだけどね。


 ちなみに音楽室で演奏するのは楽器のほうのファイフで、魔法を発動させないようにしている。そして、先生から音楽室での合格を頂いたら、魔法訓練施設で実際に魔笛を使用し、魔術の練習をするという。

 クラウス先生の家庭教師の授業のときは、楽器ファイフの練習のみだったので、魔笛ファイフを使ったほうも、今後するのかな?

 楽しみなような、怖いようなだけど、クラウス先生とルーク兄様がいて下さるなら、大丈夫に違いない。一所懸命頑張ろうと思う。


 にしても、ルシフェルも一緒だと、なお良かったのに……


 とチラッとルシフェルが頭に過ると、とてもタイミングよくクラウス先生がルシフェルの、レベル分けテストの時のお話をされ始めた。

「そうそうルシフェル様ですが、レベル分けの時に、やはり例の”超絶技巧”を披露され、本来ならばルシフェル様は、ルーク様、ソフィー様と同じく最上級クラスに入る実力はおありでしたが、レベルよりも、クラス中の爆笑を選択され、上級クラスに参られました」

 ほら、やっぱり思ってた通りだ。

 でも、そんなネタを最初に披露しても、一応上級クラスには入れるんだから、そこはやっぱり流石だなって思った。

「来年はルシフェルと同じ最上級クラスになれるといいんですが……ルシフェルの性格を考えると、ちょっと、心配ですね」

「レベルよりもクラスの爆笑を選択するとなると、今度はもっと違う”仕込み”入れてきそうだよ、ルシフェルなら」

 ルーク兄様が、”困ったやつだからなあ”みたいな表情をされつつ、苦笑いされる。


 にしても”仕込み”、か。そう言えばバラエティか何かで見たことある気がする。


「ひょっとしたらファイフの中に、紙吹雪を”仕込み”として、入れておくかもしれませんね?」

「そして、吹くと同時に紙吹雪が教室中に散るのですか? ルシフェル様ならありえますね」

「しまいには、紙吹雪がクラウス先生の片眼鏡に張り付いて、視界を奪う、新手の”攻撃魔法”とか、言い出しそうだよね、ルシフェルなら」


 私たちは、本当はすっごく大笑いしたかったのだけど、さすがにみんながファイフの練習している中で、大爆笑はできないんで、笛の音に紛れるれ程度に笑いあった。

 それにしても、ルシフェルの存在感はスゴイな。

 この場にいなくても、爆笑をさらってるよ、ルシフェル。

 しかも、ルシフェルを念頭に置いただけで、皆んなこんなにも愉快系の発想力が豊かになって、本当に面白い。これもきっと、養母様流、光の一族の教育の賜物だろう。

 すごく素晴らしいことだな、うん。


 そう言えば、眼鏡でとか魔法とかで、ふと頭に過ったけど、クラウス先生って片眼鏡外されないのかな?

 この世界じゃ視力強化の魔法もあるし、クラウス先生ほど魔法の達人なら、片眼鏡を外すなんて、わけないと思うんだけど。

 先日の、世界遺産レベルのカッコ良すぎる剣の稽古のときは、片眼鏡外されてたし……。

 ちょっと先生に、お尋ねしてみよう。良い機会だし。

「クラウス先生、ルシフェルの”紙吹雪ナンチャッテ目くらまし攻撃魔法”の対抗策として、予め片眼鏡を外されたりはしないんですか?」

 すると、先生は何故か私を一瞬だけじっと見て、その後フッと笑われた。

「まあ、ルシフェル様のナンチャッテ攻撃魔法はさておき……そうですね、いつかソフィー様の前で、片眼鏡を外せるときが来ればいいなと思います」

 と、優しく微笑まれた。

 ……全く意味が、分からない。

 ルーク兄様なら何か意味が分かるのかなっと思い、兄様のほうを見てみたけど、首を傾げていらっしゃる。

 ……まあ恐らく、王様の命令か、王族に関する何かの理由で、片眼鏡を今は、外せないのかもなって思った。

 まさか、私がルーク兄様やルシフェル並みに剣が上達し、剣の稽古をするならば、その時は片眼鏡外しますよ的な、そんな無謀極まりない前振りではないと思う。

 さすがにね、うん。それはないな。

 なのでやっぱり私には、その理由がさっぱり思いつかないけれど、でも、クラウス先生の仰りようでは、いつかは見れるっぽいのかな?

 ぜひそのときを、心待ちにしていようと思う。


 クラウス先生は謎に優しく微笑まれたあと、他の生徒を見に回られた。

 そんな中、とても美しいファイフの音色が聞こえた。他の生徒もファイフを吹いているのに、何故だろう? その音色だけ、耳にスッと入って来る。他のファイフの音色が、ただの環境音に聞こえてしまう感じだ。

 私はふと、その音色のする方向を見ると、そこにいらっしゃるのは、ハンナ様だった。

 もう、練習する必要ないっていうくらい、本当にお上手で、美しく、曲目がレクイエムなだけに、私の魂も洗われるようだ。

 でも、あんまりじろじろ見て練習の邪魔をしてはいけないので、一瞬見ただけで、すぐ私は自分の楽譜に目をやった。でも耳は、全力でハンナ様のファイフの音色に向いていたのだけれど。


 しばらくするとルーク兄様がまたファイフを吹き始められたので、その美しい音色は聞こえなくなってしまったけれど、その音色は、どこのプロが演奏しているのかと思うような情緒ある音色で、本当に聞き惚れてしまった。

 私はまだ死んでないけど、私の魂の鎮魂には、ハンナ様を名指ししたいレベルだ。

 きっと心安らかに、あの世へ旅立てると思う。

 また、魔笛は浄化作用のある音色を出すと、悪霊を倒すことができるので、このハンナ様の音色を聞いて、いったいどれほどの悪霊が、音色にうっとりしながら死んでいくのだろうって思わず妄想しちゃった。

 ……いや、うっとりするのは私が悪霊ではないからで、悪霊からすればあの音色は、不快指数MAXなんだろうか?

 分からないけれど、あの音色を不快指数MAXに感じるくらいなら、私、悪霊には絶対になりたくないな。私が死後成仏できるように、心からお祈りしようと思う。何にも心残りなく死ねるように、ひたすら願うばかりだ。

 それにしても、ハンナ様か……。

 本当は、ファイフ吹いてるところ見たいけど、話しかけて何か一曲演奏してもらいたいけれど、それができないのが本当にもどかしいなと、思った。

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