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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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七大天使ハニエルと聖具

 私は、闇の気持ちが膨らんで魔力が膨れ上がり、魔力の器がはち切れそうになるんだけど、でも凄まじいほどの早い処理速度で魔力エネルギーに変換、そして、一気に力を込めて一枚岩に魔力奉納する。

 すると、さっきまで一枚岩には貪汚たんおの瘴気だらけで、光といえばモーゼの杖の光だけだったけど、モーゼの杖を中心として、徐々に光が円形に広がっていく。

 その光る円には魔法陣が描かれていて、光が徐々に広がっていくにつれ、その魔法陣の全貌が明らかになっていく。そして、光が徐々に広がっていくのと同時に、アスモダイの酷すぎる思念も、徐々に外へと追いやられていく。

 遠くの方で「ここまでの絶望を与えたのに。これほど腐の思念を抱えて貪汚落ちしない人間は始めてた」と悔しがるアスモダイの声が聞こえた気がした。そして

「お前が男だったら、貪汚に落とすのは簡単だったのに……」

 アスモダイの声は、最後まで聞き取れなかった。


 男だったら何だって言うんだろう。悪魔に乗っ取られた女たちをたくさんあてがって、ハーレム状態からの我慢させて性欲発狂貪汚落ちでも狙ったのだろうか?

 正直、人によると思うけどね。

 男尊女卑思想が強い男性なら、女性をひとりの人間と見ず、性欲処理としてしか見れないんで、欲にまみれて貪汚落ちするかも知れないけど、特にこの世界に男性なんかは、私の周りに限るけれど、そんな思想の人は今のところ見たことがないし、また誰でも女性をひとりの人間として見ることができるならば、ハーレムで貪汚落ちとかならないと思うんだけどな。


 はっきり言って、貪汚落ちするのは、今日の忌まわしい思念に出て来たような男だけだよね、きっと。

 アスモダイの声が掻き消えたところで、円状に広がっていた光がさらに広がり、光が一枚岩全てを光で覆うと、一枚岩上面いっぱいに出現した魔法陣が、ピカって光って発動、私は一瞬驚いて、辺りを見ると光りながら、イラエ山の時と同様に上にあがっていく。そして大空に広がって、金色の光の祝福となり、大地に降り注いだ。


 ああ、イラエ山のときと同じだ……やっと、終わった、やっと……


 私は激しい脱力感に見舞われ、思わずその場にペタンと座り込んだ。一気に緊張感から解放され、涙がぽろぽろと溢れて、溢れて止まらない。

 そして、金粉のように降り注ぐ祝福が、神体山を魔力で満たし、それと同時に、その祝福により、辺りにいる魔物たちが全部跡形もなく消えていく様子を、涙滲む視界で、ぼんやりと眺めていた。

 皆んなの歓声もあがる。


 ……そうだ、私たち、助かったんだ……


 心からホッとして、安堵の波が押し寄せてくる。目をぎゅって閉じたら、さらに涙が頬に零れた。

 すると突然、ウリエルではない別の天使が現れた。

 めちゃ神々しい光を放っているんで、驚いて目を開けて、ぱちぱちして、よく見てみると、大きな翼、天使の輪、古代ローマの人ふうの装いなのは大天使ウリエルと似ているけれど、ウリエルと違うなと思ったところは、ウリエルはもっとこう中性的なイメージなんだけど、目の前にいる天使はもっとこう女性的で、髪も長く、ふんわりと風になびかせていた。


 天使は、私に優しく微笑んで言った。

「私の名はハニエル。美と優雅を司る大天使です」

 ハニエル……七大天使の一人だ。

「イラエ山に続きエレガンドゥード山も解放して頂きありがとうございます。こちらでもイラエ山同様、魔力奉納が可能になります。そして神体山だけでなく、ゆくゆくは世界全体を魔力で満たすことができるでしょう。しかし、その道のりは未だ遠いです。悪魔に乗っ取られた山が、あと五つあります。まずは、七つの神体山解放のため、引き続き尽力頂けますよう、よろしくお願い致します」

 大天使ハニエルは、美と優雅を司る大天使だからか分かんないけど、なんかめちゃ物腰やわらかだ。

 やっぱ天使って、美しいなあ……

 と、感嘆のため息をついていると、大天使ハニエルは、天女の羽衣のように見える帯を、ふわっと出現させた。天使の羽根があるのに、天女のようにも見える。

「これは聖具のひとつ、宝帯です。この宝帯は、あちらの女性に適性があるようです」

 そう言ってハニエルは、上空にふわりと舞い上がり、アドリアーナ先生のところに飛んでいった。そして、上空からアドリアーナ先生に、ふわりと宝帯をかける。

 アドリアーナ先生はと言うと、めっちゃ驚愕してて、目をぱちぱちさせながら、宝帯を見ている。

 まあ、そりゃそうだろう。おそらくアドリアーナ先生には、大天使ハニエルのことは見えてないと思うので、突然上空にめちゃ美しい帯が現れたかと思うと、自分のところに空から降って来るんで、そりゃあ、たまげると思うな。

「きっと役に立つでしょう。全ては神の御導きのままに……」

 そう言って、大天使ハニエルは消えていった。


 と同時に、ウルルが一枚岩からぴょんと、私の前に現れた。

「ソフィー! ありがとう!!」

 と言って、私のところに飛び込んでくる。私はウルルを抱きとめた。

「ウルル、こっちでも会えたね、少しだけ、約束果たせたよ?」

 私は、ウルルを抱きしめながらゆっくりと立ち上がり、ナデナデしていると、クラウス先生はじめ、ルーク兄様、ルシフェル、そして養父様が私のところへ駆けてきて下さった。


「ソフィー様、無事に終わりましたね。本当に、お見事でございました」

「ソフィー、大丈夫かい? 怪我はないかい?」

「さっきの、めっちゃブワーってした光、ちょースゲーじゃん? それも、モーゼの杖??」

「神体山をまたひとつ解放してくれて、心より感謝する。父として、誇りに思うぞ」

 などと、皆んな次々に私に声をかけて下さる。


 皆んなの顔を見ると、ホントほっとしてきちゃって、また視界が涙で滲んじゃうよ……。

 怖かったよ、皆んな、たったひとりで本当に怖かった、めちゃ心細いし、いっぱい酷いの見せられて、聞かされて、悪魔もめちゃ恐ろしくて、本当に怖かったよ……!


 私は皆んなに囲まれて、肩をぽんぽんされたり、背中ぽんぽんされたり、頭ぽんぽんされたりしつつ、皆んなの声かけに、笑顔で応えた。

「ご心配をおかけしました、私は大丈夫です。皆さまが魔物を退治してくれたおかげで、私は神体山解放に集中することができました。本当にありがとうございます」

「そんなことは、当然のことです。ソフィー様の補佐をするのが、我々の責務ですから」

「まあ、魔物も結構、俺的に余裕だったかな?」

「ルシフェル、調子に乗るんじゃない」

「そうだ、ルークに言う通りだ。次の神体山が同じように行くとは限らない。くれぐれも油断しないように」

 などと、各々お話してらっしゃる。いつもの見慣れた光景に、私は本当にほっとして、やっぱり涙、滲んじゃうな。


 すると、アドリアーナ先生も、私たちのところへやって来られた。

「ソフィー様、何かご存じかしら? あたくし、このような素晴らしいものを、賜りましたのですけれど」

 やっぱり、アドリアーナ先生には、大天使ハニエルのことは見えてなかったみたいだ。

 早速腰に巻いていらして、めちゃ美しい。

 私は、ハニエルに告げられたことをアドリアーナ先生に告げた。

「大天使ハニエルが、アドリアーナ先生に適性があるって言ってましたよ」

「まあ! あたくしに適性が? それは素晴らしいですわね」

 早速アドリアーナ先生は、ヒノキに向けて、宝帯をビュッと投げた。

 一枚岩から、山頂の一番端であるヒノキまでの距離は結構あるんだけど、余裕で届いただけでなく、ヒノキを数本、バサバサバサっと勢いよく倒してしまった。

 私は驚いてみていると、

「まあ、いくつか倒れてしまいましたわ。王立学院に持ち帰り、素材のひとつとしましょう。貴重なヒノキですもの、学生たちも、きっと喜びますわ」

 そう仰りながらまた宝帯をビュッと投げると、数本どころか十本以上あるヒノキを、一瞬のうちに引き寄せた。

「これはまあ、便利ですわね。荷物運びにも重宝致しますわ」

 私たちはアドリアーナ先生の仰りように度肝を抜かされ、クラウス先生はというと、また、

「貴重な聖具を素材運びの道具として扱うなど……」

 と、人差し指をこめかみにあてて、ぎゅーっと押されていた。おそらく、頭痛がするんだろう。

 でも、ルシフェルただひとりだけは、

「それいいじゃん! ついでに俺も、運んで下さい!」

 とか言って、丸太にでも擬態したつもりなのか、背筋ピーンとして両手まで天に伸ばしている。お目々キラキラさせて。

 いつもの日常、いつものルシフェル、私は思わずクスっとなって、笑みがこぼれた。


 皆んながルシフェルに盛大にツッコミを入れていると、エイデン先生もこちらにやって来られた。

「いやあソフィー君、素晴らしかった! 空にきらめく祝福は、光輝く星のようで、星のように輝く夢を、ひとつひとつ数えてみたくなったな! 実に、青春だ!!」

 え、エイデン先生も、ルシフェル同様、通常運転だな……って、あ、今日、初対面だったっけ?エイデン先生……

 ま、まあ、きっといつもこんな感じであるということは、手に取るように分かるな、うん。

 でも、相変わらず仰ってることは意味不明なんだけど、案外仰ること、ロマンチックなところもあおりなんだなって、ちょっと思った。夕日に向かって走るより、星のように輝く夢を、ひとつひとつ数えるほうが、全然いいと思う。

 ちなみに今は、夕暮れ時ではないよね、よし。

 私はお天気を確認し、心の中でガッツポーズをした。


 で、日が暮れる前に、早く帰宅しなければならないなって思っていると、クラウス先生が、

「作戦は無事終了した! 帰還する!」

 と、いつもと違う感じで凛々しく、めちゃカッコ良く神体山解放に参加されてる皆さまに仰ったのち、私たちは帰ることとなった。


 山を下りるとき、山道に入るや否や、ルシフェルは、行きがけにあった透明防御結界があると思い込んでいたのか、それともないの分かってて冗談でしたのか分かんないけど、突然山道端のヒノキ林に突っ込んで、「いててててっ!」とかやってる。

 ……

 ここは、戦いの後だというのに、まだまだ元気で良かった、良かったと、喜ぶべきところだろうか?

 ルーク兄様はすぐさまルシフェルを助けに行って「しょうがない奴だなあ」と仰りながら、ヒールをかけていらっしゃる。ちょっと思わず微笑ましく見てしまうな……


 私はクラウス先生の隣を歩きながら山を下りている。行きがけは魔物が怖かったんで、ひたすら前を見てたけど、今は心の余裕を持って、辺りを見ながら下山する。

 神体山の作りって、けっこう似てるなって思った。

 まあ、生息する木々もヒノキとハスノハグサ、あとは雑草くらいだし、似てるのも当たり前か。

 そんなことを考えながら、ぼんやり歩いていると、

「ソフィー様、お疲れのところ大変申し訳ありませんが、少しお話しても、大丈夫ですか?」

 と、クラウス先生が声をかけられた。私はもちろん、快諾する。


 なんでも仰るには、王立学院が始まる前だと、ボールドウィン侯爵家の家庭教師のときに色々聞けるから、今ここで質問しようという気にはならなかったんだけど、王立学院がまさに今日から始まってしまったので、前ほど自由に時間を取りづらくなったので、できれば今、質問したいという。

 もしくは私が疲れているようだったら、瞬間移動で下山し、ショートカットした時間を質問時間に充ててもいいのだけど、どうしますか? と、私に質問された。

「皆さまと一緒に帰還しているので、皆さまと一緒のほうがいいです。特に私が重傷を負ったというわけではありませんので」

 と笑顔で言うと、クラウス先生は笑顔で頷かれた。


「今回は、七大悪魔は現れたのでしょうか?」

「はい、色欲の七大悪魔、アスモダイって名乗ってました。でも、本体は出て来なくて、声だけでした」

「……ソフィー様は、七大悪魔と対峙されていたのですね? 本体ではないとはいえ、たったひとりで、よくぞご無事で……。本当に、素晴らしい偉業です……大丈夫でしたか?」

 その、大丈夫には、大丈夫なんですけど……。

 私は、ちょっと内容が内容だけに、細かいことを口にするのは、とてもはばかられて言えなかったけれど、貪汚落ちを狙った、凄惨極まりない思念をいくつも見せられ、聞かされ、アスモダイにも唆されたことを、かいつまんで話をした。

 めちゃ凄惨で、女性を虫けらのようにしか扱っていない思念は、思い出すだけでも恐ろしくて、端折って話してても、思わず涙ぐんでしまった。

 クラウス先生は、手がピクって一瞬動いたんだけど、次の瞬間、ぎゅっと強く、握られた。


「本当なら、お助けしたい気持ちでいっぱいですが、お役に立てず、申し訳ありません……」


 そう仰って、軽くため息を吐かれた。

 違う、私はクラウス先生に謝って欲しくて、事の詳細を伝えたんじゃない。

「いえ、私は皆さまのお役に立てて、とても嬉しいです。だから、謝らないで下さい。これからも、頑張ります……でも、時には今みたいに、グチらせて下さると嬉しいです」

 私は涙目だけど精一杯、笑顔で言った。

 すると、クラウス先生も、笑顔で応えて下さった。

「ソフィー様の愚痴は、年中私、受け付けております。お話聞くくらいしかできない私ですが、いつでもお待ちしております」

 クラウス先生、微笑みが相変わらず、眩しいです。

 心の栄養が、じわじわ補充されているのを体感しつつ、私はさらに、話をつづけた。

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