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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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クラウス先生オリジナルの特製魔法陣

 夜の神体山へ蛍を皆んなで見に行った次の日、いつも通りクラウス先生の授業があったんだけど、クラウス先生はお約束通り張り切って、『ライト』と『サイレント』が一緒に発動されるという魔法陣を作成して来られた。


 で、昨日、私がウルルとお話しているときに、神体山の調査ついでに少しヒノキも採取していたらしく、早速ヒノキで魔石を作られて、紙に記された魔法陣と一緒に見せてくれた。

 魔法陣は、正直どれを見たってほぼおんなじにしか見えない。まあ、これがクラウス先生の力作、『ライト』と『サイレント』が一緒に発動されるオリジナル魔法陣なのだろう。


 ヒノキの魔石は初めて見た。緑色がとても綺麗で、宝石のエメラルドみたいだ。

 ちなみに、ヒノキの魔石自体に様々な魔法効果があるって前に仰ってたけど、今回の『ライト』と『サイレント』合作魔法陣には何の関係もないので、割愛すると仰った。っていうか、その説明は正直どーでもいいって感じ満載だ。

 なんか若干とげとげしいような気もするんだけど、気のせいかな?


 魔法陣は、一応紙に写して来られたんだけど、それは私に見せるためにそうしただけであって、通常は紙に移さなくても、直接魔石に刻み込むだけで、こと足りるらしい。

 で、私が魔法陣を確認したあと、もう必要ないとかでパッと無詠唱魔法で一瞬で燃やされ、宙に同じ魔法陣を浮かび上がらせ、魔石サイズに縮小、その魔法陣を魔石に刻まれた。

 ほほう、魔石への魔法陣付与はあのようにするのか。


 ドミやメイドさんたちは、時々魔石を使っている。私がよく見るのは、魔石でお風呂を沸かしているところだ。沸かすといっても、浴槽に魔石を、定位置のくぼみっぽいところに入れたら勝手にお湯がはれるっていう、超簡単なやつだけど。

 魔石に魔法陣を付与したら、魔力を持たない平民にも使えるので、とても便利だと思う。


 そして、魔石が一瞬ピカって光り、魔法陣付きの魔石は完成した。

 私が見た分には、さっき見た魔石とたいして変わりはない。まあ、同じ魔石だしね。でも、見る人がちゃんと見ると、魔法陣が付与されてること、そして、どんな魔法陣なのかということも、ちゃんと分かるそうだ。

 私は今、魔法陣を使っての魔法を習ってはいるけれど、この魔法はこの魔法陣って感じで、特に魔法陣の、高度な数学が必要な複雑な構成とかは全く分からないので、まあ、理解できないのは仕方ないかな。

 私が魔法を使う感覚は、文法とか全然理解してなくても言葉は喋れるみたいな、そんな感覚に近いと思う。


 なんか、最初から使えたんだよね。

 クラウス先生も一番最初神体山でお会いしたとき、私が無詠唱で暖かくなる魔法、『カリドゥム』使ってたの見て、驚いてらしたもん。っていうか、そのときは『カリドゥム』っていう詠唱の呪文すら知らなかったし。後で魔法の授業で習って知ったんだけどさ。まあ、それもこれもきっと、モーゼの杖のおかげなんじゃないかなって思っている。


 そしてクラウス先生は、ただのキレイな魔石にしか見えない魔法陣付きの魔石を私に握らせた。

 すると、私が握っている指の隙間から光が漏れ始めた。そして、だんだんと強くなっていく。緑色の光がとてもキレイだ。

 それにしても結構強い光だよ? 握ってる手がめちゃ緑色に見えて、何か害があるのか心配になっちゃうけど、特に手が痛いとか、そういうのはない。本当に光りだけだ。身に着けると、人肌くらいで発光するように設定されてるみたい。


 そしてその”人肌の温度”が、魔法『ライト』と『サイレント』、同時発動の合図だと、クラウス先生は教えてくれた。

 おお、そのようなことになっているのか!

 私は、感嘆の声をあげようとすると、なんと、声が全く出ない。一生懸命喋ろうとしてるのに、全く声にならない。ひたすら口をパクパクしているだけだ。私はめちゃ困った表情で口をパクパクさせつつクラウス先生を見ると、先生は、なんだか勝ち誇った表情で私を見ている。

 おお、これこそがまさに、『ライト』と『サイレント』の合作魔法なんですね!

 私は喋れないので、とりあえずめちゃ笑顔で拍手喝采しといた。魔石握ってるから片手グーなんで、音にはなってないけどね。図らずとも拍手まで、サイレントになってしまったな。ま、どうでもいいけど。


「これくらいは、容易いことです」


 自信たっぷりのクラウス先生、私の手から魔石を取った。すると、私はすぐさま喋れるようになった。

「クラウス先生、スゴイです! 自作なんですよね?」

「もちろんです。そもそも、『ライト』と『サイレント』を一緒の魔法陣に組み込むというニーズが、ありませんから。誰も作ったことないと思いますよ」


 まあ、それもそうか。

 辺りを明るくして、話せなくするって、そもそもどんなシチュエーションで必要なのか、あんまり想像できない。

 にしても自作ということは、例の高度な数学知識を駆使して魔法陣を作られたことになる。しかも、ひと晩で。優秀過ぎるにもほどがあるなって、めちゃ思った。


「実は午前の授業でルーク様とルシフェル様にもご覧頂いたのですが、ソフィー様と同じように驚いていらっしゃいましたよ。ルーク様は魔法陣の詳細に興味がおありのようで真剣に魔石をご覧になってらっしゃいましたが、ルシフェル様はというと、『サイレント』と『ライト』が合わさった魔法なんで、『サイライト』っていう新しい名前、つけてやろうか? などと、新たな魔法陣の命名に心血を注いていらっしゃいました」

 とクラウス先生は、クスクスと笑いながら仰った。


 る、ルシフェル、相変わらず着目点が奇想天外だな。なんかしまいには、自分で『サイライト』とか唱えて、めっちゃ皆んなに攻撃性のない光を浴びせつつ、沈黙させてそう。人を驚かすの、ルシフェル好きだもんね。で、『サイレント』かかってるから驚きの声も上げられないし、みんな口パクパクしちゃうし、それ見て指差して、大笑いしてそう。


 でもそうか、そういう時のためにも、無詠唱で魔法を使えるようにしといたほうがいいのか。

 先日は、時間短縮のために、みたいなお話お伺いしたけど、『サイレント』の対抗手段として無詠唱魔法、練習しといたほうがいいな。

 ルシフェルがホントに『サイライト』とか言って遊びだすかは分かんないけど、あのルシフェルのこと、その危険性が一ミリもないとは全く言えないので、準備しといたほうが良さそうだ。魔石だったら手から離せば魔法は解けると思うけど、ルシフェルが魔法をかけるとなると、そういうわけにはいかないもんね。


 で、無詠唱で『ディスペル』か。『ディスペル』まだ習ってない。無属性魔法だからだと思うけど……。

 私は闇属性のほうが全然得意で、魔法も今のところスイスイと覚えてしまうタイプだ。

 他の光属性や無属性みたいにしっかり集中しなくても、初めての魔法でも、ちょっと意識すればすぐイメージ膨らんで、割と簡単になんていうか、ちょっと望めばできてしまうところがあるんだよね。だからどうしても、闇属性の魔法ばっかり学んじゃうという。

 どうしてかっていうと、一応魔力持ってる貴族の皆さまはそれぞれ適正があるので、光属性が得意なのに、無理に闇属性を覚えるとかはされない。もし覚えたいのなら、後天的にも魔力は伸ばせるので、まずは覚えたいほうの属性の魔力を伸ばしてから挑むということになる。それでもまあ、生まれ持っての才能もあり、努力ではどうにもならない部分もあるのだけど。

 とまあそんな感じで、私はやっぱり闇属性の魔法を多く学んでしまうというわけなのだ。


 でも、最近はこのボールドウィン侯爵家に養女に来たおかげ&おそらく大天使ウリエルのおかげもあり、光属性もぼちぼち学んでるんだけどね。

 無属性も、光属性と同じ感じでぼちぼちだ。無属性にも簡単なものから、適性がないと難しい『ミコモーヴェレ』みたいな魔法もあるんで、手探りで少しずつなのだと思う。

 ちなみに『ミコモーヴェレ』は、以前私が瀕死の重症を負ったとき、クラウス先生が私を運ぶために使われた瞬間移動魔法だ。


 まあ、魔法の習得に関しては素人の私が口出しもできないし、今に不満があるわけでもないんで、これからもクラウス先生にお任せしたい。

 ただ、『ディスペル』だけは、早急に覚えておきたいな。今、猛烈にそう思った。

 ちょっと先生にお願いしてみるとしよう。


「ルシフェルのそのような行動は、極めて日常的な光景のように思います。全ての事柄が目に浮かぶようですよ。つきましては私、ぜひとも『ディスペル』をマスターしておきたいです」

「……話の流れが少々分かりにくいのですが、確かに『ディスペル』はそろそろ覚えておいたほうが良いですね。承知いたしました」

 と、笑顔で快諾して下さった。

 でも、覚えるだけでなく、それを無詠唱で使えるようにならないとダメなんで、道のりは遠いかもしれないけれど、とりあえずまあ、ルシフェルのイタズラに対抗するために、ちょっとがんばろっと。


「ちなみにルシフェルは、『サイレント』は使えるのですか?」

「はい、もうマスターされてますよ。どうしてですか?」

 そうか、やっぱりもうマスターしてるんだな。ちょっと残念だ。

 ところでルシフェルが、『サイレント』でイタズラが可能かどうか、知っておきたいっていう本音は、言ってもいいのかな?

 とりま良く分かんないんで、適当に誤魔化そう。


「私、ちょっと思ったんですけど、なんていうかルシフェルは、突拍子のない発想でいつも人を驚かせ、無言にさせてしまうので、『サイレント』を使う必要そもそもないから、習得しなくてもいいんじゃないかなあ、なんて、ちょっと頭に過りました。あはは」


 って、苦し紛れに笑ってみた。

 すると、クラウス先生は一度きょとんとされて、次の瞬間、クックックって片手丸めて口に充て、笑われた。


「それは確かに言えてますね。私も呆気に取られて言葉を失ったり、呆然としたこと、度々ございます。ルシフェル様は確かに、魔法要らずですね」


 本当にそうよ。ルシフェルはマジ魔法要らず。あんなに剣も立つんだから、そもそも魔法必要ないよね。クラウス先生いいこと言うな。

 今日ルシフェル会ったら、「剣も立つしスゴイね、魔法要らずだね」ってめちゃ褒めちぎって、私が『ディスペル』無詠唱で使えるようになるまで、極力魔法に意識を向けさせないように、超努力しよう。


 そして、ひと通り笑い終わったあと、クラウス先生は真剣な表情になられて、昨日仰ってた、”モーゼの杖所持者は王族同等”の話をこんこんとされた。

 その話をするに辺り、モーゼの杖は七つの聖具の中でも最も重要とか、そのモーゼの杖を授けたのは天使でも位の高い大天使ウリエルだとか、以前に教わったことを再度繰り返し、「ご自身の置かれている立場を、しっかりと認識して下さい」と、厳しめの口調で仰りつつ、半ばお説教みたいなお話が、延々と続いた。


 ただ、この話は貴族の方々にはあまり知られていないという。そう言えばルーク兄様やルシフェルも知らなかったもんね。なんでも『神の御意思』関係なく、王様が特にそのように思っていらっしゃるらしい。

 自分ができなかったことを、モーゼの杖所持者がしてくれた。

 そんな思いが王様にはおありなのだそうだ。


 王様って、イメージ的にはもっとこう威張ってそうな感じなんだけど、お話聞く限りでは、『神託の間』で『神の御意思』に日々耳を傾けられ、こんな平民貧民街出身の私をそんな風に思って下さっているだなんて、随分謙虚でいらっしゃると、ちょっと驚いてしまった。

 ひょっとするとその謙虚さは、この世界存亡の危機に直面し、無力を感じたからこそのお気持ちなのかも知れないけれど、正直どこでも傲慢なやつはいるし、自分で何とかならないなら、自分もろとも人類道ずれにして、世界が滅べばいい的な、破壊的、破滅的思想を持つトップとかも、時々いるよね。前世でそんなアニメとか見たもん。


 でも、この世界の王様はそうじゃないみたい。

 都合のいいところばっかり見て、イヤなことは見て見ぬふりする的なことはせず、事実を直視し受け入れる度量のある、器の大きい方なんだなって思って、ちょっと尊敬の念が増してしまった。

 これほど優秀なクラウス先生が、真摯な気持ちで王様にお仕えするの、本当によく分かる。


 それでもやっぱり、”王族同等”はあまりに仰々し過ぎるし、それでなくても平民出身なのにいきなり”王族同等”とか悪目立ちしそうな気もして、本当はやめて欲しいとは思う。でも、そんなこと言ったら、クラウス先生のこんこんとしたお話が倍の時間になっても大変だし、さらに『ご自覚がなさすぎます!』などとお叱りを受けかねないんで、とてもそんなこと言えないんだけれど。


 でもまあ、今までは私に親切にして下さった皆さまのために、世界を救うお手伝いっていうか、とにかく頑張ろうっていつも思ってるけど、王様もそのようなステキなお方で、この世界を救うために頑張っていらっしゃるのなら、私も少しでもお力になりたいなって、さらに思っちゃった。

 まあ、なんていうか、自分のことを大切に思って下さっていると分かったので、ヤル気が出てきたと言ったほうが、てっとり早いかも知れないけどね。

 そんなこんなでクラウス先生のお小言……いや授業を小一時間ほど受けたあと、今日の授業はお終いとなった。

 なんか、どことなくスッキリされたお顔をされている。自作魔法陣にお小言……いや授業、いつも以上に達成感がおありのようだ。なんでかは良く分かんないけど。まあ、充実した一日をお送りになられたんだったら、とても良かったなって思った。



 それから目まぐるしく日々は過ぎていって、王立学院への入学のための勉強だけでなく、制服の採寸など、様々な準備をこなしつつ、いよいよ王立学院、入学の時期となった。

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