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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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「蛍が光る理由は、コミュニケーションをとるためといわれています。特に、メスにプロポーズするときのオスの光は、とても強いものになるんですよ」

「それは知りませんでした。今日はどれくらいのプロポーズが見られるのでしょうか、とても楽しみですね」


 私は先生のお話を聞きながら、手をテキパキ動かして、シロツメクサで花冠を作りつつ、お返事したりしている。

「たくさんのカップルが成立すると、いいですね」

 と仰るのはルーク兄様。蛍たちの恋愛成就も望まれるなんて、本当にお心優しいなあって思っちゃう。

 ちなみにルシフェルはというと、なぜかキメ顔で、

「俺んち、いちおー光の一族だから、光るのは、得意だぜ!」

 と言う。

 ちょっと皆んなで呆然としてしまった。

 なんで光るんですか、今光るんですか、どうやって光るんですか?

 蛍にすら妙な対抗意識を持つところが、ルシフェルらしいっちゃらしいけど、とにかく、つっこみどころ満載だ。

 すると、なんとルーク兄様が、

「は、恥ずかしいことを言うのではない、ルシフェル……まあ私の方が、得意だが。一応兄だし」

 などと仰る。


 ……これはあれだろうか、ボールドウィン侯爵家のみに伝わる、新手の”ノリツッコミ”ってやつだろうか?


 にしても、少し赤面してらっしゃるような気もするんだよね、暗いしよく分かんないけど。まあ、プロポーズ云々のときに光が強いって話だから、赤面されるのは、それはそうか。

 それとも、光の一族の長男であり、跡取りである兄様、一族の誇り的な感じで、光魔力の量は、弟には負けないと、アピールされてるのかな?

 でも、ここにいるのは全員身内……クラウス先生だってもう身内みたいなもんだし、別に、アピールの必要もないとは思うんだけどね。

 今までルーク兄様が、人と張り合ったりするところ、私は見たことなかったので、ちょっと意外だなあって思っちゃった。


 とりあえず私は、思考回路を現実に戻しつつ、

「でも、蛍の世界ではいいんですけど、もし本当に、プロポーズの時に体光られては、女性は少し恥ずかしいような気がします」

 って笑いながら言うと、ルーク兄様も少しお笑いになって、

「確かに、本当に体が発光してたら、女性は面食らうだろうね。

 ……その、私が言いたいのは、蛍の光が強いということは、想いが強いという側面もあり、その想いの強さを比喩的に表現してるというか……。

 もしくは、男性がプロポーズするときに、その女性の心の目で見るその男性は光輝き、特別な存在に映るのなら、男は嬉しいんじゃないかというか……、そんな風に思うのだけれど」

 と仰った。


 なるほど。本当に体が発光するんじゃなくて、あくまで比喩的表現ね。文学の嗜みがないもんだから、よく分かんなかった。新手のノリツッコミって思っちゃって、ホントごめんなさい。

 でもその比喩的文学表現を、今するのがやっぱり、よく分かんないっちゃ分かんないけど。

 すると今度はルシフェルが、


「俺は、リアルに体発光したほうが、面白いと思うけどな!」


 と言った。

 どうやらこっちは、比喩的文学表現ではなく、リアル発光をご所望らしい。

「面白さを競うところではないと思うぞ、ルシフェル?」

 と、ルーク兄様は真面目に仰り、

「ご自身で体を発光されるということは、『ライト』をお使いになられるのでしょうか?」

 と、クラウス先生は、クスクス笑いながら仰った。


 おお、ルーク兄様は普通のツッコミだけど、クラウス先生は、これぞ模範的なノリツッコミだ。

 先生、普段はめちゃマジメだけど、さすがに毎日ボールドウィン侯爵家に来ていると、光の一族の影響を受けちゃうのかも知れないな。

 するとルシフェルが、めちゃ得意気にドヤ顔で言う。


「俺なら、得意な『サンシャイン』かな? これでもかってくらい、光れる」


 ……いやいやそこ、ニカって笑うとこじゃないから。

 そう言えば昔、”You are my sunshine”って曲があったけど、まさかプロポーズのときに、”I am a sunshine”って言って、自ら光ってアピールする人がいるとは、思いもしなかったな。斬新すぎる。さすが、ルシフェルだ。

 おまけにルーク兄様は、


「ルシフェルの『サンシャイン』は強すぎるから、相手が耐えられるだろうか」


 と、相手の女性をマジで心配されるし、クラウス先生は、


「眩しすぎて目がやられ、直視できませんね。ちなみに、比喩的表現ではありませんよ」


 と、クスクス笑って仰った。

 クラウス先生、物言いがお洒落で大人だなあ。元々すごい賢い人だから、ユーモアセンスもおありなのかも知れない。素晴らしいな。


 私は出来上がった花冠をルシフェルの頭に乗せながら言った。

「私、ルシフェルの姉弟で良かったです。ルシフェルから求婚される女の子は、色んな苦労を背負いこみそうですね」

 と、私が笑っていると、ルシフェルは一瞬きょとんとして、言った。


「一応言っとくけど、姉弟でも血が繋がってなければ、結婚できるぞ?」


 ……え、この世界って、血の繋がりがなければ姉弟でも結婚できるんですか?

 私が驚いてルーク兄様やクラウス先生を見ると、

「ああ、ソフィーは知らなかったのかい? それは、ウッカリしていた……一番知っていて欲しい情報だったのに」

 と、何だか思わせぶりなルーク兄様、クラウス先生も、

「私の教育が行き届いていなく申し訳ありません。そのような勉強も、今後して参りましょうね」

 と、爽やかに仰った。


 いやまあ確かに前世でも、血が繋がってなければ姉弟でも結婚できるっていうアニメあったけど、この世界でもそうだったとは、露とも思っていなかった……。


 思わずルーク兄様と、真正面にいるルシフェルのことを見る。目が合って、なんかめちゃ恥ずかしくなってきて、顔真っ赤で思わず俯いてしまった。

「る、ルシフェルは、私のことはタイプじゃないはずですよね、上から目線で変なこと言っちゃってごめんなさい。ボールドウィン侯爵家の貴族トップのご子息たちは、同じく高貴なご令嬢とご結婚されることは、私も知っています、私はモーゼの杖を思わず持っちゃったから、皆さまのそばにいれるという恩恵に預かってますけど、私は元々平民貧民街出身で……」

 と私が言った瞬間、ルシフェルが頭の上にある花冠を、私の頭の上に乗せた。


「そんなの、関係ねーから。シロツメクサだって雑草かも知れないけど、冠になれる。誰かに望まれるなら、ソフィーはその人専属の王冠だって被ったっていい。

 俺、そーゆー身分みたいなことで雁字搦めになるの、そもそも大嫌いなんだよね。とにかく俺、自由でいたい人間だから。

 まあ、この家に生まれたからには、光の一族の使命はもちろん果たすけどさ。好きな相手くらい、好きに選ばせろよって感じ」


 ルシフェルは真顔でそう言う。そして言い終わったのち、いつものニカって感じの笑顔になって、私の頭の上を、手でぽんぽんとした。


 ルシフェルは、私を励ましてくれてるのだと思う。ひとりの人間として誇りを持っていいって。分かってはいるんだけど、話の流れ的にホント、色々ドキドキしちゃうな。

 私はルシフェルが乗せてくれた花冠に手をやり、でも恥ずかしくてやっぱり俯いてしまった。

 すると、ルーク兄様も、私が先ほど作って頭に乗せた花冠を、私の頭の上に乗せ仰った。


「……たまにいいことを言うな……ルシフェルの言う通りだよ……ただ、私はソフィーのこと、雑草と思ったことは、一度もないけれど」


 うう、ルーク兄様の笑顔も超お優しいよう。

 兄様も私のこと、ルシフェルと同じように、誇りを持ってねって仰ってるように聞こえる。お優しすぎて、涙出そうだ。

 すると、今度は何故だかクラウス先生が、先生のほうが涙出そうな雰囲気で仰った。


「ルシフェル様の仰りよう、特に『ソフィーはその人専属の王冠だって被ったっていい』のところ、私、感動致しました。ご成長が見えて、本当に嬉しい限りです……ただ、それと同時に私のさらなるソフィー様への教育不足を認識し、本当に身につまされる思いです。そもそもモーゼの杖は、聖具の中でも最も重要なものであり、その所持者は王族同等と考えられています。ソフィー様にはまだお伝えしていませんでした。本当に申し訳ありません」


 と、陳謝されるクラウス先生。ルーク兄様やルシフェルを見ると、次々と「それは私も知らなかった」とか、「俺も」とか仰ってる。

 どうやら、兄様たちも、知らなかったみたいだ。

 それにしても王族同等って、いきなり言われてもびっくりしちゃうよね。

 私も目をぱちくりさせちゃった。

 すると、クラウス先生も、先ほど私が作って頭に乗せていた花冠を、私の頭に乗せた。


「王族同等ということで……王冠の簡易版です」


 にっこり微笑まれるクラウス先生、めちゃ美しすぎて恥ずかしいんで俯いてしまいます。

 でも、クラウス先生が私に一所懸命指導して下さるのって、王命っていうことだけじゃなくて、私が王族同等ということで、親身になって下さってる部分もあるのかなって、初めて知った。

 にしても、えらい仰々しいことになった。

 王族として相応しいレベルというのがどれほどのものなのかは全く分かんないけれど、クラウス先生の期待に応えるべく、頑張んないとなって思った。


「ああ、三つ束ねたら、王冠に見えないこともないか?」

 と、ニカって笑って言うルシフェル。さすがにそれは無理があると思いますけど。いつも通り、適当感満載だ。

 でも……とっても嬉しいんだけどね。

 するとルーク兄様が、微笑まれた。

「王冠はもちろんだけど、ソフィーの美しい黒髪には白い花が映えるんで、花の妖精みたいでもあるかな? モーゼの杖にも花が結構ついてるから」

 え、花の妖精とか、これまた恥ずかしい例えだ。さらに顔赤くなって、俯いてしまうよ。


 でも私は、皆んなの励ましがとっても嬉しかったから、辺りが暗いのもあって顔が真っ赤なのもそんなに分かんないだろうと思い、顔を上げ、満面の笑みを皆んなに向けた。



 そんな、色んな貴重なお話を皆んなでしていたら、辺りが少しずつ、明るくなりはじめた。


「来ましたね」


 と仰るクラウス先生。どうやらいよいよみたいだ。

 地面に寝そべって空を見上げるとキレイだということで、私たちは地面に寝そべって空を見上げた。

 蛍が一匹、また一匹と増えていく。その蛍たちは、少しオーロラっぽい光というか、虹色に光っているように思った。


 そしてそうこうしている間に、あっという間に夜空が一万匹の蛍で埋め尽くされた。たくさん飛び交ってて、本当に幻想的だ。夜空もなんか深みがあって、宇宙の真ん中にいるみたい。

 私は夜空を見上げながら、蛍が放つ虹色の光があまりに美しくて、夢見心地で、宙にふわふわ浮かんでいるような、その美しい景色に自分が入り込むような、溶け込むような、そんな不思議な感覚のとらわれつつ、ただその美しい虹色の光を、ひたすら眺めていた。


 小声で囁くように、ルーク兄様は仰った。

「蛍たちの恋は、実っただろうか」

 ルシフェルも小声で、その問いに答える。

「この光り方を見ると、全員OKじゃね? 俺も将来の参考にしよ」

 ……ルシフェルはどうやら、未だに”自ら発光”を、諦めていないらしい。

「と、とにかくルシフェルは恥ずかしい物言いだな……。ただ、あれだけ光って想いを伝えることができる蛍の勇気を、私も見習いたいとは思った。どんな思いで愛を、伝えているのだろうか……」

 相変わらず適当な物言いのルシフェルと、お心優しいルーク兄様……それでいて今日は、ロマンチックでもいらっしゃるな。素敵過ぎると思う。蛍マジックだろうか。


「でも、俺らよりもクラウス先生のほうが切実な問題じゃね?」

「それもそうだ、先生も今日の蛍たちを見て、触発されるに違いない」

 二人は小声でクスクス笑っている。クラウス先生のお顔、見たいな。でも、私の横にはいらっしゃらないので見れないのが残念だ。きっとお顔真っ赤にされてると思う。


「わ、私のことは、どうでもよろしい。そんなことよりも、今日の蛍鑑賞で私は、お二人とコミュニケーションを取ることの大切さを、再認識しました。

 お二人が私の将来を案じるなど、全く……。

 分かりました、蛍は光ってコミュニケーションをとりますので、それにあやかり、明日までに、『ライト』に『サイレント』を付与した魔法陣を作成し、お二人に披露しましょう」

「それはつまり、『黙りなさい』ということでは……」

「うえっ! コミュニケーションとは真逆の言論封殺じゃん?」


 三人のお話、面白いなあと思いながら、私はクスクス笑って聞いていた。

 それにしても、クラウス先生はフリーなのか。

 あんなにイケメンで美しすぎて優秀すぎるのに、世の女性は見る目がなさすぎるんじゃないかな?

 確か昔の人たちは、婚期が早かったと思うし、自称二十歳くらいと仰るクラウス先生なら別に結婚しててもおかしくない年齢だと思う。

 ただまあ、最近まで世界が存亡の危機だったから、王様の側近なら忙し過ぎて、なかなかご結婚する機会がなかったのかも知れない……

 これから状況が落ち着いてきたら、色々考えられるかも知れないな。


「今はこんなご時世なんで仕方がないところありますけど、もう少し落ち着いたらクラウス先生はまず、蛍にあやかり、王様とコミュニケーションを円滑にされたほうがいいかなって思います。あまりにも日々忙し過ぎるように思い、もう少し激務をなんとかして頂いたほうが……そんな日常では新しい出会いも何もないと申しますか……」

 と私が心配して申し上げた。すると、クラウス先生は一段と低い声で、

「分かりました。ソフィー様にも『ライト』に『サイレント』を付与した魔法陣を、明日お見せ致しましょう」

 と仰った。


 どうやら、余計なお世話のようだ。


 まあ、こんなことはあんまり他人がとやかく言っちゃうと、余計に尻込みする側面があると思うのよね。未だこの過酷な状況、まだまだ全然落ち着いてないんだし、これ以上はもう言わないようにしよう。

 するとルシフェルがプププって笑って、


「ソフィーがクラウス先生にトドメ刺してる。ちょーウケる」


 って言った。

 クラウス先生、今すぐ『サイレント』の魔法を唱えられないか、めちゃ心配になってきた。

 でも、ルーク兄様は凄く空気が読める気遣い人間なので、

「ま、まあとにかく、今はこのイラエ山だけだけど、いずれはどの神体山からも、この綺麗な景色を見れるようになればいいね」

 と話をキレイにまとめて下さった。


 本当にそう思う。七つある神体山のどこでも見れるようになったら、さらに楽しみが増えちゃうな。

 まあ、宗教的な問題とかで、そんなにやすやすと見に来れるとは思ってないけど、見に来れる確率が七倍に跳ね上がるのは、なんといっても魅力的だなって思った。




 自分の部屋に戻ってきた。

 ドミに着替えを手伝ってもらい、速攻でベッドに突進、そしてゴロゴロする。


 今日は本当に、蛍を見に来れて良かった。


 最初、山を登っていく道のりはめちゃ怖かったけど、一万匹の蛍、圧倒されるほどの絶景、心ゆくまで堪能できたし、それに負けずと劣らない皆さまのイケメンっぷりにも、いつもと同じように目の保養になり、素晴らしい限りだった。

 でも、衝撃の事実を知って、焦ったりはしたけれど……。


『一応言っとくけど、姉弟でも血が繋がってなければ、結婚できるぞ?』


 本当に、全く知らなかった。


『それは、ウッカリしていた……一番知っていて欲しい情報だったのに』


 ルーク兄様、それはいったい、どういう意味ですか……?


『俺、そーゆー身分みたいなことで雁字搦めになるの、そもそも大嫌いなんだよね』

『好きな相手くらい、好きに選ばせろよって感じ』

『私はソフィーのこと、雑草と思ったことは、一度もない』


『あれだけ光ることができる蛍の勇気を、私も見習いたいと思った。どんな思いで愛を、伝えているのだろうか』


 私の脳裏には、今日の色んな言葉が思い出されて、思わず顔真っ赤になってしまう。

 私は枕に顔を埋め、あんまりにも悶々としちゃって、なかなか寝付くことができなかった。

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