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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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ソフィー、異世界クッキング

 それからさらに多くの魔法を学び、王立学院の一年生の授業で習うレベルの魔法を、私は使えるようになった。

 めちゃ嬉しい。

 なので実際に使ってみたいと思い、クラウス先生に申し出てみたところ、先生の目の前でなら、ということで、許可が下りた。

 とは言っても、本当なら退魔物戦を想定して猟とかのほうがいいのかも知れないけど、最初だし、生き物殺したくないな、とかって思い、魔法を駆使して料理をしてみたい、と申し出てみた。


 ちなみに私、料理経験はほとんどない。

 前世での私は、家ではカップラーメンにお湯を注ぐくらいだし、その他の料理経験と言えば、学校の調理実習だけだ。

 なので、包丁使いは全く自信がないし、この世界が包丁なのかナイフなのかもよく分かんないけど、そこは教わった魔法を駆使したら、なんとかなるんじゃないかなって思っている。


 クラウス先生も、「それなら大規模な魔法といったことにもならないので、まあ良いでしょう」と仰った。

 ちなみに、小学校高学年から中学生前半時代までに調理実習で作ったのは、サンドイッチ、マヨネーズ、ミートソース、ハンバーグ、鮭のムニエル……くらいだったかな? なんか、どれも美味しくできたのを覚えている。

 あと、手作りってめちゃ具だくさんだなって、感動したのも覚えている。


 それで、私が来た異世界にはパスタがあるので、だったら簡単そうなミートソースパスタがいいかなって思った。

 私が前世で見たアニメでは、割と異世界ものって干し肉のスープに固そうなパン、みたいなのが多くてパスタってないのかなって思ったんだけど、ボールドウィン侯爵家に来て何日目かのディナーでパスタが出てきたので、「おお!」とちょっと嬉しく思った。お米はないみたいなので、それは残念だったけどね。


 私はドミに頼んで、トマト、玉ねぎ、お肉などの材料を厨房にいる料理人に用意してもらい、あと、パスタは湯で加減が分からないので、パスタを茹でられる料理人もつけてもらい、いざ、料理を始めることになった。

 私とドミが厨房に入り、準備をしていると、執事のセバストスがクラウス先生を連れてきた。


「ソフィー様、今日は本当に大丈夫ですか?」

 クラウス先生、今までに見たことがないくらい、心配そうな顔してるよ?

「大丈夫かは、私にも分かりません。ただ、やるだけです。一度やってみて失敗に終わったときは、二度としたいと申しませんので、ご安心下さい」

「剣の二の舞にならなければ良いのですが……」

 う、イヤなことを思い出させないで下さい。剣の授業?はマジで黒歴史なんですから。

 私は剣の授業がデジャヴにならないようめっちゃ祈りながら、料理に取り掛かった。


 私はまずモーゼの杖を出し、まな板の上にある玉ねぎに向けた。

 みじん切り、みじん切りのイメージ……

「セカーレ」

 私は呪文を唱え、そして、魔法陣を発動させたほうがイメージがより膨らみ成功率が高まると聞いていたので、魔法陣を発動させた。

 魔法陣が玉ねぎの上から下に降りていくのと一緒に、凄いイメージ通りのみじん切りが出来上がっている。

「クラウス先生!」

 私は喜びのあまり、満面の笑みでクラウス先生のほうへ向いた。

「ソフィー様、さすがです。その調子でお願いします」

 と、クラウス先生はほっとされつつ、仰った。

 よーし、やるそぉ!

 次は、ボールに入ったトマト。これは、賽の目くらいがよかった気がする……。

 同じように魔法をかけると、これも上手にトマトは賽の目状になった。

 よし、いけるぞ!

 問題は肉だ。この干し肉、固いんだよな。まあ、魔法だから切れるけれど。さすがに食べたときに固くてパサパサはイヤだな。ちょっと『アクア』で水分含ませてみよう。

 イメージが大事、イメージ……肉に水分を含ませるイメージ……

「アクア」

 私が呪文と同時に魔法陣を発動させると、お肉はなかなか良い感じに水分が含まれて、柔らかくなった。

「クラウス先生!」

 私は得意満面でまたクラウス先生のほうへ振り返ると、

「さすが、ソフィー様です。ただ、モーゼの杖を調理器具扱いしても良いものかは、私も判断しかねますが……」

 あれ、ちょっとなんかクラウス先生、困惑気味の表情されてるかな? まあ、怒ってはいらっしゃらないので、とりあえず放っておこう。

 で、お肉をミンチだよね。『セカーレ』でもいいと思うんだけど……。まあ、やってみようか。

「セカーレ」

 私はお肉に魔法をかけると、みじん切りよりももっと細かいお肉になった。

 これでも充分いい。これはこれで、美味しくできると思う。でもなんか、やっぱりお肉の塊の粒々って感じがして、ミンチという感じはしない。

 ちょっと粉砕系の魔法を試してみようか?

 ミンチ肉をイメージ、イメージ……。

「フラクトゥス」

 お肉が魔法陣をくぐったとき、私のイメージした通りのミンチ肉が、そこにはあった。

 おお、できた! ミンチ肉だ!

 これはひょっとしたら、歴史を早められるんじゃない? アニメで時々見た胸アツ展開だ!

 確かミンチ肉は、固いお肉をなんとかして食べられないかと試行錯誤されたハンバーグさんって人が、ミンチ肉を生み出したって話を聞いたことがある。

 まあ、私はハンバーグさんじゃないし、おまけに作ってるのはミートソースだけどね。

 いや、待てよ。私は魔法を使ってミンチ肉を作ったから、歴史を早めたことにはならないかも? この世界では、厨房に入るのは基本、魔力を持たない平民だ。なので、ミンチ肉を作りたくても、皆さん作れないと思う。それこそハンバーグさんが生み出したという、機械かなんかがないと……。

 まあ、いっか。別に歴史を早めることが私の使命でもないしね。ただ、アニメ好きなんで、憧れの登場人物みたいになってみたいなって、ちょっと思っただけなんで。

 ただまあ、今日の料理がもし成功したら、ボールドウィン侯爵家の皆さまにも日頃の感謝を込めて料理を作ってお出ししたいとは思っていた。

 そしてそれが高評価で、貴族界のトップにいるボールドウィン侯爵家の皆さまから貴族の皆さまにも伝わり、平民の調理人にも簡単に柔らかいお肉が作れるミンチ製造機を作ろうって話になれば、まあ、少しは歴史を早めることにはなるのかなとは思う。きっと皆さんも、固いお肉を柔らかく食べたいと思うんだよね。

 もちろんボールドウィン侯爵家で頂く食事で、お肉が固すぎて食べられないとかはないんだけど、そういうのが発明されるということは、固い部分を食べてる人がいるというわけで、皆んなが柔らかいお肉を食べられたらいいなって、私は思う。


 っていうか、本当ならクラウス先生も、ボールドウィン侯爵家の皆さまとご一緒という形で、料理が成功したらご招待するって感じが良かったんだけどな。

 でも先生が、どうしても見張りをすると強く仰るんで、まあ、仕方ないよね。成功するよう頑張ろう。


 さあ、材料切るのは終わったんで、お肉炒めて油が透き通って来たら、玉ねぎ炒めて甘い香りがしてきたら、トマトを入れて軽く炒め、あと料理人さんにお願いして、干し肉を戻している水を頂き、出汁として投入、これも用意してもらった塩コショウをふりかけ味を調え、しばらく煮詰めることになった。そして、少し前から茹でてもらっているパスタの調子はどうかとパスタ担当料理人に訊くと、「良い感じです」と笑顔で答えてくれた。


 ここまで、凄くいい感じよ?

 しかも、すごく美味しそうな香りもしてる!

 私はクラウス先生とドミを見た。二人とも、頑張れーって感じで暖かい眼差しで私を見つめてくれている。

 それからしばらく経って、ミートソースの様子を見てみた。パッと見た感じ、ちょっとしゃぶいな、水っぽいなと思ったのと、あと味見をしていて塩加減が足りないのと、ちょっとすっぱいかなって思った。トマトの酸味が強いのだと思う。そう言えば調理実習のとき、砂糖も入れてたっけ? 私は砂糖を入れて味を見ると、ああ、味が近づいて来たなって思った。でも、相変わらずしゃぶいし、塩味が足りない。なので、ちょっと魔法を使ってみようと思った。

 乾燥の魔法だけど、全部乾燥させたらダメなんだよ、あくまで少しだけ水分を飛ばすイメージで……出来上がりはミートソースのあの少しトロッとしたイメージ……。

「シッカム」

 呪文を唱えると同時に魔法陣が現れ、ミートソースを煮詰めているお鍋を上から下へと通過していく……。

 おお! 見た目にはすっごくミートソースだ!

 そして味見もしてみると、

 おお! ザ・ミートソースって感じの味に仕上がってる! しかも具だくさん!

 これは、ミートソースとしては大成功だなあ、あとは、パスタがどんな感じかなって思い、料理人さんに尋ねると、パスタも出来上がったそうだ。

 なので、私は早速味見をしてみることにした。お腹も空いた。ちょうどお昼時だもん。

 私は、恐る恐るミートソースパスタを口に運ぶと……

「お、美味しいです! ちゃんとできましたよ、成功しました! 皆さんも一緒にどうですか?」

 と言って、クラウス先生とドミはもちろん、多めに作ったので余ったのはぜひ厨房の皆んなで試食しあって下さいと伝えた。



 昼ご飯は、いつも部屋で取るので、ドミが支度をしてくれている。私は部屋でテーブルに着き、クラウス先生と一緒にお昼ご飯が運ばれて来るのを待った。

「クラウス先生、期待していて下さい、さっき私試食しましたが、なかなかの出来でした!」

「それは本当に良かったです。実は、ソフィー様が先ほど試食されたのち、ご自身で『ヒール』などかけられるんじゃないかと心配しましたが、そんな素振りもなくお元気なご様子。本当に良かったです」

 ……私の料理、毒かなんかと思ってませんかね?

 まあ、私も初めての料理で、私自身が超不安だったし、クラウス先生が不安に思われる気持ちはよく分かるんで、そのカッコ美しい微笑みに免じて、許そうと思う。


 そんな他愛のない会話をしていたら、ミートソースパスタが運ばれて来た。部屋中めちゃ美味しそうな匂いが充満している。私の目の前に置かれたミートソースパスタは、なんかちゃんとしたレストランで出てきそうな仕上がりになっていて、さすがプロの料理人、盛り付けも全然違うなって、めちゃ感心した。

 ドミは、あとから食べるというので、それでは暖かいうちに食べられないと思い、すぐさま下がらせ、私とクラウス先生は、早速頂くことにした。


 ……うん、美味しい。しかも、見た目が豪華レストラン風だと、さらに美味しく感じちゃうな。

 クラウス先生も、ひと口食べられ、少し驚きつつもも満足そうな表情で頷かれた。

「……この、お肉の触感がいつもと違って柔らかく、ほろほろと新鮮な触感で、かつ味も良くからみ、非常に美味しいです。素晴らしいですね」

 と、笑顔で仰った。


 よっしゃー! って、私は心の中でガッツポーズした。

 なんでもこの世界にもトマトソースはあるものの、やっぱり肉のミンチがないそうで、そもそも肉を小さく切って料理するという文化もないそうだ。なので、とても新鮮に感じたという。

「また、ソフィー様の魔法の細やかな使い方、魔力の制御、調節、配分など、本当に鮮やかで見事でしたよ。私も教師として、生徒の成長を本当に喜ばしく思っています」

 とクラウス先生はさらに仰って、目を細められた。


 まあ、ぶっちゃけて言うけど、魔力の制御やどうのとか、さらに言うと、今日の料理成功の鍵は、めっちゃモーゼの杖のおかげと思うけどね。きっとモーゼの杖がなかったら、こんなに上手くはいかなかったと思う。クラウス先生は、モーゼの杖で料理をしてもいいのかと、少々困惑されてらしたけど、こんなに料理が成功したっていうのは、調理器具として使ってもいいってことよ、きっと。

 なんせモーゼの杖は、問題解決などを司る大天使ウリエルが授けたものだからね。

 それでもまあ、少しは上達したところがあるなら良かったな。簡単な魔法だからっていうのもあるけど、とりあえず魔法を、一応実践でも使えたっていうことにしとこうと思った。


「クラウス先生、実はこのミートソースパスタを、一度ボールドウィン侯爵家の皆さまにお出ししたいと思っているんです。どうでしょう?」

「ぜひ、皆さまにも召し上がって頂きたいと、私も思います。また、今日ソフィー様の一連の流れを拝見しておりましたので、宮廷料理人にも詳細を報告し、挑戦させてみようと思います。王様も、お喜びになるでしょう」

 おお、私の前世のアイデアが宮廷料理に!? これは、ハンバーグの夜明けも近そうだ!

 この世界にいるかいないかは知らないけど、もしいたら、ハンバーグさん、ごめんなさい、私今度ハンバーグにも挑戦してみるね。でも、料理名は『ボールドウィン』じゃなくて『ハンバーグ』って名付けるから、それで許してね。

 私は、次なる試作料理に期待に胸わくわくさせながら、初の自作料理、ミートソースパスタを堪能した。

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