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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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腐ったヒノキが……!

 ふとルシフェルが視界に入ったので、私も元の作業に戻るべく、ルシフェルの近くまで行った。

 ルシフェル、真面目に頑張るときは、頑張るんだよね。

 真剣な表情のルシフェルに感心感心と思いつつ、作業をしながら、ちょっと声をかけてみた。

「ねえルシフェル。例の少年小説『ブルー・スリー』さ。剣士の他に、槍と弓の勇者もいるんでしょ、どんななの?」

 さっき、クラウス先生と、ちょっと話が出たので、もしも私がその武器に挑戦していたら、私の未来の姿のヒントがその小説の中に隠れているかも知れないと思い、興味本位で尋ねてみた。

 すると、ルシフェルはとっても得意気に、お目々キラキラさせて、お話してくれた。


「槍は一番強いんだ。必殺技は『全関羽・青龍の呼吸 豪傑ノ型 偃月冷艶鋸えんげつれいえんきょ大車輪』、名前からして強そうだろ? 弓の必殺技は『アルティメットマギカアロー』、この弓矢は、時空を超えるんだぜ? すごいだろ」

 なんか、ツッコミどころ満載な必殺技だなあ、どっかで聞いたような気もするかも?

 などと思いつつ、でも、私の未来とは被らなそうな必殺技で、ちょっとほっとした。まあ、やらないけどね。

 ルシフェルがあんまりにも楽しそうに話すので、なんか、話がさらに膨らみそうだなって思い、私はとりあえず自分の知りたい情報は得たので、

「ありがとう、ルシフェル。私、あっちのほう見てくる」

 とか言って、そそくさとその場を離れた。


 いや、あんまり話し込むとさ、またルシフェルが怒られたら気の毒じゃん、私が話しかけたっていうのに。あの目のキラキラ感、はたから見たらどう考えてもルシフェルのほうが話したがってるように見えるんで、ルシフェルが妙な濡れ衣を着せられてはならないと思い、私はさっと身を引いた。


 確かにあの荒唐無稽なお話は、そそるものがあるんだよね。

 ひとりは槍を大車輪のごとく振り回して、もうひとりは時空を超えて、最後のひとりは酔っぱらいとか、どんな戦いなんだろう、しかも、それが勇者って? って思い、実はちょっと、興味はある。登場人物聞いただけでも、青ざめちゃうもんね。ある意味ホント、ブルー・スリーだ。


 ああ、そうだ、ルーク兄様も確かご存じだった。王立学院で流行ってるって言ってたもん。お話の内容もご存じかな? ちょっと軽く聞いてみようか? ルシフェルほど興奮されることなく、淡々と要所のみをかいつまんで教えて下さるかな?

 私は、ハスノハグサのお花を吟味されているルーク兄様のところへ向かおうとした。


 その時……

 ルーク兄様めがけて、ヒノキが倒れてきた!


 私は反射的に飛び出し、ルーク兄様を突き飛ばした。

 ヒノキは私めがけて勢いよく倒れてくる。

 体に激痛が走り、辺りには、さきほどルーク兄様、クラウス先生、ルシフェルが作ってくれたシロツメクサのブレスレットが、ちぎれて宙に舞い、その様子を一瞬視界に捕らえたのち、私は気を失った。


 なんか、頭がぼんやりしている中、ルーク兄様が必死に私に名前を呼びかけ、『ヒール』で私の体を治していた。

 ゆっくり目を開けると、心配そうに見つめるルーク兄様、そしてクラウス先生とルシフェルの顔が視界にぼんやりと入った。

 私の意識が戻ったので、安堵される三人、私が体を起こそうとすると、ルーク兄様は私の体を支えて起こし、そして私を抱きしめられた。


「何故、私を助けたんだ」


 とても低い声で、ゆっくりと話された。一瞬怒っているかとも思ったけれど、ルーク兄様は体が震えていて、それよりも恐怖でおびえているような、そんな感じがした。

 なんか私は意識が戻って来て、だんだんこの状況が怖くなってきて、テンパってきて、思わずまくし立てた。

「あの、私、元々死んでもいい存在っていうか、上手く言えないんですけど、その、とにかく、私にとって大切な人が、私を幸せな気持ちにしてくれる人が、私の目の前で死んだらどうしようって、そんなの、今後生きていける自信がないというか、後悔にさいなまれて苦痛の毎日というか、そんな日々を送るくらいなら私が死んだほうがマシっていうか、つまり私は結局、自分が助かりたい、自分の心を助けたかっただけというか……とにかく、ルーク兄様が私の目の前で死んで欲しくない一心で…」


 そう、その一心で、私は自分でも知らないうちに、ルーク兄様を突き飛ばしていた。

 間に合わないかも知れない、でも、目の前で大好きな人の酷い惨劇とか絶対見たくないって、一瞬のうちそう思って、自分のために、飛び込んでた。

 私は考えがまとまらないうちにまくし立てたので、自分でも何言ってるのか、だんだん分かんなくなっていた。

 でも、ルーク兄様は私の話を聞いて下さり、

「君が、死んでもいい存在のはずがない。まず君は、どれほどこの世界の人々に希望を与えているか、自覚したほうがいい」

 と仰ってルーク兄様は、私をさらに強く抱きしめられた。

「それに私だって、私の代わりに君が死なれたら、私も、後悔にさいなまれ……今後どうやって生きていくのか? だから、二度とこんなことはしないと、誓って欲しい」

 ルーク兄様、声が震えてる。兄様の辛いお気持ちが、とても強く伝わってきた。

 でも私は、ルーク兄様をきゅっと抱きしめて、言った。

「それは、無理です、ルーク兄様。だって私、自分の意識とは離れたところで知らないうちに体が動いてて……。自分でも制御不可能なのに……だから、お約束はできません、ごめんなさい」

「……わかった。ならば私が二度とこのような不甲斐ない醜態を、君の前で晒すことのないようにするだけだ。私は光の一族で、神や王、そして君を守るのが私の使命だから」

 そう言って、ゆっくりと私から体を離され、私をじっと、見つめられた。

「……だが、嬉しかった。ありがとう」

 と言って、優しく微笑まれた。

 金色の瞳が、今までで一番、輝いて見えるような気がした。


 ルシフェルも、ほっと一安心と言った感じで、

「マジ、心臓止まるかと思ったわ~」

 と安堵の表情浮かべてるし、クラウス先生はというと、

「本当に、心配致しました。ですがソフィー様、ご自身のお体は最も大切にして頂かないと困ります。私の教育が行き届いてないことが判明しました、これは私にも責任の一端がございます。よって今後の教育に反映させて頂きますので、よろしくお願い致します」

 とか仰って、何か決意を新たにされたようだ。


 クラウス先生の教育云々の問題ではないんだけど……

 反論したくてもまだ体が本調子じゃないので、なんか頭が回らない。さっきはよくあんだけ喋れたな。火事場のクソ力かな? まあ反論は、そのクラウス先生の新しい教育方針とやらが、変な方向だった場合のときだけでいいか。

 そしてクラウス先生は、

「ソフィー様はまだお体動かせませんので、ルーク様、そのままでお願い致します。ルシフェル様は私と作業の続きを少しして、ソフィー様が動けるようになり次第、今日のところは帰りましょう」

 と仰って、ルシフェル連れて作業に戻られた。


 私はルーク兄様の胸の中にいた。ルーク兄様が私のことをまた抱き寄せられたのだ。

 クラウス先生に私のことを頼まれたからかも知れない。

 兄様の胸の鼓動が聞こえる。とても早い。少し顔を上げたら、ルーク兄様は、冷や汗をかいているように見えた。ひょっとしたら、『ヒール』で魔力を使いすぎて、ルーク兄様も今大変な状況なのかも知れない。

「ルーク兄様、大丈夫ですか? 私、体を離したほうが……」

 と私が提案すると、ルーク兄様は、それに逆らうように、私のことを強く抱きしめられた。

「魔力を多少消費したが、私は大丈夫だ。だが、クラウス先生に君を任されたのに、それも満足に成し遂げられないとなると、私はもはや、光の一族の汚点だ。なので、君が回復するまでは、私に体を預けて欲しい」


 光の一族の汚点だとか、とんでもない話だ。私のこと、これほど親身になって下さっているのに……。


 ちなみに、クラウス先生やルシフェルも私に『ヒール』してくれたのかと問うと、ルーク兄様は、断ったという。

 自分のせいで私が傷ついてしまったので、自分の力で治したいと懇願し、一切の手伝いを拒否されたそうだ。

 そうか、それで大量の魔力を消費されたんだな……。光の一族だから、『ヒール』系の光魔法は得意だろうけれど、それでもこのように体力を消耗されているということは、実は私、結構ヤバかったのかも知れない。

 自分の生命力を過信せず、ここは大人しく、ルーク兄様の胸で甘えておこうと思った。


 にしても、ドキドキするんだけどね……って、い、いけない。一族の使命と厚意でして下さってることなのに、邪念を振り払おう。

 と思いつつも、やっぱり顔が真っ赤になるのを止められないでいると、ルーク兄様は腰に下げている採集袋からハスノハグサのお花をひとつ取られ、私に見せて下さった。

「春の花を見たら、心なごむよ」

 ルーク兄様、お優しすぎます、春のお花よりもルーク兄様のお言葉のほうが、よほど心なごみます、私。

 私は内心めちゃ感謝しつつ、ぽってりまん丸深紅のお花に、心癒された。


 すると、ルシフェルが戻ってきた。そしてニヤニヤしつつ、手のひらよりさらにひと周り大きなサイズの、大きなハスノハグサの葉を私の前に、サッと出した。

「これ、やるわ。ソフィー、顔が赤いからな。この葉っぱ、大きいから顔、隠れるぞ。あと、かくれんぼにも最適に違いない」

 ルシフェルは、ニカって笑いながら言った。

「かくれんぼって何ですか? 大体、顔しか隠れないじゃないですか」

「いや、隠れるって。見ててみ?」

 と言って、自分で顔を隠しつつ、ちょっと身を細める風にして、横向きに立った。

「ほら、葉っぱで顔は隠れるし、茎の部分で体隠れるじゃん?」

「茎の部分で体隠れるとか、どんだけ細いんですか!? しかも、顔より首下のほうが短いって、ありえます??」

 私たちは思わずめちゃ笑ってしまった。良かった、笑う気力はあるようだ。

 特に、ルシフェルが茎に合わせて?体を縮こまって見せてるのが、余計に面白いんだよね。

 ルシフェルは、さらに続ける。

「しかも七角形は幸運の多角形らしいぞ、顔を隠しながら美顔にもなって一石二鳥じゃん!」

 おお? ルシフェルも七角形が幸運の多角形なの知ってるのか。私はさっき教えてもらったばっかりだというのに。基本遊びが好きで勉強しなさそうだけど、それはルーク兄様の隣にいるからそう見えるだけで、実はルシフェル、押さえるところは押さえてんなあって感心した。


 ……でも、感心はしたけども、そのあとの言葉は聞き捨てならないな。


「ルシフェル、それは私の顔が願掛けに頼らなければいけないほど、ひどいということ?」

「え、いや? そういうわけでは……」

 慌てて弁解するルシフェル、たじたじになってる。するとルーク兄様が、

「ソフィーはそのままで、十分かわいい」

 と間髪入れずに仰る。め、めっちゃ照れるんですけど……。

 前に一度クラウス先生に『見目麗しい』みたいなこと、仰ってたことあるんだけど、男子から『かわいい』と言われたのは、生まれて初めてた。恥ずかしいけど、めちゃ嬉しい。今日は、『かわいい記念日』にしようと思う。

「いえ、その、あ、そうだ、私、先ほど教えてもらったんですけど、ハスノハグサには毒もあるそうですよ。きっとルシフェルは美顔効果より、毒を吐かれて振り回されたいのでは? ルシフェルの期待に応えられるよう、私も頑張ります。毒を以て毒を制す、ですね」

 私は酔剣の仕返しとばかりに畳みかけ、ルーク兄様に宣言した。

 ルシフェルは、顔真っ赤にしている。ルシフェルはいつも豪快に笑っている印象が強いので、こういうときに顔を赤らめるなんて、以外に可愛いとこあるなって、ちょっと思ってしまった。

 言い負けた感ちょっとあるから、それが恥ずかしいのかな?

 するとルーク兄様は非常に満足げに、

「こんな居心地悪そうなルシフェル見たのは初めてだ。いつも言いたい放題、やりたい放題だから。そうか、ルシフェルには毒を吐くくらいの方がいいのか」

 と言って、楽しそうに笑われた。そして、

「それにしてもソフィーは、可愛いだけでなく刺激的で、ステキな女性になりそうだ」

 と仰って、兄様は真剣な表情になられて、手に持っているハスノハグサのお花を、私の髪に挿された。

「似合うよ」

 ルーク兄様は、優しく私に微笑みかけられる。


 ちょ、ちょっと、待って! 今日のルーク兄様は、キラーワードを連発しすぎだと思うんですけど!?

 私はもう俯いて、顔を真っ赤なのを何とか誤魔化そうとした。

 でも、そんなのでは当然誤魔化せるわけがないので、ルシフェルが茶化しながら、

「ほら、これで顔隠せるぞ?」

 と言って、ハスノハグサの葉っぱを私に渡すので、その葉で顔を覆い、

「私は顔を隠してるんじゃないですよ、かくれんぼもできるって、ルシフェルが言ってましたからね。ほら、私、見えないでしょ? もう顔を隠す必要、ありませんよね?」

「ああ、確かに見えないかな」

「見えない、見えない」

 などと、冗談言いながら笑いあっていると、クラウス先生が戻って来られた。


「ソフィー様はもう大丈夫そうですね。ですが、来た道を下山するのはまだお辛いと思いますので、私はソフィー様を連れて先に帰ります。ルーク様、ルシフェル様は、通常通り門まで下山し転移陣よりお戻り下さい」

 ん? どうすんだろう?

 って思ってたら、クラウス先生はひょいっと私を抱き上げお姫様抱っこ!

 人生初のお姫様抱っこだ! スゴイ! 今日はお姫様抱っこ記念日にもなってしまった!!

 と感動しつつ、顔を赤らめていると、クラウス先生は魔法を唱えられた。

「ミコモーヴェレ」

 私は一瞬視界がヒュンってなったかと思うと、目の前にはもう、凱旋門の転移陣があった。

「さ、ボールドウィン侯爵家のお屋敷まで私がお送り致しますので、帰りましょう」

 何でもないことのように仰るクラウス先生、今の瞬間移動は、誰でもできるんだろうか?

 私は先生にお伺いしてみると、

「難しい魔法ですよ。何より危険が伴います。魔法全般言えることですが、特にこの魔法はイメージが大事ですので。しっかりイメージできなければ、どこに飛ばされるか分かりません。なので、使う人は極めて稀ですね。

 魔法には、適正や素質もあるので、努力ではどうにもならない部分も、実はございます。私は得意な魔法ですので、心配いりませんよ」

 と、爽やかに笑顔で仰った。

 そんな危険な魔法だと最初に知ってたら、体力なくても、転がってでも、時間かけて下山するって言い張ってたかも知れないな。まあ、無事に帰って来れて良かった、良かった。


 そしてクラウス先生は私の部屋まで送って下さり、ドミが出迎えてくれた。

 もう体力が限界だったので、ドミになんとか着替えさせてもらってから、ベッドの上に突っ伏した。

 手にはハスノハグサと、髪にもお花がささっていたので、手に取り二つを見つめた。

 今日は、色んなことがあったな……。

 酔剣の真似事で体ふらつきルシフェルに抱きかかえられるし、

 ヒノキの下敷きになって、瀕死の重傷を負うし、

 ルーク兄様には胸の中で蹲りながら、『かわいい』とか『似合うよ』発言だし、

 クラウス先生には人生初のお姫様抱っこだし……。

 恥ずかしすぎて、超赤面ものだわ!

 と思いつつ、ベッドの枕に顔を埋めてたら、何だか一気に疲れが出て、私は知らない間に眠りについていた。

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