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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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岩の精霊ウルルと初めての神体山解放

 山道の前に、ここから入れと言わんばかりのほんのり光る大きな凱旋門があった。私がおそるおそる門をくぐると、道が光で照らされていた。

 この道を歩けということなのだろうか、きっとそうなんだろうな。

 道を進んでいくと、森から魔物らしきものが、私に突進してきた。

 私は悲鳴をあげてうずくまると、道の端と乱立する木々の狭間に、何か透明の壁があるかのようで、その壁にその魔物は体当たりしたかと思うと、すぐさま粉々となり、消滅していった。

 道中何度もそんなことがあり、いつ透明の壁が壊れるか、この壁がどこまで私を守ってくれるのか、本当にひやひやドキドキしながら、とにかくひたすら祈る思いで、歩みを進め、やっとの思いで山頂に辿り着いた。そして、私の右手には、再びモーゼの杖が現れた。

 山頂には、雑草が生い茂る空地のような円形の広場があり、その中心に直径三十mほどの大きな一枚岩があった。そしてその岩からは、なんか黒くて、ところどころ紫色のどんよりした瘴気が漂っている。


 これ、近づいても大丈夫なのかな……でも、モーゼの杖が、その一枚岩まで光指してるし……。


 私は恐る恐る近くによると、モーゼの杖に反応したのか突然魔法陣が出現し、一瞬光ったかと思うと何というか、グレーのゴマちゃんというか、グレーの枝豆しばというか、そんな感じのグレーでぽてっと丸っこい、めちゃ可愛らしい生き物が目の前に現れた。

 こんなどんよりした瘴気の中から、こんな可愛らしい生き物が現れるとは露とも思わないので、私はめちゃびっくりした。

 しかも、魔法陣、初めて見た。異世界感満載で、めちゃカッコいいな。


 そして、そのゴマちゃんか枝豆しば風生き物は、どうやら喋れるらしい。さすが異世界、人間以外にも喋れる生き物、やっぱりいるんだ、本当すごい。


「僕は、岩の精霊ウルルだよ。この世に生をもたらした両親に愛されないどころか暴力を受けて、絶望の淵にいながら、よく耐えて、貪汚たんお落ちしなかったね。

 自分を世に送り出した人間に愛されないで、いったいこの世にいる誰に愛されるというのかと、本当なら絶望し、普通ならジミマイに乗っ取られた母親のように、貪汚に落ちて悪魔に乗っ取られ、君の魂は悪魔のエサになっていたところだよ。

 だけど君は、最大の苦難を乗り越えることができた。そしてそれほどの苦難、困難を乗り越えたということは、魔力が今、膨大な量になっている。それほどの魔力をため込むことができる器を持っていることも奇跡だけれど、その器の成長が止まったり、また今後さらに膨れ上がるであろう魔力量に耐えきれなくなった時、君はこの先、貪汚に落ちる可能性もあるんだよね。

 仮初の姿の悪魔だったとは言え、この山を乗っ取っていた七大悪魔を倒し、また、ここに辿り着くまでの道のりで魔力は結構使われたけれど、それでもまだ相当量残っているんで、今すぐこの一枚岩に乗ってひざまずき、両手をついて、魔力を奉納したほうがいいと思う。僕も助かるし」


 と、そのめちゃカワ生き物は、一気にまくしたてた。

 まあ、私はあまりにも訳わかんないし、ただ茫然と聞いていたんで、ウルルもきっと一気に話すしかなかったのかも知れないけど。

 でも、それにしてもなんか、情報量多いな……ちょっと頭を整理しよう。


 この、グレー色ゴマちゃん豆しばの名前は『ウルル』と言って、岩の精霊らしい。岩の精霊なのに、めちゃ可愛らしいな。何ていうかこう、岩ならもっとごつごつしているのかと思ってた。

 でも私は丸くて可愛いものが好きなので、全然不満はない、というか、むしろ嬉しい。あとでナデナデしても、いいのかな?

 その後に『両親に愛されないどころか、よくあんな暴力受け辛い思いをしてて、貪汚に落ちなかったね』とか言ってたけど、貪汚に落ちるというのは、あの虐待母親が七大悪魔ジミマイに乗っ取られたように、私も悪魔になっちゃったってこと? おお、怖い、私の前世の見た目も確かに良くはなかったけど、さすがにあんな人間離れした容姿は考えられない。

 にしても、なんでウルルは私の虐待の過去、知ってるのかな? 精霊さんなんで、色々繋がりがあるのだろうか。不思議がいっぱいだ。

 まあとにかく、絶対に貪汚に落ちないようにしようって思った。


 で、その貪汚に落ちないためには、自分のキャパを超える魔力を貯めこんではいけないらしい。

 今、私は虐待受けた直後なのもあって、めちゃいっぱいの魔力を持ってて、それを貯めこんでおける器を、私はなぜか奇跡的に持ってるらしいけど、飽和気味で危ないらしいから、魔力を奉納っていうのをしたほうがいいらしい。で、魔力を奉納したら、ウルルも嬉しいらしい。


 ウルルが喜ぶんなら、張り切ってするよ。後でナデナデしたいし。何より触ってみたいよね、異世界の精霊……って、よく考えたら、触れるのかな?


 で、魔力を奉納するには確か、このめちゃ大きな一枚岩に乗って、ひざまずいたらいいんだよね? でもこの黒紫の瘴気の中入って行くの、怖いな。変な空気吸い込んでおかしくなったりしないのだろうか?

 私は恐る恐る、一枚岩の上にあがった。ウルルは別にこのおどろおどろしい瘴気については何の注意事項も言ってなかったんで、多分、大丈夫なのかな?

 とりあえず、モーゼの杖が光指してるんで、フラグ的にも一枚岩の上に乗って、中心部に行かないとダメだと思う。

 私は一枚岩の中央へ向かうべく、足を進める。ウルルも一緒についてきてくれた。瘴気が体にまとわりついて、すごく気持ち悪いし、恐ろしい。でも、モーゼの杖の光が一枚岩の中心部を指してるんで、そこまでは行かないと。

 あんまりにも怖いから、めちゃかわウルルを見ながら歩いていくことにした。


 どちらかというと枝豆しば似かな? パッと見縦二十㎝、横三十cmくらいな感じ? めちゃ可愛いな。あとでお手々繋ぎたいな……


 と、ウルルで気を紛らわしながら歩いていくと、モーゼの杖の光が指し示している一枚岩の中心部分まで来た。


「ウルル、ここにこう両手をつけばいいの? そうすれば、勝手に魔力が奉納されていくのかな?」

「うん、大体そんな感じ。でも僕は邪魔だから、ひとまず岩に戻るね。あとそれと、ひとつ注意事項があるんだけど、魔力を奉納中に、悪魔によるひどい幻影、もしくは甘い囁きがあるかも知れないんだけど、絶対に拒否して、誘いに乗らないでね。もし悪魔の誘惑に巻けてしまったら、悪魔に体を乗っ取られちゃうから」


 ……え、魔力の奉納って、そんなに危険なの? 今からやめてもいいかな?

 でも、魔力を奉納しなかったら、飽和状態で耐えきれなくなって、結局悪魔に乗っ取られちゃうかも知れないし……それならまあ、ウルルの言う通り、やってみよっか……

 モーゼの杖も、暗に魔力奉納を、そそのかしてるような気もするし……。


「既にここを乗っ取っていた悪魔、ジミマイはいなくなっちゃったんで、酷い幻影や甘い囁きなど、ひょっとしたらないかも知れないけど、でもまだこの神体山、ちゃんと悪魔の支配から解放されてないから、十分注意してね」


 ああ、そう言えばさっき、ジミマイが何だか訳わかんないうちに、モーゼの杖から放たれる光でやられちゃったんで、そういうの、ないかも知れないのか。だったら魔力の奉納っていうの、ちゃっちゃとやっちゃったほうがいいな。

 私は腹を括り、一枚岩に両手をついた。と同時にウルルもスッと一枚岩に消えていく。

 モーゼの杖と共に両手をつくと、私の手のひらから何か気力のようなものが吸われていくのが分かった。きっとこれが魔力なんだと思う。そして、一枚岩と私の周りが少しずつ光り始めた。私は凄く驚いたんだけど、途中でやめていいのかも何にも分かんないので、とにかく一枚岩の上に、必死に両手をついていた。


 すると、様々な虐待の辛い過去が蘇ってきた。自分が虐待されている姿を第三者視点で見るのは初めてで、恐怖と同時に、親にこんな風にしか扱われない自分が、いかに人として価値がないかと見せつけられているような気がして、恐怖以上に心辛くて、言いようのない恥ずかしさに襲われ、惨めで哀れで胸締め付けられた。

 そんな言葉では言い表せない悲しい感情が胸の中でむくむくと膨れ上がると、だんだんと我慢の限界が来て、ブチって切れそうになった。でもその時ふと私の別の思考が働いた。


 ああ、これでブチ切れることによって、悪魔に乗っ取られちゃうんだな。何か、我慢に耐えきれず妖怪になったっていう、そんなアニメを見たことある気がする。


 魔力が溢れていくのも、魔力を貯める器が限界に来ているのも、だんだんと分かってきた。これを何とかしないと悪魔に乗っ取られちゃうんだな。さっきウルルは器を広げることもできるとか言ってたけど、今てっとり早く溢れる魔力を消費するのは、魔力を奉納することだと思う。私は何となくイメージして、両腕に意識を集中し、魔力を一気に一枚岩に押し流した。

 行き当たりばったり感ハンパないけど、何とか上手くできたようで、私は先ほど感じた魔力が溢れ出しそうな感覚がなくなり、安堵した。


 でも、ほっとするのも束の間、どこからともなく誰かの声がした。っていうか、脳に刻み込むように響いている感じのように思う。

 その声は「何も考えず、楽にしなさい」と囁く。

 ウルルの言っていた悪魔の囁きだろうか。

 そしてその声は、私が一番欲しいものをあげるという。ちなみに私が一番欲しいものは愛なんだけど、それも可能だという。


 いやいや、ちょっと待って、そんなこと、あるわけないでしょ?

 今まで愛されたことがない自分が、なんで突然愛されるようになるの? いったい誰から? 何の理由で? 親にすら愛されなかったというのに??

 こんな毎日のように暴言を吐かれ、罵られるしか脳がない惨めで恥ずかしい自分が、誰かに愛されるなんて万にひとつも有り得ない。

 もし万一仮に、誰かに愛されることがあったとしても、でも、すぐにこいつはダメな奴だと見限られて追い出されるに決まっている。だって、親にだって殴られるしか存在価値がなかったんだよ、私!?

 追い出されて元の虐待親の所に戻らなければならなくなったら、さらに被害がひどくなる。こっちの世界の母親はもう死んだと思うけど、父親はどんなやつか分からない。部屋の荒れ方を見る限り相当酒乱みたいで、暴れずにはいられないタイプと思う。前世みたいに仮に母親にしか暴力を振るわない父親だったとしても、母親がいないとなれば防波堤がなくなり、暴力の矛先が私に向くかも知れない。しかも出戻りとなると、「一度親を裏切り、家を飛び出したやつが、いったいどの面下げて、のこのここの家に帰って来たんだ!」とか言って、さらに怒りを買い、暴力が以前よりさらに酷くなる可能性が高い。


 それならば……今のままの方がましだ。今の酒乱暴力レベルがどれくらいか分からないけれど、どうせ出戻りしてさらに酷い扱いを受けるなら、今のまま帰ったほうがいい。そしてその後のことは、この世界のことをもうちょっと知ってから、おいおい考えよう。

 一度終わった人生だ。

 しかもクソそのものの人生。

 その後転生だか何だか知らないけど、また同じ境遇に生まれ変わって、正直もう、どうにでもなれって思う。ただ少しでも苦しく辛く、痛くないように……願うのは、それだけだ。


 私は、悪魔の囁きを退けようと固く決意した。

 正直どうすれば、悪魔の囁きを退けられるか分かんないけど、魔力を一枚岩に押し込みながら、心の中で、強く念じた。


 私は信じない。

 私の欲しいものが手に入る世の中があるなんて、絶対に信じない。

 私を必要とし、愛してくれる人がこの世にいるなんて、絶対に有り得ない。

 絶対に、絶対に……私はお前を信じない!

 しょうもないぬか喜びさせんじゃないよ! 二度と私の前に現れるな!!


 って心の中で強く願い、自分の中にある魔力を、一枚岩に一気に流し込んだ。

 すると、悪魔の囁きが消えた。


 先ほどまで一枚岩には貪汚の瘴気だらけで、光といえばモーゼの杖の光だけだったけれど、そのモーゼの杖を中心として、徐々に光が円形に広がっていく。

 その光る円には魔法陣が描かれているみたいだ。光が徐々に広がっていくにつれて、その魔法陣の全貌が明らかになっていく。

 そして、光が一枚岩全てを光で覆うと、一枚岩上面いっぱいに出現した魔法陣が、ピカって光って発動、私は一瞬驚いて辺りを見ると、その魔法陣は光りながら、徐々に上へとあがっていく。そして大空に広がって、金色の光の祝福となり、神体山に降り注いだ。

 もの凄く幻想的で美しい光景で、私は瞬きすることもできず、呆然とその光景に魅入られていた。


 ……これ、終わったってことで、いいのかな……それにしても、めちゃキレイで、夢の中にいるみたい……。


 私は、辺りの光景にウットリしつつ、地面についていた手を離し、ゆっくり起き上がった。

 金粉のように降り注ぐ祝福が、神体山を魔力で満たしているのが、何となく分かる。


 無事に終わったんだな……


 と安堵していると、突然、私の目の前に天使が現れた。

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