初めてのボートデート
でも次の瞬間、フッと優しい表情になられてから、私に仰った。
「前にも言ったが、私は君に選ばれたいと思っている。そのための努力は今後も惜しむつもりはない。今日みたいに……」
王子モードのクラウス先生……いや、クラウディウス王子、めちゃステキカッコいいです。
ちょっと離れたところには、生徒のどなたかが目に入るので、そういうのをデートと呼んでいいのか分からないけれど……いや、実際にはデートではないのか、学校の授業の範囲だし……まあ、でも、デート雰囲気は十分あったし、とても楽しかったな……
っていうか、ひょっとして今までの体力増強がてら神体山に行ってたのも、クラウス先生なりの努力が、あったりしたのだろうか……?
いや、それはないか。だって、お気持ちは隠し通すつもりでいたって、先日仰ってたから。
でも、あれからはもう私に対してはお気持ちを隠すことはなさらなくなって、今に至るけれど。
……なんか先日の、王宮書庫室での出来事を思わず思い出しちゃって、めちゃ恥ずかしくなってきちゃった。
『……だが、私を思って恥ずかしがる君は、この上なく、可愛い』
か、可愛いとか前世で言われたことないから、ホント戸惑っちゃうな、全く慣れない、困っちゃう、うん。
でも、ステキな男性から”可愛い”と言ってもらえるのは、私もとてもうれしくはあるんだけれど……
あとその他にも、めっちゃお顔近かったし、ホント恥ずかしいことてんこ盛りだったな……
とりあえず、私は案の定顔が真っ赤になってしまったので、俯いた。
すると、クラウス先生が少し私の様子を伺うようにしながら、仰った。
「とにかく今日は、楽しかった……ありがとう」
クラウス先生はそう仰って、私に優しく微笑まれた。
陽の光で水面が光り、風になびく金色の髪もキラキラとして、闇色の瞳の中には星がきらめき、その輝く瞳で、クラウス先生は私を見つめられる。
クラウス先生が、あまりにもステキすぎて、私は夢心地でめちゃうっとりしちゃって一瞬見たまま時が止まるんだけど、でも、あまりに眩しすぎてずっとは直視できず、やっぱり私はまた顔を真っ赤にして、俯いてしまう。そして、
「私も、楽しかったです……」
と、やっとの思いで言うのが、精一杯だった。
それからクラウス先生は、フフっと笑われてから再びボートを漕ぎ始められた。
クラウス先生は来た道をUターンされる。船の係留場を目指されているのだろう。
……ああ、今度こそ本当にボートの旅も終わっちゃうなあ……
って思って、名残惜しく思いつつふと海面に目を向けると、やっぱりキラキラしていて美しい。でも、ちょっと目がチカチカして来た。
でも、そのチカチカした目で思わずふとクラウス先生を見ると、普通に目が合うんだけど、クラウス先生は目をぱちぱちされたのち、ふと目を逸らされた。
どうしてなのかはわからない。目がチカチカしてたんで目が潤んでたか、焦点が合ってなかったか、リアルに瞳もチカチカしてたか、その他いろいろかな?
でも、私もクラウス先生のステキすぎる容姿に再び赤面してたので、目を逸らして下さったのはよかったかも。憂いある斜め横顔も、これまたステキすぎるしね。
そんなことを思いながら、クラウス先生の国宝級の美形をこっそり堪能しながら”心のサプリアルバム”に収納しつつ、ボートに揺られていると、とても残念なことに、最初に訪れた船の係留場に着いてしまった。
クラウス先生が先にボートから係留場に降りられ、私に手を差し伸べて下さる。
本当に、紳士的でカッコいい……クラウス先生は本当に王子様なんだなって、改めて思っちゃうな。
そして私はクラウス先生に手助けしてもらいながら、船の係留場に降り立った。
海の上から地上に降り立つと、なんか少しフラっとするんだけど、それもちょっと心地いい。あと、少し座っていられたのもあって、随分と足が楽になったのはよかったなと思った。
ふと係留場の辺りを見回すと、生徒たちの何名かはもう戻って来ていた。
アドリアーナ先生チームは、未だ海上にいるけれど、砂浜チームの何人かと、山林チームの生徒の皆さんは全員帰って来ているようにも見えた。エミール様ももちろんいる。
そしてそのエミール様が、クラウス先生のところまで歩みを進めて来られた。
それに気づいたクラウス先生も、山林チームの情報を伺うべくエミール様に歩み寄られる。
「何か、分かりましたか?」
「神体山の魔法防御結界に、小さな穴が開いてありました」
「穴が? そんなはずはない、エレガンドゥード山は一年前に解放され、魔力も満たされつつあり、防御結界には異常が出るとは思えないのですが」
「クラウス先生の仰る通りです。ですので、私は人為的なものと思いました」
「人為的な?」
「はい。未開放の神体山で見られるような、全体に防御結界が薄くなって、魔物たちの持つ自身の貪汚により穴をあけ、外に出て、平民街を荒す被害が最近多く報告されていますが、エレガンドゥード山は既に解放されておりますし、魔力も満たされつつあり、魔物もさほど出没していないにもかかわらず、その個所だけ穴が開いているは、不自然です。何者かが、貪汚の魔石などを使い、穴を開けたのではないでしょうか」
「目的が、さっぱり分からないのですが?」
「それは、私にも分かりません。ですが、強力な貪汚の魔石を用いたりなどすれば、人ひとり分くらいの穴は作ることができますし、神体山の自浄作用で時間が経ち、今ほどの穴の大きさとなったとも考えられますので、誰かがこのアドリア海に、何かしらの目的で侵入した可能性がある、と私は考えます」
「……神体山には貴族しか入れませんが、つまりそれは王都の貴族には、『神の御意思』を無視する不埒な輩がいる、ということですか?」
「……私は他領から参りしました……よって、発言を控えさせて下さい」
「まずはその穴を見てみましょう。そこまで案内してください」
「はい、こちらです」
そう仰って、お二人はまた目的地へと向かわれた。
やっぱり、エミール様は凄いな。これだけのそんなに多くない時間で、神体山の異常を見つけられて、クラウス先生に報告できるなんて……
なんか、クラウス先生が二年生の魔力上クラスをここに連れて来たの、エミール様がいらっしゃるからっていうことにしてもいいんじゃないかなって思うほどだ。
……とはいえ、すんごいシリアスな報告内容だっただけに、こんなこと思ったらホントはダメなんだけど……でも、心の中に思うだけだったら別にいいかな……?
陽の光に照らされた金髪の美青年と銀髪の美少年、髪が風になびき、めちゃキラキラしてて、そんでもって横顔はめちゃ美しすぎるし、真剣な表情や眼差しは色っぽいし、めちゃステキすぎてこれ、”心のサプリアルバム”に永久保存するに決まってるよね!?
で、私は二人の後ろ姿を見送ってるんだけど、颯爽と歩くお姿がこれまた凛々しくて、モデル体型万歳!って思ってたら、声が聞こえて来た。
「よおっ!」
おお、ルシフェルだ!
右手をおでこのところに持って行って”チャッ”ってするいつものやつ、陽の光の下だとさらにイケメン度がアップだ!
いつもなら、いちいちカッコよくて腹立つな~とか思ってるところだけど、今日はいつもと違って、水色の髪が風になびいて”さらさら爽やかバージョン”、さらなる目の保養になったということで、今日は勘弁しといてあげよう。
……って、私マジ、何様って感じよね。
ま、まあ、心の中で思ってるだけだから、別にいいよね、うん。
で、いつもよりもさわやかルシフェルが、私のところにやって来た。
「あれ、クラウス先生は?」
「なんかね、エミール様が問題を見つけられて、一緒に確認されに行きましたよ」
「ふーん、俺にはわかんない系のやつかな?」
「大丈夫、私にもわかんないですから」
で、とりあえず私たちは二人で「あっはっはっは、いや~わかんないもんは仕方ないね、仕方ない」って大袈裟に笑いあっていると、海に出ていた船『アドリアーナ号』が係留場に戻ってきた。
ルシフェルと一緒に『アドリアーナ号』に近づくと、なんか、男子生徒たちは全員びしょ濡れで、でアドリアーナ先生はというと、見た感じ、空気で膨らますちびっ子プールのような感じの水槽?に、釣ってきたお魚さんたちと一緒に入っていらっしゃり、なんか体をくねくねさせて遊んでいらっしゃった。その水槽は、直径三mくらいはあるだろうか。結構大きい。どうやってあれ、持って帰るんだろう? 来た道を帰らなければならないのに。また山を登って、降りなくてはならないのに。
私がめちゃ呆然としてその様子を見ていると、アドリアーナ先生は二十人ほどいる項垂れている男子生徒たちに、魔法『シッカム』をかけて制服と髪を乾燥させ、あと、上からバシャンと『ラババントゥール』もかけて、キレイさっぱりにしてあげてらした。
……一応、生徒思いのところはおありなんだな……そう言えば、エレガンドゥード山を解放した後も、生徒の皆さんのためにとヒノキを少し伐採して、持って帰っていらっしゃったもんな。
すると、クラウス先生とエミール様が帰っていらした。
クラウス先生はすぐさま『アドリアーナ号』のところへ颯爽と歩み寄られる。




