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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
長期休みから王立学院二年生
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漁猟再開に向けての準備とそして……

「先ほどアドリアーナ先生に魚の捕獲を少し依頼されていましたが、今日捕獲された魚たちは、どこに行くのでしょうか」

「イラエ山が解放された直後、魔法師団の研究部門に水産部門設立し、研究、そして漁猟再開に向けて準備をしていたので、そちらに回すことになっています。また、ソフィーが待ちかねているのを知っているので、漁猟再開が少しでも早まるよう、王立学院長期休み中にエレガンドゥード山の山頂で海水の戻りを目視で確認して以降、漁猟に以前従事していた者たちを集め、研修を行い、一刻も早い漁猟再開を目指しています」

 わ、私が待ちかねているっていうのが、めちゃ恥ずかしいな。思わず俯いて、赤面しちゃうな、もう。

 ……でも、

「あの、ありがとうございます」

 って、一応お礼は言っといた。だって、楽しみには違いないもんね。

「喜んでもらえたのなら良かったです。まあ、魔法師団の水産研究部門の調査如何によりますが、もし魚の種類や食べることにも問題なさそうであれば、漁猟従事者が出入りできるように、漁猟の際付き添う魔法師団の者に魔石を渡し、エレガンドゥード山の内側の転移陣から外側である海に転移できるようにするつもりです。平民は、魔法防御結界がかかっている神体山に入ることは、そもそもできないので」

 ああ、平民の皆さんはそもそも神体山に入れないのか。じゃあ、長い道のりを登ったり下りたりを往復する必要もなくて、便利だよね。その日が来たら、ぜひエレガンドゥード山近辺に住む両氏の皆さんには、頑張ってもらいたいな。

「その、ひとつ質問なのですが、漁猟に付き添われる魔法師団の方は、王様の許可があるのは当然としても、王族の付き添いは要らないのでしょうか」

「その持たせてある魔石が『王族の目』みたいなところがあります。色々細工を施した魔法陣が付与されており、魔法師団はもちろん漁猟に従事する者までしっかりと研修しますので、なんの問題もいりませんよ?」

 と、クラウス先生が、ニヤッとお笑いになった。

 ……きっと、監視カメラっぽい機能が付いている、例の『古の魔術書』のブックカバーみたいな、めちゃ恐ろしい系の魔法陣とかなんだなって、私は瞬時に理解した。



 ちょっと若干恐ろしいかも?って思って目をふとそらしてみると、相変わらず水面がキラキラと光っていて美しい。

 そして、お魚さんたちが泳いでいるのも見える。魚については種類がさっぱり分からないけれど、とても元気そうに見えるな……

「魚が、戻って来ているように思います」

 私は笑顔でそう言うと、クラウス先生も笑顔で答えて下さる。

「はい。先ほど係留場で上から眺めるよりも、さらに海面近くまで来たほうが、より分かりますね……というわけで、決して遊んでいるわけでは、ないんですよ」


 クラウス先生の笑顔がとても優しくて、本当ならもっと遊ばせてあげたいっていう気になっちゃいます……ご時世がご時世だから、なかなかそれも難しいんだけど、今だけは海の上のこのゆったりした時間が、クラウス先生にとってリラックスできる時間ならいいなあって思った。


 海側の凱旋門と最初に来た係留場が見えて来た。

 クラウス先生とのボートの旅ももう終わりか……ちょっと名残惜しいなあと思っていると、

「反対側のほうも行ってみましょうか。海の調査は大事ですので」

 と、クラウス先生が笑顔で提案して下さった。

 クラウス先生も同じ気持ちでいらしたのかな……だったら嬉しいな。

 私は笑顔で頷いた。


 船の係留場から、私たちがいるところより少し遠瀬のほうへ目をやると、アドリアーナ先生が男子生徒たちを連れて乗っている船が見えた。

 ……何やら、宝帯が四方八方にめちゃ舞っていて、おまけに男子生徒たちが次々と海に投げ出されている気がするんだけど……あんなにバシャバシャして、魚なんて釣れるんだろうか……?

 私がめっちゃ驚いて、アドリアーナ先生の船のほうを指差しつつ、クラウス先生を見た。

 するとクラウス先生も、頭痛がするのかこめかみを指で押さえていらっしゃり、凄く悩まし気なご様子だ。

「……まあ、帰って来てから詳細を、尋ねることに致しましょう……一応アドリアーナ先生は、ああ見えても責任感はあり、任務を怠るようなことを、なさる方ではありませんから……」

 と、深くため息を吐かれつつ、仰った。


 船の係留場の反対側にボートで来てみると、お魚さんたちは先ほど見たときと変わらず、やはり元気に泳いでいる。

 そして、少し進んでから砂浜チームの生徒たちをふと見てみると、ルシフェルが目に入った。

 ルシフェルは光の一族だから『プリフィカティオ』を唱えているように見える。広範囲の魚たちが一瞬にして光に包まれ、癒しの光となって上空へと昇って行き、消えていった。

 ルシフェルも、光属性がめちゃあるのはもちろん、それだけでなく光の一族特権で光属性の魔法はさらに効果が強まるから、その様子はホント圧巻だなって思った。

 さすが私の義弟、マジで誇らしい気持ちになる。

 でも、ルシフェルはファイフの音色も超美しいから、魔笛verも聞いてみたかった気がするけどね……まあ、ここからじゃほとんど聞こえないんで、どっちにしろ聞けないんだけど。

 私がそんなことを思いながら、義弟の雄姿に惚れ惚れしていると、クラウス先生が話しかけてこられた。


「先日の、イルスガウディムで貪汚たんおに侵されたヒノキの処理をしに行ったとき、二手に分かれ、ルシフェルと貴女を一緒にさせるのではありませんでした……」


 そう仰るクラウス先生に私はめちゃ驚いて、ルシフェルに見惚れるをやめ、クラウス先生を見た。

 クラウス先生はじっとルシフェルをご覧になり、ゆっくりとボートを漕がれている。

 その表情はとても儚げで、海風になびく髪が、先生の闇色に光る瞳にかかるたびに、瞳の影が強まった。

 あのとき……いつから見てらしたんだろう……

 私はとてもドキドキしながら、意を決してクラウス先生に尋ねてみた。


「……見て、いらしたんですか……その、いつからご覧に……?」

「終わりの方でしょうね……ルシフェルの唇が、あなたの耳に触れてました」


 ……!

 め、めっちゃ恥ずかしすぎる!!

 そんなところを、人様に見られていたなんて!?

 私は本当に心底驚いて、そしてあんまりにも恥ずかしいんで、もう俯くしかなかった。


「あの時、貴女をルークとは組ませたくはありませんでした。ルークはもう、自分の気持ちに気づいていたので……しかしルシフェルは、まだ自分の気持ちに気づいてないと思っていました。貴女に好意があるのは知ってましたが、ああいう性格ですから、もっとこう色恋に鈍いというか……自覚はまだないだろうと安心していたのです。

 ……完全に私の判断ミスです。あの時、時間がかかっても四人で回ればよかったと、ひどく後悔しました」


 クラウス先生の表情には、後悔の念が滲み出ていた。私と視線を合わせようとはなさらない、ずっと横を見ていらっしゃる。

 私はもう俯くしかないので、再び視線を下に向けた。

 クラウス先生は、さらにお話を続けられた。


「ルークが私の貪汚の処理をしたヒノキに『ヒール』をかけているところに、私は二人を見つけましたので、ルークには見せられないと思い、本来行くはずのなかったのですが少し麓のほうまで降りて探索を続けたりしました。そして、少し時間を潰したのち戻ってきたのですが、そのときは二人は普通の作業に戻っていて、ほっとしました」


 クラウス先生はそう、悲しそうに微笑まれた。

 凄く気を使わせて、本当に申し訳ない……

 ……また、ルーク兄様には見られなくて、よかったとも思った。

 ルシフェルは兄様を立てる人なので……でも、いつまでもこんな状態が続くとも、思ってないけれど……


「クラウス先生にも変な気を使わせてしまい……申し訳ありませんでした」

「いいえ、ルシフェルの気持ちは、私も知っていましたので……よって、私の判断ミスですから、気にしないで下さい」


 そう、作り笑いをされながら、クラウス先生は仰った。

 ……

 でも、クラウス先生は、どうしてこのこと私に話されたのかな……

 ひと通り、それぞれの気持ちに対して私に向き合わせることで、問題から逃げないで欲しい……もしくは、私に結論を出すように、求められているのかな……

 でも結論を出すと言われても、皆んなのことが本当に大好きだし、皆んなを傷つけたいってやっぱり思っちゃうし……

 本当に、どうしたらいいんだろう……


「なんか、こんな私が皆んなを巻き込んでこんなことになってしまって……これで本当によかったのかと思う自分がいます……皆んなにお世話になって、皆んなが私を幸せにしてくれて、皆んなが大好きで、皆んなに恩返しがしたいのに……」


 ボールドウィン侯爵家に養女に来て、私は初めて人として大切にされてとても嬉しかったし、幸せだった。そして今も。

 でも、ボールドウィン侯爵家に来なければ、こんなことにならなかったんじゃないかという思いもあって、どうしていいのか、本当にわからない……


「恩返しという観点から物を言えば、ソフィーは世界を救っているわけですから、それ以上の恩返しはないと思います。ですので、気に病まれることはありません……ただ、時世が時世だし、ソフィーも未成年なので今すぐというわけではありませんが、私も、貴女も、そして他の皆も、いつかは決めなければなりません、自分の行く道を。

 ひとつの目安としてはソフィーが王立学院を卒業と同時に成人し、社交界に出る頃でしょうか。あと、一年半少し……それまでに、気持ちを決めて頂きたいとは、思っています」


 クラウス先生が、私を真剣な表情でご覧になる。

 そして、ボードを漕ぐ手を、止められた。

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