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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
長期休みから王立学院二年生
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海の調査開始

「魚調査にあたる生徒はアドリアーナ先生と共に船に乗り、あとはアドリアーナ先生の指示に従うように。アドリアーナ先生、魚は様々な種類をツガイで一匹ずつ捕獲して下さい」

「まあ、ノアの箱舟形式ですわね。神の御意思のもと、ノアになったつもりで頑張りますわ」

 と、アドリアーナ先生は無駄に色っぽく仰った。


 ノアの箱舟と言えば、養母様を思い出してちょっと笑えるんだけど、もしこの役目を養母様が仰せ使ったのなら、『箱舟が、小さすぎますわ!』とかいって、怒ってらっしゃるかも知れないな。


 私はちょっと想像しちゃってクスッと笑っていると、次の瞬間アドリアーナ先生が、バッとお召しになっている着物を脱ぎ払われて、めちゃ露出度高すぎる水着姿になられた。

 どうやら着物の下に、水着を仕込んでおられたようだ。

 ちなみに宝帯は巻かれていない。モーゼの杖や他の聖具と同様に、自由に出し入れできるのだろう。


「さあ、あたくしに選抜された二十名の男子精鋭たち! あたくしと共に、参りますわよ!!」


 アドリアーナ先生がめちゃ気合を入れてそう仰ると、これまた目のやり場に困った男子生徒たちが、目線を下にしてアドリアーナ先生のあとをついていった……いや、中には目を蘭々とさせている男子もいるな。

 まあ、アドリアーナ先生がチョイスした男子なので、先生に文句はないだろう。


 私はクラウス先生のほうを見ると……頭痛がするのかこめかみを指でぎゅっと押さえていらっしゃった。

 きちんとミッションを果たして来られるのか、心配なのかも知れない。

 でも、クラウス先生が仰るには、さすがにご両親がアドリアーナ先生にアドリア海にちなんだ名前をつけるだけあって、アドリアーナ先生ご自身も海に造詣が深くいらっしゃり、最近になってからの話だけど、一度ここにも足を運ばれ、船を試運転したり、軽く泳いだりもされていたそうだ。

 なので今回、アドリアーナ先生に生徒たちの引率をお願いされたんだと思うんだけど……まあとにかく、男子生徒たちが無事に帰って来たら、それで万々歳だなって私は思った。


 で、クラウス先生は、アドリアーナ先生に選ばれなかった残り男子たちと、女子全員に指示をを出された。


「砂浜探索チームは、まず最初に祓いの魔法『プリフィカティオ』か、もしくは魔笛でレクイエムを演奏し、打ち上げられた魚を浄化して下さい。得意なほうで結構です。また、砂浜に散在する海藻、貝、カニなどその他目につき気づくものがあれば、調査するように。残りの生徒は、砂浜と山林の境界線の調査をお願いします。防御結界が張られているため、砂浜から山林に侵入は不可能であり、またその逆も基本不可能ですが、神体山からの魔物が麓へ降りて被害が報告されている以上、何か原因があると思われます。何か不審な点があれば私に報告して下さい。以上です」


 そして私たちはクラウス先生に指示された通り、それぞれの役目の場所へ向かった。


 私は砂浜チームなので、まず砂浜に下りることになった。来た道を戻らないといけないのが少々面倒だけど、致し方ない。クラウス先生も私と一緒に来て下さった。ルシフェルもいる……いるんだけど、例のリカルド様も一緒にいるんで、あんまりそっちのほうには目を向けないようにしよう……相変わらず目つきが鋭すぎるんだよね、なので、目を合わせないのにこしたことはないなと思った。


 砂浜チームは最初に打ち上げられた魚の浄化作業があるので、光属性が強いか魔笛でレクイエムを演奏できる生徒は砂浜チームとなっている。

 祓いの魔法『プリフィカティオ』が上級魔法なので、二年生だと使える生徒がまだ限られるし、魔笛のレクイエムも上級レベルは必須となるからだ。

 なので、光属性が強いルシフェルが砂浜チームなのはわかるとして、あのリカルド様も、なかなかちょっと凄いんだなとは思った。確か、ルシフェルも言ってたことある。剣も魔法もまあまあ器用に使いこなすって……ただ、器用さを全部、剣と魔法に全振りしているんで、性格は頑固で融通が利かないらしいけど……

 で、リカルド様のバーンスタイン伯爵家はもともと光属性が強い家系だという。でも、その頑固で融通が利かない性格のせいか、闇の気持ちを煮えたぎらせて、でも闇落ちすることなく根性でご自身で消化、そして闇の魔力を図らずともすくすくとはぐくまれ、今では光も闇も半々くらい、光のほうがちょっと強いくらいかなって感じらしい。

 ……まあ、その性格もかえってよい方向に魔力アップへと転換させていらっしゃるなら、いいんだけどね。もともと王都の伯爵家出身でなかなかのお家柄、生まれ持った魔力も高いほうだと思うし、素質はあるんだろう。

 ただまあもう少し、優しい目つきになられたほうがいいんじゃないかなって、ちょっと思わないでもないんだけどさ。


 ちなみに、砂浜チームは二十人ほどで、山林チームが十名ほどだ。で、山林チームにはエミール様がいらっしゃった。

 エミール様は確か自己紹介のときに、光魔法は上級に入ったばかりと仰ってたのもあるけれど、探求心も旺盛でいらっしゃるので、いろいろ原因をつきとめて下さるかも知れないという期待も込めて、山林チームに選ばれたのかも知れないな。


 で、山林チームも来た道を戻らないといけないのは同じなので、魚チーム以外の生徒たちはクラウス先生のあとをついて、凱旋門のところまで戻ってきた。

 そして、私たちは二手に分かれ、それぞれの作業を開始した。

 砂浜チームの中には『プリフィカティオ』も魔笛もできない生徒もいるので、そういう生徒たちはすぐさま砂浜の調査を開始される。魔法や魔笛ができる生徒はクラウス先生の指示通り、各々の作業を開始するべく、指定された場所へと歩いて行った。

 私も同じ作業をするので、クラウス先生と一緒に歩いていく。

 でも……


「あの、クラウス先生、私もクラウス先生も『プリフィカティオ』が使えるのですから、別々に作業したほうが早いと思うのですが」

「いいえ、人員は充分に割いているのでお気になさらず。それよりも、ソフィーは初めて来た場所ですから、何か予期しないことが起こってはいけませんので、私がそばにいるのは、必須です」


 ……ああ、ひょっとしたらモーゼの杖のことかもしんないな。

 クラウス先生がそう仰るなら、お言葉に甘えてそばにいていただこうと思った。

 クラウス先生が指定される場所に着いたので、私は早速モーゼの杖を出し、呪文を唱える。


「プリフィカティオ」


 すると、砂浜に打ち上げられている魚たちが光に包まれて、癒しの光となって上空へと昇って行き、消えていく。

 打ち上げられているのはいわゆる普通のお魚さんたちだと思う。もし魔物なら、死んだらその場で魔石になると思うから。

 この世界に成仏っていう概念があるのかは分かんないけど、お魚さんたち、ちゃんと成仏すればいいなって思った。

 それにしてもハンナ様がいらっしゃったら、さらにお魚さんたちもめちゃ癒されて、もう夢見心地で成仏できただろうなあ……ハンナ様の笛はホント、格別だもん。

 今このクラスにハンナ様がいらっしゃらないこと、とても残念に思った。

 私が少ししょんぼりしていると、クラウス先生が心配そうに私の顔色を伺って下さる。


「どうかされましたか? ソフィー」


 ……

 うう、その呼び捨て呼びがめちゃ激萌えポイントだし、さらに背景が、水面キラキラ光る海っていうのもクラウス先生の輝きをさらに増し増しって感じがして、さらに美しカッコいいですよ!?

 と、こっそり”心のサプリアルバム”に永久保存しつつ、お返事した。


「この場にハンナ様がいらっしゃらないのが、とても残念に思うのです」


 私たちは、また次の地点へ移動すべく、歩きながら話を続ける。


「なるほど。ハンナのファイフはとても美しく、音色にも特別なものを感じますからね。エイデン先生も、非常に褒めていらっしゃいました」

「え、クラウス先生は、エイデン先生とハンナ様の朝練のこと、ご存じなのですか?」

「ええ、エイデン先生がしきりに仰るのですよ。ハンナ君の伴奏で、素晴らしい歌ができたとか、その歌を披露するのをあえて我慢しているのだとか、そんな我慢を強いて申し訳ないと思う気持ちが少しでもあるのならば、対抗戦で聖具使用を許可して欲しいとか……ちょっと意味が分からないなと思いながら、いつも話を聞いています」


 と仰って、クスクスと笑い始められた。

 でも、お困りになっているのではなく、笑っていらっしゃるということは、そんなにお嫌ではなさそうだ。


「エイデン先生……暑苦しくないんですか?」

「それはもう暑苦しいですが、ハンナを育てて下さっているので、微笑ましく話を伺っておりますよ。まだ対抗戦の許可は出しませんが」

「”まだ”と仰るということは、クラウス先生はいずれ対抗戦の許可を出そうと思われているということでしょうか? その許可を今出さない理由は、なんでしょう?」

「ハンナの魔力を上げるためです。ハンナのファイフはいずれ使う時が来ると私は思っていますので。もし今この時点で対抗戦の許可を出し、浮かれはしゃいでハンナとの朝練がおざなりになってはいけないでしょう?」

「さすがクラウス先生です! エイデン先生の扱いが上手で、助かります!」


 私がめちゃにこやかに張り切って言うと、クラウス先生がニヤッと口角を上げて、仰った。


「……ひとつお伺いしますが、ハンナとエイデン先生の朝練の黒幕は……ソフィーですね……?」

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