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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
長期休みから王立学院二年生
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課外授業でエレガンドゥード山へ

 それからというもの、私がクラウス先生と話し始めると、さっと人が離れるようになってしまった。でも、私がいないときは以前と変わらずクラウス先生と談笑する男子生徒たちや、クラウス先生を遠巻きに見て華やいている女子生徒たちなど、特に悪い雰囲気になることもなく、日常が過ぎていった。


 礼拝や朝礼では、相変わらずエイデン先生が熱い表情で、握り拳を作っていらっしゃるんだけど、それは、やっぱり歌は歌いたいものの、我慢していらっしゃるのだと最近知ることができた。全ては、対抗戦で聖具使用許可を得るために。

 ハンナ様が教えて下さったんだよね。あの前向き一筋のエイデン先生が、ときに愚痴っていらっしゃるのだという。


 ……歌詞に込めて。


 にしても、愚痴まで歌にされるだなんて、いったいどんなに暑苦しい歌に仕上がっているんだろう??

 想像するだけで汗ばんでくるよね、ホント。


 それに、ハンナ様は最初は伴奏に全力投球されるタイプだから、初めて聞いてすぐに歌詞を理解されるタイプではない。それなのに、そのハンナ様が歌詞を理解されているということは、何度となく歌に込めて愚痴をこぼしていらっしゃるという何よりの証明だ。

 よっぽど愚痴りたいのか、それともよっぽどハンナ様の伴奏で歌が歌いたいのか……まあ、両方かな?

 でも、その愚痴と我慢がメロディと歌詞に込められると、エイデン先生の熱い思いがさらにアップし、そしてその思いを受け止めるべく伴奏するハンナ様は、なぜだかさらなる魔力向上に繋がっているようだと仰って、良い相乗効果となっているとハンナ様ご自身は感じていらっしゃるみたいだった。

 なのでハンナ様いわく、自分のためにもぜひともこれからも、我慢を続けて頂きたいとか仰ってたな。


 私は、ランチのときにハンナ様のお話聞くだけでもう充分なんで、あんまり朝練には行かなくなったけど、よい感じに進んでいて、ホントよかった、よかった。

 いや、ハンナ様のこと心配してないわけじゃないんだけどね、とにかく朝からあのテンションはしんどいっていうか、朝も早いしね、ゆっくりしたいじゃん? しかもお話を聞く限り、暑苦しさがさらに増してるっぽいしさ。

 でも、ハンナ様はそんな不満も漏らされないし、とても頑張っていらっしゃる。また、朝練やランチだけでなく、普段の生活でもご自身で魔力を高めようと、日々努力されていると仰っていた。

 本当に素晴らしすぎる。

 ぜひこの努力が実って欲しいって、私はめちゃ願わずにはいられなかった。




 八月も下旬に入ったというものの、まだまだ暑い日が続いていた。

 そんな中、私たちのクラスは課外授業に行くことになった。行き先はエレガンドゥード山である。引率の先生はクラウス先生とアドリアーナ先生、海の調査も兼ねているという。

 クラウス先生が仰るには、海に魚が順調に戻って来ているようであれば、いくらか釣って魚の調査もしてもよいという『神の御意志』を賜っているということである。

 おお、これは漁猟再開のフラグ的な感じなのかな!? さすがにそれはまだ早いかな??

 まあとにかくお魚さんが無事に海に戻りつつあることを、めちゃお祈りしていようと私は思った。


 それにしても、私たちのクラスが海の調査に駆り出されることになったのは、モーゼの杖所持者がいるからっていうのもあるのかな? 昔、アニメで見たことあるもん。モーゼの杖で、海割ってるところ。

 まあ、そうかどうかはわかんないけど、とりあえず私たちは、引率のクラウス先生とアドリアーナ先生に連れられて、王立学院の転移陣からエレガンドゥード山の凱旋門にある転移陣に辿り着いた。


 今年の長期休みの時に、クラウス先生とエレガンドゥード山の山頂まで来たけれど、海は反対側にあるので、来た道と同じくらい下らなければならず、前回はちょっと体調を心配して、下りて海のそばまで行くのを諦めたっけ。まあ、クラウス先生が山頂からの目視で事足りると仰ったのもあるからなのだけど。

 でも今日は、頑張って往復しないとね。生徒の皆さんがしていることを、私ひとりできませんっていうわけには絶対にいかない。

 モーゼの杖所持者だから甘えてるだとか、平民のくせにとか、内心思ってる生徒の皆さん、まだまだいると思うから。

 クラウス先生が前の朝礼で、めっちゃ高圧的に処罰云々仰ってらしたから、表立って私に敵意を向ける人は絶対いないと思うけど、生まれて育った環境って一生の思考に左右すると思ってるから、それを根底からなくすのって、やっぱり無理だと私は思わずにはいられない。

 なので、変に悪目立ちしてはいけない。自分でできることは、きちんとしないとね。

 長期休み中に時々お散歩がてら体力つけに来ていたから、きっと大丈夫だと思う。


 私たちはエレガンドゥード山の山道に入って行った。

 先頭はアドリアーナ先生、そのあと生徒たちが続き、クラウス先生と私は一番最後だ。

 クラウス先生はルシフェルに、私のそばにいれる時はそばにいるようにと指示されたり、でもクラウス先生ご自身が私のそばにいらっしゃるときは、先生ご自身が私のそばにいて下さるんで、ルシフェルには自由に行動するよう仰ったり……きっと去年度の上級悪魔事件のこともあったので、念には念をということでいろいろ気を使われてるんだと思うけど、ちょっと申し訳なく思ってきちゃうな……


 でもクラウス先生は、私の申し訳ない気持ちをさらに申し訳なく思うようなお言葉を私にかけられた。


「ソフィー、もし辛かった『ミコモーヴェレ』で運びますので、教えて下さい」


 もう、何から何まで至れり尽くせりなんだもん、ホントお心遣いが半端ないです。

 それにしても今日はお天気もよく、陽の光に照らされたクラウス先生の笑顔がホント眩しいです。風になびく金髪も、光を含んでさらにキラキラしているな……

 って、めっちゃ見惚れちゃった、お返事しないといけないのに。


「大丈夫です、クラウス先生。お休み中にけっこう体力もつけられたと思います」


 私がめちゃにっこりしてそう言うと、クラウス先生もめちゃ美しい笑顔を返して下さった。


 ちなみに、ルシフェルは今は男子たちと一緒に行動している。

 今はクラウス先生が私のそばにいるということで、

「じゃあ、ソフィーをよろしくっす!」

 とか、王子相手に相変わらずなってない敬語を使いつつ、行ってしまった。

 まあ、ルシフェルはいつも私のお守ばっかりさせてホント悪いから、今日は課外授業だし、出来る限りお外で男子たちとはっちゃけて欲しいな……

 なので私もできる限り、クラウス先生のおそばにいようって思った。


 そして、エミール様はどうされてるのかなと思い、ちょっとキョロキョロしてみると、今はおひとりで、山道の脇に生えているハスノハグサの実をご覧になりながら、歩いておられた。

 ハスノハグサの実がなるのは季節的に七月から九月で、八月の今はまさに旬、魔石やポーションなどにも使えるとても貴重な素材なので、いろいろ吟味されているのだろう。いつなんどき人を買収……いや、様々な用途で使うことになるか、わかんないしね。

 ちなみに、ハスノハグサの花は深紅の色して形はめちゃまん丸でかわいらしいんだけど、ハスノハグサの実もめちゃまん丸なのは同じで、かつ色が黄緑色で、これまたかわいらしい。

 どっちも見てるだけでも癒されちゃうな、うん。


 で、エレガンドゥード山といえば、七ツ山の中で海に突出している神体山だ。エレガンドゥード山はちょうど去年の今頃解放され、そして、その両隣にある海に接している神体山、南隣のイラエ山は私が一番最初にうっかり解放してしまったし、北隣のイルスガウディム山も、今年の三月に解放された。

 というわけで、海の満たされ具合、魚の戻り具合などを目で確認しつつ、魚の状態を調べ、王様に今日の海と魚の状態を奏上し、『神の御意志』を確認されれば、いづれは漁猟再開という流れになると、クラウス先生が教えて下さった。


 おお、素晴らしい! この世界に転生して一年半、ようやくお魚さんにありつけるかも知れない!?

 そんなことを考えると、足取りも自然と軽くなるな。とりあえず行きがけは、特に疲れることなく海まで辿り着けるだろう。よかった、よかった。


 そして、先日解放したサナモニア山を入れれば、七つある神体山のうち四つを解放したということになる。

 ひとつ心配なのは、神体山を解放するごとに、魔物が強くなって、市街地や他領地などでの魔物被害が以前より多く報告されるようになったことだ。

 まあ、その中の魔物に海の魔物とかはいないから、大丈夫なのかも知れないけど、海を全部正常な魔力で満たすのにはまだまだ時間がかかるのはわかっているので、油断をしてはいけないと思う。

 そういえばクラウス先生が最初、船を出して調査するチームに、遠瀬には行ってはならないときつく忠告されてたな。

 船にはアドリアーナ先生が同乗されるから、もし何かあっても宝帯で守って下さるとは思うけれど。


 ……まあ、アドリアーナ先生の場合、別の意味でいろいろ心配っちゃ心配なんだけど……適宜対応ということになるのかな?

 あんまり深くは考えないでおこう……


 あと、今日は暑いから泳げないこともない気候だけど、皆んな制服だし泳ぐことは想定していない。

 クラウス先生もいつも通りの黒っぽい恰好だし、アドリアーナ先生もいつも通り露出めちゃ激しい着物風の服に、ご自慢の宝帯を結んでいらっしゃった。

 ……まあ、アドリアーナ先生の場合は、そのまま泳いでも問題ないんじゃないかなって感じの服装なんだけどね。


 山頂に着くと、ウルルが相変わらず魔力奉納に来た貴族の皆さまに案内をしていた。

 いつ見ても、ウルルのツアーガイド姿はめちゃかわいらしいな。

 でも、先日のサナモニア山解放ではクラウス先生のことに必死で、ウルルには会えなかったので、またいつかウルルのお仕事が邪魔にならないときに、なでなでできるといいなって思う。


 そして、反対側の山道は私にとって初めて通る道である。山道の入口まではクラウス先生と来たことあるけれど。


「ソフィー、休憩しなくても、平気ですか?」


 隣にいらっしゃるクラウス先生が、心配されて、私に声をかけて下さった。

 私は、笑顔で答える。


「皆さま行かれるというのに、私だけ行かないというわけには参りません」

「そうですか……いつもは山頂で休憩するのが常でしたので」

「長期休み中に、クラウス先生が私を神体山に体力増強がてらひっぱりだして下さったし、あとはドミと一緒に宮廷舞踏や乗馬の練習でそこそこ体力もついてきたので、大丈夫ですよ」

「そうですか。ならば、よかったです」


 そうやって微笑まれるクラウス先生は、本当に、眩しいなあ……

 って、見惚れている場合ではないよね。

 山頂で二人だけ休憩してたら、さすがに”処罰”を恐れて文句を言う生徒はいないと思うけど、さすがに怪しすぎだし甘えすぎ。

 なので私はいつにもまして元気な足取りで、反対側の山道に入って行った。

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