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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
長期休みから王立学院二年生
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今にして思えば……

 サナモニア山の神体山解放から帰ってきて、あまりに色んなことがあり過ぎて疲れ切ってしまっていた私は、とりあえずベッドの上に突っ伏すと、そのまま睡魔に襲われて、泥のように眠ってしまった。


 ふと目を開けたら、カーテンが閉まっている。カーテンを少しめくって外をのぞくと、辺りはすっかり暗い。もう、夜になっていた。

 晩ご飯を食べていなかったので、めちゃお腹空いたなあと思っていると、テーブルの上にはサンドイッチとティーセットがあり、その横には置手紙があった。


『ソフィー様、お夜食をお持ちしました。よろしければ、お召し上がりください。ドミ』


 至れり尽くせりのメイドで、実に素晴らしいなと思う。

 私はカップに紅茶を注ぎ、サンドイッチを頬張りながら、いろいろ考えを巡らせていた。


 まず、今日の最初の衝撃と言えば、エミール様の編入だ。

 あまりにもハイスペックで、ルシフェルが『ミニ・クラウス先生』って表現してたけど、その表現がまさにピッタリって感じの、オールマイティ系生徒だ。

 おまけに、雪の精霊かと思うくらい美し過ぎるし……

 でも性格はちょっと怖いっていうか、買収を画策したり、あの熱すぎるエイデン先生をクールダウンさせたり、末恐ろし過ぎるというか……

 さらにいうと、そんな方が私の側近になるのが夢だとか謎過ぎることを仰るんで、どうしたもんかなって感じよね、これ?

 でも、エミール様のことは今日初対面なのでまだ分からないことばかり。

 これから一緒に過ごしていくにつれて色々分かることもあるだろうから、対抗策を見出すべく、注意深く接していきたいなと思う。


 ……そして、


 今日一番の驚きはと言えば、なんといってもクラウス先生がこの世界の第一王子様だったってことよね……


 クラウス先生が瀕死の重傷を負われ、私も必死に助けて、命が助かったとわかったときは、私もホント嬉しくて号泣したんだけど、その喜びと感動におちおち浸れないくらい、めっちゃ驚いたもん。


 大体、最初から色々、私が尋ねても曖昧に返事されることが時々あり、ちょっと怪しいとは思ってたんだよね。

 まあ、私も昔のこととか尋ねられるのイヤだから、自分がされてイヤなことは人にしないでおこうと思って、あえてそれ以上尋ねたりはしなかったんだけどさ。

 武術に魔法に、魔法陣作成に魔術具にって、全部が全部、恐ろしいレベルで出来過ぎて、そもそもできないことなんて全然なくて、よっぽど高位の貴族に違いないって思ってたけれど、王子様だったっていうんなら、このスペックならむしろ、納得だなって思った。


 そもそも一番最初の授業のときに、話の流れで年齢をお尋ねしたときは『二十歳くらい、でしょうか?』とか、ご職業をお尋ねしたときは『雑用係、でしょうか?』とか、なんで『でしょうか?』なんだろうって、めちゃ思ったもん。

 ……まあ、王子様が『雑用係』っていうのは、絶対ありえないけど。

 ……他に表現のしようがなかったのかもしんないな。

 本当の年齢については、いつか尋ねる機会があれば、訊いてみたいなと思う。

 あと、髪色と瞳の色が、自身の魔力の属性と関係があるのかと質問したとき、話の流れでクラウス先生の髪色と瞳の色についても質問したけれど、

『まあいずれ、お分かりになる時が、来ると思いますよ』

 って、言葉を曖昧にされてたし……

 今ならその理由は分かる。

 王族は基本、光属性と闇属性が半々だという。

 で、クラウス先生の今のご容姿は、金髪に闇色の瞳なので、これ、完全に王族パターンよね。

 で、王子であることを内緒にされてたわけだから、なるほど、回答も曖昧にされるわけだ。

 でも、それと同時にその属性が絶対に髪色や瞳として出るわけではないとも仰ってたっけ。

 ルシフェルだって、髪色は水色だし、瞳の色はキレイなエメラルドグリーンだもんね。

 ひょっとしたら王族もバリエーション豊かな感じなのかな? いつか訊いてみたいと思う。


 そういえば、王立学院のファイフの授業でも、ルシフェルなら冗談で、ファイフの中に紙吹雪仕込んで、クラウス先生の片眼鏡に目くらましの『攻撃魔法』とかやりだすかも知れないっていう話題で盛り上がったときに、

『クラウス先生、ルシフェルの”紙吹雪ナンチャッテ目くらまし攻撃魔法”の対抗策として、予め片眼鏡を外されたりはしないんですか?』

 って私が尋ねたら、クラウス先生、

『まあ、ルシフェル様のナンチャッテ攻撃魔法はさておき……そうですね、いつかソフィー様の前で、片眼鏡を外せるときが来ればいいなと思います』

 って仰ってたけれど、今から思えばとても意味ありげだ。

 あの時既に、いつかはご自身が王子であることを、私に告げるおつもりでいらしたのか……


 その他にも、以前聖具のことを尋ねたとき、秘匿情報のはずなのに色々知り過ぎていらっしゃるのも、ちょっとおかしいとも思った。

 クラウス先生は確か、”どの天使がどの聖具”くらいまでの情報は持ってらっしゃるんだけど、それを他人に言うと、誰がどの聖具を持つかという妙な噂が流れ始めたり、その聖具欲しさにその武器ばかり鍛錬したり、その他いろんなことを考えて、七大天使、ひいては神の御意思を無視して勝手に行動する者が出てきて、それが妙な欲を刺激し、最悪貪汚(たんお)落ちしてしまいかねないということで、秘匿情報になっているって仰ってたっけ。

 じゃあなんでそんな秘匿情報、クラウス先生知ってんの?ってお話なんだけど、今となってはそんな情報知ってらっしゃるのも、王族だからなんだなってめちゃ納得できちゃうな。


 あとは、長期休み中にエレガンドゥード山に二人で行ったときも、許可があれば神体山に関われるっぽいことも仰ってた。

 あれもきっと、王様の側近だから関われるんじゃなくて、そもそも王族だから関われるんだ。

 確か、

『王族同等のソフィー様ですから、色々教えても問題ないとは思いますが……まあ、時期が来たら分かることですので、またお話するときが来たら、お教え致しますね』

 って、仰ってたと思う。

 で、そんなはぐらかし方をされるもんだから、私はちょっと何か、特殊情報捜査官みたいな、秘匿情報いっぱい扱ってる組織所属とか、FBIやCIAみたいな感じのお仕事をされているのかなって適当に思ってたけど、さすがに王子様だったとは、想像できなかったな……


 そう言えば去年、神体山に夜の蛍を見に行ったときは、クラウス先生も、蛍を見るのは初めてだとかで、

『なので今日は、とても楽しみにしておりました。父上からお伺いした話では、一万匹の蛍がやって来るそうですよ』

 って仰ってたけど、ここで仰る父上って、よくよく考えたら、王様のことだよね。

 そのときは単純に、『クラウス先生のお父様か。ご家族のお話は初めて聞いたな』って、のほほんと思ってただけだったけど、今から思い返せば実は、それは王様のお言葉だったと知ると、なんか恐れ多い気持ちになってしまう。

 『蛍が一万匹とのお言葉を、王様より賜りました』みたいな。


 あと、蛍を見に行ったときに、クラウス先生が私の頭の上に、シロツメクサの花冠を乗せてくれたっけ……

『王族同等ということで……王冠の簡易版です』

 ちょ、ちょっと、リアル王族から、なんちゃってとはいえ王冠をうっかり賜るとか、めちゃ恥ずかし恐れ多いったらないわ!

 そしてそのときのクラウス先生の微笑みが、本当にまた夜闇に紛れて、いつもとはまた違う雰囲気で、めちゃ美しかったんだよね……

 ……

 って、思わず私の”心のサプリアルバム”、開けちゃったじゃん。

 まあ、私の脳内所蔵アルバムだから、別に好きに見ていいんだけど。

 でも、ちょっとクラウス先生の片眼鏡闇色髪バージョンと、金髪王子バージョンが今、私の脳内で交錯しまくっているので、ちょっとなんか落ち着きたいなって思った。

 紅茶をひと口頂いて、サンドイッチを食べたばっかりだというのに、ベッドでまたごろごろしてみた。

 でも、さっきまでめっちゃ寝てたので、なんかちょっと、落ち着かない……


 そうだ、こういうときに『古の魔術書』を読むのはどうだろうか?

 さっき神体山解放もしたところだし、何か経験値も増えて、読める個所が増えてるかも知れない。また、例え新しく読める個所が増えてなくても、イメージが膨らみやすくなってたりする個所もあるかも知れないし、暇つぶしにちょっと、手に取ってみようかな。

 そして、『古の魔術書』を読み終わって本棚に戻すときは、元あった位置からわざとちょっとずらして戻しておくと、いかにも読んだんですよっていう感じが出て、きっとドミも喜ぶに違いないな。

 うん、『古の魔術書』を手に取ろう。

 私は立ち上がり、本棚へ向かい、『古の魔術書』を手に取り、執務机の椅子に座った。

 そして、『古の魔術書』をパラパラとめくってみる。


 ……やっぱりなにか、トリガー踏んだみたいだ……


 読める文字も、また少し増えていたし、あと光属性も闇属性も、どちらもイメージがさらに膨れる魔術があった。

 しかも闇属性の古の魔術のひとつは、なんか、そのページを開いただけで”ぶわっ”っとイメージが大きく膨れ上がり、なんていうか……ちょっとこれ……使えちゃうかも知れないような……っていうかもう、使えちゃうんじゃね、的な……


 私は、ちょっとしばらく考えたのち、『古の魔術書』をパタンと閉じた。


 クラウス先生に、知らせなくちゃ。

 でも、さすがに今日は夜も遅い。

 明日の放課後とか、お時間頂けるかな。

 『古の魔術書』なんで、変な場所では見れないし、まずは明日、先生に指示を伺おうと思った。

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