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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
長期休みから王立学院二年生
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サナモニア山を解放、そして帰路へ

 エイデン先生はというと、なんだか目の焦点があっていないように見える。そして何やら独り言をブツブツ呟かれ始めた。


「……仮にも王子に対抗戦の件で交渉など……できるのだろうか……」


 なるほど。さすがに前向き過ぎるエイデン先生でも、王子様相手に暑苦しく交渉するのは、躊躇っちゃうようだ。

 一応さっきの跪いて最敬礼するときだって、首痛いの我慢されてたと思うもん。


 ……まあ、エイデン先生の首の可動範囲が激狭設定なのは、私とルシフェルの勝手な妄想なんだけどね。


 するとエミール様がすかさずエイデン先生に近づかれて、「私が策を授けましょう」とかなんとか、どっかの諸葛亮孔明みたいなこと仰ってる。

 エイデン先生に貸しでも作るつもりかな?

 で、エイデン先生はというと、お顔が瞬く間に紅潮し、エミール様の仰ることに真摯に耳を傾けられていらっしゃるご様子……変なことを吹き込まれていなければいいなって、めちゃ思った。


 私たちが山道を通って下山していると、意気消沈していたのもどこへやら、すっかり元通りになったルシフェルが、興味津々にクラウス先生に尋ねた。


「クラウス先生! 実は前から変装の趣味があって、そんな魔法使えるんですか!?」


 すかさずルーク兄様は、ルシフェルを窘められるんだけど、クラウス先生は、少し呆れながら笑って答えられた。


「そんなわけありません。王の勅命により、姿を変え、ソフィーをそばで見守るように言われていました」


 ……どうしてですか……?

 私がそう尋ねようとしたとき、クラウス先生は私を見据えて言った。


「私が、この世界の第一王子だからです。王族は、世界の危機を救う義務があります。故に私は貴女のそばにいます」


 私はクラウス先生の目を見ると、瞳はいつものクラウス先生だ。でも、片眼鏡もないし恐ろしく美しすぎる金髪で、なんだか不思議な感じ……

 でも、瞳の色は前と同じ、黒に近い紺色なんで、さすがに瞳には魔法かけれないのかな……単に瞳まで魔法をかける必要ないと思われたのかな……

 にしても、ホントにホントに美しカッコよすぎるな……

 なんて、とりとめのないこと考えていると、


「そんなに、見つめないで下さい」


 と仰って、クラウス先生は苦笑いされた。


 いやあ、それはまあどうしても見てしまいますよね、当然。あまりに美しカッコいいし、今までと全然違うお姿だし、仕方ないよね、うん。

 ……えっと、それでなんだっけ、世界を救う義務があるというクラウス先生、だから、私のそばにいるという。まあそれは私がモーゼの杖所持者だからというお話は以前お伺いしたけれど、でも……


「でも、どうして正体を隠されていたのですか?」

「それは、平民出身のソフィーに萎縮されてはいけないと王が思われたからです。

 私は王の勅命により王子として動けない場合は裏の姿で隠密活動をすることが今までも何度となくありましたが、丁度その時に私は貴女と出会いました。それを好都合と思われた王が、警戒されないように、そして貴女を大切に育てていくためにも王子の姿ではなく、変装した姿のまま貴女と接したほうが良いのではないかと王は判断されました。

 また、ボールドウィン侯爵家の家庭教師の話もあり、それによりなおの事、私が王子であるということは伏せておこうという話になりました」


 なるほどな、そのような事情があったのか……

 って私が感心していると、すかさずまたルシフェルが、口を挟んできた。


「俺も早速、視覚誤認の魔法覚えて、人を驚かせよ!」

 とかなんとか嬉々として言っている。

 もちろんすかさずルーク兄様が窘められる。

「クラウス先生は、私たちを驚かせるためにやっていたのではない……まあ、凄く驚きはしたけれど……」

 そんないつものやりとりに、私は思わずクスクスと笑ってしまう。


 それにしてもルシフェル、行きがけはエミール様のこともあってか、凄く気持ちがトーンダウンしてたけど、今はすっかり元通りで、ホント良かった。

 ……まあ、ぶっちゃけ色んなことがあり過ぎて、考えても無駄ってな感じになっちゃって、もう開き直るしかないよね。うん、分かる。私もそうだもん。


 でもまあとりあえず、今回の神体山解放で聖具を与えられたのがこの世界の王子である、まとも系のクラウス先生だったのは本当によかった。

 これで恐らくは、奇想天外系の聖具所持者であるアドリアーナ先生とエイデン先生の暴走(?)を、少しは止められるんじゃないかな。


「でも、今回の神体山解放でクラウス先生が聖弓の所持者になられて、本当に良かったです……ちょっとなんていうか大天使が聖具所持者を選別する方法に、ちょっと私、疑問を感じておりましたので……」

 私がちょっと苦笑いしながら言うと、クラウス先生も同じように、苦笑いされた。

「……まあ、入学式のことを思い返しても、私もソフィーに同意見ですが、ただ実力は折り紙つきですので、どうしたものでしょうねぇ……」

「ホント、どうしたものでしょうね……?」

 私たちは思わずお二人の奇想天外なご様子を思い出し、クスクスと笑いあってしまう。


 でも、次の瞬間クラウス先生は、少し険しい顔をされた。

「ですが今回の件で、私は認識が甘かったことを痛感しました。未開放の神体山の魔物が強くなっているという情報は手に入れていたのに、この有様ですから……ちなみに今回の七大悪魔は、ベルフェゴールでしたか? 悪霊がこれでもかというほど出てきましたので」

「はい、仰る通りです。首座悪霊、ベルフェゴールでした」

「……となりますと、“悪霊の首領”という異名を持つベルゼブブが今後出てくることを考えると、もっと慎重に慎重を期して対応しなければなりませんね……魔法師団の人数を増やすのはもちろんだが、やりすぎると、宮殿の守りがかなり手薄になるので、それは避けたいのだが……騎士団の魔法も得意とする人員をさらに増員したほうが、良いだろうか……」

 とクラウス先生はちょっとクラウディウス王子モードで色々と考えを巡らされていた。

 そうか、やはり王様がいらっしゃる宮殿の守りが弱くなってしまうのは大変なので、その兼ね合いがどうやら難しいみたいだ。王宮全域にはめっちゃ強力な防御結界が張られているというし、下手に魔法師団の人員を割くこともできないのかも知れない。

 ……私としては、クラウス先生のことがめちゃ心配だし、今回のようなことは二度とあって欲しくないので、魔法師団長でも誰でも連れて来て欲しいって思っちゃうけれど、それで王様を危険に晒したくないと思われるクラウス先生のお気持ちも分かるし、正直複雑だな……


 でもクラウス先生って、本当に凄いなって思う。

 普通、あんな瀕死の重傷を負ったなら我が身可愛さで、優秀で強い人を片っ端から連れて行きたくなるよ、ホント。

 でも、クラウス先生はそんなことを一切考えられない。

 この世界を守る頂点である王様や、そしてこの世界の民のこと、そして世界のことを一番に考えられていらっしゃる。

 だって、さっきも仰ってたもん。

『私が、この世界の第一王子だからです。王族は、世界の危機を救う義務があります……』

 って。

 でもさあ、自分の命を顧みずに任務を全うしようとされるのがさ、ホントもう困っちゃう……

 だって、こんなにも瀕死の重傷になられたのだって、騎士団の皆さまを一人でも多く助けようと、貪汚たんおをご自身の限界値以上に取り込み、皆さまを助けられたからだ。

 この世界と、そしてこの世界に住む人々を守るのが王族の使命って、心に刻まれているのだろうけれど……

 いや、それがきっと恐らくは、正しい姿なのかも知れない。そして、そういう王族だからこそ、人々は命を賭して、ついて行きたい、王族をお守りしたいと、思われるのだろうから。

 現に養父様はじめとする光の一族は『王族を守る剣』として、教育を受け、誇り高く生きていらっしゃる。

 ってな感じで、わかるっちゃあわかるんだけど、でもやっぱり私的には困っちゃうなあ……だって、本当に死なれたら、絶対に、イヤだもん。

 なので、正直私が世界を守るとかは未だにホントよくわかんないけど、私は絶対にクラウス先生は守りたいので、世界を守るクラウス先生を全力で助けるべく、これから私はさらに頑張らなければならないなって、決意を新たにした。


 って、私がせっかく真摯な気持ちで決意を新たにしているところに、相変わらずルシフェルが、イタズラのことを一所懸命ルーク兄様に話し、兄様に呆れられていたので、私は早速ルーク兄様に助け船?っていうか、ちょっと話を変えてみようと思い、ルシフェルに話しかけてみた。


「ねえ、ルシフェル、今日さ、ハンナ様と一緒にランチしようって話、したじゃない?」

「ああ、それがどした?」

「それに加えてね、ハンナ様の魔力を上げるために、ハンナ様にファイフでエイデン先生の歌の伴奏をして頂こうかと思うんだけど、協力してくれないかな?」

 私がそう言うと、ルシフェルの顔がみるみるうちに、ぱぁっと明るくなった。

「何それ? ちょー面白そうじゃん!?」

「でしょ? で、私はエイデン先生とはあんまり接点がないんで、ルシフェル、ちょっとお話してみてくれるかな?」

 すると、私の言葉を受けてルシフェルが、自身のおでこに右手人差し指と中指をもってって、前後に”チャッ”って感じ振って、言った。

「任しとけ!」

 そしていつも通りニカって笑うルシフェル、めちゃ頼りになるな。

 いつもなら、イケメン過ぎてちょっと腹立つって思うところなんだけど、今日は一段とカッコいいだけでなく頼りになる男子に見えてきた。実に素晴らしい。

 ここはルシフェルに任せ、進捗状況、エイデン先生のご様子を時々伺おうと思った。


 で、ルシフェルが私に質問してくる。

「ところでそのハンナって子さ、ファイフ、吹けんの?」

 いやいやさすがにファイフ吹けない子に、こんな魔力上げは提案しないでしょと思っていると、ルーク兄様がルシフェルに、ハンナ様のファイフの素晴らしさを説明してくれた。

「凄く上手だよ。最上級クラスで一緒だけど、腕前は、王立学院で一番だね」

「ええ! 兄上より上手なのか!? そりゃ凄いな!」

「一応言っておきますけど、ルシフェルみたいな”インチキ超絶技巧”じゃありませんよ」

「……ソフィー、またその口が言うのか!?」

 そう言ってルシフェルがまた、私の口を塞ごうとやって来る!

「ごめん、ウソウソ、冗談!」

「ルシフェル、わかったからやめなさい!」

 逃げる私、そしてルシフェルを制止するルーク兄様、いつも通りの形になって、私たちは笑いながら山道を歩く。


 そんな私たちをよそにクラウス先生がふと、「ハンナの魔笛か……」と、呟かれた。


 何か、思うところがおありなのかな?

 わかんないけど、ハンナ様のファイフが何かよいことに使われて、そしてそれがさらなる魔力量アップに繋がり、いつか一緒のクラスになれたらいいな……


 そんなことを考えながら私は、ルシフェルから逃げたり、ルーク兄様に守られたり、クラウス先生の”考える人”風めちゃ美男子ぶりを堪能したりしながら、私たちは下山した。

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