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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
長期休みから王立学院二年生
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七大悪魔ベルフェゴール

「私は七大悪魔、ベルフェゴールだ」


 ……ああ、やっぱり、怠惰の七大悪魔、ベルフェゴールだった。そしていつも通り、姿かたちは一切見えない。私の脳に、直接語りかけてくる。

 ベルフェゴールは言う。


「七大悪魔はサタン様の意思を強く受け継ぐ者。サタン様は、人を罪へと誘惑する御方。そして彼の御方は、食欲、肉欲、名声欲などあらゆる欲を使い、人々を誘惑する魔王……」


 ああ、これもいつも通りだな。

 魔王サタンの次に強いというベルゼブブの配下というベルフェゴール、マジでホント怖いけど、でも、やるしかない。

 私は一枚岩に、魔力を注ぎ始めた。


 ちなみに私は、めちゃ前世的でいうところの怠惰である。とても怠け者であったと自負している。

 ちなみに現世的な怠惰は、ちょっと働いたこともないしよく分かんないけど、でも私が思考を放棄するほど働くとは思えないし、思考をめぐらすことは、育った環境のせいもあって、小さな頃から染みついているほうなので、現世的『怠惰』はどちらかというと縁がないほうだと思う。


 私が前世的怠け者になった理由は、前世では私に期待する人が、一人もいなかったからだ。


 最初、私が小さかったときは、どんなに虐待を受けても、なんとか母親の気を惹こうと、怒られずにすむようにしようと、一応努力はしていた。

 母親は常に私の出来が悪いからというしつけ名目で私を虐待していたので、小さい頃は『じゃあ、出来がよければ虐待に遭わないはずだ』と、純粋に考えていた時期もあった。

 幼稚園の頃とか、少し頑張っていた気がする。でも、それでも願いは叶わず「お前は何もできない役立たず」と言われ、余計に腹立たせて被害がひどくなった。

 どうして被害がひどくなったのか。

 それは、私が母親に期待しているその気持ちをぺちゃんこにすることを楽しく思うからなのか、私が母親の期待に添えられると思っているのが上から目線でおこがましいと思い腹立たしく思っているのか、単になんでもいいから理由をつけて私を虐待するのが趣味なのか、未だに私にはわからない。

 まあ、全部あてはまっているのかな、とは思うけれど。

 小学校上がる頃には既に悟り?を開いていて、ただ無気力でぼんやりしている生徒だった。誰も期待しないので、私は何もしない、何かをする気力も起きない。

 期待すれば逆に傷つく。無駄な期待はしない。無駄な労力は使わない。なるだけ被害を抑えるために。

 そんな日常が当たり前だったので、私はとにかくすることがなかったため、ほぼ生粋の怠け者になってしまった。そして、そのせいもあり、色々考えを巡らせるのがクセになり、妙な思考力がついてしまった。

 その妙な思考力が、ベルフェゴールの『怠惰の思考』に打ち克つことができるだろうか。


 入ってきた思念は、ひとつの宗教団体だ。

 出家信者のようで、皆が何やらヘッドホンで聞いていた。聞いているのは教祖の有難い説教だという。

 で、教祖の生説教もあったり、宗教の勧誘に精を出したり、またヘッドホンで教祖の説教を聞いたりして一日中過ごしていた。ちなみに、自由時間は一切ない。自分の意思を持つことは煩悩であり、意思だけでなく財産もろとも全て教祖に捧げ、教祖のことしか考えてはいけない。それがこの宗教の教えだった。

 で、自由時間もなくその教祖の説教テープを聞いているので、夢にまで出てくるようになるという。そこまできて、本物なのだそうだ。

 で、この素晴らしい教えを信じない者は悪であり、その者には災難が降りかかる。その災難によって、その悪者は煩悩から少し解放されるけれど、それでもまだこの素晴らしい教えを信じない不届き者は、さらに酷い災難が降りかかるという。そしてその災難は、信者たちがその不届き者のために、あえて災難に遭わせてもいいそうだ。ようは犯罪なんだけど、それがこの宗教の教えの中では神の鉄槌なのだという。

 そして、日々の修行や勧誘、神の鉄槌という善行(?)を積み重ねることによって、その宗教内での地位が上がり、徳(?)が増すという。

 で、その宗教の偉大さを知らしめるためには、その宗教を信じる信じない如何にかかわらず多くの者を被害に遭わせてもいいし、また、被害に遭わせることによって、その者たちの煩悩が少し落ちるので、その者たちにとっても良いことだし、喜ばしいことなのだ、なのでテロ行為も躊躇せず、善行だと思って行うように、とかなんとか言っている。


 ……なんちゅう教えだ。

 単に、自分に全財産をよこさない奴や、自分たちの言うことを聞かない奴は、危害を遭わせてやるという、ただの犯罪集団じゃないか。

 おまけにテロ行為を善行とか、頭がおかしいにもほどがある。

 ホントにこれ、信じる人が、いるの?

 すると、信者たちの思念が入ってきた。

 ……完全にマインドコントロールに入っている信者もいる。毎日毎日その妙な教えを休みなく聞いて、夢にまで出てくるようになったら、そのような思考回路になってしまうようだ。

 でも、躊躇いを見せている信者もいた。

 でも、ここで躊躇ったところでどうなるだろう? 自分がこの教えや指示を否定したら、今度はほかの信者が教祖の指示で、『善行』という名のもと自分に危害を加えてくる。その『善行』の末、死んだ信者も中にはいる。

 見ず知らずの人を殺すか、自分が殺されるか……

 そんな考えが一瞬過るものの、やはりマインドコントロールがかかっているので、躊躇いを見せた者も、やはり『善行』と言う名の暴行やテロ行為に手を染めていった。


 ちょっと分かってしまった。

 この世界の、考えを放棄系の『怠惰』の行きつく先は、『洗脳』だ。

 ベルフェゴールの『怠惰』は、働きっぱなしの人が『本当の自分の姿になること』を怠ることだ。

 つまり、四六時中休みなく妙な教えを叩きこんで、考えることを放棄させ、本当の自分を捨てさせることが、究極の『怠惰』なんだ。


 でも、私は前世の宗教のイメージが強いので、『宗教』=『洗脳』というイメージがある。


 でもこの世界の宗教は、ベルフェゴール的『怠惰』を、『モーゼの十戒』のひとつ『主の日を心にとどめ、これを聖とせよ』、つまり、「安息日には仕事を休んで体をしっかり休める」という教えの中で、『怠惰』を禁止、つまり「安息しない人こそ怠惰である」と教え、『本当の自分の姿になること』を怠ってはいけないとしている。


 ……考えが真逆過ぎて、びっくりした……

 つまりこの世界では『洗脳』こそ『怠惰』なので、『モーゼの十戒』という教えの中で『洗脳』も、厳しく禁じているのだ。


 私はそんなひとつの考えに辿り着いたのだけれど、そこは当然『怠惰』のベルフェゴール、これ以上私にものを考えさせないように、さらなる酷い思念を嵐のようにぶつけてくる。そして、私の脳にも直接訴えかけてきた。


 考えるな…考えるな…考えるな…そうすれば、楽になれる……

 考えないで生きるのは楽だ……

 人から指図されるだけで生きるのは楽だ……

 言われたことだけすればいい……何より悩む必要がない……

 お前は悩みから解放されたくはないのか……

 考えて行動すれば責任が生じる…そんなものは重荷にしかならない……

 考えて何になる…自由はお前を孤独にする……

 そんな孤独な世界に身を置いて寂しいだろう……

 絶望しろ…全てを放棄しろ…貪汚たんおに落ちろ……

 そうすればすぐに…楽になれる……


 もう、なんだかめちゃカチンと来た。

 そんな奴隷ロボットみたいな人生、人間扱いされない人生、楽かどうかは人それぞれかも知れないけど、私にとっては全く、楽しくない人生だ。

 そんな人生を生きて、どうすんの? 自分という”個”が全く存在しない人生、そんな人生生きてる意味なくない?

 じゃあ、そう思うんなら自殺しろ、絶望して貪汚に落ちろって思わせる系の、そそのかしかなんかかな?

 おあいにくさま、私は生みの親に死ぬほど暴力受けて虐待されていても、自ら命を絶とうと思ったことは、ありませんでした。

 なので私の人生、今後楽しかろうがなかろうが、腹立とうなが何しようが、一切関係なく、自ら命を絶ったりとか、ありえないです。

 だいたい何よ、『指図されるだけで生きるのは楽』とか、『考えて行動すれば責任が生じる』とか。

 もちろんそういう側面もあるだろうけれど、どうせそんなしょーもないこと言って、わけ分かんないことを強いるパワハラ上司なんだったら、指示された通りに動いたって速攻トカゲのしっぽ切り、罪を擦り付けられるに決まっている。それなら最初から、自由にさせろって話よ。

 あと、『自由はお前を孤独にする』って何よ。

 私は前世で親の虐待から抜け出せず、雁字搦めで、いつも人の目ばっかり気にして、怒られないようにしなきゃってそんなことばっかり考えて生きて、行動の自由は全くなかったけど、前世の私は今よりもよっぽど、孤独でしたけど!?

 そして今私はこの世界に転生して、皆んなに大切にされながら色んな自由を手に入れたけれど、孤独に思うことなんて、全然なかった。

 ただ、自分で物事を考えると失敗するときもある。それは、この世界でも、上級悪魔イジメ事件のときに痛感した。そのときだけは、私は愚かにも自ら皆んなを遠ざけてしまったけれど、でも、それでも皆んなが助けてくれた。

 楽だか何だか知らないけど、誰にも助けられないで、人の指示だけ仰いで罪を擦り付けられたり、精神きたして自滅を待つよりも、今のほうが絶対にいい。


 だからマジでお前は、余計なことを言うな!


 私はそんなことを考えながら、今溜まっている魔力エネルギーを一気に叩きつけるかのように、一枚岩へと一気に注ぎ込んだ。


 あんな腹立つ言いっぷり、そして考える暇は絶対に与えないと言わんばかりに凄惨な思念ばっかり見せつけて、貪汚落ちするまで止めないとでも言いたげなほどの執拗な思念は、脅迫にしか思えないし、その流れで人間奴隷ロボット化からの楽になるだの、絶望しろだの容赦ないやり口、本当にめっちゃ腹立つ!

 私はこんな奴には、絶対に負けない!

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