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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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家庭教師クラウス先生による、初めての授業

 とりあえず今日は、私のお仕事と直結する神体山の勉強や、そのために、その周りにある地形から勉強を始めるということになった。

 まずクラウス先生は、世界地図を机に広げて見せてくれた。

 この世界は、前世みたいに多くの国から成り立つのではなくて、一国しかないらしい。

 世界の東半分が海で、西半分は陸と、その陸を囲むように海があった。地図のど真ん中で、海と陸の中央にあるのが王都トリアスオービスで、今私たちがいるところだという。

 地図的に、王都トリアスオービスの上下と左側にある土地は他領地で、色んな領地があった。

 えっと、王都がトリアスオービスで、そのすぐ上の領地がセプテント、最北がゼノワステリーユ、最南がメリディオナリステラ、陸地のど真ん中はフォータニア……色んな領地があるんだな……

 私がぶつぶつ言いながら世界地図を見ていると、クラウス先生が驚いて、私に尋ねてきた。


「ソフィー様は、文字が読めるんですか……?」

「いや、なんか、文字は少し思い出してきたのかな……」

 と、記憶喪失のフリしておどおど言うと、

「いえ、普通平民は、読み書きができないのですが……ソフィー様は、どちらで読み書きを学ばれたか、思い出せますか?」

 と、衝撃の発言をされた。


 そ、そう言えば、前世で見た異世界アニメでも、平民の識字率はとても低かった気がする。学校とかもないし、勉強して文字やそのほか様々なことを学ぶという習慣がないみたいだった。

 何て説明しよう? まあ、低い、というからには皆無ではなかったということだけど、ダメだ、何で一部の少ない平民が読み書きできたのか、設定を思い出せない。

 まあ、仕方ない。ちょうどいいことに私は記憶喪失設定なので、忘れたことにしておいて、また後でその設定を思い出したときに、再度尋ねられたらそれを答えることにしよう。


 私は無言で首を横に振ると、クラウス先生は残念そうに「そうですか……」と仰った。

 ああ、憂いあるお顔も美しい……って、見惚れている場合ではなかった。さすがに”セレスティア・マジック”がかかっている設定とはいえ、この場面でニヤけられないのは、さすがに私にも分かる。

 あ、そうだ! さっき書いた名前、見せてみようかな?

 私はふと思い出して執務机まで行き、さっき自分の名前を書いた紙を取り、クラウス先生に見せてみた。

 何て仰るだろう……

 ドキドキして先生を見ていると、凄く驚きつつ「ソフィー様は、字も書けるのですね」と仰った。


 おお! 言葉だけじゃなく、読み書き共に、異世界転生特権発動だ!!

 私は心底ほっとした。もし文字が書けないなら、異世界の言語をきちんと学んでその言語の文法通りにきちんと書かなければならないのか、不安だったんだよね。

 だってさ、既にもう脳内で勝手に自動翻訳されているのを、いったいどうやって学ぶの?って感じだよ、ホント。その言葉、聞こうにも聞けない状態なのにさ。

 私は心配事がひとつなくなり、胸を撫で下ろした。


 すると、クラウス先生も気を取り直されたのか、大きく頷いて仰った。

「いやしかし、これは朗報です。正直、読み書きの勉強にはご苦労なさるのではないかと、私も危惧しておりましたが、既に多少なりともおできになるということでしたら、随分と勉強のペースを上げられます。私もとても嬉しく思います」

 クラウス先生が笑顔になられたので、私はとても嬉しくなった。


 話の流れでクラウス先生が、貴族のお子さまたちの勉強事情を教えて下さった。

 貴族のお子さまたちは、七歳から家庭教師をつけて、王立学院入学に向け、読み書きや簡単な魔法の練習を始めるという。どうして七歳なのかというと、七歳から魔力奉納をできるようにするために、領地毎に魔力を登録し、魔力を使う許可を与えられるのが七歳だからだという。

 別に、七歳になる前から勉強を始めても全然かまわないのだけれど、魔法の練習は事故防止の観点から禁止されているので、魔法の練習も始められる七歳から勉強も始めるというのが、概ね習慣になっているようだった。


 魔力登録と魔力奉納は、法律によって定められていて、貴族なら七歳になると必ず登録し、魔力を奉納をしなければならない。ただ、ここのところは七つある神体山全部を悪魔に乗っ取られていたので、魔力奉納もままならなかった。

 通常なら王都トリアスオービスの貴族は神体山への魔力奉納、他領地の貴族は神体山に魔力奉納の後、自領に祭られている祠に魔力奉納するというシステムになっている。

 なぜ他領地はまず、神体山に魔力奉納しなければならないのかというと、神体山への魔力奉納が、自領の祠へ魔力奉納ができるようになる、”鍵”の役割があるので、それなくして自領の祠へ魔力奉納はできないからだ。そしてそれはつまり、自領の土地を、魔力で満たせないということになる。

 では今はどうしているのかというと、神体山に入っていくときにあった凱旋門から、凄く効率は悪いけど間接的に魔力奉納をするのと、魔力登録もできるので、首都の貴族も他領地の貴族も凱旋門の転移陣から七歳で魔力登録するそうだ。

 つまり今の状態は、神体山を悪魔に乗っ取られている以上、王都の貴族は神体山に凱旋門からの効率の悪い間接的魔力奉納しかできないし、他領地の貴族も自領の祠に魔力奉納ができないだけでなく、自領の祠から魔力登録もできない状態、というわけなのだそうだ。


 神体山の凱旋門のところにある転移陣は、各領地の祠と繋がっていて、神体山の転移陣は王族が管理、”神の御意思”の元、許可の出ている貴族しか転移して来れないし、また神体山への魔力奉納もできないようになっていて、”抜け駆け”とかはできない仕組みになっている。

 どうして”抜け駆け”魔力奉納の心配があるのかというと、神体山に魔力を奉納することで、やっと自領の祠の鍵を開けることができ、自領の祠に魔力奉納できるようになり、それでようやく自領が魔力で満たされ、肥えた土地になるので、我先にと自領の祠を解錠したい領地が、ほとんどだからだ。

 ちなみに凱旋門からの間接的魔力奉納は、自領の祠の鍵とはならないので、特に”神の御意志”は必要ないけれど、転移してくるのに王族の許可がいるので、他領地の者は勝手に王都に入り、凱旋門からの間接的魔力奉納をすることはできない。


 あと、凱旋門への間接的魔力奉納は、王都からじわじわと円形に、他領へ魔力が広がって行くという。

 また、王都への魔力奉納がMAXにならないと他領地へ魔力が流れて行かないというと、そういう訳ではなく、少し魔力奉納しただけでも、他領地に魔力は広がっていくらしい。

 イメージとしては、何にもない平べったい床に水をこぼしたら、水はただ広がっていく、っていうのと似ているということだった。

 故に、「王都だけが魔力いっぱいで、他領地は魔力枯渇」という状態にはならず、現状は、「世界的にどの場所でも魔力枯渇」ということだった。


 そんな訳で他領地の貴族の皆さまは、自領に魔力奉納ができず、魔力枯渇に喘いでいて、かなり不満を貯めている領地もあるそうだ。

 でも今回、なんとなくの流れではあったものの、私がひとつの神体山を解放することに成功したので、これからは少しは効率よく神体山や、他領地の貴族の皆さまは自領の祠にも魔力奉納できるようになり、それは大変喜ばしいことだと仰った。

 だけど、解放されたのはまだたったひとつなので、少しずつ順序良く魔力奉納の順番を回していったとしても、やはりまだまだ非効率には違いなく、以前より遥かにマシではあるけれども、それでもまだまだな感じは否めなく、他の神体山のいち早い解放が待たれる、ということだった。


 ちなみに他の神体山解放の時期は、”神の御意思”が決定するとのことだった。


 なんか、貴族のお子様の勉強事情から、えらく話が飛んでしまったなあと思いつつ、でも、私のお仕事とも直結するお話で、良い機会と思い、お話されたんだろうな……。

 でも、次期神体山解放の時期は”神の御意思”なのか。モーゼの杖は、もう光らないのかな? ちょっとクラウス先生に尋ねてみよう。


「次期神体山解放の時期は”神の御意思”とのお話ですが、モーゼの杖はもう光って教えてくれないのでしょうか?」

「そう言えば、神体山解放後にお話を伺いましたときに、モーゼの杖が、光で道筋を照らし、神体山まで導いてくれたと仰っていましたね。ですが、どうでしょう……今回だけのイレギュラーか、次回からも光で教えてくれるのか……。

 そうですね、ではどちらでも対応しておけるようにしておきましょうか。神体山解放の”神の御意思”を王が確認されたときは、モーゼの杖所持者であられるソフィー様なしで神体山解放は無理ですので、必ず呼びに参りますし、もし、モーゼの杖が何か光で教えてくれるようなことがあれば、私がこちらのボールドウィン侯爵家にいないときは、ドミとセバスチャンで連絡が取り合えるようにしておきましょう。ソフィー様はドミに伝えれば、セバスチャン経由で王まで報告が上がり、神託の間で王自ら”神の御意思”をお伺いになると思います」

「承知いたしました。では、何かありましたらドミに知らせますね。でも、ドミとセバスチャンさんってそんなにすぐ連絡が取り合えるものなのでしょうか?」

「最初、王宮からボールドウィン侯爵家に来た時、転移陣を使用したのを覚えていらっしゃいますでしょうか。魔力を持たないドミは、基本転移陣を動かせませんが、行き先が限定されている転移専用の魔法陣が刻まれた魔石を持たせれば、ドミでも可能になります。ですのでドミには一度限り転移陣を作動させることができる魔石を持たせ、王宮に来て、セバスチャンに報告させた後、そのときに帰りの魔石を持たせ、応急的に王宮とボールドウィン侯爵家を行き来できるようにしておきましょう」


 クラウス先生、さすがだな。これだけのことを瞬時に考えられるんだもん。相当頭の回転が早いと思う。だてに片眼鏡かけてないな……って、なんの関係があんのかはしんないけど、なんか、眼鏡とか特に片眼鏡なんて、めちゃ頭が良さそうに見えるんだよね。


 クラウス先生の賢さが見かけ倒しではないことを確認しつつ、私はさらに質問した。

「先ほど、首都の貴族は神体山にだけ魔力奉納して、他領の貴族は鍵を開けるためとはいえ、自領の祠だけでなく、神体山にも魔力奉納しないといけないと仰いましたが、でもそうなると、なんか、他領の貴族の方の負担が多いと思うのですが」

「ソフィー様は、色んな方に分け隔てなく目を配ることのできる、素晴らしいお方ですね。その素晴らしい心映えに、敬意を表したいと思います。さすが、大天使ウリエルにモーゼの杖を授けられた方でいらっしゃいます」


 え、いや、分け隔てとかそんなんじゃなくて、単に私が人生生きてて負担を強いられる側であることばっかりだったんで、もし、負担を無理に強いられてるなら気の毒だな、気になるなってちょっとそう思っただけなんだけど……心映えが何とかとか言われたら、聞いてるこっちが恥ずかしくなってしまう。


 と、私は思わず俯いてしまったけど、クラウス先生は気にせず話を続けられた。

「ですが、大丈夫ですよ。他領の貴族が神体山に奉納した魔力は、その貴族が魔力登録をしている領地に奉納されることになっておりますので、心配いりません」


 なるほど、決して『自分のものは自分のもの、他領のものも自分のもの』っていうのではないんだな、良かった、良かった。

 あとは、他領の貴族が神体山で自領の祠を解錠しても永遠ではなく、一定量魔力を奉納すると、また施錠してしまうという。そうすると、また神体山に解錠に行かなければならないので、”神の御意思”待ちとなる。なので、七つの神体山を全部解放させるのが一番の目標と仰っていた。

 なるほど、なるだけ早い神体山解放が望まれていることが、私にもよく分かった。でも、いったいどうすれば神体山解放が早まるのかな? クラウス先生に尋ねてみたけど、それについても「神のみぞ知る」らしい。


「ソフィー様が現れるまで、我々ももちろん神体山を悪魔から解放させようと様々な努力を重ねて参りました。モーゼの杖が鍵を握ることは文献より伝えられていたため、モーゼの杖を探すことを一番に考えてはおりましたが、それと同時に別の手段からのアプローチとして、そのモーゼの杖なしに神体山解放できるのだろうか、色々研究を重ねて参りました。ですが、メカニズムが全く分からず、やはり解放には至りませんでした。そんな時にモーゼの杖を持ったソフィー様が突如として現れ、神体山を解放してしまわれた……。

 ですので、これは私の完全な憶測ですが、ソフィー様のご成長とも関係があるやも知れないな、と思っています。ですので、ことを急いてしまい本当に申し訳ないのですが、ソフィー様の成長を願い、このように私が家庭教師に参り、王立学院への入学も数か月後と決めざるを得ませんでした。大変申し訳ありません」

 と、謝罪されるクラウス先生。


 いえいえ、全然いいですよ、十二歳から入学という王立学院、前世では私、十三歳でしたから。むしろ一歳サバ読んでますし。

 ついでに言うと、前世では既に、学校にも通ってましたから。

 と、心の中で答えつつ、笑顔で「大丈夫です、頑張ります」と答えといた。


 まあ、陸地の魔力奉納の感じは、とりあえず分かった。 じゃあ、海はどうなんだろう?

 不思議に思ったので質問してみると、

「王都のトリアスオービスもそうですが、海側にある領地は陸地と同様近くの海域のみ自領として魔力奉納することになっております。

 領地の大きさ、近海あるなし、様々な領がありますが、どの領地も一回の解錠で、それに比例する魔力量を祠に奉納することができます」


 つまり、神体山魔力奉納による解錠一回につき、持ってる土地の大小、海のあるなしで、必要な魔力奉納量は様々だけれど、例えば自領の祠への魔力奉納がMAX十回で自領を完璧に満たすことができるとするならば、どの領地も十回で自領を魔力で満たせるようだ。


 あと、七つの神体山が全部解放されると、皆んなで魔力奉納頑張れば、どの領地も魔力で満たされることになるので、その次は自領を満たしつつ、溢れ出た魔力を、領地管轄に入っておらず魔力が行き届いてない遠海にまで魔力を奉納できるようになり、そして徐々に世界を魔力で満たしていくことになると教えて下さった。

 また、世界全体を魔力で満たす方法が、実は他にもあり、王族の間で代々伝えられているらしいけど、それが本当に実現可能かどうかは今のところ、全く分からないとも言ってらした。

 ふうん、どんな方法だろ? まあ、王族にしか伝えられてないんじゃ、私が知りようもないんだけどさ。


 などとお話していたら、あっという間に午前中の勉強の時間が終わる時間、お昼になってしまったようだ。

 午後からは先ほど出した世界地図を使って、勉強の続きをすると、クラウス先生は午後の予定を伝えられる。


 話が色々逸れちゃったけど、勉強スケジュールのほうは大丈夫なのかな?

 クラウス先生に尋ねてみたら、私が文字の読み書きができることや、この逸れた話はいずれしなければならないことだったので、何の問題もないらしい。むしろ、滑り出し順調だそうだ。

 良かった、良かったと思いつつ、初めての授業を無事に終えられたことに、私はとても安堵した。

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