[54]荷物の配分? 〈Z&V〉
「やっぱりツパおばちゃんのお師匠様って凄いー!!」
軽々とカプセルを頭上に掲げ、優しく地面に降ろしたお師匠様に、あたしは両手を上げて喝采を送った。そんなあたしを見て、手前のおばちゃんが不思議そうに首を傾げる。そうだ、そう言えば……!
「リルヴィ? どうしてこの方が私の師だと断定出来たのです?」
……あたしが知っているのっておかしいもんね!?
「え、ええと~実はさっき『ジュエル』がヴィジョンを送ってくれたの……飛行船の中のみんなの様子を」
「……なるほど。今でもジュエルはピータンの体内ですから、ジュエルの影響を受けた者同士、更にリルヴィとピータンには深い信頼関係が成立していることにより、上手く波長が合ったのでしょうね」
「……な、なるほど~!」
分かったようなそうでないような状態のまま、とりあえず苦々しく笑ってしまった。ツパおばちゃんは「視られていた」ことに少々バツの悪そうな表情を見せたけれど、後ろで微笑ましく見守るお師匠様は、自分が既に認知されていることを喜んだみたいだ。
「改めまして、リルヴィ様。ビビアン=ヴェル=グレイでございます。ご無事で何よりでございました」
「さっ、様だなんて~……リルヴィでいいです、お師匠様!」
「ではわたしもビビとお呼びください」
「それじゃ……ビビ先生。心配を掛けてしまって、本当にすみませんでした」
ツパおばちゃんの隣で跪いた「ビビ先生」は、ニッコリ笑ってあたしの右手を取り、自分の額に恭しくその甲を触れさせた。ヴィジョンで見た通りの大きな身体に柔らかい雰囲気、こんな状況でも何とかなる気がしてくるのは、ビビ先生の持つドッシリとした抱擁感と、厚みのある手の温かさからなのだろう。
立ち上がりながら「いいえ、ご無事だと信じていましたから」と答えたビビ先生は、今度は後ろで「順番待ち」をしていたアッシュの目の前に跪こうとした。そんな過度の礼節を、アッシュはアッシュらしく留めてお先に挨拶をする。
「アシュリー=エヴァンスです、ビビアンさん。シアン兄さんの窮地の折には、大変お世話になりました」
「ご存知でしたか。わたしはわたしの今出来ることをしたまでです。シアンさんもアシュリーさんも大事に至らなくて本当に良かった」
そうして握手を交わしたビビ先生は、とっても嬉しそうに瞳を細めた。
『わたしの今出来ること』──胸にグッと響くその言葉に問う──あたしの今まで自分に出来たことって、今出来ることって……何? あたしはずっと守られるだけの存在で、結局みんなの足手まといで……また……助けてもらう時を待ってしまった。
「リルヴィ? ……すみません、ラヴェルも貴女を助けに行くと言って聞かなかったのですが、ユスリハのことを想って船内に残っていただきました」
「あ……うん。パパが来たら、ママの心配が二倍になっちゃうもんね。そうしてもらって良かった。ツパおばちゃんも、本当にありがとう」
ツパおばちゃんはあたしの曇った顔を見つけて、パパのことだと推測したのだろう。あたしは気を取り直して出来る限りの笑顔を見せた。とりあえず今のあたしに出来ること──これ以上みんなに心配を掛けないことだ。
「さて、色々訊きたいことと説明したいことがございますが……まずはルクアルノ、彼はどう致しましたか?」
「「あ……」」
いきなり現実に引き戻されたように、アッシュとあたしは困ったような言葉を洩らした。ルクだけがいないこと。口元をへの字にして沈黙してしまったあたしの代わりに、アッシュが今までの経緯を二人に伝えてくれる。
「……そうでしたか。では一番にルクアルノの救出を優先せねばなりませんね」
一通りの説明を受けたツパおばちゃんに、特に動揺した様子は見られなかった。おばちゃんにはその可能性も考えられていたってことなんだろうか?
「わたしも尽力致しますから、どうかご心配なさらずに。それから……こちらルクアルノさんの物ですが……アシュリーさん、代わりにお使いになりますか?」
「あっ! ありがとうございます!!」
近くに落ちたもう一つのカプセルから、ビビ先生は細長い何かを取り出して見せた。遠慮がちにアッシュに差し伸べたのは──山頂に置き去りにしたルクの剣? 途端アッシュの表情が一気に華やいだ気がした。
「元々は僕の剣です。ルクと同じ位の身長の頃に使っていたので、彼に譲ったのですが……勝手は分かっていますから、今でも扱えると思います」
受け取ったアッシュは喜んで剣を腰元へ設えた。と同時にその表情から感じられたのは、ルク救出へ向けた大いなる決意。ママの時には何も出来なかったんだ、今度こそはあたしも頑張らないといけない。
「わたしのカプセル・ベッドは特注でして、通常より一回り大きく出来ています。お陰でかなりの荷が運べましたので、これからのことはひとまず安心してください」
「ありがとうございます、ビビ先生! あ、あたしのザックまだ余裕がありますから……」
あたしは置き放していた荷物の許へ戻りながら、背後になった先生に声を掛けた。少しでも役に立たなくちゃ、っていう気持ちだけが前のめりになったあたしに、
「大丈夫ですよ、リルヴィさん。運ぶのはわたし独りで十分です」
「……え?」
振り向いた先にはカプセルのまま肩に荷を乗せた、にこやかなビビ先生が立っていた──!!
※イニシャルだけでは分かりづらくて申し訳ありません。
ついに全貌を見せたツパイと、新キャラ:ビビアンです。
皆様のイメージからかけ離れていないことを祈ります。。。(大汗)




