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シュクリ・エルムの涙  作者: 朧 月夜
■第七章■ TO THE DEPTH(深層へ)!
53/86

[53]天使の贈り物?

 小さな薄明かりを囲んでの簡素な食事は、それでもお互いの笑顔が彩りとなって、いつになく美味しく感じられた。

 干したハムとスモークチーズが僅かに見つかったので、缶パンに挟んで頬張る。水筒に汲んでおいた清水に、粉ミルクと蜂蜜は溶けきれなかったけれど、ほんのり甘いハニーミルクも飲むことが出来た。


「ね、アッシュ。サリファが二人を連れてあたしの前に現れた時、二人に触れようとしても出来なかったの、気付いてた? あの時アッシュとルクはどういう状態だったの? あたしの前にはいなかったの??」


 お腹が落ち着いたところで、ふと思い出したことを口にする。もしあの時あたしが二人に触れられていれば、二人を光から引っ張り出せたのかも知れないし、逆を言えばあたしも光に吸い込まれてもおかしくなかったのかも知れない。


「うん、気付いたよ。ルクも僕も、実際リルの前には居なかったのだと思う。だからリルは幾ら手を伸ばしても、僕達に触れることが出来なかった。あの時僕にもリルは見えていたけど、僕達の周りは今よりもう少し明るくて、もっと湿気の感じられる場所だったんだ。あれは一体何処だったのか……それからすぐに僕は此処へ飛ばされたから、それほど離れてはいないと思うけどね。今も其処にルクが囚われているのなら、何とかしてその道筋を見つけ出さないと」

「そうだよね! ルクもアッシュもあたしと一緒に落ちたのだから、道は繋がっている筈!! ルクが見つかりさえすれば、助け出す手段も見つかるよ!」


 今までずっと──原因も理由もそこにある想いも、全ては沢山の糸が絡み合っているように見えたけれど、実際にはたった一本の糸がずっと繋がっていて、重なり合っていただけなんだ。


 きっとあたし達の想いは伝わって、お互いの手を繋いでくれる。ルクを見つけたいという想いが、あたし達をルクの許へ届けてくれる!


「そうしたら『善は急げ』だね。リル、ザックを一つ背負える? まずは荷物が落ちていた方向へ進んでみよう」

「うん!」


 あたしは元気良く立ち上がり、明るい声で返事をした。食器や食糧の残りを荷に詰め直して、ヨッコラショっとザックを背負う。重さに反り返って見上げた瞳が、ある筈の火口の穴を見つけられずキョロキョロとしてしまった。あれ? 小さな丸い穴が遠くに見つかる筈なのに……何処にも見当たらない!?


「アッシュ、見て! 火口が……ふさがっちゃった!?」


 見えない理由はきっとそういうことだ。一直線に天を示した指先に吊られて、まだしゃがんでいたアッシュの身丈があたしを追い越した。


「もしかしたら……火口の真上に何かいるのかも。飛行船かも知れない」

「ホント!?」


 あたし達は息を呑んで上空の様子に目を見張った。もしアッシュの言う通りならば、パパ達がお師匠様の飛行船で飛んできたのに違いない。でもどうやってあたし達を助け出そうというのだろう? 火口の間口は飛行船がスッポリ入るほど大きかっただろうか? 降りてこられたとしても、再び浮上して真っ直ぐ上へ逃げるなんて、飛行船ではそう簡単に出来る芸当じゃない。


「あっ、何かが……見える? リル」

「え? あ! うん……二つ!!」


 真っ黒だった天井に、あの小さな空が戻ってきた。でもその丸い光の中に黒い点が二つ。それは段々大きくなって、丸い赤と青になった。赤い、青い……パラシュート!!


「アレって緊急用のカプセル・ベッドよね!? 誰かが入ってるのかしら??」


 上からゆっくり落ちてくる花のようなパラシュートに、ぶら下げられた透明カプセルへひたすら目を凝らした。いつもは船内の壁面に埋め込まれて、ベッドとして使われている細長いカプセル。内部の天井に設置されたボタンを押せば、カプセルは船尾から外へ飛び出して、頭上側に取り付けられたパラシュートが開き、安全に脱出出来るという仕組みなのだ。


 やがて中身の詳細もぼんやりと見えて、先に降りてきた赤いパラシュートのカプセルは荷物らしいと判明した。そして……青いパラシュートには──


「ツパおばちゃん! あ……お師匠様!!」

「え……? お師匠様って、弓の!?」


 あたしはアッシュの問いに大きく頷いて、とにかく大きく両腕を振った。下降中の二人もあたし達の存在に気付いたみたいだ。窮屈なカプセル内から安堵の笑顔と、手を僅かに振る素振りがかろうじて見えた。


「おばちゃん!! お師匠様!!」


 無事着地した横たわるカプセルに、あたし達は急いで走り寄った。先に足元の扉を開き、モゾモゾと身体を押し出してきたのはツパおばちゃん、続けてお師匠様が大きな身体を引き抜く……のではなく、足先だけを出してカプセルごと立ち上がり、まるでシャツを脱ぐかのように、カプセルを持ち上げて自分を取り出した──!?




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