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シュクリ・エルムの涙  作者: 朧 月夜
■第一章■ TO THE VELLE(ヴェルへ)!
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[5]パパのママ? 〈Little-L〉

 それからママはエンジンルームの再点検に向かい、パパはヴェルで待つ皆のために用意したお土産をテーブルに広げ、改めて整理をし始めた。あたしはその隣で春休みの宿題に独り立ち向かう。案の定向かうだけで埋められてはいないけど。


 ヴェルに帰省するのはいつも三年に一度だから、あたしが初めてヴェルを訪れたのは二歳の頃だ。さすがにその時を覚えてはいないものの、沢山の人に歓迎されたってことは聞いているし、実際五歳で帰った時の歓待振りは微かな記憶がある。


 パパとママと旅をしたツパおばちゃんにタラおばちゃん、ツパおばちゃんと仲の良いボーダー・コリーのアイガーに、政府をまとめるロガールじじ様。王宮のみんなもとても温かく迎えてくれる。あたしはあの煌びやかでだだっ広い王宮が大好きだ。何故ってアイガーやモモンガのピータンと、自宅の庭と変わらず悠々と駆け回れたし、何しろ……片付けなさい~ってうるさく言われないのだもの!


 それにお姫様みたいな天蓋付きの大きなベッドも大のお気に入りだった。でも三度目の訪問から眠らせてもらえなくなっちゃったのよね。その時からヴェルでのお泊まりは、王宮ではなくパパの自宅になったから。で、そうなった理由は……実はちょっと心当たりがある。


 二度目の訪問時、あたしはそのベッドですやすやと眠っていた。その時はまだ『ラヴェンダー・ジュエル』はあたしの左眼に嵌まっていて、あたしは『ジュエル』の語る夢の中で、とても幸せな心地に包まれていた。そうして聞いたの。温かい陽だまりのような優しい柔らかい綺麗な声を。


  ──リルヴィ……リルヴィ……気付いたら応えてちょうだい……


 あなたはだあれ? あたしは尋ねた。


  ──リルヴィとおんなじ血を持つ者よ……


 おんなじ血。五歳のあたしにはまだ意味が分からなくて、もう一度問い掛けたんだ。そしたら帰ってきた言葉は、


 ──リルヴィのパパのママ。そう……リルヴィのおばあちゃんよ……


 ……って。


 あたしに祖父母は存在しなかったから、初めはぼんやりとしか分からなかった。でも夢の中で不思議と知ったのだ。「パパのママ」──その言葉に喜びでドキドキしたのを今でも良―く覚えている!


 おばあちゃんはあたしに沢山のお話をしてくれた。王宮での華やかな暮らし、パパのパパとの幸せな出逢い、パパが生まれた時の嬉しかった想い出……なのにパパは──


「パパのママはずっと昔に亡くなったんだ。だからそれはただの夢だよ」


 何故だかちょっと怖い顔をして、それきりパパは何も言わなかった。


 あたしだって分かってたよ。パパのママはとうのとっくに死んじゃったんだって。でもこれって導かれたのだと思ったんだ。だってあのベッドはパパのママが、まだお姫様だった時に愛用していた物だったのだから。


 パパのママはきっと天国から、あの部屋のあのベッドの(あたし)に会いに来てくれたんだ。

 なのにパパは次の訪問からジュエルを保管庫にしまうことと、王宮には泊まらないことを決めてしまった。


 悔し紛れもあったのだと思う。まともに話を聞いてくれなかったパパとママに、あたしは夢の続きを話さなかった。


 ──リルヴィ……おばあちゃんと約束しましょ。次に来る時から三回目、貴女が十四歳になる時よ……おばあちゃんの宝物の()()を教えてあげる……だから必ず此処に来てね……ジュエルと一緒に……必ずよ……


 あたしは『宝物』という言葉にワクワクした!


 そして今回がそれから三度目の訪問で、あたしが十四歳の帰省に当たる。


 あたしはまたおばあちゃんの優しい声を聞けるだろうか?

 宝物の在り処を教えてもらえるだろうか?


 知ることが出来たあたしは……宝物を手に入れられるだろうか──!?



挿絵(By みてみん)




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