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シュクリ・エルムの涙  作者: 朧 月夜
■第四章■ TO THE CHOUCRE(シュクリ山へ)!
27/86

[27]ピンチのアシスト? *

 タラお姉様は飛行船を降下させながら北東の中腹を目指していた。


 ハッチの向きと、サリファの気が南面の近衛兵(このえへい)へ向けられていることから、死角となるそちらを選んだのだろう。徐々に近付く山肌が途端に鮮明に見え始めたのは……グライダーが飛行船から飛び出したせいだ。窓の向こうの右後方に、遠ざかる飛行船のハッチが映った。


「じゃあ行くよ、リル。大丈夫だね?」


 シートの上であたしを背負ったままアッシュが振り向く。その言葉と同時に緊張を解こうとしてくれたんだろう、鮮やかなウィンクが投げられた。


「う、うん! 大丈夫。パラシュート開いたら、後は宜しくね、アッシュ!」


 気持ちに応えようと元気に声を張る。微笑みながら頷いたアッシュは、隣のルクとも視線を交わし、更にシアンお兄様の後ろ姿に呼び掛けた。


「兄さん、それじゃ行くから! 姉さんを頼むよ!!」

「OK、アシュリー! ハニィと一緒に待ってるからな!」


 いつも通りのクールな台詞と流し目と共に、両側の扉が自動で開かれた。突然否応なく侵入する風に耐えつつ、アッシュが腰を上げあたしごと空へ飛び出す! 背後には逆方向の扉へ立ち上がったルクの気配を感じた。


 風圧と重力がごちゃ混ぜに身体を支配して、何もかもが真っ白になりそうだった。実際には落ち続けているのに、風を受けた足はふわりと浮き上がって、アッシュから引き離されそうで怖かった。


「リル、パラシュート準備! カウントするよ、5・4・3……」


 アッシュの声にハッと目を開く。震える右手にギュッと力を込めて、パラシュートの紐に手を掛けた。


「……2・1・GO!」

「ひらけぇぇぇっ!!」


 叫びと一緒に広がる大きな影が、自分達を覆っていくのが感じられた。引っ張った紐はちゃんと機能して、パラシュートを開いてくれた! 刹那に変わる落下スピードが、高揚した心さえも鎮めてくれる気持ちがした。


「リル、やったね! パーフェクト!!」


 斜め下からアッシュが親指を立てて褒めてくれた。あたしもしがみつく腕を少しだけ緩めて、彼の目の前に同じく親指を立ててみせた。


「あっ! そう言えばルクは!?」


 あたし達の成功を見届けた後に飛び出す予定だけど、逆側の扉からなのだから遠く離れてしまうかも知れない。

 視界には見つからないので、首をひねってキョロキョロと見回す目の端に……手足をバタつかせながら上からルクが降ってきた!?


「「ルクっ!!」」

「に、荷物が引っ掛かって──」

「「え──!?」」


 そんなやり取りをしながらもドンドン小さくなっていくルク! このままパラシュートが開かなかったら、彼の運命は!?


「荷物を捨てろ、ルクー!」


 アッシュの言葉を理解した姿から、荷物らしき影が分離した。きっと前側に抱えていた荷物だ。でもパラシュートの紐が絡んでいるのは多分背負っている方の荷物だ。ルクは再び格闘して、やっとザックが背中から離れた瞬間、それが良いきっかけになったらしく、彼のシルエットは開いたパラシュートで隠された!


「いや……ダメだ。あの高度で開いても……」

「え?」


 焦燥したアッシュの言葉が途中で掻き消えた。確かに地面が近過ぎて、落下スピードが緩む距離じゃないかも知れない……もしも木々に引っ掛からずに着陸したら……ルクは山肌に叩きつけられてしまう!?


「ルク! 山から離れろ!!」


 再度叫ばれたアッシュの言葉に、ルクは即座に反応したみたいだった。あたし達が身に着けているのは単なるパラシュートだけど、ルクの物は多少操作が可能なパラグライダーの一種なのだ。上手く風に乗って遠ざかれば、その分地面は遠くなる。けれどそれはあたし達からも遠ざかって、サリファから攻撃される可能性を高める危険性があった。

 そして……危惧した通り、サリファの赤い光線が山頂からルクへと放たれ、危機一髪彼を(かす)めていった!!


「リル、こちらも荷物を捨てて、出来るだけルクに近付く……いいね!?」

「も、もちろん!!」


 あたしの答えにザックへ手を掛けるアッシュ。けれどその時、風を斬る鋭い音が何処からか響いて、ルクのパラシュートが一気にひしゃげ、近くの大木に……吸い寄せられた!?


「一体あれは……?」


 呆然としたアッシュの呟きが終わる頃、あたし達も地面に辿り着いた。急いで全てを置き放し、ルクの吊るされた木へ向かう頭上を、もう一筋赤い光線が流れていく。それは……逃げてゆく飛行船を狙っているように思われた!


「タラお姉様……!」


 『盾』が山へ到着してしまった今、遮る物はもう何もないのだ!

 どうしよう……飛行船に何か遭ったら……お姉様とベビちゃんが!!


 光は遥か遠くても飛行船を着実に捉えていた。昼間の流星のように真っ直ぐ貫かれる赤いライン。けれどそれは邪魔する何かに阻まれた!


「シアン……お兄様!?」


 突然飛び出してきたグライダーの左翼が、砕かれながら光を屈折した。が、お陰でグライダーも飛べる(すべ)を奪われて失墜する! 刹那落ちるグライダーから飛び降りた人影が、見事にパラシュートを開かせた──でも!!


 今一度放たれる光線。今度はシアンお兄様を狙っている!?


「お兄様っ──!!」


 駆け寄る足先が震えた。あたしの叫びはただ無力に虚空へ消えていき……けれど光線は再び何かに阻まれて、お兄様を傷つけることはなかった! 何か……じゃない。あれは多分グライダーの砕けた翼だ! でもどうやって、飛び散った破片が上空に舞い上がってきたのだろう??


 無事木々の狭間に消えるパラシュート。飛行船も既に見えない所まで退却している。おそらくこれで二人は大丈夫だ。でも……ルクとシアンお兄様を救ってくれたのは一体──!?



挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)




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