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シュクリ・エルムの涙  作者: 朧 月夜
■第三章■ TO THE PRECIOUS(宝物へ)!
22/86

[22]秘密の特訓? 〈Sleeping-L〉

挿絵(By みてみん)


 パパは……もうどのくらいまで山を登っただろうか──?


 アッシュとルクのお陰で、タラお姉様とベビちゃんのお陰で、思い詰めることもなく翌朝を迎えられたあたしは……けれど先に部屋を出ていくお姉様の背中をぼんやりと見詰めながら、温かなお布団の中で結局身動きが取れなくなっていた。


 サリファがパパに指示したシュクリというのは、ヴェルの北側に(そび)える高い山だ。島の三分の一は、その裾野で占められている。大人の脚でも山頂までは数日掛かってしまう筈……パパは途中何処かで食料や登山の道具を調達したのだろうか? ママは……一体どうなったのだろう……ちゃんとご飯を食べさせてもらえているのだろうか?


 タイムリミットは、この朝から三日間。それまでママの命を保証するとサリファは言ったけど、そんな約束、あんな怖い人が守ってくれるとは限らない。


 考えれば考えるほど、悪い方向へ沈んでしまいそうだった。だからこそ昨夜のお姉様もお兄様も、何も訊かずにいてくれたというのに──。


「あー! もう~こんなことじゃダメダメ!!」


 あたしは両ほっぺをパンパン叩いて飛び起きた。みんなあたしのために明るく努めてくれているんだ。あたしが暗い顔をしてたらみんなが悲しくなっちゃう!


 着替えて洗面所で顔を洗い、美味しい匂いのするダイニングへ向け背筋を伸ばした。もうツパおばちゃんも来ているかも知れない。


「おはようございますーお兄様! お姉様!」


 開いた扉の正面に対面キッチンがあり、その流しとレンジの奥に、二人が仲良く並んで作業していた。


「おはよーリルヴィちゃん。良く眠れた? って、変な時間に起こしちゃったのはワタシだけど」


 「朝方また蹴られて叫んじゃったのヨー」と隣で不思議がるシアンお兄様に説明をして、タラお姉様は苦笑いをした。


「大きなベッドなので、気持ち良く眠らせてもらいました。あの……ツパおばちゃんはまだなんですね? えっと、アッシュとルクは?」


 キョロキョロと辺りを見回しても、ツパおばちゃんはもちろん、二人の姿も見えなかった。仲良く寝坊しているのかしら? かなり遅い時間だったのだ。まだ寝ていてもおかしくはないけど。


「ツパイはそろそろかしらネ。二人ならとっくに起きているわヨ。シアン、リルヴィちゃんを案内してあげて」

「いいよ、ハニィ。リルヴィ、一緒に行こう」


 シアンお兄様は作業の手を止め、お姉様の頬に熱い口づけをした。洗った手をタオルで拭きながら、あたしを裏戸へ案内してくれる。結婚されてもう十年は経つと思うのだけど、相変わらずアツアツだなぁ~! あ、もちろん「ハニィ」っていうのはタラお姉様のことね。


「え……?」


 お兄様が扉を開けた途端、耳に入ってきたのは甲高い金属音だった。そして裏庭の青い草の上では──


「ルク! 踏み込みが遅い!! 其処で突っ込まないと、やる前にやられるぞ!」

「は、はいっ!!」


 ど、ど、ど、どうなっちゃってるの!?


 二人が……剣を交えて闘っている!?


「へぇ~リルヴィって全然知らなかったんだね? ルクアルノはともかくとして、アシュリーのことも」

「え?」


 あんぐり口を開けたまま魅入ってしまったあたしの横で、シアンお兄様が愉しそうに呟いた。

 その間にも闘いは続いていて、いや……これって何なのよ!?


「アシュリーは君と初めて逢った七歳から、タラにずっと稽古を付けてもらってるんだ。キミのパパがタラの一番弟子だから、彼は二番弟子だね。タラはラウルに教えた後、ずっと弟子を取らなかったから。で、ルクアルノは三番弟子。と言ってもまだ三年前からだよ。今はタラが身重で教えられないから、アシュリーがルクアルノの仮師匠ってところかな?」


 七歳から? 三年前から?? そう言えば昔ウェスティを倒すため、パパに剣術を教えたのは、剣士だったタラお姉様だった! でも弟子入りだなんて……アッシュもルクも全然教えてくれてない!!


「お、お兄様! どうして二人はあんな剣術なんて学んでいるの!? だって今は平和な世の中なのに……!」

「うーん? そうだねぇ~しいて言えば、二人共キミを守りたいからじゃない? そして今が「その時」なんじゃないかと」

「え……? ええっ! えええ~!?」


 確かに今あたしに起きている『事件』は、平和とは真逆の出来事だった。だけど、でも──!


 あたしを守りたいって、一体全体!?


「ど、どうして……」

「ん? 意外に鈍感だなぁ、リルヴィ。キミが二人にとって『宝物』だからでしょ?」


 あたしは驚愕して、咄嗟にシアンお兄様を見上げた。視界に入った「誰でもノックアウト出来そうな」絶品ウィンクに、思わず倒れてしまいそうだった──!!




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