表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シュクリ・エルムの涙  作者: 朧 月夜
■第三章■ TO THE PRECIOUS(宝物へ)!
20/86

[20]戸惑いの騎士?

 ルクの声と共に明かりが灯されたので、あたしはまるで蛙が飛び跳ねるように、アッシュから背後へ遠ざかっていた。


「え……? っと……ア、アッシュ??」


 エントランス横のスイッチに手を掛けたままのルクが、ビックリまなこでアッシュの背中に問い掛ける。


「ごめん、ルク。驚かせて……王宮からリルの護衛を頼まれてね。着いた途端リルが照明も点けずに走り込んだら、何かにつまづいたみたいで……僕は転ばないように支えていただけだよ」


 振り向きざまに説明したアッシュは、特に動揺の兆しも見せなかった。言い終えた後にあたしにもう一度振り向いて、ルクに気付かれないよう鮮やかなウィンクを決めるところは……もうさすがとしか言えない。


「そ、そう……ボクも王宮に行ったんだけど……ル、ルヴィのお父さんとお母さんの噂を、みんながしていて……き、気になったから、来てみたんだ……それで……その……」

「噂……」


 もう、みんな知っているんだ。ママが紅い光(サリファ)(さら)われて、パパが助けに向かったことを。


 ルクはそこまで小声で呟いた後、俯いて黙り込んでしまった。あたしのために消沈しているルクを、いつの間にか励まそうとしている自分がいた。


「ルク、あの……心配してくれてありがとう! でも……大丈夫だから。パパがきっとママを助け出してくれるから……ルクはお家で休んでて。あたし、タラお姉様の所で待っていることになったから」

「ルヴィ……? ひ、左眼、どうしたの? 義眼、な、失くしちゃったの?」

「あ……」


 ゆっくりともたげたルクの翠色の瞳が、アッシュの横から覗かせた左瞼に気が付いた。『ジュエル』がパパを宿主と決めて、空っぽになってしまった瞼の裏。もちろん伏せてはいたのだけど、サッと手を添えて背中を向ける。そこからまた涙が溢れてしまいそうだったからだ。


「ううん、あるよ……義眼()めて、荷造りしてくる! アッシュ……ごめん、ちょっと待ってて!!」


 あたしは(かす)れてしまわないように喉元に力を込めて、慌てて自室に駆けていった。




 ★ ★ ★




 今朝と同じようにリュックを背負って出てきたあたしを、今朝と同じようにアッシュとルクが待っていてくれた。


 ルク……帰らなかったんだ。


 あたしが荷物をまとめている間に、アッシュがルクに詳細を説明してくれたらしい。全てを知ったルクの表情は益々重くなって、そのせいで視線もずっと下げたまま、あたしと合わせることはなかった。


「じゃあ、行こうか。リル、荷物持つよ。……ルク、騎士(ナイト)がそんな調子じゃ、お姫様が哀しむよ」


 戸締りをしているあたしの後ろで、アッシュがルクを諭していた。そうだよ……ルクが辛そうな顔をしていたら、あたしはもっと寂しくなる……。


「ご、ごめんっ! えと……サ、サー・ルクアルノ……──行きますっ!!」


 いきなり大声で宣言をして、ズンズンと先頭を歩き出すルク。彼なりの励ましのつもりなのだろう。あたしはやっと──うっすらではあるけれど、口元に上向きの弧を描ける気持ちになって、隣に立つアッシュと笑顔を見合わせた。


「こんな遅くに伺って、タラお姉様の赤ちゃん驚かないかしら?」


 春の夜はまだまだ寒い。見上げれば沢山のキラ星が瞬いていた。まるで何事もなかったように、街灯の向こうに家々が沈んでいる。あんな大騒ぎがあった王宮とは逆方向の道だから、尚更静かなのも当たり前ではあるけれど。


「僕が帰ってくるまでは、何も心配せずに休んでいてと言ってはあるし……シアン兄さんもついてるから大丈夫だよ。でももしかしたら様子を見に行った近所の人から話を聞いて、もう事情を知っているかも知れないね」

「うん……そうだね、急ご」


 夜はとっくに更けてしまって、朝が訪れるまでの時間の方が、断然近い時刻なのだ。あたしはお姉様を想って早足になった。それに気付いたルクの足取りも忙しくなった。


 やがて久し振りに見えたタラお姉様とシアンお兄様のお宅は、煌々(こうこう)と照明が点けられていた。その手前、門扉の前にスラリとした影が目に入る。


「えっ……タラお姉様!?」


 気付いたあたしは慌てて駆け出した! ルクを追い越して近寄ったそのシルエットは……毛布ごとシアンお兄様に包み込まれた、タラお姉様の姿だった──!!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ