第3話 冒険前に必要な道具を準備すべき、さもなければ可愛がられる。
長身の女性に拉致られ、薬品を体中に塗りたくられ、少し熱めの熱湯で虐待され、更に布でゴシゴシと体をこすり、終いには熱風による残酷な行為によって髪を乾かされた二人はようやくユーリの可愛たがりから解放された。
「これで君達はピカピカで綺麗になったよー。」
「ありがとう、ユーリ。」
アザールからそれなりに遠く離れた森を入り、事前知識も無しに遺跡に乗り込み、遺物を持って帰って来たアルカとルシアはとてもではないが汚れていた。
クリーチャーから襲われて走り回った際に発した汗、遺跡内部の埃っぽさ、終いには森を抜ける際に服に付いたであろう泥と土。
正直ユーリはどこの文明を捨てた世捨て人なんだと言いたそうであったがなんとか堪えた。
それがユーリの手解きで身綺麗になった二人を見て改めて思った。
(やっぱり二人とも綺麗で可愛いなぁ。また弄りたくなっちゃう。)
アルカは目尻が細く、切れ込んでいる目付きであり、同性であるユーリですらそのハートを撃ち抜かれてしまう程のクールな目元。
身長159センチで鎖骨までストレートに伸ばした混ざった色のない綺麗な黒い髪。
対して、ルシアはぱっちりとした可愛らしい目。思わず愛でたくなるような愛着のある顔。
身長153センチ。ボブヘアぐらいの長さのふわふわとした銀色に輝く髪。ぴょこぴょこ動くアホ毛あり。
多数の人から美人だと言われるユーリ目線からしても二人は絶対にモテると確信している。
しかもまだ発展途中だということ。
これ以上成長したらユーリは昇天してしまう。
アルカは二人の未来の姿を妄想して上の空になってるユーリに向けて交渉に乗り出した。
「ユーリ姉、付いてきて欲しい所があるんだけどいいかな?」
「んー?なになにー?やっぱり開かずの扉の事かなー?」
「そうそう・・・・・・なんで分かるの?」
「システムエンジニアの私に頼まれる事なんて大体がデータ解析と扉や箱のクラッキングだよー。それよりも船潜ったんだね、君達がいなくなっちゃったらお姉ちゃん泣いちゃうよー?」
「んー、でも一旗揚げたいからやだかな。」
「えー、もうしょうがないなぁ、頼み事はこのお姉ちゃんが受けてあげるけど対価は必要だよねー?」
「むぅ。」
何がもらえるのかなーとニヤニヤしているユーリを見て、やはり来たか、と少し悩むルシアとアルカ・・・・・・。
ここを切り抜けないとあのお宝が手に入らないという事が分かっているルシアはどうしようかと考えているその隣で、アルカはここでとっておきの切り札を取り出した。
「なら今晩から一日ルシアを好きにする権利でどう?」
「えっ?アルカ?えっ?」
あっさりと相棒を売るアルカを驚きながら見てるルシアを抱きしめて、ユーリは
「交渉成立ー!!」
「うにゃああ!!」
台詞と共にルシアの頬っぺたをプニプニと弄り倒した。
やはりこうなる運命だと半ば諦めたルシアはユーリにされるがままに弄られてしまった。
ルシアのもちもち肌成分を堪能しているユーリは
「今日はここで泊まっていきなよー。明日の早朝に目的の場所に出発するからねー。」
と、もちもち肌を堪能しつつ、更にルシアを弄り回した。
(なら寝る前に親方に必要な物を頼もうかな)
アルカは明日の準備の為に工房へと移動した。
後ろからアルカを呼ぶ恨みの叫び声が聞こえたが今はスルーしよう。
どうせ戻ったら私も同じ運命になるのだから。
ガンフリークの一階にある工房で親方は自身で作った試作品である兵器を整備していた。
親方が営んでいるガンフリーク工房は全三階建てで主に二つの種類に分けられている。
そのうちの一つである一階には、銃やナイフ、そして弾薬などの兵器を扱う場所として販売している。
時折、探索者が持ち込んだ成果物などの査定を行うこともある。
そんな中、一人の少女が展示している武器を眺めながら親方を探していた。
「親方はいるかー?」
「おう、なんだー?」
「明日の準備に必要な物があって・・・・・・何してるの?」
アルカはカウンターの上に置いてあった一つの銃を見て、親方は拳銃の説明をした。
「これか?新人探索者の為に考えたカートリッジ式拳銃だ。最初の頃はやたら弾薬費が馬鹿に出来ないからな。弾薬が嵩まないように色々工夫をこなしているんだ。」
アルカは親方の説明を聞きながらその作り立ての拳銃を触れてみる。
「・・・これ弾倉が6発しか入らないけど?」
「その分、威力を増強してある。敢えて色んな弾薬を使い分けしやすいように少なくしているんだ。」
「うーん」
この武器について需要はあるのかと考えて唸るアルカは
「・・・・・・これってある程度各種弾薬を使い分ける状況判断が出来て、尚且つそれなりに射撃能力がある人ならつかえるのかな?それにこれって反動が大きいからまだ身体が成長していない人なら手から銃が吹き飛ぶと思うよ。」
「・・・・・・・・・と言うと?」
親方はなんとも言えない表情で恐る恐るアルカに評価を聞こうとしたが。
「ニュービーには扱い辛いがある程度経験積んだ人なら使える代物・・・かな?」
結局、新人スカベンジャーが使えるというコンセプトから離れた結果になってしまった。
そんな悲しみな表情をしている親方を見たアルカはすかさずフォローをする事にした。
「でもまだ使ってみていないから分からないよ。私が試しに使ってみるからそうしょげないの。」
「・・・そうだな、使ってみないと分からないよな。」
自分に言い聞かせて納得した親方はこの話題を変えようと「何か用か?」と尋ねた。
「ナイフにロープと指向性爆弾にスモーク、後はこの武器とそれに使う弾薬を各三十発を。」
「まいど、相変わらずお前さん達は軽装備だな。命を預けるにはスーツが必要だぞ?」
「あいにくそこまで買う金がないのでね・・・・・・。最低クラスでも25万クレジットはするじゃない。」
「カスタマイズ無しの無印だとそれくらいだな。フルカスタマイズすると80万ぐらいだっけか?」
「スラム暮しの私達には無理ね。」
「そこらのスラムの人よりかは裕福な暮らしをしてるけどな。」
無い袖は振れないと諦めるアルカ。
確かにスーツは探索者にとって必需品だ。
スーツさえ着れば険しい道を軽々進め、銃弾や衝撃などはスーツから展開してくれるシールドがその身体を守ってくれる万能スーツなのだ。
スーツを着る事にとって始めてニュービー(新人)と名乗れる事が出来る。
スーツを着てない者はただの蛆虫だ。
広告掲示版では「新人にはスーツを貸せて、ベテランに指導を受けてもらう事が出来る」と宣伝している組織があるが、ルシア曰く「きな臭い」との事で入る事は見送り、結果二人で活動する事になった。
「明日の早朝までここに用意する。料金は武器の試行運用の報酬でオマケにしておくぞ。」
「感謝すべきなのかケチなのか迷う所ね・・・・・・。」
「そういう時は素直に感謝しとけ。」
軽い会話をし、アルカはルシアとユーリのいる所へと戻る。
待っていろよルシア、すぐに私も向こうに行くからな。
アルカは巨大な敵の本拠地・・・ユーリの部屋へと移動した。
そして二人は愛玩動物のように可愛がられ、そのまま一夜を過ごした。