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第2話  「ルシアは機械を叩いた」「しかし機械は反応しないようだ・・・」


 先ほどの音が鳴り止み、静寂が訪れた空間で耳を塞いでいた二人は溜め息を吐いた。

 

 「……もう一生分の運を使い切った気がするよ、アルカ。」

 

 「……私もだよ、ルシア。」

 

 この一連の幸運を感謝して周囲を探索しようと動き出すが、やはりドールが気になる。

 ルシアとアルカは一旦探索を中断して問題のドールを調べる事に切り替えた。

 

 「うーん、やっぱり開け方が分からないや。」

 

 普通のドールとは違いハッチを開ける手段が見当たらない。

 やはりこのドールは採掘される量産型ドールとは違い、ワンオフ機の相当価値の高いドールに間違いない。

 持ち運べればどのくらいのクレジットが貰えて今のスラム生活から抜け出し、安定した生活が出来るのかとアルカは思考したが直ぐに目の前の問題に目を向けた。

 これの存在がバレたら狙われる。

 社会的地位が弱者な二人が無闇にドールを持ち込んだら他のスラム住民や探索者に奪われて口封じで殺されるのは当たり前だ。

 幸いここの場所は廃材でドールのハッチ部分をガンガン鳴らしているルシアだけしか知らない。

 二人の苦労の末、ようやく見つけた穴場なのだから。

 

 結局ハッチが開かないドールはこのまま放置して再び遺物捜索を始めた。

 このままでは今日の成果は持ち運べないドールに無くした拳銃、はっきり言って換金出来なければマイナスである。

 ちなみに串刺しクリーチャーは売れる箇所が全く知らないので諦めた。

 帰る時間を考えて探索するルシア達。

 見つけたのは弾薬を強化するマテリアルやコンポーネント等の換金が出来る物を見つかった。

 これで当分は持つだろうと換金物をカバンに仕舞い、ルシア達は探索を切り上げた。





 ルシア達は巨大な船の残骸から出て、森を抜け、自分達が住む場所へと帰路に就く。

 目的地は『城壁都市アザール』

 

 かつて科学という概念が余り発達しなく、魔法文明が大いに闊歩していた時代に建てられた都市であった。

 大昔に災厄が堕ちた時には、その強固な城壁と魔法の力のお陰で辛うじて崩壊を防ぎ、住民を護った歴史がある。

 時代が魔法と科学が組み合わさった今でも復旧と改修を繰り返して尚成長を繰り広げ、強固な要塞に変貌しているのであった。

 

 その要塞となった城壁都市の中心から離れた地域、一般人や軍人等があまり立ち寄らない無法地帯にあるルシア達の拠点では、探索で手に入れた収穫物を強盗に襲われないように巧みに隠し、これからの事を話し合う二人がいた。


「もうあれは私達だけでは動かせない……。ユーリを連れて行こう。エンジニアがいないと動かせないよ。」


「そうだね。ユーリがドールを起動させてガンスミスの親方に調べて貰うしかないね。」


 下町に住んでる変わり者のエンジニアであるユーリ、小規模だが腕は一流の訳ありな鍛冶師、その二人が揃えばあのドールが売れるはず、そう確信した二人の行動は速い。

 他の探索者達が今日の収穫物を持ち帰って、探索での疲れを酒場で提供される酒と女で癒し、謳歌する時間帯にはまだ早いはずだ。

 どこかで聞き耳を立てる人はいない筈だと、平穏を装いユーリ達のいる下町へと向かった。


  下町、それは魔法文明時代から存在していた城壁都市アザールでは沢山存在している。

 何せ200年に継ぐ復興してからの計画性の無い拡張やら改修で魔法文明時代を築いた偉人達が驚く様な超巨大都市へと変貌したのだから、当然スラム街や複雑な路地裏等が出来る。

アザール管理官からの声明は、現在、拡張を取りやめ土地のインフラ整備を整えると声明してたが、街の把握だけでも精一杯との事だとか。


城塞都市アザール 第7地区 下町4番地域


 現在、城塞都市アザールが把握している21地区の内の7地区目に存在している下町通り。

 数字が小さい程、整備が整っていて治安が良いといわれ、逆に大きい程、治安が行き届いていないとされる。

そんなそこそこ治安がいい下町に二人の少女が歩いていた。


「アルカ、ユーリに行くのはいいけどどうやって頼むの?信憑性のない話なんか受け入れて貰えないと思うよ?」


「私に任せなさい、ルシア。」


「どんな作戦なの?」


「私に任せなさい、ルシア。」


「………。」


 自信満々に二度同じ台詞を言うアルカ、そんな顔して探索に乗り出したらクリーチャーに襲われてたじゃないかと困惑な顔をしているルシア。

お互いがどんな思いをしているか理解していないまま、工房の前へと着いた。

 工房の入口前に所々汚ている作業服を着た高身長の男性がいた。

 その男性は背伸びをし、大きく書いてある「ガンフリーク」という名の看板を降ろそうと作業をしていたところに、幼い少女に声を掛けられた。


「おっちゃん、まだ空いてる?」


「おっちゃん言うな、親方と呼べ。あと俺はもう店を閉める予定だ。もうひと働きさせるな。」


「収穫物の換金をしなければ私達は温かいご飯が食べられないよ。こんな可憐な少女が飢え死にしたらどうするの?親方?」


「お前らの場合は悪運が強くて強かの少女だがな。なんとかなるだろう。」


 と悪態を言いながら再び看板を掲げる親方は


「いいぜ、入りな。今は同居人が夕飯を作っているから食べれるぞ。」


 と少女達を誘い店の中へと入った。



店に入ったルシアとアルカはさっそく探索で手に入れた収穫物を並べ、親方はそれらを査定した。


「マテリアルにコンポーネントで後は空のナノ貯蔵庫か・・・・・・お前ら船に潜ったな?」


「そうだよ。」


「いくらお前らが強かで悪運が強くても船には危険な物が沢山あるぞ。スラムで培ったものとは全く違うからな。そもそも・・・・・・」


と説教を始める親方だが


「このままスラムで野垂れ死にたくないし、幸せになりたい。」


 ルシアが親方の話を遮った。

 力強い反論に親方は顎に手を当て「そう言うなら仕方ねぇか」と説教を辞めた。


「あぁ、それとユーリはいる?」


「ユーリ?お前から尋ねるなんて珍しいな。ユーリなら二階に・・・・・・・・・」


突然階段から長身の女性がドタドタと音を立て、姿を現すと同時にルシアとアルカに飛びかかった。


「可愛い天使達ー!!大丈夫!?もちもち肌に傷付いてない!?」


「・・・・・・大丈夫ダヨ。」


「このもちもち肌・・・・・・ぷよぷよしてて癒されるよー!」


「ふにゅふにゅ」


「さぁさぁ!この疲れて汚れた身体は一緒にお風呂に入って洗い流そう!そうしよう!」


 そう言って半ば強制的に奥へと連れて行かれた二人。

 この姦しい一連の光景を見た親方は


「さて、看板を降ろすか。」


と言い、看板を降ろした。


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