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勇者様と言うなかれ  作者: 大島周防
勇者様編
9/91

9

黒い巨体が足を止めた。だが足踏みを続けている。目の色がだんだん黒く変わっていくが、今こそ矢を放つ時ではないのか?


ブ、ブ、ブ。


黒いユニコーンが首を振る。なんだ?


あたりに甘い香りが漂った。


黒ユニコーンは、クルッと向きを変えると、踊るような足取りのギャロップで、待ち受けるユニコーンと馬達の方向に向かう。


ええ?!振り上げたこの剣をどうすればいいんだ?


ボウッ。


後ろに現れたアプレイウス師が私の肩に手を置いた。


「魅了を強化して、黒ユニコーンの気を引いたんじゃよ。」


この甘い匂いはそれか!剣を急いで収めると、私は口と鼻を手で覆った。


「大丈夫。人間には効かん。馬供に犠牲になってもらおう。」


私の愛馬も牡なのだが。ため息が出る。


イザドラがそろそろと戻って来た。


「ユニコーンって、移り気で、気まぐれっていうけど、本当ね。全く集中力と持続力がないのね。」


リオン殿下とセスもこちらに向かっている。私は殿下の様子を確認するために殿下に駆け寄った。が、私の手は振り払われた。投げたことがお気に召さなかったのだろう。元気なご様子だからよしとしよう。


セスがようやく我々の元に戻って来た。


「テオは?」


イザドラが、


「消えたわ。」


ブン、という声と共に、イザドラが、右手の手のひらを空に向けて開く。


「消えた?文字通り?魔法?」


セスが問うと、アプレイウス師が、


「いや、魔力はないと思うがな。さすがに魔法を使われたら、わかるぞ。」


と首をかしげる。


「とにかくこの場から離れよう。ユニコーンが戻ってくるかもしれん。安全な場所まで一旦退却だ。」


セスに、


「どうだ?君の矢であいつを倒せたと思うか? 」


と確認する。倒せるなら何らか手が打てないだろうか。荷物を諦めきれない。


「一発では無理ね。あんたが懐に飛び込むつもりなのは見えてたから、喉元狙ってたんだけど。アプレイウスがもっといい方法があるって言うんで。」


歩きながら小声で話しをする。アプレイウス師に、


「少し時を置いてユニコーン達に近づけば大丈夫だろうか?・・・奴らが遊んだ後に。」


「発情が治れば、どうかの。ずっとあのままじゃないだろうが。それにしてもあの数だ。黒だけじゃなく白のユニコーンも相手にしなくちゃならないような事態は避けるべきだろうな。倒すことを考えんほうが良いのではないか?」


アプレイウス師もセスも戦うことには乗り気ではないようだ。


「処女が近くっていうのもねぇ。黒ユニコーンが牡が好みなら、あんまり意味ないんじゃない?童貞ならいいのかな。あ、私はダメよ。」


童貞の定義はよくわからんが、なんとなく視線が殿下に集まった。馬鹿な。そんな危険なことを、誰が殿下にやらせるか。


沈黙を遮って、イザドラが思い出したように声をあげた。


「あ、殿下、貴方吃音もちなのね。」


皆の歩みが止まった。


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