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勇者様と言うなかれ  作者: 大島周防
殿下編
82/91

12

「どうやってジェサイアを脅したかは、もうよい。いかにして黒龍の攻撃を止めるか。そこを話し合わなければ。」


私が提案する。ヴァルが、エヴァに


「この魔法陣で黒龍を操っているんだろう?魔法陣を消してしまえば良いのでは。」


と、問いかけた。


「消すのは簡単さ。だが、そうなれば、黒龍がどんな風に暴れるかは神のみぞ知るだね。それでもよければ、さっさと消しちまおうかね。」


エヴァの視線がジェサイアに行ったのを見て、私が止めた。


「いや、それは最後の手段で。魔法陣で、黒龍を操って、リンデンから引き離すことはできないのか?」


エヴァが首を振る。


「無理だね。今ある魔法陣を消した上で、新たに魔法陣を組み立てなきゃならない。魔法陣は動いてる間に書き換えることはできないんだよ。新たな魔法陣を組むのも時間がかかるが、それよりも・・・その魔法陣で黒龍が操作できるかどうか。言ったろう?ジェサイアの魔法陣は、番を殺されて狂った龍を罠にかけたんだって。それぐらい難しいのさ。魔法陣を組んだからって、黒龍がそれで操れるわけじゃないよ。」


皆が黙り込む。


エヴァがポツリとつぶやいた。


「それにしても、どうやってあの黒龍を倒したのかね。ジェサイアごときのしょぼい魔法で殺せるような龍じゃなかったんだけどね。」


エヴァにとっては、アプレイウス師と自分意外の魔力は全てしょぼいらしい。


「やり方聞いて、残りの一頭も同じ方法で殺せばいいんじゃないかい?」


エヴァは、本当にいいことを思いついたという自慢顔で私たちを見回した。


いや、まさか、そんな簡単にできるのか、と思いつつ、唯一残った帝国兵士の顔を見ると、兵士も困惑顔だった。


「いや、知りません。俺たちは、皆、山二つ越えた場所で、もう一人の魔術師と一緒に、黒龍を誘き寄せていただけなんで。部隊のほとんどの隊員は死にました。魔術師も。踏みつけられて、蹂躙されて・・・で、いきなり黒龍の姿が消えたかと思ったら、この洞窟に戻ってたんです。俺たちが洞窟に着いた時には、もう全て終わってて・・・皇帝部隊が、黒龍と一緒に出発して、俺たちは残って・・・魔術師の面倒見ろって。」


イザドラが、


「これで面倒みてるって?」


と、吐き出すように唸った。


兵士が言い訳を続ける。


「ほとんどの隊員達が龍に殺されて、俺たちも皆、おかしくなってて・・・酒のんで、恨みをその魔術師や家族に、ぶつける奴もいて・・・」


「龍に殺されたのは、ジェサイアのせいじゃないわよね。帝国皇帝でしょ?」


うん、うん、頷く兵士。


「・・・何度も逃げようとするから、俺たちの方も歯止めが効かなくなっちゃって。魔術師の家族が亡くなってから・・・」


「殺してから。」


イザドラが訂正を入れる。


「・・・魔術師の膝と肘を潰して、逃げられなくしたんです・・・隊長が・・・」


兵士は全てを吐き出して楽になりたかったのだろうが、聞かせられる方はたまったものじゃない。


イザドラが、そっとズボンをめくって膝を確認し、頷いた。本当の話なのだな。


「ジェサイアと魔力が繋がってるダーリンがおかしくなるのもわかるわねぇ。」


エヴァがため息をつく。


「で?どうするの?」


と、エヴァが問いかけるので、イザドラに、


「ジェサイアに、どのようにして龍を倒したか、聞いてみてくれ。」


と、頼んだ。


イザドラが、ジェサイアに口を近づけた。ゆっくりと問いかける。


「ジェサイア、どうやって、黒龍を倒したの?話してみて。お願い。」


ジェサイアの唇が動いたのを見て、我々は皆かがみこむように、耳を傾けた。


「卵・・・龍は孕んでいた・・・腹の中の卵を熱して腐らせた・・・卵が爆発した・・・」


「えっぐ!」


イザドラが自分のお腹をさすりながら呟いた。


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