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風圧で飛ばされたのか、咄嗟に飛び下がったのか、セスが転がったのが見える。
ズルッ、ズルッ。
わずかに引きずられる龍の尾の下に、絡まるツタが押し付けられている。アプレイウス師の姿はどこにもなかった。
逃げ切れなかったか。
「殿下!氷を放って!」
既に何度も練習していた魔術の一つだ。できるはずだ。
「・・・ま、ま、ックイ、ら・・・、ポッポッエーシアッッ・・・」
殿下の絞り出すような声が聞こえるが、何も起きない。
アプレイウス師を失った衝撃のせいなのか、完全にリズムを失っている。
慌てたような声で、殿下が再度唸る。
「ま、ま、ま、ま、くい、くい、くい・・・・」
起き上がったセスが、矢を放って龍の注意を引きつけようとする。どんなに近くから攻撃しようと、矢ではこの龍を倒せないのは明らかだった。
私は龍の鼻先に両足を絡め、両手に力を込めて剣を突っ込む。
「ま、ま、ま、ま、くい、くい、くい・・・・」
殿下は諦めない。だが、何度やってもあれではどうしようもない。
両手がふさがっていたらどうすればよいか、日頃殿下と練習していた必殺技を出す時がきたようだ。
「リオン!」
私は殿下の目線を捉える。
「ド、ド、タッチ、ド、ド、タッチ、ド、ド、タッチ・・・」
殿下の体がわずかに揺れる。
「ブン、ブン、ダンチ、ブン、ブン、ダンチ・・・」
「ド、ド、ド、ド、ド・・・・」
頭がしっかり振れてきた。顎でリズムを取っている。今だ!
「ま、くい、ら、ぽるた、ぽえしあ!」
殿下の伸ばした両手から、氷の槍が飛んでくる。
「うおりゃあー!」
両手に持った剣ごと仰け反り、龍の首を晒す。槍が龍の喉元に突き刺さった。
ギャー!
叫び声とともに、龍が横倒しとなる。地面に倒れこむ寸前に開いた口から抜いた剣とともに私は鼻先を飛び降りた。
「ギャーッ、ハッハッ!」
叫び声がなぜか笑い声になっている。
「ハ、ハ、ハ」
笑い声とともに龍の姿が、小さくなり、地面をのたうち回りながら、腹を抱えて笑う老婆に変わる。
「ぶ、ぶ、ブン、ブン、ダンチって、何よー。ああー!死ぬー!笑い死ぬー!」
何が起きている?ヒステリックに笑う老婆は、涙を流し始めた。
「だめー!誰かぁ、止めてー、くるしぃー、殺してー!ひっ、ひっ、ひっ!」
指先で涙をぬぐいながらも笑いがとまらないようだ。
「お望みなら殺してあげるわよ!」
セスが矢をつがえながらこちらに一歩近づいた。
フォン。
音とともに半透明な防御壁が浮かぶ。セスの放った矢は、見事に弾き飛ばされた。
「おい、おい、私の連れを傷つけないでおくれ。」
目を細めて笑うアプレイウス師が立っていた。
口ドラムです。My My My Sharona!




