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となると、他の手段を考えねば。リズム、詠唱、韻か。ああ、あれか。
「おまかせください。」
そう言うと私は、手を降って歩き始める。
「天国ついたら
神様に聞かれたよ。
『どうやってここにたどり着いたの?』
だとさ。
『俺たちゃ第三騎士団だ!陛下のために命がけで戦ってここに来たんだ』
って答えたさ
地獄についたら
悪魔に聞かれたよ。
『どうやってここにたどり着いたの?』
だとさ。
『俺たちゃ第三騎士団だ!陛下のためいろんな奴を地獄に送り込んでたら、ここに来たんだ』
って答えたさ!」
足を高くあげ、声を張る。何度も繰り返したこのカデンスがこんなところで役に立つとは。ぐるっと一回りすると、皆の前に戻った。
セスが
「第三師団の行進曲か。」
というと、イザドラが、
「まあ、うーん、やってみる価値はあるかもね。」
と答えた。アプレイウス師は目を細めて微笑んでいるので、やる気はあるのだろう。肝心の殿下は目を丸くしている。
「それじゃあ、殿下、ヴァルの後について、一緒に歌いながら歩いてみて。」
と、イザドラが指示する。すかさずアプレイウス師が、
「いや、皆に見られておっては、殿下の緊張が解けんだろう。ここは全員で、一緒にやるのが良いのではないかな?」
と言葉を挟んだ。
「「えええー!」」
イザドラとセスが嫌そうに声を上げる。
「殿下が魔力を使えるようになるのは、この任務の最も重要な要素だぞ!さっさと並べ!」
と、私が指示を出した。
「1、2、3、4!
天国ついたら
神様に聞かれたよ。
『どうやってここにたどり着いたの?』
声が小さい!イザドラ!手を降らんか!」
イザドラが慌てて手の振りを大きくする。
「「『俺たちゃ第三騎士団だ!陛下のために命がけで戦ってここに来たんだ』
って答えたさ」」
「リオン!歩幅が狭い!遅れてるぞ!顎を引け!」
殿下が飛び跳ねるように歩みを大きくする。首を伸ばして、顎を引いた。まだ声は出ていないが、こうなったら一兵卒扱いで、緊張を解すべきだと考えた。
「「地獄についたら
悪魔に聞かれたよ。
『どうやってここにたどり着いたの?』
だとさ。」」
「アプレイウス!胸を張れ!腰が伸びていないぞ!」
全員同じ扱いだ!
「「「『俺たちゃ第三騎士団だ!陛下のためいろんな奴を地獄に送り込んでたら、ここに来たんだ』
って答えたさ!」」」
2周目に入ったところで、ようやくか細い殿下の声が唱和し始めた。3周目で声が大きくなる。4周目では、その口元に笑みが浮かんだ。
5周目で、イザドラが根をあげた。
「かんべーん!」
息も絶え絶えだ。だがここで終わらせるわけにはいかない。殿下が乗ってきたのだ。
「この程度で顎を出すな!1、2、1、2!」
行進に気を取られて、まったく注意を払っていなかったら、左後方から、のんびりした声が上がった。
「なにやってるんすか?」




