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勇者様と言うなかれ  作者: 大島周防
勇者様編
11/91

11

となると、他の手段を考えねば。リズム、詠唱、韻か。ああ、あれか。


「おまかせください。」


そう言うと私は、手を降って歩き始める。


「天国ついたら


神様に聞かれたよ。


『どうやってここにたどり着いたの?』


だとさ。


『俺たちゃ第三騎士団だ!陛下のために命がけで戦ってここに来たんだ』


って答えたさ


地獄についたら


悪魔に聞かれたよ。


『どうやってここにたどり着いたの?』


だとさ。


『俺たちゃ第三騎士団だ!陛下のためいろんな奴を地獄に送り込んでたら、ここに来たんだ』


って答えたさ!」


足を高くあげ、声を張る。何度も繰り返したこのカデンスがこんなところで役に立つとは。ぐるっと一回りすると、皆の前に戻った。


セスが


「第三師団の行進曲か。」


というと、イザドラが、


「まあ、うーん、やってみる価値はあるかもね。」


と答えた。アプレイウス師は目を細めて微笑んでいるので、やる気はあるのだろう。肝心の殿下は目を丸くしている。


「それじゃあ、殿下、ヴァルの後について、一緒に歌いながら歩いてみて。」


と、イザドラが指示する。すかさずアプレイウス師が、


「いや、皆に見られておっては、殿下の緊張が解けんだろう。ここは全員で、一緒にやるのが良いのではないかな?」


と言葉を挟んだ。


「「えええー!」」


イザドラとセスが嫌そうに声を上げる。


「殿下が魔力を使えるようになるのは、この任務の最も重要な要素だぞ!さっさと並べ!」


と、私が指示を出した。


「1、2、3、4!


天国ついたら


神様に聞かれたよ。


『どうやってここにたどり着いたの?』


声が小さい!イザドラ!手を降らんか!」


イザドラが慌てて手の振りを大きくする。


「「『俺たちゃ第三騎士団だ!陛下のために命がけで戦ってここに来たんだ』


って答えたさ」」


「リオン!歩幅が狭い!遅れてるぞ!顎を引け!」


殿下が飛び跳ねるように歩みを大きくする。首を伸ばして、顎を引いた。まだ声は出ていないが、こうなったら一兵卒扱いで、緊張を解すべきだと考えた。


「「地獄についたら


悪魔に聞かれたよ。


『どうやってここにたどり着いたの?』


だとさ。」」


「アプレイウス!胸を張れ!腰が伸びていないぞ!」


全員同じ扱いだ!


「「「『俺たちゃ第三騎士団だ!陛下のためいろんな奴を地獄に送り込んでたら、ここに来たんだ』


って答えたさ!」」」


2周目に入ったところで、ようやくか細い殿下の声が唱和し始めた。3周目で声が大きくなる。4周目では、その口元に笑みが浮かんだ。


5周目で、イザドラが根をあげた。


「かんべーん!」


息も絶え絶えだ。だがここで終わらせるわけにはいかない。殿下が乗ってきたのだ。


「この程度で顎を出すな!1、2、1、2!」


行進に気を取られて、まったく注意を払っていなかったら、左後方から、のんびりした声が上がった。


「なにやってるんすか?」



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