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あさおねっ ~朝起きたらおねしょ幼女になっていた件~  作者: 沼米 さくら
いつかめ ~なくしたものは~

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22/50

わたしはちっちゃいおんなのこ

 ピンポンピンポンと何度もインターホンが鳴らされる。

「どうしようどうしようどうしよう」

 俺は二階の自室から玄関を見下ろし、そこにいる三人の高校生を見ておびえていた。

 幼女になったことを知られたくない。恥ずかしいし……というかこんなことになるなんて考えてもいなかった……。

 いないふりをしてやり過ごすか……と、思考したとき、声が聞こえた。

「おーい、日向ー? いないかー?」

「待て待て、鍵が開いてたからって勝手に入るのはいかんだろ」

「いいのよそのくらい。日向くーん!」

 ……鍵、閉め忘れてたのか。

 ナチュラルに不法侵入キメてくるとは流石に思わなんだ。

 しかし、ここまで来られたら仕方ない。腹をくくるしかあるまい。要するに俺が幼女になってしまったと悟らせなければいいのだ。

 深呼吸。息を整えて――


 幼女モード起動ッ! きゅるんッッ!!


 説明しよう!

 幼女モードとは、幼女のふりをすることで完全に幼女に擬態し相手に警戒心を抱かせることを防ぐ、超高等技術である!!

 普段からの幼女観察、さらに昨日なのちゃんたちと遊んだり他のリアル幼稚園児と触れあったりしたことで、その動きや思考などをある程度真似ることが可能となったのだ! ありがとう、なのちゃん!! ありがとう、幼女たちよ!!!

 ……なに言ってんだ俺。

 しかし、時間もなければ方法もなく、誤魔化すのが最善手なのだ。いや、これでバレた時の羞恥度がさらに高まったわけだけど。

 三人の声が近づく。

 ――敵接近。侵入までたぶんあと三秒前……ニ……一――。

 ドアが開かれ、一週間近く見ていなかった彼らの顔が見えた。ついにその時がやってきたのだ。

 俺は息を思いっきり吸って。


「お、おにーさん、おねーさん……だぁれ?」


 怯えたふりをしてみることにした。

「あー……君のお兄ちゃんを探しているんだけど」

 優し気に話しかけてきた。まぁ、こいつらはロリコンだけど悪い奴らじゃないし、襲いはしないだろう。いや、正体がバレたらどうなるかはもう考えたくもないけど。

 とりあえず俺は幼女モードを維持したまま答えた。

「そーくんのこと?」

「そうそう!」

「……あー……えーっと……」

 言い訳考えてなかった。思考すること三秒。

 ああもう出まかせでどうにかするしかねぇ!

「ん……あ、たしかね、わたしと……とれーど? でがいこくにいったのー」

「外国っ!?」

 ジローがすっとんきょうな声をあげ、唯一の女子である三島さんは思い出したように。

「そういえば、日向君は昔海外にいたとか、しかも両親は今も海外逃亡だとかでいないとか、日向君のファンクラの中では噂になってるわね……」

「聞いたことないんですが!? いや確かに英語がペラッペラだったのはそれで辻褄が合うんだけど!」

 現場は大混乱。というかファンクラってなんだよ!?

「えーっと、とにかく落ち着け! ……いてよ!」

 俺はひとまず事態の収拾にかかった。


 彼らをリビングにまねき、お茶を淹れて(ちょっと驚かれたけど、このくらいは当然だ)、ゆっくりと話を聞くことにした。

「でねー、蒼くんはねー、とってもカッコいいのよー」

 ……というか、一方的なのろけ話を延々と聞かされていた。それも、あろうことか日向 蒼、すなわち自分に向けての。

 そのどれもが身に覚えのないもので、若干ドン引きである。

「日向って、聞けば聞くほど女ったらしだよな」

 別にたらしてなんかねーよ。勝手に惚れられてこちとらいい迷惑さ。

 ジローの言葉に抗議したくなったが、今はガマン。俺の正体がバレたら困る。

「あいつ、無駄に顔がよかったからなー……」

「だべだべ。クソ羨ましいよな。俺らなんか、幼稚園の近くを通りがかっただけで通報だぜ?」

「そりゃお前らの素行が悪いからだ」

『だよなー(笑) ……ん?』

 ……あ、いかん。つい自然に会話に混ざってしまった。

 口を塞ごうとしたときにはもう遅く……しかし。

「き、気のせいだよな。いまこの子が日向っぽいツッコミを入れたなんて」

「だよねー……」

 よかった、気のせいで済ましたようだ。俺は人知れずほっとして――。

「気のせいと言えばさ、なんかこの部屋おしっこ臭くね?」

「ゴッフ! げふっごふっ……」

 思わず咳き込んだ。


「確かに、なんか臭いわね……。ねぇタカオミくん、漏らした?」

「どーしてそうなる!?」

 夫婦漫才乙……ってそうじゃなくて。

 俺はこっそりと手を股間に置いた。

 ……どうやらいつのまにかお漏らししてたようだ。それも、一回ではなく複数回。股間に触れる感触が少し湿っているのがその証拠だ。一回だけならさらさらのまんまだし。

 軽い焦燥を抱くその間にも、会話は進む。

「というかさ、さっきはこんなにおい無かったよな」

「確かに……。なら、やったのはこの中の誰かね」

「だな。まず冷静に考えて俺とタカオミはねーわな」

「だよな。男のお漏らしに需要はない」

「私は日向君のお漏らしなら見たいけど」

『うわぁ……。女子怖え……』

「ともかく、私もそういうのはないわ」

『……ということは?』

 三人の視線が一気にこっちを向いた。

 そして、トドメの一撃。

「この子、おパンツの辺りがふっくらしてね?」

「多分おむつだわな」

 一発でバレた。その上で、女子代表三島さんは提案する。

「じゃあ替えてあげましょ?」

「おいやめてくれ変態委員長」

『……ん?』

 つい素が出てしまった瞬間を、見逃されるわけがなかった。


「お前……もしかして日向か!?」


 あああああああああああああああバレたあああああああああああああああ!!!!!!


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