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あさおねっ ~朝起きたらおねしょ幼女になっていた件~  作者: 沼米 さくら
よっかめ ~たのしいようちえん~

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16/50

ゆめうつつ、ある朝の敗北

「キャーッ! ヒナタクンカッコイイー!」

 今日も黄色い悲鳴が耳をつんざく。

 蝉の声ほどにやかましいそれから逃げるようにしてプールの中に飛び込めば、その姿さえも褒め称えられ。

 憂鬱に、ただ憂鬱に。俺は空虚、空を見つめる。水中を浮遊する。ただ、海月(くらげ)のように浮遊する。

 盲目的な女たちの姿に、嫌気がさして。なにもかも嫌になって。面倒くさくなって。


 そして、俺はロリコンになった。


**********


「はっ!?」

 パッと目を開くと、あまりにも見知った天井が目に飛び込む。

「……久しぶり、夢、見た……」

 暗闇ではない、普通の夢。俺がまだ普通の男だったころの――。

「あの頃には、戻りたくないなぁ……」

 独り言をつぶやいて、上体を起こすと、ふと違和感を感じる。

 今朝は妙に、おむつがサラサラでふわふわ。まるで、つけたてのような……。

 慌ててパジャマのズボンを下げ、おむつの状態を見てみると、真ん中に入った線はまだ黄色。それはすなわち。

「今日はおねしょしてない……!」

 この姿になってはじめて、おねしょをしなかった。それが、とんでもない大成功のように思えて。

 しかし、急激に湧き上がる尿意が戦勝ムードをぶち壊した。

「……っでも……いまなら……トイレいけるかも……!」

 股間に目いっぱいの力を入れて、ゆっくりと地面に降り立つ。

 そのまま、震えながら、片方の手で股間を抑えつつ、一歩ずつ、前へ前へ、トイレへと向かおうと歩を進め――ついに、トイレの前に到達する。

 だが、現実はあまりにも無情であった。

 トイレのドアを開けようと手を伸ばした、その瞬間……急激に、脱力した。

「んあっ……らめ……め……やぁぁ……」

 あたかも口を締めたホースのように、飛び出した水流は勢いよく、叩きつけられる水音は、むなしく廊下に響き渡る。

 広がる暖かさは湿気を伴って、おむつの中心の線を青緑色に塗り替えていった。

 すすり泣きと水音の二重奏が、早朝の日向家を暗く照らした。


「おお、今日もいっぱいおねしょしちゃったね~」

「ちがうもん! おねしょ……してないもん……」

「こんなにおむつぱんぱんなのに?」

「……おトイレ……間に合わなかっただけだもん……」

 開かれたおむつ。ひやりとする感覚を味わいながら、俺は頬を涙に濡らす。

 本当に、間に合うと思ったのに。

 そんな言い訳を、瑠璃は笑って聞いていた。絶対信じてねぇな。

「というか、瑠璃もおねしょしてんでしょ」

 聞いてみると、おしりふきを動かす手が止まり、俺を見る目がそれた。図星か。

「と、とりあえずおむつはいちゃおうねー」

「いい。自分で穿けるもん」

 瑠璃の持っていた紙の下着を奪うように取って……って。

「これ……昨日買ったやつじゃん」

 俺には少し大きいおむつ。瑠璃が使うやつ。でも、なんで……と思ったら。

「返して! これ学校に穿いてくんだから……」

「学校に……これを?」

「あっ……」

 しまった、という風に口をふさぐ俺の妹(中学生)。

「いっ、いまのはわすれて!」

 それを聞いて、からかおうと口を開いてみたら、彼女が涙目になってるのが見えて。

「……わ、わかった」

 ばつが悪くなって、口をつぐんだ。


「で、なんだこの服は」

 俺が着せられたのは、襟にフリルのついた真っ白なブラウスに、赤のチェック柄の吊りスカート。ご丁寧にレースのついた短い靴下まで履かされて。

「なんなんだ? なんかのコスプレか?」

「昔わたしが着てた、幼稚園の制服」

 瑠璃の言葉に少し驚きつつ。

「なんでこんなもの……」

 聞いてみると、瑠璃はにやりと怪しい笑みを浮かべ。

「兄貴――いや、あおいちゃん。今日のあなたは幼稚園生ですっ!」

「は?」


 瑠璃に腕を引っ張られて連れてこられた場所は、近所の幼稚園。

「あら、瑠璃ちゃんまた大きくなったわねぇ」

「いえいえー」

「でも、お兄ちゃんは一緒じゃないの?」

「あっははははは……」

 そのお兄ちゃんが俺だっての。言ってもどうせ信じないだろうし黙ってるけどさ。

 毒づきつつ、俺は建物の中を軽く見渡してみる。

 最後にここに来たのは小学生の時だったっけ。瑠璃がここを卒園するとき。それまでは瑠璃を迎えに行ったりで来てたけど……あれからはずいぶんとご無沙汰だ。

 もっとも、瑠璃はたまにボランティアで子供たちの遊び相手になってるあげてるらしいんだけどな。この前の職業体験もここだったらしいし。

 閑話休題。

 内装は小さい子供に合わせられているらしく、だいぶ小柄な俺でも違和感なしに歩けそうだ。むしろ、物の大きさがちょうどよくも感じる。

「で、なんでこんなところに……」

 聞こうとしたところで感づいてしまった。しかし、時すでに遅し。

「今日はこの子の体験入園で」

「うん、わかったわー。いろいろ気になるけど……それはまた今度聞かせてもらうわよ」

「あはは……」

 それで幼稚園ってことか……ってちょっと待てっ!

「お……わたしは小学生だって!!」

「っていう夢を見てるんです」

「やめんかっ!」

 瑠璃の発言にツッコミを入れる。おいやめろ幼稚園の先生。ほほえましげに見てるんじゃねぇ。

「だいいち、まだおむつも外れてないのに小学生なんてまだ早いって」

 ……それを言われちゃぐうの音も出ない。

「でも、せめて年長組でお願いします」

 とだけ頼んでみると。

「いいわよ~。年長でおむつの外れてない子もいるからねー。一人だけだけど」

「やったぁ!」

 俺はうれしくて飛び跳ねて。

「あら、かわいいおしり」

「ひゃあ!?」

 めくれたスカート。顔が真っ赤になって、半分無意識でスカートを抑えた。おい、なんで瑠璃はニマニマしてるんだ!?

「ふふふっ! じゃあ、行ってきます! あおい、いい子にしてるのよー!」

 妹にお姉さんぶられても……なんか、何とも言えない気分になってしまって。

 俺はため息をつきつつ、幼稚園の先生についていくのであった。



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