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悪魔に転生したけど可愛い天使ちゃんを幸せにしたい  作者: 亜辺霊児
第二章 ガランディア帝国編
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57話 アカウント登録って最初にするものですよね?

 俺たちはマルドルの案内で再び古代遺跡を目指して、森の中を進んでいた。

 ルリ、メキメキ、俺の順でそのあとを追っている。


「どうしてメキメキは元のサイズに戻ってるんだよ?」


 いつもと変わらぬ姿をしたメキメキを見ながら、俺はそうつぶやいた。


「え? だって体が大きいと、何だか動きにくいのさ。別にサイズは自由にできるから、必要なときだけ大きくなれば良いじゃん」


「それもそうだな」


 小さくなってもメキメキの魔力量は七凶悪魔レベルで、今の俺よりもでかい。


「それに感謝しなさいよ。これからはあたしがいつでもデシオンに魔力をあげられるんだから」


 メキメキはそう言って空中に浮かびながら自慢げに胸を張る。


「ああ、助かるよ」


「そ、そうよね~」


 メキメキは自分で感謝するように主張しておいて、実際に言われると照れくさかったようでそっぽを向いて顔を隠した。


 実際に俺は感謝しているしな。

 旧レヴィアタン(現レヴィアタンはメキメキになるので)との戦いを終えたあと、俺は魔力をすっかり減らしてしまっていた。

 ガランディア帝国に戻れば回復はできるのだが、帰るまでにまた何かあったら対処ができない状態だったので不安を抱えていた。


 そんなときにメキメキが再臨(リチャージ)ができるようになったと自慢し始めたので、魔力を俺にも別けて貰ったというわけだ。


 ルリは再臨できても回復するのは神気であって、魔力を供給することはできない。

 メキメキが魔力の回復要因となったのは、嬉しい誤算だった。

 今までは俺からメキメキに魔力をあげたりもしていたので、立場が逆になった形だ。


「ルリちゃんにはできないから、あたしがやるしかないからね~」


「むむぅ~」


 ルリが悔しげに頬を膨らませている。


「いや、まあ、神気がいるときもあるんだし、どっちも必要だよ……」


 俺は二人の板挟みをくらって困り顔をしつつも、対立しないように(なだ)める。


 俺の能力は多用はできないので、基本的にはこの二人に頼ることになりそうだし、はっきり言って俺よりも頼もしい。

 段々、俺の立場も危うくなってきているので古代遺跡で超パワーに目覚めるとかパワーアップイベントを期待したいところだ。

 そう上手くは行った試しがないけれど。


「皆様、仲が良くて羨ましいっす」


 マルドルが何やら小型の機器をいじりながらそうつぶやく。

 お前にはこれが仲良くしているように見えるのか。

 確かに状況だけ見ると、女の子に取り合いにされているようなもので悪くはないわけだが。


「それよりももうすぐ古代遺跡らしき反応の近くっす。何かそれらしいものがあれば言って欲しいっす」


「古代遺跡ってどんなものだ? それらしいものと言われてもここら辺は木しか生えてないぞ」


 木が邪魔してすべてを見渡せるわけではないが、魔力で強めた視力をもってしてもそれらしきものは見つけられない。


「こっちも古代遺跡特有とおぼしき魔力反射を観測しただけで、実態がどんな物かまでは分かってないっす。最悪、地下にあるかもしれないっすね」


「地下を探すとなるとメキメキに潜って探して貰うしかないが……」


 メキメキの方に視線を送るとあからさまに嫌そうな顔をしている。

 俺も以前なら地中に潜れたが、右腕が神気モードであるためにそこだけは魔力で同化できない。右腕以外を地中に溶け込ませて探すことはできるが、範囲が限られるので効率が悪くて時間がかかりそうだ。


「まあ、それは最終手段として魔力反射って何だ?」


「それはあれっす。古代遺跡って何の物質も通さないって伝承があるので、神気も魔力も完全に反射したら怪しいって話しっす。ぼくらのとこの研究室のメンバーで遠距離魔力放射による観測を行って確認したら、結界とかで浄化したりするのとは違う反応が返って来たんで」


「神気も魔力も通さない物質ねぇ~」


 それが本当だとしたら気配だけで見つけるのは難しそうだ。


「一応、ぼくの持ってきた小型魔力放射機で確認すれば発見できるはずっすけど、これの射程が二メートルくらいっすからね」


「近づかないと分からないってことか」


 怪しい物を見つけるのは俺たち頼みということだろう。

 だからといって何の考えもなしに探し回りたくはない。

 そこである一つの妙案を俺は思いついた。


「メキメキの能力で探せばいいんじゃね?」


「確かに。広範囲の調査向きの能力っすね!」


「え、あたし~? 何をすれば良いのさ?」


 メキメキは相変わらず嫌そうな顔を見せているが、ここは頼るしかない。


「いや~。メキメキって超頼りになるからお願いしたいんだけど駄目かな~?」


「ま、まあ、あんたたちじゃ無理なことでもこのメキメキ様にかかれば余裕だしさ。何々言ってごらんよ?」


 チョロい。

 そんなにチョロくて大丈夫か心配になる。

 まあ、こんなことを思っても、今は心を読まれないように魔力を遮断しているからたぶん大丈夫だろう。


「古代遺跡は魔力とかをまったく通さないらしいんだ。メキメキの分身を周囲へ飛ばして通れないものがあれば、それが古代遺跡だから探して欲しいなってこと。お願いできるか?」


「何さ、その程度のこと? それならささっとやっちゃうわよ」


 そう言うとメキメキは天涯蠱毒(マイトークン)を発動させた。

 メキメキから複数のまったく同じ姿をした分身が周囲へと散らばった。

 流石に分身を元の蛇の見た目で出すのは気に入らなかったらしく、自分と同じ姿に変えているらしい。


 そして見つけるまでそれほど時間はかからなかった。


「あったさ。何か木みたいだけど通れないものがあるさ」


「ホントか? そこまで案内してくれ」



 俺たちはメキメキの案内に従ってその木のところまでやってきた。

 その木は林檎のような実が一つだけ()っているだけで、特に変哲もないように見える。


「ただの木にしか見えないが、これで合ってるのか?」


「確かに魔力反射もこちらが観測したものと一緒っすね。間違いないっす」


 マルドルが小型機器で確認しながらそう答えた。

 メキメキとマルドルがそう言う以上、否定する要素はない。


「というか、古代遺跡って言うから建物とか地下神殿的なものをイメージしてたけど、木っていうこともあるのか」


「どうりで今まで見つからなかった訳っすね」


 まあ、この木を古代遺跡だと思うやつはまずいないだろう。


「それでこいつをどうすればいいんだ?」


「知らないっす。古代遺跡をノアが使えるっていう伝承があるだけで、まともにその機能を使える者なんて今はいないんで」


「そういえばそうだったな。とりあえず触って調べてみるか」


 俺は木の幹を手でぺたぺたと触ってみる。

 魔力や神気を送り込んでみたが聞いていた話の通り弾かれた。

 軽く引っ掻いてみたりもしたが、まったく傷が付く気配もない頑丈さだ。

 何か、どこかで見たものと既視感を覚える。


「このままだと何も分からないな。能力を使って調べてみるしかないのか……」


「え? それって危険なんでしょ? やめた方が良いよ!」


 ルリがそう訴えて反対した。


「そうは俺も思うが……ルリやメキメキは何か、この木について分かるか?」


「う~ん?」


「そうねぇ~」


 ルリやメキメキも思い思いに調べ始める。

 その横ではマルドルが持ち込んだ機材を使って調べようとしているが、反応はよろしくないようだ。


「分かんない! 心があるのか、ないのか知らないけど精神干渉も弾かれるし、本気で攻撃しても傷つかないし何なのさ!」


 そう言いながらメキメキは木を思いっきり蹴っている。

 流石に壊そうとするのはやり過ぎだぞ。それでもビクともしないから問題はないけど。


「私も本気で殴ったし、能力で体の対象に取ろうとしても効かないよ、これ。ホントになんなの?」


 ルリも本気を出して大人の方の人格になってるし、どうしてこの二人はこの木を壊そうとしているんだ?


「分かってはいたっすけど、ぼくの方もさっぱりですね。何の干渉も受け付けないので調査のしようがないっす!」


 マルドルもお手上げとなるとやはり俺の能力しか手はない。

 俺は右手の包帯を少し緩める。


「皆は少し離れておいてくれ。初めてのことで何が起こるか分からないからな」


 俺は露出させた右腕でそっと木に触れる。


 そして全員が離れたのを確認して通常能力(セイムスキル)天下夢想(コーディネーター)』を発動させた。


 その瞬間、木が白く光った。


「これは一体何さ!?」


「どうなってるの!?」


 メキメキとルリは驚きを隠せない様子で、マルドルは黙って息を呑むと興味深げにそれを眺めている。


『マスター認証を確認しました。未登録アカウントであるため、制限(セーフ)モードで生命の樹(セフィロト)を起動。使用権限は共有記録情報の閲覧と、記録された生命の製造に制限されます』


 俺の意識にその言葉が流れ込んできた。


 木の幹にはホログラムのような立体映像が浮かび上がり、選択画面のようなものが出現した。


 そこには『新規アカウントを登録しますか?』という文字が浮かび上がっている。

 正直、驚きすぎてどうして良いのか俺は困惑した。


 俺が思っている以上に、この世界はハイテクな何かが裏にあるのだろうか?

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