ありがとう……ごめんね。
……やあ、勇者。何で、泣いてるの?君はまだ勇者なんだから、もっと堂々としてたらいいじゃん。
あーそうそう。今話せてるのは、過去の魔王たちが仕組みに対抗しようとして、頑張った結果。……勘違いしちゃだめだよ。どう足掻いても、あと少しの時間で私の命は消える。
……死なないで?無理だよ。分かるでしょ?こんなに、血が出てるんだから。回復魔法も、効かないから、止めていいんだよ……。
ううん。責めてないよ。そんな言葉、聞きたくない。……むしろ、助けてくれてありがとう。今は、とても晴れやかな気分なんだ。あんなに気持ち悪かったのが、嘘みたい。はは、ほんと……嫌な役ばっかで、ごめんね。
え?あー。見ちゃった?そうだよ。これ、勇者の証。……私は、君の前の勇者だった。うん。そうだよ。次の魔王は、君。魔王を倒した勇者が、次の魔王に変わる。これがこの世界の仕組み。
詳しくは、この城の図書室に行くと分かるよ。君は馬鹿だから、文字読めるか心配だけど。……頼むから、笑ってよ。君が泣いてたら、こっちまで泣きたくなる。
……ほんとはね、もっと……もっと、君といたかった!魔王と、勇者じゃなくてっ!普通の人間として!……君といた日々が、私の地獄のような日々の中の、ほんの僅かな楽しみだったんだ!
……あれ?リンドウ?な、なんで……覚えててくれたんだ。凄く、嬉しいっ!えへへ、やっぱり、君のことが好き。……照れて、る?あ、れ?もう、君の顔、見えないや。
……うん。そろそろ、眠くなって、きた。先に、逝くよ、勇者。
ありがとう……ごめんね。おやすみ。
「おやすみ、魔王」




