届け。届け。
▼ここ数日、魔王は意味のない言葉や呪詛しか呟いていない。その中に混じった『生きたい』、『死になくない』が、勇者の手を止め、その度に勇者は殺された。
「殺したくねぇ。……何で俺が勇者なんだ。何でお前が魔王なんだ。な、んで」
▼悲鳴、狂った笑い声、絶叫。沢山の声が重なっている。それらは彼女の唯一残った人間のパーツ、『口』だけでなく、体表中に出来た不気味な口々からも発されている。
「どれがお前の本当の言葉なのか、分かんなくなりそうだ」
▼勇者は魔王を切り付けた!しかし、すぐに再生されてしまった!
「まだ、届かないのか。お前の、残酷な願いに」
▼スキル「連撃」を発動。スキル「連撃」を発動。スキル「連撃」を発動。おめでとうございます!スキル「連撃」はレベルアップしました!
「見てくれよ。お前に最初に見せたスキル。今じゃ、こんなにすげー威力になったんだ」
▼魔王は『ハヤク、殺して』と呟いた。その声は、すぐに他の声に紛れてしまうぐらいのか細さ。でも、勇者には届いていた。
「……本当にお前は死にたいのか?」
▼勇者の剣が、魔王の体を貫く!
「なあ、帰ってきてくれよ!お前に言いたいことが、渡したいものがあるんだ!だから……もう一度、目を開けてくれよ!」
▼……やった!魔王を倒した!
「たのむよ、死なないでくれ……っ」




