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序章
———「死神」は私に微笑みかけると、鎌を自らに振り下ろしたのだった。
私は貧困だった。
金も、人も、場所も、何もなかった。
弱者は強者の誇示のために踏み台として利用され、強者の利益のために搾取され一生を終えるものだ。
何も不思議なことはない。私は弱者だったのだ。
私は穢れた血を持って生まれ、その瞬間から弱者として生涯が決定されていたのだ。
生きるために人を騙し、人を脅し、人を襲った。規則も道徳も陵辱した。
強者が定めた法を私が犯したという行為だけは、まるで世界を破壊するような、この上ない高揚感を私に味わわせた。
私には才能があったようだった。
勉学はからきしだが、機転は利いた。
そして何より、穢れた血の異能が私を助けてくれた。
私の親愛なる母の穢れた血が私の犯罪生活を華やかに彩ったのだ。
そして私は犯罪の日々を謳歌していた、18歳の夏、件の「死神」に出会うことになる。