運命の再開
安寧の終わり 語り/武松
ー六和寺ー
俺はここで兄弟たちの供養をしている。
一番新しいのは呼延将軍墓だ。墓といっても、遺骨は入っていない。そこに名前を記しただけだ。
そこに毎日、手を合わせる。来世での再会も願って。ここでこれをつづけるには、最後まで生き残らねばならないな。
なんだ。寺の中が騒がしい。
物陰に隠れて様子を見る
「な!?」
これは金の軍だろう。それが、寺の中のものを漁っている。そして、墓にも近づいてくる。
供物を漁り始めた。
俺はそれが許せず思わず飛び出す。金の兵は驚いたようだったが、すぐに刀を抜き切りかかってきた。
なんとか避けるも攻撃ができない。
片腕が残ってさえいれば…!
俺は逃げることしかできなかった。
噂で聞いた。兄弟たちがまた梁山泊に集まっているらしい。
そこに向かおう。
梁山泊 語り/武松
ああ、湖が見える。我らが運命の地、梁山泊!
「兄貴!」
嬉しそうな顔でこちらに手を振る若者がいる。
間違いない。阮小七だ。
「小七!なぜここに?」
「謀叛の濡れ衣を着せられ、ここで今まで通り、漁師をやってました!しかし、兄上はなぜ?」
「六和寺が金の軍に襲われた。兄弟たちの碑も…」
「そうか、金がそんな近くまで」
「だが安心した。お前たちはここでよく暮らしているようだな。他の兄弟の情報はないのか?李俊と童兄弟の話を聞いていないが」
「戴兄貴によると、暹羅国に渡って、そこで王になったらしい」
「ほう、李俊なら、容易だろうな」
「まあ後は梁山泊で話しましょう、兄弟も待っています」
「ああ、そうしよう」
懐かしい。ああ、忠義堂だ。
いまだ残っている椅子、机、我らはここで天命を知った。
”替天行道 忠義双全”
奸臣の最期 語り/高俅
金軍はすぐそこまで迫っている。
もう逃げてしまうか、蔡京殿、童貫殿は新しい皇帝から追放が言い渡された。
私も逃げたほうが良いだろう。
だが、もう少し待つ。運が良ければ、生き延びれる。
権力は、直前まで持っておくべきだからな。
金国でも利用してくれるわ
体が、うまく動かんな…
ふふ、梁山泊も消えたと思えば、これか…