隣国の危機と宿命
天命 語り/柴進
公明兄貴、盧俊義殿、呉軍師、花栄殿、鉄牛が死んだ。
公明兄貴、盧俊義殿は奸臣からの毒で、鉄牛は公明兄貴によって、軍師、花将軍は兄貴の後を追って。
あの日々はなんだったのだろう。梁山泊で過ごした日々。
素晴らしかった。この退屈な日々とは比べ物にならないほど、満ち足りた日々。
天命とはなんだったのか。
「ご主人、お客様です」
「誰だ?」
「戴、と名乗られておりましたが」
「戴?まさか!通せ」
部屋に男が入ってくる。
「兄弟!」
戴宗だった。いつぶりであったか。
「急にどうしたのだ?」
「それが、梁山泊に再び兄弟が集まりだしているのだ。すでに李応殿、杜興殿、鄒潤殿、蔡慶殿、楽和殿、楊林殿、蒋敬殿、孫立殿、孫新殿、顧大嫂殿。今は皆で梁山泊で暮らしている」
「まさか、再び山賊になったのか?」
「いや、ただそこにいるだけで、国に逆らうつもりはもうありません」
「そうか」
「兄貴もともに暮らしませんか。あの頃を思い出せて、とてもよい生活ができています」
私はすぐに承諾し、支度をした。
宋国の行く先 語り/関勝
我らは先日、遼のさらに先、金という国と協力し、遼を滅ぼした。いや、我らの軍は弱く金の足手まとい、恥さらしであった。遼は無くなったが、金も近いうちに恐怖となるだろう。
金国 語り/呼延灼
「無能な奸臣どもめ!」
思わずそう叫ぶ。
燕雲十六州のためだけに、遼の残党と結託し、金と対立した。金は強大で宋国は弱い。これでは、勝てない。
そして現に苦戦している。童貫はやはり無能だった。
「報告!童貫様の部隊、撤退しました」
!?
敵前逃亡だと!?ふざけるな童貫!
金軍が迫る。
「皆、童貫のようにはなるな!国のため、ここで華々しく散ってみせようぞ!」
双鞭を持ち、馬で駆ける。屍を踏み、飛ばし、敵を殺した。
!?
激痛が走る。
背後から槍で刺されたらしい。
槍を抜き、殺す。双鞭も己の体も血で染まっている。
自分の血か、敵の血か、味方の血か。わからなかった。
ただ一つ分かること。自分は、ここで死ぬ。
ああ兄弟よ。懐かしき梁山泊の兄弟よ。私ももう終わってしまうようだ。
願わくばまた来世で、兄弟と出会えるように。
敵将が近ずいてきた。私の最後も、もうすぐそこか