両者溜め息を付く
誤字脱字は諦めて。
怒りに任せて神殿の窓から飛び出したボクは、木々が生い茂る場所で歩くのを止めると、前足を使い地面に生えている雑草をグリグリと踏んずけてやった。
ふうっ……少しスッキリした。でも何だってボクがこんな目に合うのか。やっぱり……あの赤い蝶が原因なんだろうか?クソッ……興味本意で触らなきゃ良かったんだ。
だってそうでしょ?こんな姿になっちゃうなんて思わないし、知らない場所に来ちゃったのも、全部あの蝶のせいだよ……。
はあ……。家に帰りたいな。ゲームもしたいしお風呂にも入りたいや……。
ボクはションボリと肩を落としながら、森の中へと歩を進めたのであった。
一方その頃、神殿の大広間では神官長のユノディスが叫び声を上げ、暴れていた。
「うがぁ~~~!!!どこじゃ~~~どこに行かれたのじゃ~~~!!!」
「神官長っ!?落ち着いて下さいませっ!」
「神獣様がいらっしゃらなくなったのじゃぞっ!?ええいっ!これが落ち着いてなぞ居られるかっ!!」
ユノディスは手当たり次第に神具を、床や壁に投げ付けた。
その姿は神に信仰を捧げる神官長としては、とても未熟であり外見の年齢相応の幼いものであった。
「しっ…神官長!?ご乱心召されたかっ?お止め……お止めくださいませっ!!」
「ううっ……何故じゃ~何故神獣様はこの広間に入っては来なんだかぁ………」
「何か手順を間違えたのでしょうか?神獣様ご自身は、あんなに懸命に扉を開けようとなさっていらっしゃったではありませんか」
「……じゃ、じゃが、神獣様がこの広間にお入りになる際は、広間側から扉を開けてはならぬという決まりがあるじゃろ?じゃからこちらからは開けて差し上げられなかったのじゃが、よもや扉を開けるのを諦めておしまいになるなんて、誰が予想出来ようかっ!ズズッ……」
ユノディスは鼻を啜りながら、近くにいた神官のハルモアに神獣様を迎え入れる際の決まり事を確認する。
「そうで御座いますねぇ……。歴代の神獣様は神力で扉には一切触れずに開け放つ……と、文献には残って御座いますが、今回は何やら違いましたな。あの獣の前足で扉を開けようとされておりましたから」
「そうじゃのう……確かにそう言われると変じゃな。ではあれは神獣様では無かったのではないかのぅ?」
「………いえ、それでは神獣様では無く、魔獣という事になりますが、魔獣は神殿には入れませんから……やはり神獣様でお間違い無いとは思われますが………」
「あーもー全然分からないのじゃ~~~~!!!」
ユノディスは頭を抱え込んで、床に這いつくばると小さな足をバタバタと行儀悪くバタつかせた。
ユノディスは暫くバタバタとバタつかせていた足を、ピタリと止めるとハルモアにこう命じたのであった。
「おお、そうじゃっ!神獣様(仮)を見付けて参った2人組の神官が居ったじゃろ?あ奴らをここに呼んで参れ」
「…………あの筋肉馬鹿と、貧弱馬鹿の2人組をで御座いますか?」
何気にキツイ言い方のハルモアであったが、的確に2人組………アルビーとジオの特徴をつかんでいる。
「そうじゃそうじゃ!その2人組に今回の神獣様は妙じゃ無かったかを問い質したいのじゃっ!」
名案が思い付いたとでも言いたげなユノディスに、ハルモアは一瞬何か言いたげな表情をしたものの、ユノディスの命を実行するため広間から、退室して行ったのであった。
広間に残されたユノディスは、少し冷静さを取り戻すと床から立ち上がり、祭壇の横に置かれていた聖水を一息に嚥下したのであった。
後悔先に立たず。
主人公の正隆→突然神獣にされて異世界へ。
アルビー→筋肉マッチョ。普段は柄が悪いが権力への嗅覚は程々に利く。
ジオ→貧弱な文系。頭は悪くない筈なのだが、言動が軽いため頭が悪く感じる。ヘタレ。
ユノディス→神官長。実際は我が儘なガキ。血筋と家柄のお陰で幼くして神官長の位を手に入れた。一応我が儘を言う相手は選んでいる。
ハルモア→神官長補佐。現時点では語ることがない。