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「結婚エンド」を思い出しました 前

 久しぶりの友人とのデートの後、マカロンを買って(結局コーヒー味もイチゴ味も購入)、雑貨屋を見て(友人が行きたいと強く希望していたのだが、ひやかすばかりで何も買わなかった)、それからご飯を食べて(久しぶりのオムライス!私は卵で包むことが出来ないので、お店のオムライスを食べるのと、彼のオムライスを食べることが好きだ)、家に帰った。


 友人は終始ご機嫌だったが、イケメン店員さんとの言い争い(?)でお疲れ気味の様子だった。

 しかし、別れ際にポケットに入っていた飴(かぼちゃ味)を渡すと、すこぶる元気になった様子で、飛び跳ねて喜んでいたので心配ないだろう。

 飴一つであんなにも無邪気に笑えるのは、友人の魅力の一つであるように思う。

 私は、飴で友人のように喜べるだろうか……。

 彼から貰うのであれば、飛び跳ねたりこそはしなくても、友人のように喜ぶかもしれない。

 好きな人から貰うものって、何でも特別だ。


 私は夜ご飯も済ませて帰宅しているが、彼はどうなのだろう。

 後輩さんの家でごはんをご馳走になっているのかしら。


 もしかしたらメールが来ているかもしれないな、とパソコンを開く。


 家に一台置いているパソコンは、彼と私で兼用している。

 正しくは、二人で使うつもりで購入したが彼はほとんど(というよりかは全く)使っていないので、実質使っているのは私だけだ。

 彼は、私の(上記の理由で私の、と言わせてもらう)パソコンとは別に、自分用のパソコンを持っているので、特に不便はない。


 私は機械が得意ではないので、このパソコンで使っているのはメール機能と、たまに何か検索するくらいだ。最近調べたのは「ウォーキング 効果」くらいだろうか。ちなみにやはりダイエット効果があった。嬉しい。また彼と時間があるときに歩きたいと思う。


 それに、使っているメールも、基本的に友人とメールをするだけだし、もしかして私は宝の持ち腐れを体現しているのかもしれない。しかし変に触って壊れたら、と思うと怖いし。


 人間関係が狭く、交友がほとんどない私には、スマートフォンなるものも必要性を感じていないので、持っていない。

 時代の流れに確実に乗り遅れているかもしれないが、不便を感じたことはない。

 もしかしてこれって、寂しいことだったりするのだろうか。

 彼に必要とされている感じを毎日、時には重たいほどに感じているので寂しく感じる暇もないが。

 さらに言えば、前世からの経験で、友人関係や人間関係に重きを置くことも案外疲れるので、こうして彼と二人でゆっくり生活できるのは十分に私を満足させている。


 たまに、彼のスマートフォンでアプリゲームをさせてもらうのは、案外面白い。

 同じ色のキャラクターを繋げてぽん、と消滅させるゲームや(可愛らしいゲームのはずなのに、このように説明するとなんだか恐ろしい)、現実世界にモンスターが出現しているかの如く見せるものなど、やってみると楽しいものだ。


 ただ、以前ゲーム内での体力が足りなくなって、お友達の欄から体力をわけてもらうように片っ端からちょんちょんとお願いする操作を行ったときは、彼も少し呆れた様子だった。

 「駄目でした?」と聞くと、彼はすぐに首を振って、甘やかすように頭を撫でてくれたが。彼は私を甘やかしすぎている節がある。でもそんなところが好きだ。


 パソコンの電源を入れて暫く待ってから、メールを開くと、二通のメールが来ていた。


 一通目は、友人から。

 やたらと長く絵文字のたくさんついたきらきらしい文章だったが、簡単に要約すると、また外出するときは声を掛けてくれ、ということだった。

 私は、絵文字を使うのもあまり得意ではないので(どれを使うか選び始めると、迷ってなかなか決められない。一通のメールに何時間もかけてしまう程に私は優柔不断だ)、友人に比べれば随分簡素な返信をした。


 二通目は、彼からだ。

 後輩さんに、ご飯を奢ってくるからまだ遅くなるらしい。

 わかりました、と最後にネコの絵文字を入れておく。

 彼はネコが好き……というよりかは、彼の好きな作家が、ネコが主人公の小説を書いているので、何となくネコに反応してしまう性質が出来ているようなので、彼とのメールにはネコの絵文字を使うことが多い。

 といっても、彼と同棲するようになってからは毎日直接顔を合わせているので、滅多にメールはしなくなったのだが。


 とりあえず、彼は暫く帰ってこないようだから先にお風呂に入ってしまおう。

 




***






 お風呂から上がった私は、タオルを肩にかけて、リビングのソファに座っていた。

 

 早く帰ってこないかなあ。


 彼のことに想いを馳せると、また胸がドキドキとしてきた。

 

 今日のあれって、プロポーズ、、ですよね。


 プロポーズ……うん、でも、指輪貰ってないな。

 うん?うーん?指輪……。

 なんだろう、何か、忘れているような。

 ひっかかりを覚える。


 そして私は、はっとしてソファから立ち上がった。

 すぐにまた座った。


 「結婚エンド」なるものを、私は思い出した。


 「結婚エンド」なんて言葉は耳に優しく、幸せハッピーエンド感があるが、忘れてはならないことがある。

 彼とのエンドは全て、デッドエンドであるということだ。


 「結婚エンド」は、彼に家で指輪を渡されて、「結婚しよう」と言われるのだけど、選択肢が二つ出てくる。

 単純に、「はい」「いいえ」である。


 もちろん、「いいえ」を選べば安定のデッドエンド。

 その日の夜、彼氏が用意してくれるココアは毒入りである。

 苦しんで倒れる主人公に、彼氏は「これでずっと一緒だ」とヤンデレ素敵スマイルと優しい囁き声をプレゼントしてくれる。冥途の土産か。


 では、「はい」を選べばいいのかというと、そうではない。

 なんと、プレイヤーに一縷の望みを与えておいて、デッドエンドなのだ。

 その日の夜、彼氏が用意してくれるホットミルクは毒入りである。

 苦しんで倒れる主人公に、彼氏は「これ以上の幸せはない」と憂いた表情で切なく呟くと、同様にホットミルクを飲む。

 彼氏が主人公の隣に倒れこんだところで、画面はブラックアウト、というものだ。

 

 選択肢の意味よ。どちらにしろ死んでしまうではないか。

 しかしまあ、唯一「はい」を選んで救われる(?)部分は、数多いデッドエンドの中で、彼氏が主人公を殺すだけでなく、後を追ってくれる(追ってくれるという表現は適切ではないかもしれないが)という点だ。

 これこそメリーバッドエンド、というやつだろうか。


 しかも、この「結婚エンド」というのは、他のエンドを全て見た後で、プレイ何週目かの、ヤンデレゲージをどこかで一定に保ち続けなければ見ることができないと言われている、とっても難しいエンドなのだ。

 私はもちろん根性でやり切りました。

 彼氏のヤンデレボイスは本当に最高でしたありがとうございました。


 今日の、彼からの「結婚しようか」は、まず家ではないし、指輪も用意されていなかったから、ゲーム内の「結婚エンド」とは異なるものだと考えていいだろう。


 しかしそうだとすると、まさか、今日、彼が帰ってきてから「結婚エンド」なんてことは、あるまいな。


 いや、でも、私は今日「はい」と答えたから、指輪を買ってきてくれたりとか、して……。


 いや、いやいやいやいや。

 そもそもまだ他のデッドエンド見てないし。

 

 私は、背中に冷や汗が流れるのを感じた。


 そこに、ガチャッと玄関のドアが開く音がして、私はびくりと身体を強張らせた。


 「結婚エンド」直行は、それだけは無しでお願いします……!

 


 

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