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鉄薫る世界にて  作者: キャバルリー
第三章:枯れ果てた地に芽は出ない ~エル・ネヴォ・レイ編~
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第三話

───4月22日、午前5時頃、北部区域ニビヤシアックのとある住宅にて。

ニビヤシアックの北西部は住宅がぽつぽつとある閑静な場所で、決して裕福ではないがそれなりの家庭を持つ者達が暮らしている。

そこにはウィルソン一家も暮らしており、今日もステラは移動販売の準備をガレージで行っていた。


「あの人、今日はえらく遅いわねぇ。あの子が起きるまでに帰ってきてもらわないと」


ステラは車に材料を積みながら呟く。旦那のビッグジョージは昨晩仕事に出たきり連絡はない。

しばらく準備をしていると彼女の携帯が鳴った。旦那かと思って携帯画面を見るが、相手は知らない番号からだった。


「もしもし、ウィルソンですが」

「…朝からすまないな、Mrs.ウィルソン」

「その声は、もしかしてロイドさんかい?」


ルドマン家総代、ロイド・ルドマン。七大ファミリーの一人が態々電話を掛けてくるなんて一体何があったのだろうか。

嫌な予感が次々と頭の中を廻るが、冷静にロイドの話を聞く。


「如何にも。実はMr.ウィルソン…いや、ビッグジョージについて伝えないとならないことが」

「…覚悟はできてる。うちの旦那がどんなヘマやらかしたんだい?」

「昨晩、ビッグジョージは我々の組員と例の新興組織の潜伏場所に向かったのだが、返り討ちに遭ったらしく組員は全滅した。だがビッグジョージの姿は何処にもなかった」

「そいつは妙だね」

「考えられるのは大きく分けて二つ…一つは敵に連れ去られた。もう一つはビッグジョージが裏切った」


最悪の予感であった旦那の死ではないことに安堵する暇もない。どちらにしても最悪の状況であることに変わりはない。


「足取りは一切つかめてないのかい?」

「我々も連絡がなくて調べにいったらその様だった、一切足取りは分からん」

「そう…分かった、アタシのほうでも何とか足取りをつかんでみる…それでいいんでしょ」

「いや、そちらはもう足を洗った身だ。それに御令嬢だっておられるだろう。我々で問題は解決しよう」

「もしあの人が裏切りだった場合は改めて連絡してちょうだい。この世界で一緒に生きてきたんだ。責任も一緒にとるわ」

「…そうでないことを我々は願っている。では」


電話が切られた後、ステラは携帯を手放し、その場に崩れ落ちた。

この街で殺し屋という仕事を続ける以上、こうなることは覚悟していた。だが実際に起きてしまうとこうもショックを受けるものなのか。

これまでも幾度となく危険な身に遭って来たが、それを二人で乗り越えて来た。

そして永遠の愛を誓い、最愛の娘と共に円満な家庭を過ごして来た。

あの時、旦那にも足を洗って貰うべきだったんだ。そうすれば、こんなこと…


「…ママ、どうしたの?」


愛らしい一声でステラは我に返り、声のするほうを見た。


「…キャリー、起きてたの?」

「うん。ママが仕事だからお見送りしようと思って!」


キャリーはそう言って車の中に入ってきて、携帯を拾って私に差し出した。


「何か嫌なこと、あった?」

「…ううん、大丈夫」

「ウソはだめだよ。ママとても悲しそう。ホントのこと教えて?」


ああ、この子の前ではすぐにウソがばれてしまう。この子には叶わない。


「…パパがね、ちょっと大変なんだって。パパの知り合いがそう言ってたのよ」

「パパ?パパなら大丈夫!だってパパはとっても強いんでしょ?」


そうだ…私の夫は強い人だ。それに誠実な人だ。

あの人が安々と依頼人を裏切るようなことをするはずがない。

彼を、ビッグジョージという殺し屋を信じてやることこそ私が一番すべきことではないか。


「そう…よね。うん、キャリーの言うとおり。パパなら絶対大丈夫よね」

「うん!パパはこの街で一番強いんだから!」

「ありがとう…よし、じゃあアタシは仕事ついでにパパも探してくる。キャリーは留守番してて、パパが帰ってきたらママが凄く怒ってたって言っといてね」

「分かった!ママ、お仕事頑張ってきてね!」


キャリーは笑顔でそう言って、車から降りて元気良く手を振ってくれた。

ステラも立ち上がってキャリーに手を振り返してあげる。

キャリーはキャッキャと笑いながら家の中へと帰っていった。

だめだなぁ、私も。もっと強いママにならないと。

荷物を積み終わり、ステラは車の運転席に座ってエンジンをかけた。

そして車を動かしながらある人物へ電話をかける。


「…もしもし、姉貴さん」

「おはようLE。早速だけど頼まれてくれないかい?旦那が姿をくらましててね、居場所を探して欲しい」

「…あー、そういや昨夜ルドマン所と仕事してたんだっけか?だったらやっぱりブロッサムが怪しいだろうなぁ」

「ブロッサムか…だとすれば厄介だね」

「ああ。どうやら他のファミリーも新興組織がそこに潜んでいるだろうと目星をつけ出した。特にシルヴァーニが動き出すとあの区域は火の海になるぜ」

「そうなる前に旦那の場所を調べないと…」

「こっちでもちょいと調べてみるから、また何かあれば連絡するわ」



───同日、午前7時頃、北部区域ニビヤシアックのフウリーガーデン一室にて。

目を覚ましたジェロシアは、私に抱きついて眠るアリーチェをそっと振りほどき、体を起こした。

昨日一日街を回ったが、スティンガーはおろかエル・ネヴォ・レイすら見つけられなかった。敵は一体何処に潜り込んだのか。

如何せんこの街はファミリーの監視すら行き届かないような暗部が多すぎる。息を潜めるのにこれほど適した場所もそうそうないだろう。

そんな中を虱潰しに探し回るのは不可能に近い。


「…やはりブロッサムしかない、か」


ジェロシアはそう呟いて、アリーチェをいつもの方法で起こしてあげた。


「ヒュエ…!ちょ、ジェシー…また…!」


どうやらやっといつものアリーチェに戻ってくれたようだ。

一安心したジェロシアは手早く服を着て、ガンベルトを装備する。


「もう仕事?」

「ええ。アリーチェちゃんは今日も休んどく?」

「フッフーン、もう私は元気イッパイなんだから!」

「それは良かったわ。じゃあ早く支度して」

「モッチロン!」


アリーチェは元気よく着替えを始めた。

ふとジェロシアが外を見ると、既にステラがアパート前で店を出す準備をしていることに気づいた。


「ステラさんに挨拶してから行きましょうか。お腹もすいてるし」

「やったー!早く行こ!」


着替え終わった私達は部屋を出て、アパートの外にやって来た。


「おはよう、二人とも。もう仕事かい?」


アパート前、車内で開店準備をしながらステラが笑顔で手を振る。


「おはようございます!」


アリーチェは元気良く車に走り寄って行った。


「最近は忙しいわねぇホント。体には気をつけるんだよ」

「はい!それでステラさん、いつものでお願いね!」

「かしこまりました!ちょっと待っててね」


その時ジェロシアは、ステラの顔つきを見て何かを察知していた。

表面上はいつもの明るいステラだが、何かを心配し、そして何かを決心しているような複雑な目。

ジェロシアは車に近づき、ステラに問いかけた。


「…何かあった?」

「ん?…そうか、ジェシーちゃんには分かっちゃうか。実は旦那が行方不明でね。まぁ大丈夫だとは思うけど」

「そう。それは大変ね」


この仕事をこなす以上、そんな事日常茶飯事だ。だがステラにとってはかけがえのないパートナー、やはり心配で仕方ないのだろう。


「え…それホントですか!?ジェ、ジェシー見つけてあげないと…!」


優しすぎる、この子は。身内に対して甘すぎる。

ビッグジョージとはこの世界に入ってからかなり長い付き合いだ。だがあくまでビジネス上での付き合いだし、ビッグジョージの身に何が起ころうと私には何も関係ない。


「気持ちは嬉しいわ、アリーチェちゃん。でもね、これはあの人の責任だしその妻であるアタシの責任。二人が手助けする必要はないよ」

「で、でも…ほらジェシーも何とか言ってよ!」

「…今一番ホットなのはブロッサム。恐らくそこに旦那もいることでしょう。新興組織に捕らわれているなら、それを潰せば旦那は自ずと助かる。それ以外ならどうなるか知らないけど」

「やっぱりジェシーちゃんもブロッサムに行くんだね。アタシもこいつを売ったら行くつもりだよ」


ステラの発言に対して、ジェロシアは不敵な笑みを浮かべる。


「あら、もしかして久しぶりにステラさんのもっと美しい姿が見られるのかしら?」

「アタシはもうオバサンだから全然綺麗なんかじゃないよ。でも旦那のためならなんだってしてやるさ」

「ジェ、ジェシー…!ほ、ほらステラさんキャリーちゃんがいるじゃないのよ!もし何かあったら…あの子が…」

「私達の身には何も起こさせないから心配はいらないよ。ほら二人とも、景気づけにホットドックのサービス!」


ステラはそう言ってホットドックを一つずつ二人に渡した。

二人は手早くそれを食べ始めるが、それと同じくらいに雨がポツポツと降り始めた。


「あっちゃー、天気予報じゃ晴れだったのに。こりゃ今日は店は無理そうだね」

「フフッ、天も夫婦のために気を利かせてくれたのね」

「そうだとしたら嬉しいわ。さ、悪いけど二人とも店じまい手伝ってくれる?」

「はーい!」


三人は素早く店じまいを終わらせ、改めて出撃準備を整え始めた。


「今回はこの車で運んであげる。ブロッサムに着いたら徒歩で怪しい場所を潰していきましょう」

「感謝するわ。それにしてもステラさんと仕事なんて胸が躍るわ…」


その時、ステラの携帯が鳴り、ステラはすぐに電話に応じた。


「もしもし…LEかい。何か分かった?」

「いや…やっべぇぜ…シルヴァーニ家とゼネリ家が同時にブロッサムに向かってるらしい。その上ブロッサムには新興組織らしき集団が大量に待ち構えてやがるぜ!」

「本当かい!?」

「コイツは久々にブロッサムが吹き飛ぶぞ…姉貴、悪いことは言わないから此処は手を出さないほうがいい」

「でも旦那が…あ、ジェシーちゃん!?」


ジェロシアはとっさにステラの電話を引ったくり、LEとの通話を続けた。


「LE、それぞれの勢力について教えてくれる?」

「何だ、ジェロシアも一緒にいたのか…でもやめときな。シルヴァーニ家は第三小隊、ゼネリ家は用心棒が出てきてやがる。ありゃマジだぜ、特にゼネリ家がな」

「面白そうで何よりだわ…敵勢力については?」

「地元ギャングが数グループ、そしてエル・ネヴォ・レイらしきメンバーもそれなりにいやがる。全員小銃持ちだ、あんたでも正面からやって勝ち目はない」

「そうねぇ…でも楽しそうだから行ってみるわ」

「…つくずく頭のおかしい女だぜあんた。俺は一応止めたからな、いいな?」

「ええ、それじゃ」


通話をそこで終わらせ、ジェロシアは携帯をステラに返した。


「もう、勝手に話進めて…でも元よりそのつもりだったから問題ないけど」

「それじゃあそろそろ行きましょうか」


ジェロシアの言葉に対し、ステラは頷いて荷台から降りて運転席に向かおうとした。


「───待ってください」


突然、今までその場にいなかった誰かの声が三人の耳に入ってきた。

だが三人ともその声の正体を知っていた。


「…晃司君、わざわざこっちまで買いに来てくれたの?」


そこには傘を差して立っていた晃司がいた。


「ステラさん…旦那さんは…」

「…悪いね晃司君、あまり一般人の君を巻き込みたくはないんだよ。盗み聞きしてたんだろ?全部忘れてくれないかい?」

「いいえ、だから…」


晃司が何か言おうとするが、そこにアリーチェがイライラしながら割り込む。


「ちょっと、部外者は首突っ込まないでくれる!?大体あんたが何知ってるって言うのよ!?」

「…旦那さんとスティンガーの居場所です」

「はぁ?どうしてあんたがそんな事知ってる訳?あ、もしかしてあんたそうやって私達を惑わそうとしてるんじゃ!」


アリーチェは今にも晃司をぶん殴りそうな勢いで突っ掛かっている。

ステラも晃司の話には聞く耳も持とうとしない。

私も彼の言う事をすぐには信じれない。


「…裏が見えないわね、ライターさん…いや、晃司」


ジェロシアはそう言って荷台から降りて、アリーチェを押しのけて晃司に迫った。


「裏なんてありません。俺はただ事実を伝えようと…」

「分からないのよ、私には。何で部外者のあんたが態々リスクを犯してまでそれを伝えようとしに来たか」

「それは…」

「あんたと私達の間には何もない。強いて言えばステラさんと情報の交換をしたぐらいでしょ?まさかと思うけど、それで信頼関係か何か築けたと勘違いでもしたのかしら?」


ジェロシアがそう言うと、晃司は黙りこくってしまった。

この日本人もつくずく謎だ。私達を追いかけて取材しようとしていたと思えば、真偽も分からない情報を提供しようとしてくる。

全く読めない。この男の真意が、この男が何をしたいのか。


「…なら、あなた達の納得する方法で応じましょう。俺はこの情報をあなた達に提供する。その代わり俺の頼みを一つ聞いて欲しい」

「…黙って聞いてれば調子に乗りすぎじゃないかしら。こっちは旦那の命がかかってんだ、あんたは何も関わらず自分の仕事をやればいいじゃないのよ…!」


ステラも晃司の言い分に苛立ちを隠せないらしい。

だがジェロシアは晃司の頼み、晃司の真意について興味深々だった。


「その頼み、聞いてあげようじゃないの」

「…仕事現場の写真を撮らせて欲しい。それだけです」


これは驚いた。この男の真意は自分の仕事をこなしたい、それだけなのだ。

面白いわ。始めはただのムカつくライターだと思っていたが、こいつも私と同じ“仕事熱心”な野郎なのね。

そういう男、嫌いじゃないわ。此処は彼の頼みに乗ってあげましょう。


「フフッ、じゃあ情報を受け渡してもらおうかしら。ただし、嘘の情報ならそれなりの報いは受けてもらうわよ」


ジェロシアの言葉に対し、ステラとアリーチェは驚きを隠せずにいた。


「…ありがとうございます。昨夜午前0時頃、俺はスティンガーの運転する車がメープルの1番工場に入っていくところを見ました。そして車から旦那さんらしき人を降ろして工場に運び入れるところを目撃したんです」

「メープルの1番工場…たしかあそこは今も稼動する工場のはず。そんな所に何でスティンガーちゃんがいたのかしら」

「ジェシー、やっぱコイツウソついてんじゃ…?」

「…私はこの男の情報に踊らされてみる。二人はどうする?」


ジェロシアが二人にそう尋ねると、二人とも黙りこくって何かを考え出す。


「…ジェシーちゃんが乗るって言うならアタシも乗るわ。この子の人を選ぶ眼は確かだし」

「え、ちょ…んもう!だったら私も賛成よ!あー気に食わない…」

「満場一致ね。それじゃあ行きましょうか」


そう言ってジェロシアは荷台に乗り込み、アリーチェもそれに続いた。ステラも運転席に乗り込んで車のエンジンを掛ける。


「…何ぼーっとしてんのよ。私の仕事が見たいんでしょう?」


ジェロシアは未だに呆然と突っ立っている晃司に向けて指をくいっと曲げて見せた。


「え、俺もこれに乗って…?」

「徒歩でもいいけど」

「い、いや…同乗させてもらいます」

「え、ウッソ!?じゃあ私ステラさんの隣に行く!」


アリーチェは露骨な嫌悪感を晃司に向けつつ荷台から飛び降り、助手席に向かって走って行った。

それと入れ替わるように晃司は荷台に乗り、扉を閉めた。


「飛ばすから、相当揺れるわよ」


運転席からそんなステラの声が聞こえてきて、車はゆっくりと動き出した。


「…本当に信じてくれると思ってませんでした」


と、晃司が静かに呟いた。


「あら、情報提供しといてそんな弱気なこと今更言う訳?」

「え、いやだって俺って部外者なわけですし」

「でもこの情報が本当ならあんたも部外者じゃなくなる。私の仕事を手助けし、ステラさんの最愛の人を救うことになる。それってもうビジネスパートナーみたいなものじゃない?」

「ビジネスパートナーですか。そうなれば俺の取材、格安で受けてもらえますかね?」

「さぁ、それはどうかしら?」

「そこははぐらかすんですね…でも、ジェロシアさんって噂に聞いた割りに普通な人ですよね」


晃司はそう言って、すぐに失言だと気づきはっとした表情を浮かべた。


「あらあら、私の噂話って何かしら?」

「い、いや…実は昨日LEっていう情報屋に、ジェロシアさんとの接触は避けるべきだ、彼女はお前が思う以上に恐ろしい女だと聞かされて」

「彼そんなこと言っていたの。他には何か?」

「ジェロシアさんがとても強いということと、それには過去の事が何か関係してるようなことを」


ジェロシアはそれを聞いて鼻で笑って返し、セッターを出してタバコを銜え、一服した。


「あんた、タバコ吸う?日本人ならセブンスター好きでしょ?」

「え…ありがとうございます」


晃司は訳が分からないままジェロシアからタバコを一本貰い、ライターで火をつけてもらった。


「このタバコとの出会いも、過去の出来事が関わっているのよ。それだけじゃない、今の自分は過去があったからこそ存在する。そうでしょ?」

「まぁ…そうですね」

「強さの理由が過去にあるなんて当たり前じゃない?それとも、その過去の事が詳しく知りたい?」


ジェロシアがそう言うと、晃司は何も言わず首を縦に振った。


「いいわ。じゃあちょっとだけ教えてあげる。私ね、10歳の時に両親をぶっ殺したの。寝室で寝ているところを、銃で撃ち抜いてやった」


彼女の発言に晃司は絶句するしかなかった。そんな彼をよそにジェロシアは話を続ける。


「普通の人ならその親によっぽど恨みがあったんだなとか考えるでしょ?私の親は何処もおかしくない、ごく普通の人だった」

「な、ならなんで…?」

「殺したかったから、それだけよ。たまたまその時親がいたから殺したの。どうかしら、これでも私のこと普通な人だと思う?」


ジェロシアの問いかけに晃司は返事を返さない。


「それから色々あって、気づけば殺し屋になってた。あれから長いようで短かったわ」

「…その、後悔とかはないんですか?親を殺したことに対して」

「ないわ。私の欲望のままに手を掛けただけだもの」


晃司の問いに対してジェロシアは即答した。


「…その欲望が、強さの秘訣…?」

「どうかしら。私みたいな殺したがりじゃなくても強い人はいた。むしろ人を殺したいから殺し屋やってるようなのに仕事が出来る奴なんて殆どいないし」

「…やっぱり、俺にはとても分からない世界です。この街は」

「でも、だからこそ面白いでしょ?あんたもこの街で仕事していくうちにこの面白さに取り憑かれるわよ」


雨の中、車は水滴を飛び散らせながら走り行く。

果たして工場にスティンガー達はいるのだろうか。

ファミリーすらを欺く力を持つ。エル・ネヴォ・レイは一体どんな組織なのか。

今月一番の大仕事がまもなく始まる。程よい緊張感と、波のように襲い来る興奮にジェロシアは胸の高まりを抑えられなかった。

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