プロローグ
ある暖かい日の光が窓から差し込む午後。ダリアーノ伯爵家には2つの小さな命が誕生した。
双子の姉、イースとその弟、トーラ。
2人は温かい家庭や恵まれた環境の中ですくすくと育っていったが、2人が成長するにつれ、周りは2人から離れていった。
両親は2人を見る度に困惑の表情を浮かべ、召し使い達は陰口をたたくようになった。
「イース様はどれだけ言っても剣術遊びをお止めにならないのよ。なんてはしたない。」
「トーラ様なんて男の子であらせられるのにお人形遊びよ。気持ちが悪いわ。」
召し使い達が話す通り、イースは男性的にトーラは女性的に育ってしまったのだ。
双子自身も次第に周りの人間から逃げるように壁を作り、部屋に引きこもるようになっていった。
「ねぇ、イース。」
いつものように部屋で遊んでいるとふいにトーラが悲しそうな声をあげた。
「どうした?トーラ。」
「僕達は変な子なの?好きな物で遊んでるだけなのに…。どうしてお父さまやお母さまは僕達をぎゅってしてくれないのっ?」
声をあげて泣き始めるトーラを慰めるイースも泣きたい気持ちでいっぱいだったが、今2人共泣いてしまうと止まらなくなりそうな気がして、必死に我慢した。
「大丈夫だよ。トーラには私がいる。」
何が大丈夫なのかも分からない。
自分に何が出来るかも分からない。
だか、今イースに出来ることはトーラを泣き止ませることしかなかった。
その時、イースにある考えが浮かんだ。
「トーラ!!私達、もう一度お父さまとお母さまにぎゅってしてもらえるかもしれない!!」
トーラに浮かんだ考えを話すと、トーラも満面の笑みを浮かべた。
次の日から2人の壮絶な作戦が始まった―――――