(7) テラ・フェルト
(7)テラ・フェルト
世の中には天才と凡才と奇才と秀才と浅才と普通の人、その辺りが混ぜクチャになって形成されている。
その中で言うなら彼は天才。それもゲームの、天才である。
テラ・フェルト(16)はフランシア帝国の田舎町にて生を受ける。
父は厳格さに輪をかけた堅物、タム・フェルト。
一応、村では名の知れた存在らしく、未来の村長様!っと持ち上げられていたのだが、
タムは基本スルーし、その話題を無かった事として、処理していくのだ。
母親はラナ・フェルト、幼少より共に過ごしてきた2人は、自然な流れで生活を共にする様になり、
何時の間にやらテラを授かり、今に至るのだ。
(厳格さに輪をかけた姿は何処へ?)
夫婦として申請したのが出生記録申請と同時なのは、結婚記念日と息子の誕生日を同じにしたかったのだよ、は。
少々苦しい言い訳だな、と今更ながら思うテラ・フェルト。
まぁ今が仲良しで、テラにとって欠けがえのない存在なのだから、
それでいいのだけれど。
フランシア帝国にとって、レイバイザーの操縦士確保は、
最大の懸念材料と言えた。
いかに研ぎ澄まされた名刀も、使用者が素人ではナマクラと堕ちる訳で。
だから押しきる、これ無くしてはフランシアの、ゼリスの繁栄はないと唄い。
全帝国中等部パイロット育成プログラム、簡単に言うなら若い内に見極めようって事だ。
レイバイザーの操縦士としての素質の有無を。
そしてその中でフルイにかけられた者のみが、選択を許されるのだ。
パイロット育成機関SORANASへの入学か高等部進学かを。
だが、選択を許された者の意思より、
家庭環境が大きなベクトルを占めるケースが多い。
ソラナスは入学金どころか学費及び食費までもが帝国負担。
(全寮制となる)
そして卒業後は安定収入の軍属としての職を約束。(一応、希望すればだが)
上流階級様には関係ない話でも、一般家庭にとってそれは媚薬。
最悪、軍属を拒否させればいいのだから、と選択肢を一つにし、我が子を送り出すのだ。
まぁ、すっかり感化されてしまい、大体の子供達は軍属を選ぶのだが。
(洗脳ではない、らしい)
テラ・フェルトも他の一般家庭と変わること無く、軍属への道へと進んでゆく。
それが自身の運命、最大の分岐点であるだなんて、15歳の少年に理解できるわけ無く…
ソラナス入学を決める。
パイロット育成機関とはいえ、一応高等部扱い。
大半がレイバイザーの操舵に関わる事の修練だが、
やはりある、勉強と言う名の拷問は。
『…テラ?』
まったくペンの進みがない生徒に声をかける。
それがテスト中であろうとも、流石に見ていられない就任3年目のドライト教官(32歳独身女性)
『ひとつも埋められない?』
小声のつもりらしいが、しっかりとした口調で筒抜けである。
『え、と、まぁ…』
モゴモゴとした仕草と赤くなる顔、なるほど、まだまだ大人には程遠いって事だ。
『何も1番からしなくてもいいのよ、分かる所から埋めていこうね』
そんなの、分かってますよ…と思いながらも、頷くテラ。
だが、埋まる予定はない。
フランシアの歴史なんて、なんの興味もないのだから。
…これっぽちも記憶にありませんです。
テラは数字っぽい所と選択問題だけ埋めて、
タイムアップを迎える。
まぁ、それでも選択問題正解率8割とテキトーに書いた年号が当たり、
0点という伝説だけは免れた訳で。
その辺に天才人として片鱗があるような?
無いような?
得意教科、と言えるのだろうか。
レイバイザー・シミュレーション・システム。
略称はレイ・S、それの講習と実技。
テラはその世界の住人だった。
誰よりも理解し、誰よりも溶け込み、そして誰よりも強かった。
『勝者~テラ…フェールトー!!』
放課後の恒例行事、より強者を求めて集いし面々。
それはいつしか変わる。目当てはテラ、妥当テラ・フェルト。
実況を担当しているレイ・S倶楽部担当講師【マートン・ブラドック】の雄叫びが今日も響く。
(一応、担当を付けないと放課後の活動を許可できない、との事で、彼が立候補)
彼はずっと、テラの戦いを見てきた。
彼の成長を?
いや、彼はずっと強かった。
それは飛び抜けて、追従など許さず、危うい時もなく。
連戦連勝、おそらく彼が卒業するまで止まることはない。
そんな予感。
そんな戦いを見てきたマートンが思う、彼の強み。
それは索敵と行動の理解度の速さである。
瞬時に敵の位置を察知し、その状況下で取るべき行動に無駄がない。
それこそが、テラ・フェルトの強み。
それに正確な射撃技術も加わり、ライバル等も、存在する事はなく。
まぁ自称ライバルは何人もおり、その最右翼は【ヨシュナ・グローベル】
テラよりも2最年上の彼は、常にテラの横で戦いを見守り、共に戦い、そして幾度と無く挑む。
勝てもしないと言われ続けたのだが、一応はヒヤリとさせた事はある。(らしい)
『ヨシュナさんて、嫌いだよ』
年下であり後輩、それでもそこは譲れないとヨシュナ。
常に対等で居たいそうだ、ライバル(?)とわ。
そんな2人はタッグ戦に一時期ハマる。
テラとしては仲間を守る事も楽しくなり、ヨシュナ的には連戦連勝が楽しくなり。
互いの思惑が交差したのもあり、ハマる。
個人戦と同率の地位に有るタッグ戦、テラは当然と圧巻の2冠。
それは語るべき程の接戦でもなく、とある裸で対決する国技の地方巡業の一幕。
その世界で一番強き者と、子供大勢が戦うあの姿と同様。
圧勝という言葉を自らが使える日を待ち侘びるのだが、
そんな機会も可能性も無いのが一般的。
テラは一般ではなく規格外となる。
それをより多く感じさせるのが、彼にしか出来ないとされている攻撃方法。
【テラ・ドライブ】と称されたその動きは、上下左右に激しく機体を揺さぶり残像を魅せ、
その動きのまま正確な攻撃を加えてゆくのだ。
これは所詮、シミュレーションの世界。
だからこれに近いことは皆出来る。
(レバーをガチャガチャすれば、それっぽく成る)
だが、その状態で相手の攻撃をかわし、正確な射撃を与える事は叶わず。
(テキトーに打ったら当たった、は除外)
見えている者と見えていない者の違い。
テラにだけ見えている世界、その彼のみが放つ突撃、テラ・ドライブ。
『優勝は~テラ・フェルト!!』
何度も言い過ぎてもはや価値の無い台詞。
それは同時に彼のソラナス在籍の意味を示していた。
軍属に落ちるなら、後の2年は無意味となる訳で。
レイバイザー・パイロットして生きるのなら、早くて無意味はない。
まぁ、本人と親次第なのだが。
それも恐らくは、すんなりと行くのだろう。
飛び級で卒業、その言葉さえ与えれば…。
『まさか、同時に卒業とはな』
無事、軍属に下る事を決めていたヨシュナと共に、1年で卒業するテラ・フェルトの姿が。
レイ・S全帝国ランキングでも上位に位置するテラ・フェルトの卒業を、
喜ぶものはあれ、哀しむものは皆無だったとか。
こうしてテラは、帝国軍へと入隊してゆく。
まだまだ駆け出しの存在から、宇宙を左右させる存在となるのだが、
それはまだ、先の話である。




