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(6)戦いの意義

(6)戦いの意義


ジュリアスにとって重要なのはナミエの無事であり、正直ポターシャがどうなるかに興味はない。

(せいぜい今期の葡萄収穫までは待って欲しいな、程度)

だから正式に宣戦布告されようとも驚きはなく、むしろこの腐敗的とも言える環境が変わるなら…との期待を抱いている。

自身や、愛する人の命を思う程の危機感はなく、無事に朝日は拝めるものさ、の感覚である。

緊急集会だかに呼ばれ飛んで集まる見知った面々。

当然、ナミエの顔も有る訳で。

つまりはそれ目当てのジュリアスも当然な訳で。

『ついに、正式なる宣言はなされた…決断の時である!』

今日は左手が声を張り上げている。

本来髪の毛がある部分を80%程剃り落とし、残った20%を(頭のてっぺん)1m程伸ばし結う。

自分の子供があれをしたいと言ったら、その時自分は何と答えるだろうか?

いや言葉で応じるならまだよいが、

無言で横っ面を叩いてしまうかもしれない。

そんな考えの中で獲た1つの解答、奥様がナミエなら旦那差し置いて真っ先に殴かかってるなと…

ジュリアスの空想を寸断する左手様の大声。

何時ものように聞いてないジュリアスには、周囲から漏れだす気合いの怒号とそれに混ざった嗚咽の意味が理解出来ない。

ふと隣を見る、ナミエの表情は分かり辛いが一点を凝視している?

唇を噛みながら?

『決戦は3日後、各班万全の状態で挑まれたし!』

何時しか嗚咽は消え去り、全員の声が重なり咆哮となる。

…全員ではない、少なからずここに居る2名は発声をしていない。

一人は意味がわからず、一人は細やかなる抵抗。

『ジュリアス…』

抵抗者が口を開いた、最初のワードは男の名前。ずっと側に居た唯一無二の存在。

『私と同じ班でいいよね?』

何も理解してない男にも、何かが伝わってきた。

彼女の表情が、全てなのだ。そして何時しか握られていた掌は、軽く震えていたし…。

『あぁ、もちろんさ』

無駄にカッコ付けようと噛みかけたジュリアスは、心にて誓う。

(この人を護るんだ、その為に全部使っても悔いはない、護れたならば…)

男は16年分の想いを伝える準備だけ始める。

無事護れたら告白する、それが今のジュリアス最大の願いとなる。

『我がシャレスバールド星団国家の傘下に治まる事は、なんら恥ずべき事ではないです』

国民の総意は置いとかれ、今ポターシャ星長と星団国家大統領代理との間で、無条件降伏の調印は成される。

『予定通り3日後より、入星させて頂きまますので』

深々と頭を下げる星団国家代表の名は、クリムゾン・ボウト(46)

現在、病気療養中の大統領の代理である。

政界に足を踏み入れた当初こそ、金髪の若僧と罵られたのだが、

現大統領ララス・ホルスターの首席補佐官に着任してから今日までで、

その間違った解釈は解かれ、もはや彼こそが大統領であるという国民の認識を得るまでとなっていた。

彼の打ち出す政策もあるが、何よりはその風貌と空気。

統治者足るオーラを滲ませつつ語りかける演説と、その声質。

歴代随一の統治者である事を疑う者はいない。

現ララス大統領の事など、皆忘れてしまっているのだ。

忘れさせられた、が正解だが。

『お願いする、ポターシャ人の血が流されぬ事を重ねて』

名も与えて貰えぬ星長ごときに約束など…と負のクリムゾンは思いつつ、そこは隠し。

『えぇ、勿論でございます』

再び深々と頭を下げ、会談終了。


3日間で出来る準備に限りはあるが、そこは気合いと人海戦術にて埋めて行く【紅き朋翼ほうよく】のメンバー達。

2人も、その気はないがそれらしく振る舞い中である。

それは身を護る為のやむ無し。

眼を血走らせた強信者の前では、信仰なき者には制裁と称した体罰が与えられるとか。

(一方的かつ個々の勝手な判断で)

今から死と直面する行為に出るのに、今は身を護る。

矛盾かな?とは思うも、そもそも死にたくないのだ。

最期まで足掻いて何が悪い!

…である。

2人プラスαの担当は、ここドレスクの谷。

中央都市ポタスから伸びる、各町への行商ルートとして使用されている街道。

ここを行進するそうだ、新たなる統治者は誰であるかを知らしめる為に。

そこを叩く、自惚れたそのカボチャ頭を粉砕し、一矢報いねば終われないのだ。

だがひとつ、問題がある。

ティガロである。

『見ろ、これが脳波検出装置の仕様書だ、頭に叩き込め』

どこから仕入れたやらの仕様書。

確かにこれがあれば使えるかもしれない。

ぶっつけ本番ではあるが。

『…不適合ならティガロは拒絶します?』

機械に拒絶されるの、ちょっと凹むなぁとか思いながらページをめくるジュリアス。

まぁ、ほとんど頭に入ってなど来ぬが。

(そもそも、覚える気もない)

ナミエと同じ班、それはつまりナミエの補助パイロットとなり、

彼女が不適合な場合に限り、彼に出番が回ってくる訳だ。

(そもそも、彼女の出番すら怪しいが)

そんな彼女、必死に暗記しようと試みている。

なぜだろう?

この戦いに勝利したいから?

…いや、聡明な彼女なら理解しているだろう。

この先に勝利など無いと。

ならば上手く負ける手段として、負けて尚生き残れる可能性を高めるため、

突貫でティガロ・パイロットになろうと言うのか。

ジュリアスは溜め息混じりながら、もう一度仕様書なるものを開く。

そして一番重要になるであろう所のみを凝視してゆく。

(なになに…緊急解放手順はこうしてこう…)

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