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28 一か月後 ~~ソワソンの王家~~

また、長い間を開けてしまって申し訳ありませんでした。

先の話をどうするかは考えていたのですが、そこに辿り着くまでの色々とうまく書く自信がなくて筆が止まっていました。このままだと全然進まないまま終わってしまうと思い、少し強引に話を飛ばしました。

少し冗長になってしまいましたが、次話から頑張りたいと思います。

テウデベルト王子とその一行は、各地で歓迎の宴を受けながら、ゆっくりとブリテン島を横断し、ケント王国を通過して、ガリアの地に入った。

ブリテン島では、アングロ人、サクソン人などのゲルマン系と、ケルト人、ローマ人との緊張関係が、ガリアでは、フランク人とガロ・ローマ人の関係が、それぞれ水面下で対立していたところ、両者を共通付ける正統派聖教の聖遺物である、聖パトリクスのケルティック・クロスが発見されたことは、諸民族の共通の喜びをもって迎え入れられた。

ケント王は、アングロ・サクソン諸王国に対して、アリウス派を根絶して正統派に対する帰依をより強固なものとすることを引き続け求めていくこととし、その一方で、西フランク王国との更なる関係強化を求めることとした。ケントの若い戦士たちは、そのままテウデベルト王子に仕えることが認められ、「聖十字騎士団」と称せられることとなった。


西フランク王国の王、欲しがり屋のキルペリクも、その流れを歓迎した。

そもそもケルティック・クロスを求めたのはキルペリク王自身であり、その長子であり西フランク王の後継ぎであるテウデベルト王子が、危険な冒険行をやり遂げて帰国したことは、まことに誇らしく、周囲の同族諸王や、その他の諸勢力に対しても、大いに面目をほどこしたものである。


そこで、キルペリク王は、先触れとなったケント人騎士の知らせを受けると、直ちに祝宴の準備を命じ、未だかつてなかったような盛大なお披露目をすることとなったのだ。


「こちらが、テウデベルト王子が持ち帰られた、ケルティック・クロスでございます!!」

ミヒャルが高々と十字架を頭上に掲げ、王と王妃、重臣やその他大勢のフランク人たちに聖十字架を示した。


「「おおっ!!」」

王の側近たちが感嘆の声を上げる。拍手をする者、大声で叫ぶ者、剣を抜いて感動を表す者、隣り合わせた者同士で殴り合って、この感動を記憶にとどめようとする者など、その場に居合わせた者は、それぞれの方法でその感情を露わにした。


王宮というほどのものはない。

キルペリク王がもっとも愛した地、ソワソンは、歴代のフランクの王たちにとっても、極めて居心地の良い土地であった。

周囲は広々とした田園が拡がり、大軍を引き連れての滞在に適していたし、フランク族の故地であるトゥールネ周辺にも近く、いざというときにはフランク人戦士に召集を掛け、瞬く間に大軍を用意することができる土地であったから、王が通常居住する館がある。しかし、それはあくまでも館であって、いわゆるお披露目の大宴を開くほどの空間はなかったから、何かあれば王は館を出て、周辺の広場に台をしつらえ、そこで必要な儀式などを執り行うのが通例であった。

この時も、テウデベルト王子帰還の報告会ともいうべき宴は、広場で行われていたが、ミヒャルの掲げた聖十字架は、雲一つない晴天の下、燦然と輝いて見えたのである。


「これを得た後、私たち、すなわち王子テウデベルト、その従者ミヒャル、志願して付き従った若きフランク戦士ヒューゴは、魔獣ラプトリクスに囲まれましたが、三人で魔獣らと死闘を繰り広げました。そのときにケント王の配下であった彼らが救援に駆けつけてくれたのです。」

テウデベルト王子が、淡々と事実を説明した。

どうしても華のない人柄ではあるが、それだけに重みがあって、この場にふさわしく受け止められた。


挿絵(By みてみん)


「ケントの戦士らについては、後程聞くことにしよう。」

キルペリク王が口を挟んだ。大きな玉座に座っていて、その隣には美貌の王妃、フレデグンドが立っていた。フレデグンドは、知られている限り、キルペリク王の二番目及び四番目の王妃に当たる。一番目の王妃、アウドヴェラは、テウデベルト王子らの母であるが、追放され、ル・マンにいる。三番目の王妃、ガルスウィンドはヒスパニアの西ゴート王国第一王女であったが、誰も語ることの許されないある人物によって謀殺された。女の闘いを制して、今、ガリアの地で最も高貴な女性の一人として君臨するフレデグンドは、その無垢な美しさで万人を魅了し、権力を求めぬ風を装いながら、結果的には決定的な権力を掌握していた。義理の息子に当たるテウデベルト王子の快挙に、輝くばかりの笑顔を惜しみなく与えている。


「まずは、その子供、ヒューゴとやらだ。」

キルペリク王は、穏やかな顔を幼児に向けた。まだ5歳なのだ。


「聞くところによると、足手まといになるばかりか、大いに闘い、ヒベルニアの王と一騎打ちをして勝利するなど、武芸に秀でた勇者であり、また、パリのゲルマニクス司教様に師事するなど、聖教の教えにも忠実な人物であるという。そして、ヒベルニア王から得た剣は、かの有名なカリブルヌスであるとか。」


ヒューゴはゆっくりと歩み出た。

王の前には、正しい序列というものがない。早く来た者から前に立ち、後から来た者は、その権勢の度合いに応じて、前に押し入ってくる。そうやって王のすぐ前にまで人が充満することになるが、流石に王が突き飛ばされたり圧死したりしては大変なので、台がしつらえてある。ヒューゴは報告者としてテウデベルト王子と共に最前列に立っていたが、ミヒャルとテウデベルト王子が先に台上に上がっていたので、その二人に手を引っ張って貰って台に上がった。


「トゥールネの住人、ヒューゴでございます。」

「なんと、本当に子供ではないか!」

キルペリク王が驚嘆した。

側近たちも驚きを顕にした。馬鹿にしたような声も聞こえる。


「王様、私は子供ではありますが、このたびテウデベルト王子のお誘いに応じ、ブリテン島に行って参りました。テウデベルト王子の誘いを断らなかった方のみが、私を馬鹿にすればよいのです。」


ヒューゴは大声で王に語りかけた。

大声なのは、自信があるように見せるためだ。小声で言っていると臆病者と取られかねない。ヒューゴの発言は喧嘩腰であるかのように見えるが、フランク人は思ったことをそのまま口にするので、これくらいはなんでもない。


「そして、これがカリブルヌスでございます!」

ヒューゴは背中に括り付けていた大剣の紐を解き、キルペリク王に差し出した。


「私のような者にはもったいない逸品、王に献上します!」


おおー! その場が騒がしくなった。この時代、自分の物は自分の物、という考え方が主流だから、どんなに貴重な物であっても簡単に王に献上するという人間はいない。そういう意味で、ヒューゴのこの行為は、非常に太っ腹な決断であるといえよう。


「あら、その剣は、あなたがご自分の力で勝ち取ったもの、如何に価値があろうとも、王様がお受け取りになるわけにはいきませんわ。」

鈴を転がすような美しい声でフレデグンドが介入した。キルペリク王が、「ありがとう。」という直前に、ぎりぎりのところでストップを掛けたのだ。


「そう、そうじゃな。ヒューゴよ、予は勇敢なフランクの戦士が正当に得た戦利品に手を出すことは決してしない。この魔剣はそなたのものだ。」

欲しがり屋のキルペリク王は、慌てて答えた。


キルペリク王は、強欲ではあるが、人に物を与えることの重要性は熟知していた。その昔、父王クロタールが死去した際、その従士頭であったロゴの献言に従って、クロタールの残した財物を全て戦士たちに与えたことで、フランク人の忠誠と好意を一身に集めているのだ。それが、キルペリク王の最大の強みであり、兄王たちに対して相応の対抗力を保持している一因でもあるのだ。


「はっ」

ヒューゴは跪いて答えた。


「しかし、そのケントの戦士らは、マン島のヒベルニア人をどうやって突破してきたのだ?」

傍にいた第二王子、メロヴィクが質問した。

ここまでの話では、ヒベルニアの王は、マン島を占拠し、ブリテン島に襲撃を繰り返していたはずだった。マン島の頂上にある洞穴に至るため、テウデベルト王子たちは決闘に勝利しなければならなかったのだ。そして、その決闘で王が殺された結果、新しい王が即位していたはずなのだ。



挿絵(By みてみん)


「ケントの若い者たちがマン島に上陸したときには、新しい王は別の男に殺され、次の王位を巡って殺し合いがなされていたとか。」

ミヒャルが補足して説明した。

「そして、ケントの戦士たちは、マン島のヒベルニア人を全て殺し、女たちを凌辱し尽くしたとか。」


ヒベルニア人はアリウス派ですらない。聖教の教えに服していないから、別に醜聞でもなんでもない。王の周辺の人々も、にこやかにその説明を聞きながら、それを受け入れた。


「更に、ブリテン島に帰ってきましたら、砂浜には槍が一本建てられており、そこには老婆の首が掛けられておりました。」

ミヒャルが続ける。

ケントの戦士らは、訳の分からないことをくどくどいうケルト人ドルイドと名乗る老婆に、いらいらしたため、もっとも手っ取り早い処理を行ったのである。


「おお。では、ケントの戦士諸君は、王子を救援したばかりではなく、その帰途も安全にしてくれたということであるな!!」

キルペリク王は満足げに感想を述べた。


「は。しかし、ここにおりますヒューゴは、『いかに異教徒の老婆とはいえ、約束は約束です。』と言い張って、老婆が依頼しようとしていたことを調べました。その結果、沼地の奥に大きな蟹のような化け物がいることを発見し、おそらくこれの討伐が老婆の願いであったのだろうということで、我ら三名で蟹を討伐したものであります。」


ミヒャルはそういって、人間の背丈ほどもある蟹の爪を台の下から取り出した。覆い布を取り外すと、まがまがしい赤い色で鈍く光る蟹爪が現れた。


「まあ、なんと恐ろしい!!」

フレデグンドが声を上げた。


「テウデベルト王子、ミヒャル、ヒューゴ、その三名は実によく危険に立ち向かい、その冒険行の最中もその名を汚す行いもなく、神への忠良さを如何なく発揮したこと、まことに称賛に値する。また、ケントの戦士らの功績も実に大きい。戦士らの希望を受け入れ、テウデベルト王子の下に聖十字騎士団の結成を認めることとしよう!」


キルペリク王がその場をまとめた。

恩賞などは別途与えられるようだから、そこは安心しておこう。

ヒューゴは密かに思った。


ケントの戦士らの長が台の上に登って来た。


「キルペリク王様、我らが主であった、ケント王からのお言葉をお伝えします。」

戦士の長といっても、20歳に満たない若者である。緊張しているようでもあるが、目上の人間に対して物怖じしないのがゲルマンの風習でもある。堂々とした話しぶりで、大方の好感を得たようであった。


「ふむ。予としても、ケント王からの伝言は是非ともお聞きしたいものだ。予は王を親戚同然に思っておるから。」

キルペリク王は最大限の好意を示した。海峡を隔て、特に利害関係もなく、領土に争いもない相手だ。仲良くなっておいて別に損にはならないだろう。


「ケント王エゼルベルフト様は、とても立派なお方で、神からも人民からも愛されていると聞いておりますわ。」

王妃フレデグンドもにこやかに口を挟んだ。あちこちに味方を作っておくのが、フレデグンドの基本方針なのだ。そうすれば、自身が危地に陥っても、誰かが救いの手を伸ばしてくれるかもしれない。そういう先のことを考える能力は、この時代、稀有のものであったが、このフランクの下級貴族の出であるフレデグンドには、その種の外交能力と、自らの誠意をしっかりと相手に伝える技術とが、充分に備わっていた。


「は。ケント王としては、今後とも西フランク王と友誼を深め、その他のフランク諸王とも親しくお付き合いしていきたいと考えています。そこで、フランクの王の娘をケント王の嫁に頂きたいとのことです。」


王の側近たちがざわめき始めた。

正直、フランク人たちは、ブリテン島に進出したゲルマンの同族たちのことを野蛮人だと考えている。もとは、ユトランド半島に住んでいたザクセン人とその周辺部族なのだ。ローマの文化に古くから接していたフランク族とは開明の度合いがかなり違う。ローマ人から見れば同じようなものではあるが、フランク人としては、ケント王国のジュート族も、アングロ族やサクソン族も等しく蛮族であって、若い戦士がやってきて、「嫁によこせ」と言われること自体を非礼と受け止める空気があるのだ。


「ふむ。」

欲しがり屋キルペリクは一呼吸置いた。流石に、すぐに怒鳴って断ったりはしない。もっとも、「嫁を欲するのなら、それなりの貢物をよこせ」と言いたいところだ。


「残念ではあるが、予には娘がいない。息子ばかりでしてな。」

キルペリク王は、大方の反感には関わらず、娘をケント王に与えても良いと感じたようだ。王と王との間に姻戚関係ができるのは悪い話ではない。国内の有力貴族に与える方がよほど危険なのだ。その意味で、ケント王にフランクの血が入っても、まさかガリアの地にまで攻め込んで来たりはしないだろうという安心感もある。


「あら、王様、王様にはお美しい娘がおありではありませんか。」

フレデグンドが横から思い出したように声を上げた。その表情は、自然な笑顔で、何ら悪辣なことを考えているようにも見えない。何か策謀があるのかもしれないし、ないのかもしれない。そういう奥のしれない恐ろしさが、この王妃にはあった。


「予に娘がいたのか?」

キルペリク王が不思議そうに首を傾げた。


「アウドヴェラ様の最後のお子でございます。黒目黒髪、フン族の高貴な血を引いておられるに違いなく、ル・マンの修道院でアウドヴェラ様と暮らしておられましたが、このたび王様に謁見に参られました。昨日お会いしたではありませんか。」


「ん、そうだったか。アウドヴェラの娘か。」

キルペリク王は、本当に忘れていたらしい。基本的に物覚えが悪いのだ。


「あれは、たしか5歳だったな。」

年齢は思い出したようだ。


「そうだった。予の兄、シギベルト王がザクセン同盟と戦争をするということで予も参戦するため出征していたんだったな。それで帰って来たら、可愛らしい娘を抱いておった。ところが、それに洗礼を与えた代母がアウドヴェラ自身だったというので、予はいたく驚いたのだった。」


そうなるように誘導したのは現王妃フレデグンドだったというのが専らの噂だったのだが、それは誰も触れない。フランクとはいえ、言ってはいけないことは、きちんとわきまえていることもあるのだ。


「うむ。あれの名前は・・・、なんであったか。」

ちょっと出てこないらしい。

側近の者も助け舟は出さない。フレデグンドの不興を買うかもしれないからだ。フレデグンドは、当然王女の名前は覚えているが、敢えて口に出さずに、話を進めた。


「はい。アウドヴェラ様は、とても美しいお方。あのようなことがなければ、私は今でもアウドヴェラ様の下で侍女をしていたでしょう。もちろんそうであっても、私は全く不満には思いませんけど。いずれにせよ、そのアウドヴェラ様の娘、とてもお綺麗な方でしたわ。」

フレデグンドは続ける。どうやら、アウドヴェラの血縁は海の向こうに出しておきたいのかもしれない。それとともに、自分がアウドヴェラ追放の陰謀に関わったかのような印象を打ち消すために、敢えてアウドヴェラの美貌を褒め称える。


「そうですな。あのころのアウドヴェラ様は、実に美しいお方でした。今はもう40歳近いお年と聞いておりますが。」

国璽尚書のアンソヴァルドゥスが口を開いた。


実に良くできた咄嗟の連携だった。

フレデグンドは自分の立場もあるから、アウドヴェラのことを悪くはいえない。しかし、あまりに美しさを強調しすぎると、キルペリク王が、「もう一回会ってみようかな。」などと考えてしまうかもしれない。そうなると、折角追い落としたアウドヴェラの復帰を呼んでしまうかもしれないから、フレデグンドの党派ともいうべきアンソヴァルドゥスが、さりげなくキルペリク王の関心がアウドヴェラに向くのを逸らしたのだ。


「ここにお連れして下さいな。」

王妃フレデグンドは、近くの従士に指示を出した。王女は5歳とのことだが、この時代のゲルマン族にとっては嫁に出すのに支障のある年齢ではない。どうせ婚約者として相手に預けておくだけの話なのだ。


(なるほど、これで王妃フレデグンドとしては、ケント王エゼルベルフトの願いを叶えるよう尽力したという実績を作ることができる。これはテウデベルト王子の冒険行を援助するよう依頼したフレデグンドが、借りを返したということになるし、そういうやり取りを経て、お互いの信頼関係や協調関係が更に強固なものになっていくことになる。更に、アウドヴェラ血縁の子を一人減らすことができるから、フレデグンドとしては都合の良い話だ。もちろんキルペリク王にとっても悪い話ではない。半ば捨てられていた王女の有効活用としては、非常に賢明な選択ではあるな。)

ヒューゴは感嘆した。

実はブリテン島を横断しながら、周囲を観察していたのだが、それなりに開発し甲斐のありそうな土地ではあるのだ。ブリテン島の覇王として勢力を拡大しつつあるエゼルベルフト王との友好関係は、西フランク王としても自ら求めるべきものなのだ。フレデグンドは、一手で複数の成果を得ようとしていた。


・・・


「お父様、私の名前を忘れていたそうですが。」

フランク人従士に案内されて、幼女が檀上に登って来た。

「どうも聞いた話によると、女狐に騙されて私をブリテン島に出すとのこと。私は、誰の嫁にもなるつもりはありません。そもそもそこの女狐は、我が母を騙して追放の身にさせた女。今日こそは、我が足元に跪かせ、泣いて許しを請わせるつもり。」


物騒な発言をしながら、幼い王女が台の上に登った瞬間、辺りが光り輝くように見えた。


美しいのだ。


幼女なのに、可愛いとか、そういうのではなく、とにかく完成された芸術品のように美しかった。

眼は細く眠るようで、それでいて瞳ははっきりと前を見つめ、獰猛な獣のように輝いていた。顎は細く優美にかたどられているのに、くっきりと引き締められた口は、深海に棲む鮫のように近づく物を食い殺すかのように臨戦態勢をとっていた。

身体は均整がとれ、健康美を振りまいていた。指は細く長く、上品に揃えられているが、今にも短剣を抜いて投げつけてくるのではないかと思わせるような活動力を秘めていた。


(ほほう、なかなかの姫だな。)

ヒューゴは誰からも、「降りろ」と言われないので、台の上で他の人たちと一緒に立っていたが、大人たちの陰から王女を見て感心した。

(これなら、ケント王国への贈り物としては、充分すぎるだろう。)


そう思いながら立っていると、ふと王女の眼がヒューゴを捉えた。


王女は、少し首を傾げて、ヒューゴの顔を見た。

何か物でもついているのか、それとも同じ年頃の子供が珍しいのか、じっくりと見詰めてきた。


(お、なんだ、この王女は。俺に惚れたのかね。)

ヒューゴがそう思いながら、王女を見つめ返すと、王女は、突然大きく目を見開いた。


「なるほど。」

王女はそういいながら、静かに前に進み出た。


ちら


左右に素早く目を走らせ、突然、ケント人の戦士に飛びついて、その剣を抜いた。


(なんだ、あの動きは!?)

ヒューゴは驚愕した。とても幼女の動きではない。洗練された武士の動きだった。


日向ひゅうが!! ここで、そちを殺すっ!!」

王女がヒューゴに斬りかかってきた。


「ランマリア、やめなさいっ!!」

王妃ブルンヒルドが叫び声を上げたが、何の効果もない。


「殺すっ! この謀叛人めが!!」

いつの間にか日本語で喋っていた。

王女は自分の背丈よりも長い剣を巧みに操り、人ごみを縫ってヒューゴに渾身の一撃を加えてきた。


「うわっ!」

ヒューゴは咄嗟に剣を抜いて応戦した。


「何者だ、お前!」

ヒューゴも日本語で問う。


「ランマリア、その真の名は、」


幼女は、剣を振り回し、周囲の大人たちを下がらせ、充分な空間を確保しながらヒューゴを睨みつけた。


「森蘭丸。上様の忠実な小姓じゃ。」

ご一読ありがとうございました!

文章が練れていないままで申し訳ありませんが、ここから話を動かしていきたいと思っています。

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