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18 父の凱旋 ~~父とはいっても、これはあくまでも偽装だけどね~~

少し間が空いてしまいましたが、投稿します。開いてくださった方、本当にありがとうございました。

野蛮魔法を極める決意を固めながら、にやにやしていたら、突然、遠くからぼおっという音が聞こえた。それに続いて、同じ音質ではあるが、少し高い音で、ぷっぷうっという旋律が聞こえる。


クロティルドが騒ぎ始めた。

「旦那が帰ってくるわ! テイズ君の吹き方だわ。やっと遠征から帰って来たのね。」


ああそうか。たしか旦那というのは、ロゴという男で、おそらくここの領主だったはずだ。僕の父親ということになっているはずだ。これが初対面になるわけだな。僕としては、こういう事態となってしまい、緊急時ではあるものの、ロゴに無断で息子として世話になっていることになる。ここはきちんと挨拶をして、その労をねぎらわねばなるまい。しかし、ロゴはどこに遠征に行っていたのだろうか。上杉あたりか。


レイナが、遠慮がちに言った。

「領主様のお帰りですね。ご無事だと良いのですが。」

クロティルドが、

「もちろん無事だわ。あの角笛の吹き方で分かるの。まずいことがあったら、テイズ君の角笛は、調子が悪くなるもの。今回の遠征では、たくさんのゴブリンを殺したのかしら。」

と言った。


ゴブリンとは何だろうか。

戦国の世でも聞いていない。また、長い帝国の歴史を追う夢でも出てこなかった。


レイナが、

「そうでしたか。西ローマ帝国が滅びたときから、魔物があちこちに出るようになっていますが、そうやって領主様が討伐して下さるのは、本当にありがたいことですよね。ガロ・ローマ族の領主様は、あまりそういうのはして下さらないので。」と答えた。


ミーレが、幼女特有の高い声で、

「領主様は、王様の軍隊について行ったの?」と聞いた。


クロティルドは笑いながら答えた。

「王は、遠くにいるわ。このあたりでまともに戦える領主は、ロゴだけ。ロゴが近くの領主たちに声を掛けて、軍勢を集めてやつらが住んでいるあたりを討伐したのよ。そうね、千人くらいは集まったんじゃないかしら。」


そう言いながら、クロティルドは、窓を開けて外を見た。僕も一緒に外を見た。


野蛮魔法は、筋肉だけでなく、身体全体に影響があるようだ。視力が異常に良くなっている。この建物の周りも含めて良く見えた。


騎馬の兵がこちらに向かって走ってくるのが見えた。あれが、ロゴの軍勢だな。10人に満たない。ちらりと見て、すぐにはここまでは来なさそうだと判断して、その前に、周囲の状況を確認することにした。


この部屋の床に下に続く階段があったことから想像はついていたのだが、部屋の窓の下には、屋根が広がっていた。つまり、階下には、この部屋よりも広い階があるということだ。


建物の外は空き地のようになっていて、小屋がいくつか立っていた。おそらく、馬や下人用か、倉庫になっているのだろう。


(水の手はどこだろうか。)

城を見るときには、やはり水の手が気になる。見える範囲では、井戸のようなものはないし、貯水槽も見えない。低い木や藪がちょぼちょぼ生えている程度で、いずれにせよ丁寧に管理されているとはいえない状況だ。


(これは、早々に改めさせないといけないな。)

僕は、こういういい加減なものは大嫌いだ。


この城らしき建物の周囲は塀で囲われている。塀というよりは、柵だな。幅のある、短冊形の板を立ててあるが、隙間があいている。銃眼として使うというよりは、びっしり立てると板が足りないから、という程度の理由しか見受けられない。


この城、いや、城というよりは館という方が正確かもしれないが、それは、丘の上に建っているらしい。丘の下には、村のようなものが見えた。

(あの村の教会で、洗礼を受けたのだろうか。)

あの似非司祭の不快極まりない洗礼を思い出して、ぶるっと震えた。やたらと冷たい水に浸されて、その間、司祭はお楽しみだった。


村は、それほど大きくない。不揃いに屋根が見えるが、庶民の家だとしても貧相すぎる。かろうじて屋根と壁があるというようなものだし、一つ一つの家も小さい。人口は、およそ800程度と見た。


この館の建つ丘の周辺には大きな森はないが、ごつごつと起伏があって、ところどころに林もあった。小さな川も流れている。畑は見えるが田は見えない。いずれにしても、これも貧弱なもので、全体として貧しい村という印象だった。


そしてかなり遠くに大きな森が広がっている。さっき、ロゴの軍勢とみられる10人ほどの騎馬兵が出てきた森だ。

騎馬隊は威勢よくこの丘に近づいてきているが、その後ろ、森の中から、20名ほどの歩兵がついて出てきた。歩兵といっても、槍は持っていない。棍棒とか斧のような武器を持っている。弓を持っているものはいない。そして、荷車を二つ引いていた。荷物が満載されている。なるほど、戦利品だな。

出掛けるときは、糧食を積み、帰りには戦利品を持って帰るという算段と見た。見える限りでは、怪我人は乗っていないようだ。誰か一人、荷車の上に座っている。


クロティルドが、

「家臣の人たちも、減っていないようだけど、誰も討死していなければいいのにね。村の者はどうかしら。ここからだと何人いるか見えないわ。」


レイナが質問した。

「ロゴ様の軍勢はあれが全部なのでしょうか?」


(よし、良い質問だ。ちょうどそれを聞きたかったところなのだ。)


「いいえ、ロゴは、下の村とこの砦に従士を住まわせていて、それが今帰ってくる10人くらいの人たちよ。それから、近くの村にそれぞれ何人かずつ封臣を置いているの。その人たちを合わせて、騎馬で20人。村の者たちをその都度連れて行くから、全力で出陣するときには、騎馬を合わせて120人くらいになるわ。」


ふむ。なるほど。それで、おおよその規模が分かった。土豪程度の実勢と見た。もっとも、さっきのクロティルドの言葉によれば、周辺の土豪の中では、なかなかの有力者のようだから、大事件のときには、もう少し大きな軍勢を任せられるのだろう。話に出てきた、遠いところに住む王にも信頼されているのかもしれない。


ご一読ありがとうございました。

少し説明くさくなってしまいました。このあたり、とっとと流して、主人公の成長を見ていきたいところですが、それまではもう少しかかりそうです。

次の投稿もできるだけ早くしたいと思っています。来週には、少し時間が取りやすくなりそうな感じなのですが、ちょっとバタバタしております。

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