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14 僕も妖術を ~~身近なところに先達はいたのだった~~

投稿の時刻が遅れてすみませんでした。

先日、初感想を頂きました!嬉しかったです。ありがとうございました。励みに頑張ります。

しばらくして目が覚めた。正確にいうと、その後、ローマ軍は、テウトニ族を追撃し、多数の捕虜を得た。テウトニ族は、完全に打ちのめされ、「声」がいうとおり再起不能となった。そこまで夢で見ていて、それから目覚めたのだ。


「声」の説明によれば、あの戦いは、聖紀前102年のことであったらしい。聖紀前って、なんだ。天正10年とどう違うのだろうか。誰が考えた年号なのか知らないけど。


ともあれ、僕は、今は木造の部屋に一人で横になっている。今は乳母も用事で出かけているから、この部屋には僕以外には誰もいない。


と、思っていたら、目の端で動くものがあった。


一匹の猫が、音を立てずに床を歩いていた。


成年の猫だ。錆色をしていて、身のこなしが軽い。


暇だから、猫をじっと見ていたのだが、その猫は、突然動きを止め姿勢を低くして、天井の方を凝視した。


なにかおるのか。


なにしろ赤ちゃんなもので、身じろぎするのにも一苦労だ。ぐい、と首を捻じって天井を見ると、黒い影がごそごそ動いている。なんだろ。


もう一度猫を見ると、前足後ろ足を動かし、尻を振っている。尻尾も小刻みに揺れている。うわ、可愛いわ。天井まではかなりの距離がある。大人が飛び上がっても、手が届かないかもしれないくらいの高さだ。猫に届くか?


すると、猫が突然飛び上がった。跳ねるように、身体を伸ばして中空を飛ぶ。同時に、黒い影も飛び立って逃げようとした。


その瞬間だ。


その瞬間、猫は、空中で後ろ足を大きく蹴りだし、影の逃げようとした先に向きを変えて、更に上に跳躍したのだ。


猫は黒い影を咥えて、床に降り立った。なんだ、蝙蝠ではないか。


いや、蝙蝠は、別にどうでもいいことだ。

それよりもさっきの跳躍だ。

何もない空中で、もう一度上に飛び上がったように見えた。

猫は飛び上がる途中で身体を捻じって向きを変えることができるが、さっきのは、そういうのじゃなかった。明らかに、空中に別の足場があるかのような跳び方をしたのだ。


「にゃあにょ?にゃにゃにゅうぅ。」(さきほどのは、見事であったの。もう一度やってみせよ。)


ちゃんと命じたはずなのだが、僕の口からは、にゃあにゃあという音しかでない。まあ、赤ちゃんだしね。


ところが、猫は、褒められたことは分かったらしい。


「にゃーあ。」と言って、捕まえた蝙蝠を見せに来た。

蝙蝠は、力を失いながらも動いている。キモい。


猫は、蝙蝠を床に置き、ちょっと離れたところからそれを見つめ、蝙蝠が大きく動いた瞬間にとびかかって、また口で咥えた。しばらく口に入れて、蝙蝠がもがく動きを感じて楽しみながら、僕の方を見る。

・・・

まだ見ている。こっち見てる。

ああ、そうか。褒めて欲しいのだな。


「にゃにゃ!にゃあ。」(でかした!素晴らしい技じゃ。そちのような猫は尾張の国でも美濃の国でも見たことがないぞ。ほれ、もう一度跳んでみせよ。)


猫はどうやら褒められているところだけはきちんと理解するようで、それから何度も蝙蝠をいたぶっては僕の顔を見た。その都度褒めてやらなければならないから大変だ。にゃーにゃーいいすぎて、喉が痛くなるくらいだった。しかし、結局は飛ぶところは、見せて貰えなかった。猫としては、僕に教えるのは、まだまだ早いと思っているのかもしれぬ。


そういえば、伊賀や甲賀の忍者も、やたらと飛び上がるのが好きだったわ。雇って下されと頼んできたから、庭で何度も目の前で飛ばせていたら、少しずつ顔がこわばっていく。「この大名は、いつまで俺に飛ばせるつもりだろうか。」と考えていたのだろうが、それは、お前が倒れるまでだよ。そのときも、結局、忍者が飛ぶ原理は分からなかった。しかし、今の猫の飛び技は、あの忍者たちを軽く凌駕しているように見える。もっとも、錆猫は、うちに雇われに来た忍者ではない。命ずるがままに飛ぶことはしてくれないようだ。


しかたがないから、どんな風だったか思い出す。そうだ、重要なことを見落とすところだった。


猫の背中から、一瞬だが赤い光が見えたのだ。テウトニ族が使っていた魔法と同じ色の光だ。


つまり、だ。僕は推理する。


この猫も、聖紀前102年の戦争に参加していて、ハエドゥイー族はキントリクス君の胴体の下をくぐったクチなのか。


・・・


いや、そんなはずはあるまい。

「声」の言い方だと、聖紀前102年というのは、今よりもずっとずっと前のことだったようだ。それにあの場に錆猫などいなかった。いたとしたら、あの愛すべきも放埓なゲルマンの戦士たちに踏みつぶされていただろう。


ということは、この錆猫は、独自の技能でもって、かの野蛮魔法に通じているということだろうか。


よかろう。

紅毛人の言語風習を学んで世界制覇に役立てようと思っていたが、思わぬ収穫がありそうだ。僕も、この野蛮魔法を学び、家臣らにも教えてやることにしよう。これで織田家にも、魔法部隊をつくることができそうだ。火縄銃は、敵も使うことがあるが、魔法部隊は、どこにもない。織田家は無敵となるかもしれぬ。


ところで、この錆猫に、どのようにして教えを乞うべきだろうか。


とりあえず名前を付けようと思う。


「にゃにゃあ。」(おい、サビ)


サビと名付けることにして、声を掛けた。


無視された。


仕方がないので、自分の持つ情報を整理することにする。


野蛮魔法とは・・・。


聖紀前102年(これがいつなのか分からないけど、「声」の口ぶりだと、今よりはかなり前のことのようだ。)には、ゲルマン民族のテウトニ部族の汚らしいおばば様が当たらない予言をするのに使っていた。そして、生贄の血を浴びることによって、身体能力などを各段に向上させることができる。魔法を使うとき、又は魔法の影響下にあるときには、赤い光を発する。


そして。

今、僕の目の前で、猫のサビが同じ魔法を使っていた。いや、別に予言とか占いとかしたわけではなく、空中での跳躍をしていた。これはテウトニ族の勇士が柵に飛び上がるのと同じだったし、あのときもやはり赤い光を放っていたから、そのように判断したのだ。


もっとも、サビが生贄の血を浴びたとは思えない。何か別の発動条件があるのかもしれないな。


一方で、文明魔法というのがあったはずだが、それがどうなっているのか分からない。


今、ここはどこだ。


僕に洗礼を施した司祭と乳母であるクロティルドによれば、ここはガリアの地。ガリアの地は、ガリア人がいたはずだ。ハエドゥイー族とか、生贄として活躍したキントリクス君とかね。それは今どこにいるのだろうか。支配者はフランク族らしいが、これは言葉からしてゲルマン系のようだ。そうすると、現在は、聖紀前102年から相当時間がたって、ゲルマンが支配領域を進めたということだろうか。ローマ帝国はどうなったんだろう。ここでフランク族に支配されているガロ・ローマ人というのとどう関係があるのだろうか。

もどかしい。言葉が喋れたら、乳母クロティルドを質問攻めにするのだが。とりあえずはおっぱいを飲むくらいしかできないのが口惜しや。


ともあれ、赤ちゃんだから、時間はたっぷりとある。サビの監視を始めることにする。


ご一読ありがとうございました。

この先は、構想はあるのですが、作業中です。明日の夜に投稿できればと考えております。

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