空はあおく 一
五千は急に突撃を開始した。
瞬間、ロフト五百を連れて駆けていた。既に一段目は破られ、二段目も破られかけている。
気付かなかった。いや、気づけなかった。目的が解らない。正午、城内にいる兵と挟撃を仕掛けるつもりだった。そもそも、なぜグリナッドの本隊がここに現れたのかが、解らない。
これを読んでいた。ルゼイラから引き返してくるのを待っていた。ロフトはそこで、頭を真っ白にした。理由などどうでもいい。今は、敵を生かして返さないことだけを考えればいい。
見えた、敵の先頭。誰も寄せ付けていない。あれが、リークか。四十を過ぎたと聞いてはいたが、十は若く見える。リークを潰す。ノークはそう言った。ロフトは背中に悪寒が走るのを感じた。
笑っている。なぜ、笑えるのだ。戦場という、血生臭い、死がすぐそこにある場所で。
「正面からの激突は避けろ。側面を突く」
リークに対する恐怖がさせた、とっさの指示だった。
小さく纏まった、敵の側面にぶつかった。そこから断ち切ろうとしたが、壁が厚い。しかし幾度かぶつかっているうちに、ついに断ち切れた。敵の勢いが止まりかけた。
馬を返し、再び突撃を試みたとき、不意に敵将がこちらに向かってきた。
おもしろい。呟き、屈んだ。兜でよく見えないが、色は白く、端正で、目はどこか不思議な感じのする蒼。
剣を振るが避けられ、振られたが防いだ。手が痺れ、汗が吹き出た。敵将は後続に当たらないようにしながら、また駆けてきた。刹那、敵将の兜に矢が当たり、兜が弾け飛んだ。手綱は放していない。
戦場だ。剣を、構えた。残念な、終わりだ。長い髪が露わになる。
若い女、初めて解った。敵将の馬が急に速くなり、手に衝撃が走る。刃の上から半分が吹き飛んでいた。
「くそっ」
ロフトはやり場のない怒りを感じた。ただそれを深く感じている暇はない。五千はまだ動いている。大半の兵は既に駆け去っていたが、体勢を立て直したこちら側に進行を阻まれている小隊が、いくつかある。それを一つずつ潰す。
二本目の剣を抜き、声を上げた。左前方に約二十。横に大きく広がり、三方から責め立てた。
「ロフト」
次の隊に攻めかかろうとしたとき、背後から声が挙がった。
「将軍」
「反転しろ、ロフト。リークが戻ってきた。それも五騎だけでだ」
ありえない。気が狂ったとしか言えない行為。だが好機。
反転し、駆けた。見えた。先頭に立って駆けているリークは、異様な気を放っている。信じられなかったが、背後には本当に五騎しかいない。
さっきはできなかったが、今ならできる。胸が苦しい。息が荒い。柄を強く握った。
リーク速さは変わらず、躊躇なく駆けてくる。今度こそ。リークと目があう。圧される。異常な圧力。剣を振る。瞬間、空があおかった。
宙に浮いた体は肩から落ち、激痛が走った。
立てない。こんな時に。時が遠くなる。
ロフトは静かに、その体を地に委ねた。