表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

第九話 玉振(ギョクシン)


たつ】十二支の一つ。辰年は、西暦年を12で割り8余る年が辰の年で、現在の暦で辰年は特別な場合を除き通常は必ず閏年となる。辰の月は旧暦で3月、辰の刻は午前8時を中心とする約2時間。辰の方は東南東よりやや南寄りの方角。五行は土気、陰陽は陽。「辰」は漢書の津暦志によると「しん」、ふるう、ととのう、の意味で、草木の形が整った状態を表しているとされる。後で神話上の動物である「龍」が当てられた。十二支の中で幻獣は辰のみである。



 ・ ・ ・



 アメリカほど人種問題、戦争の多い国は無い。とある2002年までの統計では、1776年の建国(合衆国)以来の226年間で41回、第二次世界大戦後の57年間で19回の戦争、又は武力行使を行っているという。これは5年ないし3年に1回は戦争をしているという計算になる。


 だがそれは歴史上で見ていれば仕方のないことだとも言えよう、非難だけで済む話ではない。1492年にスペインの女王の承諾を受けイタリア人のコロンブスが大陸を発見してから入植、開拓が始まる。それまでの、かつての土地文明を破壊し、ドイツ人のワルトゼミューラーがアメリゴ・ヴェスプッチの名をとりアメリカ(大陸)と名づけたのが1507年であるが、それからはアメリカの独立、西部の開拓と南北の戦争、海外への進出と世界恐慌それから第二次世界大戦への参戦やソ連との冷戦、人種差別問題と公民権運動、貿易赤字と単独主義的傾向、テロ・イラク戦争……と、歴史の一連を並べただけでも分かるように、問題が複雑困難、それでいて過剰である。


 何故世界は平和にはなれないのかと問えば、要因のひとつにそれは根深い、人種や民族の違いが挙げられるのであろう。念を押すように言えば理解しなければならないのは差別、というよりもむしろ「違い」である。

 

 1945年、8月15日に人類史上最も苛酷な第二次世界大戦は終結し、世界中で人々は二度とこのような戦争を起こさないことを願った、だが戦争は形を変えれど無くなることは無い、個性がある限り対立は身近にもあるように生まれ、国においては譲らない限り勝敗を決すらなければ終われない。


 第二次世界大戦ではアメリカとソ連は協力し、ドイツや日本、イタリアなどのファシズムを相手に戦い、激戦の結果、これに勝利した。それが何故か皮肉にも、次の両国間における冷戦時代へと突入する切欠になろうとは、当時予想は出来たのであろうか。時は遡り、世界大戦が終結する直前に開かれたヤルタ会談で戦争後の取り決めを行った際、その内容が後に問題になる。


 欧州諸国やドイツを東西に分けて、東はソ連、西はアメリカが中心となり支援をすることに決めたのだが、これにより後に社会主義国となるソ連と、資本主義国となるアメリカに両者対立構造が出来上がることとなる。東は東ドイツ、ルーマニア、ブルガリア、ポーランド、ハンガリーなどがつき、西は西ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、スペインなど多数の欧州諸国や他、日本などがつくこととなる。このような対立構造を生みながら、両国による直接的な戦争が無かったことから冷戦(冷たい戦争)と呼ばれることになるわけだが、結局はお互いの正義、プライドを賭けた戦争であった。1989年にベルリンの壁が崩壊し、翌年に東西に分けられたドイツが統一するまで、これらは続く。


 一応の終わりを告げたのが地中海の島国、マルタで行われた会談、マルタ会談で、ヤルタ会談から始まりマルタ会談で終わったことにより冷戦を「ヤルタからマルタへ」と表すと覚えやすい。


 1990年代、社会主義を掲げていたソ連は崩壊しロシアとなり、戦略兵器削減条約(START)、包括的核実験禁止条約(CTBT)などが締結し、アメリカとロシアが核弾頭を廃棄する為モスクワ条約が2002年に結ばれたが、核兵器についてはヒロシマ・ナガサキへの原爆投下を最後に、実際に使用されないことを全世界民が切実に願っている。




 1790年以来、アメリカで最大の都市であるニューヨークは、合衆国の北東部にある大西洋に面し、国際政治の中心である国際連合本部ビルの所在地でもある。世界の商業や文化、ファッション、エンターテインメントに非常に多くの影響を与え、世界最高水準の金融センターでもあった。犯罪発生率を見ると2005年以来、アメリカの25大都市の中では最低を守っているという。1980年代から1990年代初頭にかけて犯罪抑止政策が行われたが、ニューヨークは組織犯罪の舞台として見られたりすることもしばしば、マフィアの台頭もある。

「眠らない街」とも言われ自由の女神像があり、ロウアー・マンハッタンのウォール街は第二次世界大戦以来、金融の国際的中心地であって、ニューヨーク証券取引所が置かれている、賑やかで華やかで、働き盛りな若者が憧れる街、それがニューヨーク――。


 しかし「彼」が目を覚ましたのは街中でも家のベッドの上でもなく。荒野の、砂地の上であった。日光が容赦なく仰向けに寝ている彼を照りつけ、体内の水分を奪おうとしている。

 両目は開けたが意識がはっきりとはしていない様子で、汗をかき、まるで朽ちるのを待っているかのようにも見えて、時は経過した。やがて昼に高く、休まることの知らないようでいて相変わらず照りつける太陽の下、彼に近づいてくれる男が現れた。

「おい。平気か」

 腕や足、剛毛な男が彼に話しかけた。すると彼はようやく起き上がり、男に対してしっかりと頷いた。「ああ。大丈夫だ」男にとってみれば全然と大丈夫そうではないのだが、男は被っていたカウボーイ風の帽子を彼に被せ、「とにかく、あっちへ乗りな。おめぇ、何処から来た。まさかここからまだ歩くってんでねえだろうな、馬鹿げてる」と臭い物でも見たような顔をした。

 男に促され向けられた方向を見ると、一台の馬車が待機している。男の所有のようで、荷馬車だが馬が2頭、引っ越すのであろうか、男を待っている。「あれに乗りな。都会に行くんだろ」と男は言った。「さあ……」どうにも煮え切らない顔をする。

「さあ、って。おめぇ、名前は?」

玉振ぎょくしん

「俺はレガシィ。これからひと儲けしようと都会へ行くとこだ。おめぇは?」

「私は……」

 そこで詰まる。彼は、名前は覚えているのだが、どうやらそれ以外は思い出せないらしい。

「どうしてあそこに」

「知るかよ! 何だぁ、おめぇ、記憶喪失ちゃんかよ。しょうがねぇなあ、都会で洗ったら、綺麗になって思い出すんじゃねえか、がはは」

 陽気な男、レガシィは彼を抱き起こし、力強く引っ張っていった。馬車の荷物を寄せてスペースを作るとそこへ彼を座らせ、発車する。「しゅっぱーつ!」レガシィは豪快に馬を走らせ、歌まで歌い始めた。「ワタシをおいてぇ~、いかないでぇ~、フー♪」自作なのか歌手がいるのかが分からないが歌は下手であった。我慢ができない程でもない。

 歌に飽きると彼に話しかけてはくるが、彼に話しかけても「さあ」としか返ってはこなかった。

「ここは何処ですか」

「んあ? 悪いが、聞こえねえ」

「ここは」

「ここ、ってか? もー直ぐ都会だよ。と・か・い」

「いつ」

「まだまだ走るじぇ。おめーさん、旅か? でも持ちもんもねえしなぁ、おかしなこった。まさか天から降ってきたってわけでもあるめぇ。しかし何だな、その格好も、着くまでに何とかしねえとな。せめて、服、着ろよ」

 レガシィが言うように、彼は裸であった。彼はレガシィから借りて、服を着た。馬車は走る。時々は馬を休ませて、夜も走った。

 朝が来ると、街が遠くに見えてくる。「ひと儲けひと儲け」レガシィの目は希望に満ちあふれて楽しそうに笑っていた、歌もまた歌い出す。

「心配いらないわ~、アナタと一緒ならぁあ~♪」



 馬車に同乗したものの、乗っていた馬車は道中で売り払うことになった。運んできた荷物もレガシィは「要らねぇもんはとっとと売っ払っちまうのが一番さ」と適当なことを言い、都市に着くまでに立ち寄った店や村、町で金に替え、身軽になっていった。「向こうで儲けて買やぁいいからよ」荒っぽい言い方だが、悪くはない。歩き方や食べ方は下品だが、人には気を遣う。「や、ありがとよ」子どもにも優しかった。

「おじちゃんたちー、また来てよー」

「おおー、またなー!」

 最後に立ち寄った村では、子どもに大人気であった。しがみついて離れない子が居た程である。

 馬車を売り、都市までの距離は歩いてとなったが、もう目と鼻の先にビル等、建造物は見えている。2人が歩く横をジープやトラックが砂埃を散らし通過して行き、「よしゃ、ヒッチだ」とレガシィは指を鳴らして手を高く挙げ、口笛を吹いた。そうして停車してくれたのはZIS―5V、もとは現在のジル社であるソ連のZIS工場で生産されていたトラックで、運転していたのは中年中太りの男、ガムを噛みながら「乗んな」と親指を立てて2人を後ろに乗せた。


 揺られて、夕日が沈みかけた頃になった。2人は、市街地よりは外れて工場などが立ち並ぶ人気の少ない寂れかかった地で、車から降りる。 

「ここでいいかい」「おう。サンキュ」

「ま、気をつけな」

 軽く言うと、男の運転していたトラックは行ってしまった。「さてと」

 都市へ行くと聞いていたが着いた所は中心部でもなく、人が住んでいるのかも分からないくらいに寂しい所で、壊れたフェンス、工場であろう大きな建造物がフェンスより向こう側、軒並みに並び、煙突が数本ある。こちら側にはビルやアパートがあるが、廃墟ではないかと疑わしい。

「何処で寝るか。探すか」

「探す?」

「どっかその辺、適当にしろ」

 レガシィは手を乱暴に振りながら、周辺を散策しつつ姿を消した。玉振はレガシィを追いかけながらも辺りを探り、ビルの階上へと上がって行った。廃墟と化しつつもあるが人が住めなくもないレベルに残っているようで、台所と思われる部屋には鍋やヤカンがあった。床にはゴミが散らばり黒い染みのようなものもあるが、片づければ何とでもなりそうである。

 幸いか、足が崩れそうだがベッドがあった。

「おーい、こっちへ来いよ」

 レガシィが大声で玉振を呼んだ。「見ろ見ろ。壊れてっけどラジオだ。直せっかな」とごつい手でかちゃかちゃといじくり始める。結構な時間が経ち部屋中の物色が終わった所で、玉振が見つけたベッドのある部屋で休むことになった。いつまでも起きてると腹がすくからとレガシィは先に床で寝てしまった。毛布が1枚あったので、それを下に敷きレガシィの大柄な体躯は上で横になった。ベッドに寝転がった玉振は、固いベッドに直ぐに慣れることが出来たようで瞼を閉じると深く眠りについた。傍から見ればこんなに大雑把で先行きは大丈夫なのかと懸念がされるが、レガシィはともかく玉振には住む所よりも別の問題がある。


(私は何だ……?)


 日中に砂漠でだいぶと体力を消耗したであろう、玉振は疲れ果て、次に目が覚めるまで、夢を見れない程に眠った。


 この日から、2人の奇妙な共同生活が始まるとも知らずに。



 玉振は自分についてを一切思い出せずに分からなかったが、それと同じくレガシィについても何も知らない。又、興味が無かったのかも知れず。玉振が起きると、横で豪快なイビキをかいてレガシィがまだ眠っていた。鼻提灯が出来ている。

 こんな大きな音のなかでよく眠れたなと呆れるであろうが、疲れていたせいもあってか、又は無関心であったのか。玉振は気にする風でもなく、吹きさらしの窓に向かって目を眩しそうに細く開けた。こちらは東側なのか、太陽がビル群の隙間からよく見える。時計も無ければ、今日がいつなのかも不明である。


 起きて体を動かすと、喉が渇いたことに気がついた。レガシィが昨夜、何度も勧めてはいたが水を探した。すると、レガシィが大事そうに持っていた鞄のなかに水の入った袋を見つけた。袋を取ると、他の持ち物には関心が無かったが唯一、十字架になったペンダントだけが目に留まり、気になった。

 手に取って空にぶら下げると、トップでくるくると惰性で回る十字架は、玉振には尊いものに思えたのであった。

「それ、いいだろ。高いぜ」

 声がしたので振り向くと、レガシィが起きてこっちを見ていた。大きく欠伸をすると、肩を叩いて立ち上がる。

「ロザリオだ。売らねえよ、それだけはな」

 玉振から袋を取ると、水を飲んだ。



 2人が向かった先は、都市、ニューヨークマンハッタンの南、ウォール街。20世紀になるとアメリカの繁栄に伴い世界の金融の中心として君臨する。超高層のビルや高級マンション、ランドマーク、商業施設は狭くも揃いビジネスマンや観光客で行き交い、情報の波が押し寄せる。

 通行人と肩をぶつけながら、玉振は半歩前を先行くレガシィの後を追いかけた。レガシィの進む先に迷いが無いのか、足は止まらず、玉振はレガシィを見失わないようにするのが精一杯であった。段差のブロックに躓き慌てて体勢を整えると、直ぐ隣で煙草を吸っていた美人な女性がクス、と笑った。

「坊や。置いてかれるよ」

 ヒールを履いた綺麗な足をミニのタイトスカートから露出して、ブロンドの髪を片手で掻き揚げていた。萎縮して返事はせずに慌てて追いかける、後ろが気にはなっても振り向く勇気が無かった。

 じっとりと嫌な汗をかき始めたが、耐える。

 空からゴミの袋が降ってきた、見上げても、空が見えるだけ。ビルに囲まれている。

「玉振」

 数メートル先で信号待ちをしていた集団に紛れて、レガシィが呼んでいた。「待って」置いていかないでと必死で追いかけた。


 初めて入った店はストリート・フード店、ホットドッグ屋であった。「何にする」十字格子になった窓がドアも含めて並び、店内にはあちこちにオルゴールや帽子が飾られている。入ると直ぐにカウンターで、客も飛び込んで来ては目についた物を注文する。

「あれとそれとこれとどれ」

「ケチャップは?」

「付けとけ、マスタードもな」

「そこの兄ちゃんは」

「おい、何飲む」

 玉振はまだメニューを見てはいない、見る間が無かった。「あ、う」声がしどろもどろで、パニックになったようである。「レモネードでいい、俺もだ」とレガシィが言うと、カウンター越しに向かいで注文を聞いていたマスターが元気よく相槌を打った。「座んな」顎を突き出して玉振を迎え入れた。礼のひとつも言えずに言われたまま、空いた席へと腰を下ろす。

 客は多い、昼時でもある。決して広い店だとは言えないが、狭いとも言えない。何しろ、玉振にとっては人混みというものは慣れてはおらず、非常に苦痛である。人との会話にもスピード感覚が合わない。

「おいお前。働けるか?」

 隣で座って新聞を広げていたレガシィが聞いてきた。片手には新聞、片手は肘を折って指先で遊んでいる。玉振は聞いてきた内容より指先で屈伸運動をしている方に気が行ったが、マスターがレモネードとホットドッグを目の前に置くとレガシィが再び繰り返した。

「はたら……く?」

「何ぼんやりしてんだてめぇ。もしや意味分かってねえのかよ」

 レガシィは呆れたようだ。新聞から手を離した。

「おいおい、何処のお坊ちゃんだ……って、そうか、記憶喪失子ちゃんだったな、だからか」

 レガシィは大袈裟な溜息と笑いを出した。

「何だあ、随分とご機嫌だなそっち。ヤマでも当てたかい」

 マスターが絡んできて歯をカチカチと鳴らしていた。太い腕を腰に当てていてパーマをあてた髪には汗が光っている。

「これからだ、こ・れ・か・ら。それよりよ、まだ来たばっかりでこいつの雇い探してんの。ここは?」

「ああ、皿洗いが一人辞めちまったばかりだが、何だ、そいつか? 若そうな兄ちゃん、名前は? 学生? どっから」

 視線を向けられて玉振はたじろいだ。まだホットドッグには手をつけてはいない。代わりにレガシィが答えていた。

「それがよ、頭がイカレてんだ。名前しか分からねえ」

「おいおい、何つーんだ、ええ?」

「玉振っつーんだが。何、イカレてるっつーても噛みつきゃしねえからよ。それじゃこいつの面倒みてくれよ。夜までよ」

「別に構わんが、本当に大丈夫なんだろうな。何処に住んでる」

「あっち」

「ふざけも大概にしな。追ん出すぞ」

「悪ィ、頼むわ」

 レガシィは紙とペンを借りて、さらさらと地図を描く。そして最後にサインをすると、食べかけていたホットドッグを美味しそうに頬張りレモネードで始末した。

「じゃ、頑張んな。夜くっ(来る)から」

「レガシィ」

「何て顔してんだ。笑わねえ奴だと思っちゃいたが。俺の代わりにマスター頼りな」

 そう言うと、先に済ませたレガシィはお金をカウンターに置いて足早に店を出て行く。暫く呆然としていた玉振であったが、諦めて残りのホットドッグを咥えた。食べ終えてから早速と、玉振はマスターに呼ばれて店の奥へと通される。厨房にはもう一人、背格好が玉振とそっくりな若い男が居た。学生であろうが名をマイケル、マイクでいいよと愛想のよく緊張していた玉振は少し安心した。

「宜しく」

 マスターに紹介された後に奥さんがやって来て、玉振に皿洗いを教えた。頭がイカレてる、とレガシィに言われていても根が素直な玉振には無関係であったようで、人柄のいいマスターを含めて今後も上手くやっていけそうであった。

 慎重であったおかげで皿洗いの初日は大きな失敗もなく無事に終われた。



 夜になり閉店時間が過ぎると、昼間と変わりがないレガシィが入り口から入って来る。「ご苦労さん」

 くたくたになりながら早くも待っていた玉振は、レガシィを見るなり足元が崩れて、不運にも皿が一枚、床に落ちて割れてしまった。

「あちゃあ」

 ばっちりと光景を見てしまったレガシィは舌打ちし、オーマイガ、と頭を押さえた。

 どうやら緊張の糸がブッツリと切れてしまったようで、気絶している。マスターは「おいおいおい」と苦笑いをしながら玉振を助け起こした。「マスター」「世話が焼けるぜ若いの」

「しゃーねえわ。皿代、引いといて」

 マスターから玉振を受け取って、肩に背負いながら外へと出た。明るい街で月が見えにくい。

 タクシーを呼び、玉振だけを乗せて運転手に住所を教えた後、レガシィは夜のウォール街へと消えて行った。



《続く》



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ