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今日2度目の更新です。
活動報告にちょっとしたおまけが付いてます。よければお読みください。
俺の言葉に周りの雰囲気が面白いほどに尖っていく。
俺が言うのもなんだけど、やばい雰囲気ですな。
「てめぇ…」
目の前に立ちはだかる男が凶悪な視線をとばしてくる。
自業自得なので受け止めます。
そう…受け止めはするが、それだけです。
「おいおい、落ち着けよ」
おっと、大河が間に入ってきた。
意外なことに大河が調整役か?
いや、意外ではないのか。
冷静に端から見ているやつだから、調整役がまわってくるんだろうな。
慣れた様子に、大河の苦労しているだろう一端が見えたような気がする。
「落ち着いてられるかっ!」
大河も大変だなと考えている間に、大河と押し問答を始めてしまった。
参戦する気は一切ない。
と、電話だ。
「もしもー」
「我が親友よっ!!」
すばやく耳から携帯を離す。
少々反応が遅れたせいか、耳の奥が痛い。
「…音量を下げろ」
離した携帯に向かってトーンの落ちた声で喋る。
しかし、相手は興奮しているのか、俺の状況を読まず音量は最大のままだ。
「…」
無駄だと早々に見切りをつけて通話を切る。
数秒もしない内にまた携帯が鳴った。
「…もしもし?」
「宮ノ内先輩ですか?私、感動しましたっ!!」
「…」
先ほどの相手とは違って音量はまだ控えめだが、立て板に水の如く喋る相手に言葉を挟むことが出来ない。
相手には悪いが電話を切らせてもらった。
また着信を告げる携帯電話。
「…」
「師匠と呼ばせてくだー」
ブチッと切る。
これ以上の着信が入らぬ内にとすみやかに電源を切った。
「ふう…」
高知兄弟と篠川に、先日お世話になったお礼と、GWの約束を断った代わりにと珠姫のドレス姿を送った結果だった。
真さんとの約束は破ってない。
真さんに送った写真の前に撮ったいつもの珠姫を送ったのだ。
しかし、この素晴らしいまでの同じタイミングには恐れ入る。
写メを見て、同じ時間くらい固まっていたのか…。
3人のメールが届いたときの様子を思い浮かべていれば、俺の携帯の着信音を似た…いや同じ着信音が響きわたる。
でも俺のじゃない。
さっき電源切ったからな。
でも同じ着信音だ。
まあ、そりゃそうだろう。
「もしもし」
珠姫の携帯(俺と同じ機種)が鳴ったのだから。
ご丁重にも同じ着信音で設定したんだよ。
珠姫が。
「…ん……ん」
珠姫が頷いている。
視線がこちらにやってくる。
「ん」
携帯を渡してくる。
「…もしもし?」
すぐに耳から離せるようにして声を出す。
「皇くん?」
「澪さんか…」
ホッとした。
「澪さんかって何?」
「いいえ。こちらの事情ですから」
「ん?…まあいいわ。皇くん」
「はい?」
「今すぐ帰ってきてちょうだい」
「…すぐですか?」
「ええ。今すぐに」
「…分かりました。帰ります」
「ありがとう。待っているわね」
いいたいことを伝えてすぐに切れた通話に疑問が浮上したが、どうせすぐ会えるのだし、まあいいかと疑問を放り出した。
「大河」
「ああ、聞いてた」
「…じゃ、そういうことで」
一触即発の空気が立て続けに入った着信のおかげか、消えていた。
従兄弟殿がいまだ鋭い視線をこちらに注いでいたが、それを無視して俺は更衣室に向かう。
澪さんによる帰宅(?)命令だったので、今度は止められることはなかった。