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珠姫がまた囲まれてしまった。
今度はその輪に美佐さんと千里ちゃんもいる。
…そんなに珠姫の携帯が珍しいのか。
「お前はいかないでいいのかよ?」
俺の横でその様子を楽しそうに観察している大河に声を掛ける。
「俺は別に。てか、珠姫よりもお前のケー番のほうが聞きたいな。教えてくれよ」
ニヤッと笑って自分の携帯を出してくる大河に、ため息を盛大にひとつ吐いて自分の携帯を取り出した。
「それって珠姫と同じ機種じゃね?一緒に買ったのかよ」
…目ざとい奴だ。
「違う。珠姫が俺と同じのを購入しただけだ。…操作を教えるのに楽だしな」
つい余計な言葉を紡いでしまった。
おっと…大河と気の置けない会話をしている場合じゃない。
あっちの集団がこちらに意識を移す前にさっさと赤外線をする。
もし美佐さんとかに聞かれたら厄介だからな。
必要性を感じないアドレスは要らないと思う俺はひどい奴なのだろうか。
大河からも赤外線で電話番号などを貰い、仕舞おうとしたその時、タイミングよく着信が入った。
「あれ?澪さん?」
画面には澪さんからの着信を告げる文字。
先程のメールについてかな?
でも、なんで俺のほうに電話?
いや、珠姫じゃ会話にならないか…。
「はい。もしも――」
『こぉぉおおおおお(皇)くーーーーーーーーーーーん!!!????』
キーーーンッ
「っ!?」
慌てて耳から携帯を離す。
この声は…。
「…真さん」
何の罠だろうか。
何故澪さんの携帯で真さんが電話を掛けてくるのだろうか。
真さんの携帯からならちょっと対策のひとつやふたつ取ったのに!
まだまだ続く騒音のような真さんの声に何とか俺は対応する。
わが声よ届けとばかりに叫んで少しだけ落ち着いたのか、やっと聞き取れるぐらいの声になった。
「…で、どうしたんですか?」
『ひどいよ、皇くん!』
「……何が酷いんですか?」
『あ、あのメールだよぉお…』
「今さっき珠姫が送ったメールですか?」
『そうだよ!!あんな画像付きのメール、今まで僕、貰ったことないよっ!!?』
「何言ってるんですか。珠姫が何回か添付つきメール送ってるでしょ?」
『も、貰ってる…そう、貰ってるさっ!!珠姫が一生懸命撮った皇くんの画像付きメールをねっ!!』
「…」
『そりゃあ、僕だって珠姫が頑張って撮った写真が嬉しくないとは言わないさっ!でもね!でもっ!!僕だって珠姫が写ってる写真が欲しいんだよっ!!!?』
ああ…うん……そうですね。
「……」
『澪さんは自分に来たものだから、僕にはあげないって言うし…』
ああ…どんどん涙声に……。
てか、想像がつくな…澪さんきっとその時めっちゃ楽しんでるんだろうな……。
『僕も珠姫の写真を待ち受けにしたいよ…』
「はあ…」
まったく…。
「ええと…せっかく一緒に旅行に来ているんですから、自分で撮られてみては?」
『そっ…そうかっ!?そうだねっっ!!今なら珠姫を撮り放題じゃないかっ!!!』
「……」
ええと…撮り放題はやばいかな?
常識の範囲内でお願いしますって伝えるべきか?
「じゃあ、それで問題は解け――」
『いやっ!待ってっ!!それじゃあ根本的な解決になってないよっ!!今は撮り放題かもしれないけど、旅行が終わったらまた離れ離れじゃないかっ!?そしたら僕は今回撮った写真でずっと寂しさを紛らわせろって言うのかいっ!!』
いや、知らねぇよっ!
つい突っ込んだ。
冷静になれ、俺っ!
「…落ち着いてください。…じゃあ、珠姫に真さんにも澪さんに送る画像を同じように送るように言っておきます」
『…それじゃ嫌だ』
「はい?」
『今までの澪さんが独占してきた分、僕にも…僕だけの画像が欲しいっ!!』
もうどうにかしてくれっ!!!